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    元スレ杏子「さやか、――あんたを殺す」

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    みんなの評価 :
    タグ : - アイドルたち + - 佐倉杏子 + - 魔法少女まどか☆マギカ + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    51 = 4 :

    さやさやあんあん!

    52 :

    プロローグとは無関係すか

    53 = 1 :

    「ちょっと杏子! 邪魔なんだけど!」

    さやかは進路上に蹴倒された魔獣の死骸を跳び越え、そのまま空中に出現させた魔法陣を踏んで魔獣の背後に着地する。
    ヒグマの首から少女の細腕が三本飛び出した姿の魔獣が腕を振るう。
    さやかのサーベルが撫でるようにその腕を切り裂き、返す刀で魔獣をまっぷたつにする。

    「今日も絶好調だわ!」

    銃声も高らかに、マミがステップを踏み、使い魔が消し飛ばされていく。
    魔獣のふところに飛び込んだマミはすでにマスケット銃を握っている。
    いつのまにやらリボンで縛り上げられていた魔獣は身動きすらできずにその体に風穴をあけた。
    がらがらと崩れていく魔獣を尻目にマミは紅茶をひとくち飲んで微笑んだ。

    「まったく――」

    閃光、そして爆発。

    「――わずかの油断も命取りよ、巴マミ」


    54 = 4 :

    ティロティロ

    55 = 1 :

    一瞬前まで存在しなかった場所でほむらが髪を払う。
    手榴弾によって粉々にされた魔獣が還元して消えていく。
    軽やかに杏子が着地、変身を解く。

    「てめえほむら、アタシまで巻き込まれそうになったじゃねーか!」

    「杏子! あんただってあたしの邪魔してんじゃないの」

    紗幕に覆われていた結界が溶けるように消滅。あたりは誰もいない公園である。

    「そんなところにいる貴方達が悪いのよ」

    「なんなのさそれ!」

    「予兆も何もねーのに対処できるわけねーだろ!」

    「またやってるわ……」

    ほほに手を当てて嘆息するマミにまどかが言う。

    「とりあえず戻りましょう、マミさん」

    「そうね。鹿目さんの言うとおりだわ」


    58 = 1 :

    ◆◆◆ ◆


    「それでは、デブリーフィングを始めるわ」

    「なんでほむらが仕切ってんだよ」

    「デブ……?」

    「なにかしら。というか暁美さんいつのまに私の部屋に白板を持ち込んだの」

    「じゃあわたしが書くから、さっきの問題点を言っていってね」

    「さやかとほむらが邪魔」

    杏子がストローを噛みながら即答する。

    「杏子だって邪魔でしょうが」

    「巴マミ。貴女は前に出すぎよ」

    「私も活躍したいんだもの……」

    59 = 1 :

    「ほむらはさァ、なんかこう合図とかねーのかよ。合わせるもんも合わせらんねーよ」

    「私の戦術の基本は奇襲。前もってわかる奇襲などないわ」

    「みんなで戦ってんのに奇襲で立ちまわれるわけないじゃん! 時間停止の制約もきびしいしさ」

    「そうね。どうすればみんなで活躍できるのか、それが大事よね」

    「マミ。ちょっと黙っててくれるか?」

    「またあんたはマミさんに向かってそんなことをっ」

    「なんだか盛り上がっているようだね」

    全員が口をつぐんで声の主を見た。
    キュゥべえがまどかの隣に座っている。

    「安心してよ。僕から言うことは何もないよ。まどかがなにかいいたそうだからさ」

    「そうだね。いろいろみんなの気持ちが出てきたから、私も考える時間がほしいなって」

    60 = 4 :

    きゅっぷいきゅっぷい

    61 = 1 :

    「まどかはもう魔法少女じゃないんだから戦えないじゃん。どうすんの?」

    「それも含めて、ちょっと考えるよ。さやかちゃん」

    「あーじゃあアタシはもう寝るわ」

    「ちょっと佐倉さんソファで寝ないで。ふとんをだすから」

    「とりあえず、魔獣退治には、マミさんとさやかちゃん、ほむらちゃんと杏子ちゃんでふたつに分かれて対処してほしいの」

    「まどかがそういうなら私はそれで構わないわ」

    「えーこいつかよー」

    「マミさんがんばりましょう」

    「気をつけてね、美樹さん」

    62 = 4 :

    さやさや

    63 = 1 :

    ◆◆◆ ◆


    「行くぞ!」

    「ええ」

    武家屋敷のような薄暗い結界のなかで、杏子が畳を蹴って走り出す。
    鎧を着込んだ首の無いマネキンがぎくしゃくとした動きで杏子を取り囲もうとするが、振り回された槍で一気に裁断されていく。
    見通せない闇の向こうから少女の笑い声が聞こえた。
    ふすまを開いてどんどん数を増やすマネキンを、なおも切り捨て続ける杏子。

    「杏子!」

    「あいよっ」

    杏子が使い魔の肩を蹴って舞い上がる。
    天井に着地した杏子に向かって手を伸ばすマネキンたちを、ほむらの銃撃が掃討していく。

    65 = 1 :

    一方杏子は濃い闇を見透かすように睨んだ。

    「本体はそっちだろ!」

    天井を蹴って跳ぶ。
    使い魔を置き去りにして暗闇に突っ込んでいくと、ぼぼぼぼぼと蝋燭に火が灯り、座敷を照らしだす。
    最奥で笑っていたのは、声にたがわず少女の姿をしていた。
    鬼のような鎧に閉じ込められて哂っている。

    「てめえが親玉か。さっさと終わらせてやるよ!」

    鎧が立ち上がり、すらりと剣を抜いた。濡れたようにつややかな刀身が蝋燭の火を映す。
    少女が一際けたたましく笑い声をあげた。


    67 = 1 :

    「うぜえ」

    踏み込んだ杏子が突きを繰り出す。
    それを刀の腹で捌いた鎧も一歩踏み込み、杏子を横薙ぎに切り裂こうとする。
    迫る刀を槍の柄で叩き落して、その勢いのまま鎧の横っつらへと回し蹴りを決める。
    着地しながら手を組んだ杏子の足もとから鎖が飛び出し、鎧を縛り付けた。
    杏子の突き立てた穂先が灼熱を放ち、爆発を起こす。
    距離を取った杏子は、煙のむこうに鎧がまだ立っているのを見て舌打ちした。

    「かてえなクソ」

    がしゃ、という音がして、杏子の目の前にまで鎧が迫っていた。
    疾い、という思考が追いつく前に鎧のこぶしが杏子を吹き飛ばす。
    ふすまを何枚もぶち破り、畳を滑ってようやく止まった杏子は呻き声をあげた。とっさに防御した右腕が骨折しているらしい。

    68 = 1 :


    腹の底が冷えるような本能の感覚に掴まれて杏子が顔を上げると同時に横に転がる。
    軽い音を立てて数本の日本刀が一瞬前まで杏子がいた畳に突き立つ。
    すぐに立ちあがった杏子は笑い声を聞いた。
    ――後ろから。
    振り返ると同時に衝撃。防御の魔法陣をぶち抜いたこぶしが再び杏子を軽々と吹き飛ばし、さらに上から叩きつけるような追撃。
    畳みの下もまた同じような座敷。
    なんとか着地した杏子はぺっと血が混じった唾を吐き棄てた。

    「いってーちくしょう」

    薄闇から鎧が歩いて近づいてくる。
    鎧のなかの少女はこらえきれないといった様子で笑い続けている。

    「はッ! 調子のってんなよ!」

    69 = 1 :


    獰猛に笑いながら杏子が突貫する。
    だが。
    鞘におさめた日本刀を構える鎧――居合の構え。
    膨張した殺意に弾かれるように杏子が防御のために構えた槍ごと――、

    「く……そが……っ!」

    ――袈裟掛けに切り裂かれる杏子。
    槍を取り落とし、血を零しながら、両手を組む。噴き出た鎖がぎゅるぎゅると鎧を縛り付けた。

    「やれ……、ほむら!」

    大量の銃弾とともにほむらが鎧の頭上から天井を突き破って現れる。
    硝煙と空薬莢を撒き散らして、ほむらが杏子の前に降り立つ。

    「杏子……!」

    「アタシはいいから、……来るぞ!」

    70 = 4 :

    ほむむむむ

    72 = 1 :


    全身に銃弾をめり込ませたまま鎧がほむらへと迫る、
    が、次の瞬間にはほむらは杏子ごとその背後へと回りこんでいる。
    鎧は勢いのまま踏み込んだ。

    「そこ、気をつけて。遅いかもしれないけれど」

    踏み込まれた足に地雷が反応、畳をぶち破って炸裂する。
    半身を炎に包まれながら鎧が振り返り、なおも刀を振るおうとする。
    少女が鎧のなかで絶叫している。
    鎧の動きにあわせてするりと移動したほむらが発砲。

    「さっきから煩いのよ、貴女」

    数発、全弾命中。
    ガラスが割れるようにひびが蜘蛛の巣状に鎧に広がり、そして砕け散った。
    結界が溶けて消える。


    73 = 4 :

    ほむほむ

    75 = 1 :

    「ぐうっ!」

    「杏子! いま美樹さやかを呼ぶわ!」

    「待て……。いらねえ……」

    「そんな傷を負って何を言っているの!?」

    「あー、ここらが、潮時、かねえ……」

    荒い息を吐きながら杏子は笑った。
    魔法で応急処置をしながら立ち去ろうとする。

    「待って! とにかく、いったん私の家に帰りましょう」

    「うぜえな……」

    「え?」

    「もういらねーんだよ仲間とか!」

    ぎらぎらした瞳で杏子はほむらを睨んだ。

    77 :

    ホームレスが施しを断るなよ

    78 :

    あんあん

    79 = 1 :

    「ほっとけよ……それがいやなら、アタシを殺していけ!」

    杏子が槍を構える。

    「どうして……! これからでしょう、私たちが協力していくのは!」

    「……あんたらといると弱くなっちまう。アタシひとりで戦えねー」

    槍を構えたまま血を吐くように杏子は言った。

    「だからもう見滝原から出ていく。あんたらとはこれっきりだ」

    ほむらは黙っている。
    黙っているしか、できなかった。
    杏子が踵を返す。

    「……じゃあな。――楽しかった」

    「杏子!」

    ほむらは、声が震えている気がして、拳銃を握りしめた手に力をこめた。

    80 = 4 :

    あんあん……

    81 = 1 :

    「行かせないわ。貴女は――」

    「いいねェ、このままじゃ味気なさすぎると思ってたとこだ」

    ほむらの言葉を遮って、ゆらりと杏子が振り返る。

    「じゃあいっちょ、派手に終わらせようじゃねーか!」

    向けられた拳銃など無いかのように杏子が駆け出す。

    「くっ……!」

    銃弾三発をかわして杏子が槍を振りかざす。
    拳銃を放り捨てて左腕の盾を掴むほむらを見て、杏子は哂った。
    ほむらの姿が消失し、拳銃を構え直して杏子の背後に出現。
    直後、床を蹴って杏子が跳び上がり、照準から逃れる。

    「今回はタネもシカケもわかってんだぞ!」

    82 = 4 :

    ほむむむむ

    83 :

    あんあん

    85 = 1 :


    精確に放たれた銃弾を穂先で弾きながら杏子が上空からほむらに肉薄。
    気炎の声をあげて突き出した槍は、しかし煉瓦畳を砕くだけ。
    ほむらは大きく跳びすさって距離を取っている。

    「杏子! 貴女は――、貴女を失うわけにはいかないのよ!」

    「あんたもアタシと同じだ、ほむら」

    土煙のなかから杏子が歩み出る。

    「大切にしたいって、守りたいって、そう思うものが増えすぎたんだ。たったひとつだけのものを守り抜こうとして戦い続けてきたのに、な」

    杏子は力無く笑った。

    「ほかのことをすべて犠牲にしてきて、それでも構わないって、そうやってきたのに今になって別のものも守りたいなんて、都合よすぎるよな」

    杏子はほむらの過去を知らない。
    だが、自分に向けたその言葉は、数多の命と祈りを犠牲にしてきたほむらの奥のほうをも鋭く貫いた。


    86 = 78 :

    ほむあん

    87 = 4 :

    あんあん……

    88 = 1 :

    「アタシはけじめをつけて、ひとりに戻る。あんたらは、」

    杏子は言葉を切って目許をぬぐった。

    「あんたらは大切で、一緒にいたいとアタシは思ってる」

    「だったら――!」

    「だから! ……だから、一緒にいることはできねー」

    「………」

    「さよならだ、ほむら」

    杏子が振り抜いた槍の穂先が煉瓦畳を砕いて爆破、土煙をまきあげる。
    そして、土煙が晴れたときには、杏子の姿はなかった。

    「杏子……」

    90 = 1 :

    ◆◆◆ ◆


    「そんな……」

    「佐倉さん……そんなに思い詰めていたのね」

    次の日、ほむらは部屋に三人を集め、経緯を説明した。

    「相当な葛藤があったようよ」

    自身も同じ二律背反のなかにいることなどおくびにも出さずにほむらは言う。

    「あいつ……そんな様子ぜんぜん見せなかったじゃんか……!」

    「悩んでいるって、悟られたくなかったんでしょうね」

    とくに貴女には。
    胸のなかで付け加える。そして、自分もそうなのだと思った。
    まどかのもとを、離れなければならないと考えているなんて、まどか本人に気付かれるわけにはいかない。

    91 = 4 :

    あんあん……

    92 = 1 :


    気付いてほしい、という気持ちとのせめぎあいのなか、ほむらはまどかを盗み見た。
    俯いていたまどかが顔をあげ、目が合う。泣いてはいない。

    「ほむらちゃんはどう思うの?」

    困惑した。だが表情は変えずに、淡々と返す。

    「戦力としては大きな損失ね。ベテランの魔法少女が抜けた穴をどう補うか、戦略を立て直さないと」

    「暁美さん」

    「ほむらあんた! 杏子がいないままでいいっての?」

    さやかが噛み付いてくるのは想定通り。
    しかし、

    「そうだね。ほむらちゃんは杏子ちゃんがいなくてもいいと思うの?」

    まどかまで問い詰めてくるとは考えていなかった。

    「……佐倉杏子が、考えた末にそうしたのなら、私が、とやかくいうことじゃない。そう、思うわ」

    93 = 1 :

    「あたしはそんなふうに思えない」

    吐き捨てるようにそういうと、さやかは玄関へと向かった。

    「美樹さん! 落ち着いて」

    「マミさん。落ち着くのは、あのバカを見つけてからでも遅くないはずです」

    言い残して、さやかは出ていった。




    「暁美さん。佐倉さんの居場所に当てはないの?」

    気持ちを鎮めるように紅茶に口をつけたマミが問う。

    「ゲームセンター、廃教会、ホテル、公園、展望台、どこにもいなかったわ」

    集まってもらう前にほむらは杏子を捜していた。
    しかし見つからなかったのだ。ホテルは引き払われていた。

    94 = 4 :

    さやさや

    95 = 1 :


    「魔獣が出れば佐倉さんも駆け付けてくれたりしないかしら……」

    その可能性は薄いだろうとほむらは思った。
    彼女はもはや決心してしまったのだ。迷っている自分と違って。
    マミはうなだれた。

    「佐倉さん、昔からそうなのよ。ひとりで悩んで、ひとりで決めて、ひとりでどこかへ行ってしまうの」

    「だいじょうぶですよマミさん。杏子ちゃんはきっとわかってくれます」

    涙を流すマミをまどかはそういって慰める。
    それを見ながらほむらは思案していた。


    ◆◆◆ ◆


    夕暮れの街中を、さやかは捜し続けていた。
    息が荒い。

    「あんのバカ……どこにいんのよ……」

    自動販売機でスポーツ飲料を購入したさやかは、壁にもたれて脱力した。

    96 = 4 :

    さやさや……

    97 = 1 :

    「――困っているようだね」

    ぬらりと、キュウべえが自販機の上から覗いている。

    「佐倉杏子を捜しているんだろう? 僕が力になれるかもしれないよ」

    「だったらさっさとあいつの居場所を教えなさいよ」

    「残念だけど居場所は口止めされててね。確認と提案だけで一個体を損壊されてしまったよ。この個体まで失うのはコスト面からみても避けたいし。
     だいたい感情はないといっても痛覚はあるんだよね。動物として当然の機能だけどね。もちろん遮断することもできるし、意識を一時的に――」

    「あんたもっとすぱっと喋れないの?」

    「おっと、そんな物騒なものを向けないでよ。協力しないつもりならわざわざ姿を現したりしないさ」

    さやかがキュウべえに向けていたサーベルを消す。

    「きゅっぷい。さて、それじゃあヒントをふたつあげよう。まず、佐倉杏子は君をもっとも警戒している。だから、君が捜さないであろう場所に隠れている。そして、」

    ずっ、と白の獣は身を乗り出した。
    囁くように、秘密を明かす。

    「――佐倉杏子は何者かに手引きされている」

    さやかは目を見開いた。

    98 = 4 :

    きゅっぷい?

    99 = 1 :

    ◆◆◆ ◆


    まどかがはっと顔をあげた。

    「こんなときに……魔獣だよ!」

    戦う力を失ってなおまどかの感知能力は随一である。
    ほむらが音もなく立ち上がる。

    「今日は私ひとりで出るわ」

    「いいえ……だいじょうぶよ。いくら哀しくても、街の平和を疎かにはできないわ」

    マミも決然と立ち上がった。

    「いきましょう」

    100 = 4 :

    ほむほむ


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