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元スレ桐乃「もうすぐバレンタインかぁ…」

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従わないと、桐乃は鬼のように怒る。
それはもう凄い勢いで。
まったく、理不尽極まりない話だ。
『良いのよ、”今日は大丈夫”だから』
「ん、どうしてだよ?」
『・・で、私に付き合うの、付き合わないの、どっちかしら?』
「何なんだよ・・ったく、分かったよ。付き合えば良いんだろ。ただし、ちゃんと説明はしろよな」
『ふっ、よろしい。従順な下僕は好きよ』
「で、どこに行けば良いんだ・・っていうか、おまえ今どこ居るんだよ」
『あなたの後ろよ』
つんっ。
「うおおわっ!!?」
その言葉と同時に背中を指で突かれた。
今度こそ、心臓が口から飛び出たかと思ったぞおい・・気配も存在感もありゃしねぇ。
ゲンガーかおまえは。
「何よ、幽霊でも見たような驚き方をして。貴方という男は本当に不躾極まりないわね」
「メリーさんみたいな登場の仕方をされたら誰だってビビるっつーの」
相変わらず、その出で立ちもいつもと同じ「闇に染まったメリーさん」みたいなゴスロリファッションだ。
こんな静かな街中でこの姿を見ると、違和感を覚えずにはいられないな・・正直浮いてるぞ、その格好。
こんな奇抜な格好が自然体になる状況なんてこの地球上のどこを探しても稀だろう。
「その目は物凄く失礼なことを考えている目よね」
「そ、そんなことねぇよ・・で、何の用なんだ」
というか、どうしてここに居ることが分かったんだ。
そんな俺の疑問を知ってか知らずか、黒猫は思わせぶりな笑みを浮かべていた。
いつもの人を蔑むような、妖艶な目つきで。
「・・そうね、ただの暇潰しよ」
「ひ、暇潰しぃ?」
「尻尾を振って喜ぶが良いわ、私のような高貴なる存在と時を共にできることをね」
いきなり何を言い出すんだこいつは。
こんな日に男一人捕まえておいて、堂々と暇潰しなどと言いやがる。
いや・・まぁ、ある意味いつも通りの調子なんだけどよ。
「ところで、人間界の男どもが総じて浮かれている日でも、あなたは相変わらず浮かない顔をしているのね」
「人間界の男どもが浮かれてる日・・バレンタインのことか?」
「そう、セント・バレンタインズデー。
私のような存在から見れば、疎ましいことこの上ない制度だけれど」
「はぁ・・」
じゃあどうして自分が疎ましいと思うこんな日に俺を呼び出したんだよ、このお嬢さんは。
いつも通りではあるが、だからこそこいつが何を考えているのかが読めない。
いや、一生読むことはできないだろうな、そして、読みたくはない。
読むことができるということはコイツと同等の世界観を持ってしまったということと同義だからだ。
「とりあえず、近場の喫茶店にでも入るとしましょう。私、こう見えて疲労困憊なのよ」
「何でおまえが決め・・、」
「ほら、早くなさい。私は喉が渇いたの。それくらい察知しなさいな」
「・・・」
・・いつも通りだ。
俺は財布の中身を確認しつつ、高飛車な黒猫嬢の後を追った。
-
「ふぅ・・久々に長歩きをしたから、疲れたわ」
俺たち二人が入ったのは、緑と白の色遣いが目立つ某大手コーヒーショップだ。
こういう類の店には疎い俺だが、黒猫が入りたいと言うのだから従うしかない。
甚だ遺憾ではあるが、知らないうちに黒猫従属体質になってしまっていたらしい。甚だ遺憾ではあるが。
「で、俺が家に帰っちゃいけない理由ってのを教えてもらおうか」
「なっ・・そ、そんなこと誰が言ったのかしら。勝手な憶測で事を進めないで欲しいわね」
「さすがの俺でも分かるっての、それくらいはな」
二月の半ばというまだ肌寒い季節だというのに、黒猫は冷や汗を垂らしていたる。
その姿は、お互いの前に置かれたアイスコーヒーのグラスに似ている。
中身はキンキンに冷えているくせにその肌には水滴を垂らす。みたいな。
「だ、だから言ったでしょう。私の暇潰しに付き合って、と」
「あぁ、そうかよ」
やっぱり、何かを隠してやがるなコイツ。
そうじゃなきゃ、わざわざ学校が終わってすぐにこんなとこまで出向く必要がない。
ただでさえ女王様気質の黒猫だ。何か特別なワケがあるに違いないんだが・・。
「っていうか今日はバレンタインだろ。おまえだって好きな男の一人や二人居るんじゃないのか。
放課後になっても大好きなあの人を待ち続け、部活が終わった頃にようやく決心して渡しに行く・・みたいな、」
「ふん、私が人間の男に媚び諂うと思っているのかしら」
「媚びへっ・・あのなぁ、そういうモンじゃないだろ。
良いか。バレンタインっつーのはな、日頃伝えられない想いを好きな男に伝えられる特別な日だぞ」
「ふぅん」
「この日じゃなきゃダメなんだ、だからこそ世の男女があれだけ意識してるんだぞ。
外に出てもウチでテレビを点けてもラジオを聞いてもネットをしても、どこもかしこもバレンタインバレンタイン・・、」
「だから?」
「だから?・・って、そんな淡白な」
「さっきも言ったでしょう、バレンタインなんて低俗な制度に私が乗っかるとでも思うのかしら。
巷でよく言われる『お菓子会社の陰謀』とか『メディアの勝手な流行作り』とかいう噂も聞くに堪えないわね」
「別に好きな男にだけあげなきゃいけないってわけじゃねぇ、日頃お世話になってる奴に贈り物をしても良いんだ」
「・・どちらにせよ、同じことよ」
言葉を唾のように吐き、足を組み直した黒猫は静かにストローに口をつける。
いつも通りといったが、いつも以上に接しづらいなおい・・。
麻奈実からの贈り物で少し浮かれていた心が冷めてきたぜ。
少しの間も幸福な気分に浸らせてくれないのかよ、人生ってもんは。
こういうめぐり合わせなのか?
「・・あなた、ポケットに突っ込まれたそれは何?」
そして、件の麻奈実からのプレゼントをピンポイントで指摘された。
丁度思っていたことや物事の核心を突かれると、途端に口ごもる俺である。
「あ、いや。これは」
「怪しいわね・・まさか、」
「・・バレンタインのだよ、悪いか?」
俺がネクタイの入った箱をちらりと見せながらそう言うと、黒猫は何か唸るような眼差しを向けた後、
何かを我慢するように再びコーヒーでその喉を潤し、一呼吸入れようとする。
少し慌てていた先程とは違い、今回は無理やり落ち着かせようとしているように見えた。
「なるほど・・あなたにプレゼントだなんて物好きな女も居るものね」
「あぁ、そうだな。そんな物好きからのプレゼントでも俺は嬉しいんだよ、ほっとけ」
「・・そう」
黒猫の表情が悲しいような、辛いような、そんな表情に歪む。
あまり・・いや、今までに見たことのない表情だ。
どうしてそんな顔つきになったのかまでは分からないが。
「じゃあ、兄さんはもう満足というわけかしら」
「ん、どういう意味だよ」
「バレンタインに女の子からプレゼントを貰い、満足したのかということよ」
「・・まぁ、一つも貰えないと思ってたからな、満足といえば満足だ。
まだ貰えるってんなら貰いたいが・・もう良いさ、俺は高望みをしないんでね」
「そう・・」
また、おまえはそういう顔をする・・。
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