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    元スレ京子「眠る結衣に口付けを」

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    みんなの評価 : ★★★
    タグ : - ゆるゆり + - 結京 + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    1 :

    ~ごらく部~

    結衣「………」

    今日は珍しく、ごらく部に私一人だ。
    京子は担任に用事が、あかり達はクラスの用事があるらしい。

    結衣「もうすっかり秋だな……」

    初秋をとうに迎えているだけあって、爽やかな空気が心地よい。
    忙しく鳴く蝉の声も聞こえなくなり、生き物達は冬に備えている頃だろう。

    結衣「………」グテー

    とりあえず寝転がってみる。
    夏から秋への移り変わりは、物寂しさを感じさせるとともに、賑やかさを感じさせる。
    虫は伴侶を求めて鳴き、花は咲き、木々は果実を生じる。
    様々な側面を持つ秋という季節は、飽きることない楽しみを提供してくれる。

    2 = 1 :

    結衣「暇だ……」

    とはいえ、いくら秋が楽しみの多い季節といっても、私は女子中学生なのだ。
    欲望の枯れたご隠居のように、盆栽や座禅のような趣味で満足できるお年頃でもない。
    とりあえずは読書の秋とも言うし、積んであるファッション雑誌でも読み進めてみようか。

    結衣「………」ペラッ

    秋冬オシャレ特集という文字が一面に出てくる。
    そこからは、流行りを作り出そうとする出版社の企みが見え隠れする。

    結衣「………」ペラッ

    暇に任せて、ファッション雑誌をさらに読み進める。
    けれども、その内容は上手く頭には入ってこなくて。

    3 :

    キャンプ

    4 = 1 :

    結衣「………」ゴロン

    寝転がったまま雑誌を読みつつ、体制を仰向けに変える。
    秋物の服のコーディネートを一生懸命に考えるも、次の瞬間には忘却してしまう。

    結衣「………」パサッ

    急な眠気に襲われて、思わず雑誌を胸元に落としてしまった。
    困ったことに、拾って読み進める気も起こらない。
    落とした雑誌はそのままに、あくびを噛み殺しながら体を伸ばす。

    結衣「………」ファァ

    今日はいい天気だから、皆が来るまで昼寝でもしようか。
    その思考に従うように、自然と目蓋が閉じた。

    結衣「………」zzz

    5 = 1 :

    京子「結衣……寝てるの?」

    ……京子の声がする。
    緩やかな目覚めを迎えたけれど、私の体は依然として倦怠感に包まれたままで。
    返事をするどころか、目蓋すらもしばらく開けられそうにない。

    京子「結衣~、暇だぞー」

    いつもよりも控えめな声量で、京子が私を起こそうとしている。
    甘えるような声音で、私の覚醒を促す。

    京子「起きないや……」

    一応、起きている。
    起きてはいるものの、この状態でそれを伝えることはできず、少し歯痒い。
    京子の手らしきものが、優しく私の髪に触れる。

    6 :

    今日は地の分多いね
    支援

    7 = 1 :

    京子「結衣……寝てるよね……」

    ふわりと京子の匂いが鼻腔を擽る。
    京子の髪らしき、サラサラとした繊維質が頬にかかってくすぐったい。
    こんなに近づいて、京子はいたずらでも企んでいるのだろうか。

    京子「結衣……」

    切なそうに、京子は私の名前を呼ぶ。
    まるで、私が遠くにいて会えないかのように。

    京子「結衣…」

    京子の様子が、何やらおかしい。
    早く起きて、京子の異変を突き止めて解決してあげないと。
    そう思うのに、頭は重くて体はピクリとも動かない。

    京子「ごめんね……」

    いきなりの謝罪に驚いた私だが、それを気にする気持ちも、すぐに吹っ飛ぶことになる。

    8 = 1 :


    クチュ

    ふと唇に、柔らかな感触を感じた。
    京子の息遣いを近くに感じて、思わぬ衝撃に頭がクリアになる。
    時間にして数秒くらいだろうか、それでも強い驚きでとても長く感じられた。

    京子「……何してるんだろ、私」

    京子は軽いため息と共に離れていく。
    私の胸の中では幾多の感情が入り乱れて、整理が追いつかない。

    京子「生徒会にでも行ってみようかな……」

    その呟きと共に、京子の気配が離れて、足音が遠ざかる。

    パタン

    障子の閉まる音を最後に、場に静寂が戻った。

    9 = 1 :

    結衣「………」

    ようやく、自由になった体を起こしてみる。
    周りを見回しても、京子は既にこの場にいなくて、私は一人だった。

    結衣「……京子」

    さっきの唇に触れた感触。
    あれはきっと、キスだった。

    そっと指で触った唇は、少し熱を帯びていた。

    10 = 6 :

    早々にキマシ

    11 = 1 :

    ちなつ「遅れてしまってすみません」バタバタ

    あかり「やっと終わったよぉ」フゥ

    しばらくして、あかりとちなつちゃんが到着した。
    クラスの用事で少し疲れている様子だ。

    あかり「あれ、結衣ちゃん、京子ちゃんは?」キョロキョロ

    結衣「京子なら、荷物はここにあるし、生徒会にでも行ってるんじゃないかな」

    京子自らが生徒会に行くと言っていたが、私はあえて言葉を濁した。
    実は起きていた、そのことを知られるわけにはいかない。

    ちなつ「そうですか、それはそうと結衣先輩!」

    ちなつ「今日は寒くなってきましたし、暖いほうじ茶でもどうですか?」ニコッ

    結衣「いいね、お煎餅もあるし、今日はほうじ茶を楽しもうか」

    どうやら、ちなつちゃんがほうじ茶を持ってきてくれたようだ。
    皆の私物を持ち寄った結果、茶器や茶葉の種類も随分と豊富になったものだ。

    12 = 1 :

    ちなつ「すぐに準備してきますね」

    結衣「私も手伝うよ」ガタッ

    ちなつちゃんにばかり任せるのはいささか忍びない。
    これでも、お茶もコーヒーも紅茶も、一応の淹れ方とコツは知っている。
    ひとまず、ヤカンに火をつけて、炭を入れて放置しておいたお水を沸騰させるとしよう。

    あかり「あかりはお皿とお煎餅の準備するね!」

    何だろう、あかりの行動に無性に癒される。
    あかりのお姉さんが猫可愛がりしているらしい理由も、何となく分かる。

    ちなつ「あかりちゃんって、何だか小動物みたい」

    あかり「えっと、それって褒められてる?」ムム

    ちなつ「可愛いってこと」シレッ

    あかり「そっかぁ」エヘヘ

    座敷わらし、イギリスで言えばブラウニーといったところだろうか。
    居るだけで場を和ませるというのは、一種の才能のようなものではなかろうか。

    13 = 1 :

    お茶の準備もできて、三人でまったりした空間を楽しむ。

    結衣「ほうじ茶、とっても美味しいよ」ニコッ

    ちなつ「そうですか?持ってきた甲斐がありました」エヘヘ

    あかり「美味しくて、体がぽかぽかするね」ニコニコ

    二人の暖かい笑顔を見ると、ざわついた私の心も落ち着いて。
    暖かいほうじ茶は、心を溶かすように私の体に染み渡る。

    結衣「お煎餅にも合っていて、いいね」

    ちなつ「何だか深まる秋を感じますね」

    お煎餅と組み合わせるお茶を変えただけなのに、まるで別物のように感じられる。

    あかり「食べ物も飲み物も美味しくって、太っちゃいそう」

    結衣「あかりはもう少しふっくらした方が、きっと可愛いよ」

    あかり「そっそうかな」テレテレ

    あかりもお年頃になって、体重が気に掛かるようだ。
    きっと、ちなつちゃんの影響もあってのことではないだろうか。

    14 :

    しえん

    15 :

    シエンタシエンタ

    16 = 1 :

    ちなつ「そんなことを聞いちゃうと、私も食欲を抑えられなくなりそうです」ハァ

    結衣「ちなつちゃんも、ダイエットのしすぎは体に悪いよ?」メッ

    結衣「ちなつちゃんはそのままで十分に魅力的なんだから」

    月並みな言葉だけれど、本当にそう思う。
    ちなつちゃんは、容姿や評価にこだわりがあって、自分自身に厳しいところがある。
    彼女からは、時には自滅してしまいそうな、そんな危うさを感じることがある。

    ちなつ「結衣先輩、ありがとうございます」パァァ

    あかり「うんうん、ちなつちゃんは可愛いよ」ニコニコ

    ちなつ「そう?ありがと、あかりちゃん」

    あかり「ううぅ、露骨に反応が違っていて悲しいよぉ」シクシク

    ちなつ「あっ、別にあかりちゃんを蔑ろにしてるわけじゃなくて」アセアセ

    結衣「二人とも相変わらず仲がいいね」クスッ

    少しリアリストなところのあるちなつちゃんと、あれで精神的に落ち着いているあかり。
    二人の相性はとても良くて、お似合いなコンビだと思う。

    18 = 1 :

    京子「皆さんお揃いのようで」スパーン

    京子「奥山に、紅葉踏み分け、鳴く鹿の?」

    結衣「声聞く時ぞ、秋は悲しき」

    京子「正解!」

    京子の登場によって、落ち着きを見せ始めていた私の心は、再び乱されてしまう。
    私の隣に平然と座る京子に、自然と全神経が集中する。

    ちなつ「猿丸大夫の詠んだ歌ですか」

    あかり「さるまるだゆう?」

    京子「昔の詩人の名前だよ」

    ちなつ「ひょっとして心当たりないの?あかりちゃん」

    20 :

    ちなつ「そんなことを聞いちゃうとわたしも性欲を抑えられなくなりそうです」ハァ

    21 = 1 :

    あかり「えっと、えへへ」

    あかりに百人一首は、少し早かったようだ。

    ちなつ「……今度一緒に勉強しましょうか」ハァ

    あかり「……はい」シュン

    ちなつちゃんに勉強を見てもらえるなら、あかりのテストもきっと大丈夫だろう。

    京子「せっかくの秋なんだし、ごらく部にも鹿おどしとか欲しいなぁ」

    ここは山もないから、鹿おどしなんて付けても無駄な雑音でしかないわけだが。
    それに近くに水源はないし、水道を使おうものなら、一発で部室の無断使用がバレかねない。

    京子「ところで、みんな美味しそうなもの食べてるね!」

    京子がお茶請けの煎餅に目を付けたようだ。

    ちなつ「京子先輩のお煎餅もありますよ、今用意してきますから少し待っていてください」

    22 = 1 :

    京子「わざわざすまんねぇ……ちなつちゃん……」

    ちなつ「別にいーですよ、おじいさん」ハァ

    あかり「二番煎じでよければ、すぐにお茶も入れられるよ、おじいさん!」

    京子「おお、では頼もうかのぉー、おばあさん」

    あかり「私がおばあさんなの!?」ガーン

    何だかんだで京子が小芝居を始める中、私はまったく話に絡めずにいた。
    何かを話さなければ、そう思うのだが、上手く舌が動かなくて声がでない。

    京子「ところで結衣さんや」

    京子が、喋らない私に話を振ってきた。

    京子「ぐっすり眠れたかの?」

    結衣「ああ、ってやっぱり途中で部室に来てたのか」

    鼓動が飛び跳ねて、冷や汗が背中を伝う。
    自然な返答が出来ただろうか。

    23 = 1 :

    京子「結衣があまりに気持ち良さそうに寝てて、起こせなくてさ」イヤー

    京子の表情はいつも通りで、キスのことなんて読み取れない。

    京子「ところで今日のお茶は随分と美味しいけど、誰が持ってきてくれたの?」

    結衣「ちなつちゃんだよ」

    京子「それはそれは、ちなつちゃんに感謝しないと」

    京子「ちなつちゃーん」バタバタ

    京子は慌ただしく席を立ち、ちなつちゃんに近づいていく。
    本当に、昔からは想像もつかないほどに、ちょこまかと落ち着きがない。

    ちなつ「なんですか、京子先輩、って危ないから抱きつくのやめてください!」

    あかり「あはは、京子ちゃんったら」

    相変わらず騒がしくて、微笑ましい光景だ。
    けれども、いつものように屈託なく笑うことはできなかった。

    24 :

    さるよけ

    25 = 1 :

    京子「もうこんな時間かぁ」

    既に空は暗く、星がちらほらと見られる状態だ。

    ちなつ「そろそろお開きにしましょうか」

    あかり「日が落ちるのも早くなって、損した気分」

    結衣「暗くなってから帰ると危ないから、仕方がない」

    普段なら日の入りの速さを残念に思うところだが、今日はそれにほっとした。

    ~下校~

    京子「二人ともじゃあなー」

    結衣「また明日」

    ちなつ「はい、失礼します」

    あかり「また明日会おうね~」

    分かれ道で、あかりとちなつちゃんと離れ離れになる。

    26 = 1 :

    結衣「………」

    自然と、京子と私、帰り道で二人きりになってしまった。
    どんな顔をすればいいのか分からなくて、胸の動悸が収まらない。

    京子「結衣、今日は一緒に帰るか!」ギュッ

    京子はそんな私の手を握り、ほほ笑みかけてくる。

    結衣「……ッ」バッ

    反射的に、京子に握られた手を振り払った。
    振り払ってしまった。

    京子「…………結衣?」

    いきなりの拒絶を示した私に、京子は呆然として、
    まるで魂が抜け落ちてしまったような、そんな表情をしている。
    今の私は一体どんな表情をしているのだろうか。

    27 = 14 :

    しえん

    28 = 6 :

    しえん

    29 = 24 :

    いいペースですね

    30 = 1 :

    結衣「ごめん、京子」

    言い訳の言葉が、ごまかしの言葉が、瞬時に頭を駆け巡ったけれど、
    私に言うことができたのは、たったそれだけの言葉だった。

    京子「そっか」

    傷ついた自身の心を隠すように、京子はそっと笑った。

    京子「今日は結衣の家に泊まりの予定だったけど、帰る!」

    京子「また明日なっ」

    振り返ることなく走り去る京子の姿が、どこか寂しく見えて。
    その後ろ姿が、暗闇に溶け込んで見えなくなるまで、立ち尽くしたまま見送った。

    31 = 1 :

    ~結衣のマンション~

    結衣「………」ガチャン

    重い足を引きずって、ようやくマンションに帰宅した。

    結衣「………」

    体も心も、底なしの沼に沈んでしまったように動かない。
    何もしたくない、何も考えたくない。

    結衣「はぁ……」バタッ

    今日もお風呂に入って、ご飯を作って、洗濯物を回収して、ゴミの確認をして……。
    やるべきことがあるのに、体が、心が、それについてこない。

    結衣「お布団……」

    まだ玄関なのに、このままではここで眠ってしまいそうだ。
    無理やりに気力を集めて、動かない体に鞭を打ち、寝室に行き布団を敷く。

    32 = 19 :

    素晴らしい

    34 = 24 :

    ええな

    35 = 1 :

    結衣「………」ボスッ

    重力に負けて、脱力した私はあっさりと布団に倒れ込む。
    ふと、糸の切れたマリオネットのようだなと自虐的なことを考える。

    結衣「疲れた……」

    今日は京子のスキンシップに、過剰な反応をしてしまった。
    始まりは京子のキス、らしきものからだ。

    私と京子の関係は深い。
    幼少の頃から何をするにも一緒で、彼女はよく私の背中についてきたものだった。

    当時の京子は、今からは想像できないほどに、泣き虫で引っ込み思案な子で。
    私は、そんな彼女が笑っている姿を見るのが大好きで、よく連れ回して遊んだ。

    そんな京子も元気な子に成長したけれど、私たちの関係はさほど変化しなかった。
    京子は垢抜けて社交的に、快活になって、成績も優秀になった。
    私は男らしさが少し抜けて、ファッションにも興味を持つようになった。
    けれども、私たちの半ば依存的な関係は崩れやしなかった。

    ……少なくとも今日までは。

    37 = 1 :


    このまま、私たちの仲は終わるのだろうか。
    このまま、気まずいままに疎遠になるのは嫌だ。

    では、私は京子に何を望むのだろう。
    京子にどうして欲しいのか。
    私たちのあるべき関係とは、何だろう。

    結衣「………」ギュゥ

    静かな夜は嫌いだ。不安が騒いで、眠れなくなるから。
    泣いてしまえば楽だけど、泣いてもどうせ喉が渇くだけだろう。

    結衣「京子……」

    答えは出ないまま、眠りについた。

    39 = 1 :


    あれから三日がたった。

    私たちはいつものように一緒に登校して、一緒に放課後をだらだらと過ごしている。
    内に抱えた悩みを悟られないように、ボロを出さないように、最善の注意を払ったつもりだ。
    そして、京子の行動をつぶさに分析して、その心情を理解しようともした。

    その結果、分かったことがある。
    京子はいつも通りに見えて、あれ以来、私の体には指一本たりとも触れていない。
    このことは、あのキスは本物だったのだと、信憑性を高めさせた。

    今のところ京子の異変に気がついているのは私とあかりとちなつちゃんの三人くらいだろう。
    しかし、この状況が続くなら、周囲にも私たちの関係が怪しまれてしまうだろう。

    何時までも、宙ぶらりんのままではいられない。
    関係性の変化を恐れて、けれどその一方で、変化が避けられるものではないことを、
    私は理解していた。

    今日も、憂鬱な朝が始まる。

    40 = 1 :

    ~登校~

    あかり「最近の京子ちゃんは大人しいね」

    ちなつ「確かに抱きついてくる回数が減ったような気がするかも」

    ちなつ「まぁ、髪や服装の乱れを直さなくて済むし、いいことじゃないかな」

    ちなつちゃんはきつい言葉を口にするけれど、
    その実、調子の違う京子を心配しているのだろう。
    ちなつちゃんの口調は拗ねた子供のそれで、付き合いを深めた私にはその本心が分かる。

    京子「えー、そっかなぁ」

    京子「それじゃ、遠慮なく、ちなつちゃーん」ガバッ

    ちなつ「何してるんですか、京子先輩」モゥ

    言われて思い出したように、ちなつちゃんに抱きつく京子。
    そんな京子に、呆れた顔のちなつちゃん。
    笑顔を絶やさないあかり。

    41 = 14 :

    しえん

    42 = 1 :


    まるで、これではまるで、
    いつもの日常を皆で演じているようだ、そんな馬鹿げたことを考えてしまう。

    結衣「遅刻するぞ、京子」

    今までのように、私も暴走する京子を止めにかかる。

    結衣「ちなつちゃんから離れて」ホラ

    京子「はーい」

    このいつも通りの登校風景は、けれども今日まで限りのものだった。

    44 = 1 :

    ~昼休み~

    京子「結衣」

    部室へと先を行く私を、真剣な表情をした京子が呼び止める。

    京子「結衣、話したいことがあるから、今から裏門まで一緒に来てくれる?」

    結衣「……わかった」

    とうとうこの時が来たか、そう思った。

    結衣「………」カタカタ

    何故か体の震えが止まらない、このまま何かが壊れてしまいそうで。
    京子の話はきっと今を変えてしまう類のものだ。

    結衣「大丈夫……、きっと大丈夫」ボソッ

    震える手をぎゅっと強く握り締めて、そっと自分に言い聞かせた。
    大丈夫だと簡単に言わないで、私はそんなに強くはない、そんな心の叫びを底に沈めて。

    45 = 1 :

    京子「………」

    私の前を無言で行く京子、その心が読めなくて怖い。
    食堂に駆ける人やお弁当を片手に歩く人を尻目に、私たちは人気のない裏門へと足を運ぶ。

    しばらくして行き止まりになり、裏門の隣にある桜の木の下に着いた。
    春には花を風に散らしていた桜も、今は紅葉を始め、冬を迎える準備をしている。
    京子が足を止めて、私の方へと向き直る。

    京子「ねぇ結衣」

    結衣「何、京子」

    京子「あの時、起きてたの?」

    京子の突然の問いかけに、思わず体が硬直する。
    そして、それは言葉よりも雄弁に私の答えを示していて。

    京子「やっぱり、起きていたんだ」

    京子に、悟られてしまった。

    47 = 24 :

    ドキドキ

    48 = 1 :

    京子「あれから急に結衣の態度がおかしくなったから、何かに気づかれたとは思ってた」

    納得したという顔をする京子に、嫌な予感が止まらない。

    結衣「……あれは気の迷い?」

    もはや、ほぼ確信に至っているが、確認のために聞いた。

    京子「もうわかってるくせに」クスッ

    京子「私は、結衣が好きなんだよ」

    柔らかな風が、沈黙を保つ私たちの間を通り抜ける。
    初めての同性からの告白、それは幼馴染からだった。


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