元スレ京子「眠る結衣に口付けを」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★★
102 = 1 :
~放課後~
ちなつへの告白に返事をするべく、人気のない場所に向かう。
結衣「おまたせ、ちなつちゃん」
ちなつ「結衣先輩」
呼び出したちなつちゃんの顔は、少しこわばっているように見える。
大人びていて察しのいい子だから、分かってしまうのだろう。
結衣「ようやく、答えがでたんだ」
要点から話を始めよう。
結衣「私は……京子がs」
ちなつ「聞きたくないです!」
いつも朗らかに接してくれるちなつちゃんの、初めての悲痛な叫び声。
そんな反応を予想していなかった私は、思わず怯む。
103 = 72 :
ほ
104 = 1 :
言葉を遮られて、しばしの沈黙が場を支配した。
どうすればいいのかわからなくなって、ただ立ち竦む。
ちなつ「…………フフッ」
ちなつ「……なーんて、冗談です」
先程の気迫から一転、ちなつちゃんはおどけてみせる。
ちなつ「びっくり、しましたか」ニコッ
冗談のような剣幕ではなかった。
けれど、それを突っ込むのは余りにも野暮だろう。
結衣「心臓が止まりそうだったよ」フゥ
ちなつ「可愛い後輩の、ささやかないたずらです」
ちなつ「私の心を奪ったことへのちょっとした意趣返しですから、大目に見てください」
105 = 33 :
ほうほう
106 = 1 :
結衣「勿論、それくらいお易い御用だよ」
本来なら、その程度で済む問題ではない。
それでも、ちなつちゃんは認めようとしている。
それはどれほど難しくて、有難いことだろうか。
結衣「ちなつちゃんには、頭が上がらないよ」
ちなつ「もぅ、そんなに卑屈になったら駄目ですよ?」
ちなつ「結衣先輩は格好いいんですから、もっと堂々と王子様していてください!」
結衣「王子様って、大袈裟だなぁ」クスッ
結衣「私、そんなに男の子みたいかな?」
ちなつ「いえ!女の子な結衣先輩も、勿論素敵ですよ!」
ちなつ「あっ、すみません、私余計な話ばかりして……」
107 :
みんなええ子や・・・
108 = 1 :
ちなつ「……結衣先輩の答え、聞かせてください」
ちなつちゃんのたおやかな手が、制服をつかんで握り拳を作っている。
その眉は苦痛を我慢するように細められていて、私の心を切なくさせた。
結衣「私は、京子が好きだ」
結衣「だから、ちなつちゃんの想いには応えられない」
ちなつ「……ありがとうごさいます」
ちなつちゃんは綺麗に笑った。
何かを耐えて、乗り越えて、そうやってできた笑顔の輝きは人を魅了するものだ。
結衣「……また来週には、部室で、皆で会おう」
私自身の問題には片が付いた。
あとは京子に、想いを伝えるだけだ。
ちなつ「はい、それでは失礼します」ペコッ
静かに場を離れるちなつちゃんを、秋の風が見送った。
110 = 1 :
~結衣のマンション~
結衣「はぁ……」
溜まっていた家事も全て終えて、一段落する。
今日はちなつちゃんの問題もこなして、少し疲れ気味だ。
結衣「京子は大丈夫かな……」
正直にいえば、見舞いに行きたい。
けれど、行ったところで私に何かできるわけでもなし、
京子のご両親に余計な気遣いをさせてしまうだけだろう。
結衣「京子の声が聞きたいなぁ」
今の私はさしずめ恋する乙女という奴だろうか。
京子が気になって、気になって、仕方がない。
もっとも、今までも京子が生活の中心にいた事に変わりはないのだから、
心境の変化というものは面白い。
プルルルル……
静かな空間に、電話の音が響く。
111 :
こんなチーナ久しぶりに見た気がする
112 = 1 :
結衣「はい、船見です」ガチャ
京子『結衣?』
噂をすればと言ったものか、電話は京子からだった。
結衣「京子、体は大丈夫なの?」
京子『大分熱も引いたから、大丈夫dゴホッ』
結衣「治ってないじゃないか、大人しく寝てなよ」
京子『いやいや、大丈夫』
どの口がほざくか。
京子『明日土曜じゃん?』
結衣「京子……まさか……」
京子の考えが何となく分かってしまい、眉を顰める。
114 = 24 :
ええなぁ
115 :
良いssだ支援
117 = 1 :
京子『山の公園にお昼、待ち合わせな』
やはり、紅葉狩りの誘いだった。
結衣「まだ本調子には程遠いんだろ、ぶり返すことだって考えられる」
結衣「それに山あいは冷える、大体京子のご両親の許可だっt」
京子『時間限定でお母さんに外出許可もらった ケホッ』
結衣「でも!」
京子『結衣に会いたい』
結衣「………ッ」
風邪を直して、来週の土日に行こう、そう言おうとした。
けれど、私はそれ以上、京子を諌める言葉を言えなかった。
118 = 1 :
結衣「……腕によりをかけて、お弁当作っていくから」
京子『うん』
結衣「ちゃんと厚着、するんだぞ?」
京子『お母さんにも言われた』
結衣「私、京子に会って、伝えたいことがあるんだ」
京子『私も』
結衣「体、大事にするんだぞ」
京子『うん』
結衣「また、明日な」
京子『また明日ね、結衣』
結衣「おやすみ」
京子『おやすみ』
結衣「………」ピッ
119 = 1 :
あいつも無茶をするやつだ、止めようとする親を無理やりに説得したのだろう。
一応動ける程度には回復したようだけど、消耗した体力は戻っていないはずだ。
結衣「冷蔵庫にある食材で、ちゃんとお料理できるかな」ガサゴソ
旬や彩りを考えた上に、さらに消化によくて滋養にいいものを作らないといけない。
正直、かなり難度が高いが京子のためなら頑張れる。
結衣「レシピ考えて、下ごしらえを急がなきゃ」パタパタ
結衣「暖いお茶は何がいいかな?」ウーン
結衣「薄味にして、魚類の出汁をしっかり取ろうか」
お弁当の用意は夜遅くまでかかったけれど、それを負担に思うことはなかった。
121 = 1 :
~公園~
結衣「こうやって会うのは何だか久しぶりだね、京子」
京子「そうだね、結衣」
結衣「約束通り、一緒に紅葉狩りにいこうか」
京子「うん」
心配していたよりも京子の顔色は良く、私はほっと胸をなでおろす。
いつものように元気いっぱいではないが、穏やかな表情を浮かべている。
結衣「お弁当、頑張ってみたから」
京子「期待してる」
自然と、京子と手を繋ぐ。
微かな震えが一瞬だけ伝わったが、京子もすぐに握り返してくれた。
122 = 24 :
ええぞ
123 = 1 :
京子「綺麗な紅葉だなぁー」
結衣「そうだな」
山の木々は見事に紅葉していて、赤と黄色のグラデーションが美しい。
楓・ケヤキ・ソメイヨシノ・楠・ナナカマド・イチョウ、様々な木々の紅葉が風に揺れる。
公園は様々な種類の木を植えているだけあって、幻想的な風景だった。
結衣「京子、紅葉の正体を知ってる?」
せっかく紅葉狩りをしているのだから、この前に仕入れた豆知識を披露してみよう。
京子「気温の影響……とか?」
結衣「一言で言えば、そうなるかな」
美しく紅葉するための欠かせない条件、それは昼と夜の気温差だ。
京都が紅葉スポットで有名なのも、朝晩の冷え込みが激しく、気温差が大きいからだ。
けれども、紅葉の原因自体は、正確には気温の変化を受けた木それ自体にある。
124 = 1 :
結衣「冬が近づくと、木は葉を捨てようとして、葉の付け根に仕切りを作る」
結衣「成長する余裕もないから、葉っぱにあげる栄養を打ち切るってわけ」
結衣「やがて葉っぱの緑の色素は分解されて」
結衣「葉に残った糖分が化学変化して赤色の色素に変わる」
結衣「それが紅葉のメカニズム」
ちなみにイチョウは、糖分が葉に残らないから、元々あった黄色の色素が出てくるのだとか。
京子「色素分解?化学変化?」
少し分かりにくかったかもしれない。
結衣「化学的な説明は難しいから省くと、冬を乗り越えようとして、綺麗に紅葉するってこと」
京子「へぇー、良く出来てるんだな」
どうやら理解できてないな、京子は。
126 = 1 :
結衣「ここでお弁当を食べようか」
丁度、紅葉を見ることができて、座ることもできるいい場所だ。
京子「おー」ケホッ
結衣「はい、お弁当」コトン
京子「おお、何か豪華だ、いただきます」
結衣「どうぞ」
お弁当は考えた結果、二段にして色々なおかずを詰め込んだ。
手軽に食べられるサンドイッチも考えたが、
いささか栄養価も悪く、見栄えがしないと感じてやめた。
京子「」モグモグ
京子「美味しい!」パァァ
どうやら京子の口にもあったみたいだ。
127 = 1 :
結衣「消化が良くて滋養にいいものを選んで作ったら、精進料理みたいになっちゃったけど」
京子「今の私にも、すごく食べやすいよ」ニコニコ
結衣「頑張った甲斐があった」ホッ
京子「」モグモグ
京子「……結衣も一緒に食べよう?」
結衣「ああ、うん」
何だか胸がいっぱいで、食べ物も喉を通らない。
ただ、楽しそうにする京子を、ずっと見つめていたかった。
京子「ひょっとして、楽しくない……?」
結衣「違うよ」
反応が薄かったせいか、京子を不安にさせてしまった。
確かに食欲はないが、気分はとても爽やかで、何だか楽しいのだ。
128 = 107 :
しえん
129 :
頭の良さでは
京子>>>>結衣
って感じだと思ってた
130 = 1 :
結衣「ただ、京子が美味しそうに食べてくれるだけで、とても幸せだなって」ニコッ
京子「なっ、何言ってんの!」
結衣「興奮したら駄目、ほら、口元にご飯粒が飛んだ」
京子「えっ、どこ」アセアセ
結衣「取ってあげる」ヒョイ、パクッ
京子「あっああうぅ……」カァ///
京子の頬が赤く染まって綺麗だ、そんな京子の表情もたくさん知りたい。
京子「何も、何も食べることないじゃんかぁー!」ウガー
結衣「京子の頬に触れていただけで、米粒もほんのりと甘くなるね」フフ
京子「うぅぅ、何か結衣が積極的になってて調子狂う……」
131 = 24 :
くっさー
だがそれがいい
132 = 1 :
結衣「恥じらう京子も可愛い」
京子「からかうのは禁止ッ」ビシッ
結衣「はいはい」
つい楽しくてやりすぎたようで、やはり怒られてしまった。
これも私の本心ではあるのだけれど。
京子「ご馳走様」カタン
量を抑えて作ったからか、綺麗に完食してくれた。
京子の体調が戻ってきていることを感じて、嬉しくなる。
結衣「はい、食後の番茶」
京子「ありがと」
結衣「京子、飲みながらでいいから、聞いて欲しいことがある」
京子「なに?」
結衣「京子が休んでる間に、ちなつちゃんの告白を断った」
京子「」ブフォッ
133 = 14 :
しえん
134 = 1 :
結衣「大丈夫?」
京子「」ゴホッゴホ
結衣「ハンカチ使って」ハイ
京子「きっ、聞いてないぞっ」
結衣「今初めて言ったから」
まさかそんなに驚くとは思わなかった。
京子は目を見開いて、ものすごい勢いで私に食ってかかる。
結衣「吹っ切れたから、全てを京子に打ち明けると」
結衣「一昨日のお昼休みに、ちなつちゃんに手紙で呼び出されてた」
京子「はっ?」
結衣「そこで告白を受けたけど、その時は返事を保留させてもらった」
京子「えっ、えっ」ワタワタ
135 = 1 :
結衣「京子が休んだ昨日、ちなつちゃんの告白を断らせてもらった」
京子「えっ、ええぇぇぇぇぇぇ」
京子の表情が、目まぐるしく変わって面白い。
赤くなったり、青くなったり、まるで信号機のようだ。
病人をからかうのは良くないと分かっているのに、つい止められなかった。
結衣「順を追って、説明しようか?」
京子「うん」ポケー
京子の思考回路はショート寸前のようで、放心している。
結衣「まず、京子が寝ている私にキスをしたことが発覚した」
京子「ぐっ、しましたよ、ええ、しましたとも!」フン
拗ねるのか開き直るのか、どちらかにして欲しい。
137 = 24 :
捕手谷繁
138 = 1 :
結衣「その三日後に、痺れを切らした京子が私に告白する」
京子「いや、あれはその」アタフタ
結衣「焦らなくても」クスクス
京子「うっさい!」プイ
ついいじりたくなって、話が遅々として進まない。
それもこれも、私を魅了する京子が悪いのだ。
結衣「……私は京子との関係が変化することが怖くて、京子の告白から逃げた」
京子「………」
結衣「その翌日に、ちなつちゃんに告白されて」
京子「……うん」
結衣「その時は、返事を待たせてもらった」
139 = 43 :
素晴らしいな
支援
140 = 1 :
京子「こ、このすけこまし!」バシッ
結衣「すけこましって……」ハァ
これで京子も、意外と嫉妬深いようだ。
もっとも、独占欲は私の方が強いような気がするけれど。
結衣「その後に京子が熱出して帰ったから、お見舞いに行って眠るまで傍にいた」
京子「うん、そういえば、結衣が家に来たのって久しぶりだったよね」エヘヘ
結衣「弱った京子を見るのも、久しぶりだったかな」ニヤニヤ
京子「うぅぅ……結衣のくせにぃ……」カァァ///
どんどん顔が赤くなって、真っ赤な紅葉みたいで可愛い。
結衣「それで京子が学校を休んだ昨日だけど、ちなつちゃんの告白を断った」
京子「…………うん」
141 = 1 :
結衣「ちなつちゃんの名誉のためにも、このことは誰にも話しちゃダメだよ」
京子「わかってる」
結衣「そっか……」
京子には事情が事情だから話したけれど、きっとちなつちゃんも笑って許してくれる気がする。
仕方ないですね、結衣先輩、そう言って。
京子「………」
京子「しかし……」
京子「もう一生分驚いた気がする」ハァ
京子「興奮して汗かいて体が熱い」パタパタ
結衣「そんなわけだから、分かっているだろうけど、京子にも告白の返事をするよ」
京子「今なのっ!?」
思い立ったが吉日、である。
142 = 107 :
キ・・・
143 = 1 :
結衣「京子」
京子「はっ、はい!」
結衣「私にとって京子との関係は、幼少から変わりないもので」
結衣「だから私という存在を木の葉だとすれば、その色は春夏秋冬、ずっと緑のままだった」
隣に京子がいるのは私の日常で、当たり前のことだった。
その関係性が崩れるなんて、天地がひっくり返ったとしてもありえない、
そんなことを本気で思っていた。
結衣「けれど、木から切り離されて、葉がその身を赤く染めるように、」
結衣「京子から離れて、私の心も色づいた」
一度離れたほうが、より鮮明に見えるようになることもある。
私の中に知らずに育っていた想いは、こんなにも大きなものだった。
144 :
鳥肌がっ
145 :
くさいセリフだなww
146 = 43 :
キザな結衣ちゃんかっこかわいいよ
147 = 24 :
ギップルさんもこれには苦笑い
148 = 1 :
結衣「紅葉はやがて落ちて朽ちるけれど」
結衣「私のこの想いは、尽きることなく溢れ出してくるんだ」
吹き上げる風が、清涼な空気とともに、紅葉と私の想いを運ぶ。
結衣「好きだ、京子」
京子の少し凍てついた手をそっと握る。
こんなにも伝えたいことがあるのに、上手く伝えきれない。
こんなにも近くで、私の心は京子への想いを叫んでいるのに、三分の一も伝えられない。
それでも溢れ出した私の想いは、京子に届いただろうか。
149 = 33 :
ゆ、結衣さん......
150 = 1 :
京子「結衣……結衣……」ポロッ
京子「うん、私もずっと結衣が好きだった」ポロポロ
京子の目から、大粒の涙がこぼれ落ちる。
ぽたぽたと地面に落ちる雫は、とても綺麗だった。
みんなの評価 : ★★★
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