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    元スレ狩人「スライムの巣に落ちた時の話」

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    101 :

    俺はこんな洞窟から出たいとは思わないな…

    102 :

    ~64日目~


    アカは、体温が高いスライムだ。

    夜、洞窟内の気温が下がり私が寒がっていると、何時の間にか傍にいてくれる。

    正直、助かっている。



    今日も、眼が覚めるとアカが傍にいてくれた。

    いつもと同じで、暖かい。

    いつもと違って、声が聞こえる。


    「……ママ」


    少し驚いたけど、身体を動かすのはやめておく。

    アカは、他のスライム達に比べて臆病だ。

    特に、私からの視線には強く反応する。

    隠れてしまうのだ。



    こっそりと首を動かして、後ろにいるアカの様子を伺ってみる。

    私の背中に寄り添っているのが見える。

    アカの変体は、この短期間で完了していた。

    クロのように、完全にヒトの形になっている。

    ただ、クロと違うのは……。



    「何となく、私に似ている気がするなあ」



    顔を洗う時に、水面に移る私の顔。

    それに似ている気がする。

    103 = 102 :

    先ほどの声は、アカの物だろうか。

    だとしたら、もう喋れるという事になる。

    少し、会話してみようか。

    脱出の為、というのもあるけど。

    単純にアカと意思疎通してみたいという気持ちのほうが強かった。

    前を向いたまま、後ろのアカに話しかける。



    狩人「アカ、私の言葉がわかる?」

    アカ「……うん」

    狩人「もう、喋れるようになったんだね、クロと比べて、ずいぶん早い気がするけど」

    アカ「……うん」

    狩人「アカの顔、見てもいい?」

    アカ「……いや」

    狩人「そっか、残念」

    アカ「……」

    狩人「……」

    アカ「……ママは、おこるかも」

    狩人「どうして?」

    アカ「……アカは、ママ以外のヒトをしらない」

    狩人「うん」

    アカ「……クロから、ヒトの姿になれって言われても、わからない」

    アカ「……だから」



    ヒトの外見に関する情報が少ないから、私を模した形になったってことかな。

    納得できる話だ。



    けど、それじゃあクロの外見は、何なのだろう。

    私とは似ていない。

    私の夢に出てきた幼馴染を模した……という訳でもない。

    あれは、誰の外見なのだろう。

    104 = 102 :

    アカ「……ママ、やっぱりおこってる?」

    狩人「私の外見を模したこと?そんな事では怒らないよ」

    アカ「……そう」

    アカ「……よかった」

    狩人「じゃ、見ていい?」

    アカ「……やだ」

    狩人「残念」



    まあ、アカの姿をちゃんと見る機会は、そのうち生まれてくるだろう。

    この洞窟は狭く、時間はまだたくさん有るのだから。

    105 = 102 :

    アカ「……ママは」

    狩人「うん」

    アカ「……お外に、出たいの?」

    狩人「……そうだね、出たいよ」

    狩人「ずっと、そう思ってる」

    アカ「……アカ達の事が、いや?」

    狩人「違うよ、そうじゃない、そうじゃないんだ」

    狩人「私はね、アカ、約束をしたんだ、あるヒトと」

    狩人「けど、洞窟に落ちちゃったことで、その約束を破ってしまった」

    狩人「ずっと、破り続けてる」

    狩人「それが、嫌なんだよ」

    アカ「……」

    狩人「アカ?」

    アカ「……アカは、ママと離れたくない」



    その言葉に反して、暖かい感触が背中から離れた。

    ううん、話の仕方を間違えちゃったのかな。

    こんな時、幼馴染だったらどうするんだろう。

    どうしたら、いいんだろう。

    106 = 102 :

    ~同日~

    ~夜~



    クロ「お母さん、アカから聞きましたよ、まだ外に出たがっているのですか」

    狩人「そりゃあ、出たいよ」

    クロ「もう、仕方のないお母さんですね……仕方ありません」

    狩人「手伝ってくれるの?」

    クロ「はい、勿論です、お母さん」



    クロは、機嫌良くそう答えた。

    良かった、問題が一気に解決した。

    もしかしたら前の時は機嫌が悪くてあんな返答をしたのかもしれない。

    けど、クロは普段はとても理知的だし、一族の中で一番かしこいって話だ。

    きっと、私の為に考えを変えてくれたんだな。

    ありがとう、クロ。

    107 = 102 :

    クロ「ヒトである以上、その欲求があるのは当然のことです」

    クロ「私が生誕してからずっとお母さんを観察してきましたが、一度もその行為をしたことはありませんでした」

    クロ「きっと、私達を育てるのに気をとられて、自分の欲求は後回しにされていたのですね」

    クロ「尊い」

    クロ「けど、大丈夫、これからは私がいます」

    クロ「そりゃあ私はスライムですから、最初はちょっと失敗とかするかもしれませんが」

    クロ「時間は沢山あります、最終的にはお母さんの満足行く結果を導く出せると保障します」

    狩人「……何の話をしてるの?」

    クロ「性的欲求の話ですよね?」

    狩人「え?」

    クロ「外に出て相手を探さなくても、私達で対処できますよ、それくらい」

    クロ「私以外の姉妹も、決してお母さんの性的欲求を拒む事はありません」

    クロ「体液を摂取する事で性別や種族を無視して子を作ることが出来ます」

    クロ「きっと、お母さんを満足させてあげられますよ」

    狩人「……」

    クロ「さあ、服を脱ぎましょうね、お母さん」



    クロが、私の身体に纏わりついてくる。

    掴んで押しのけようとしても、軟体であるが故にすり抜けられる。

    ……あれ、これ、洞窟に落ちて以降で一番のピンチなんじゃないかな。

    108 = 102 :

    クロの冷たい手が私の身体に触れる。

    肌の上を軟体の何かが這うような感触。

    まるで複数の指で触られているかのような。



    「クロ、止めて」

    「遠慮しなくても大丈夫です、怖くないですから、痛くしませんから」



    うん、聞こえていないなコレ。

    私はそのまま押し倒された。

    グチュリ、と私の上にクロの身体が乗って来る。



    手足は既に拘束されており、逃げられそうにない。

    仮に手が使えたとしても……悪意が感じられないクロを傷つけるのは躊躇しただろうけど。



    半ば諦めていた私の視界を、青い何かが横切る。

    それと同時に、ザプンっと音がしてクロの上半身が消し飛んだ。

    109 = 102 :

    私を拘束していたクロの身体が、ベチョリと崩れる。

    何とか動けるようになった。

    そんな私を見下ろし、手を差し伸べてくる青い人影。



    「母さま、だいじょうぶ?」



    アオだ。

    ヒトの形へと変体を遂げたアオが、助けてくれたのだ。



    「アオ、どういうつもりですか、お母さんの性的欲求解消を妨害するなんて」

    「母さまは嫌がってた、ボクは母さまの言葉を信じただけ」

    「嫌よ嫌よも好きのうちという言葉があるのです、照れによる拒絶を本気にしてどうするのです」

    「なにそれ、意味わかんない」



    吹き飛ばされたクロの上半身と、私の上から零れ落ちた残りの粘液が合流する。

    何事も無かったかのように、クロは復活を果たした。

    110 = 102 :

    「これだからお子様は始末に終えません、判らないなら下がっていなさい、これは系譜最先端である私からの命令です」

    「ボクの方がお姉ちゃんだけど」

    「一番最初の生誕しただけでしょう、後に生まれる個体の方が優秀であるのは自明の理」

    「ボクの方が母さまと良く遊んだ」

    「私がヒトの形になる為に自己改造していた隙をついて遊んでいただけでしょう!誰のお陰でその形になれたと思って!?」

    「母さまは、ボクが捕った魚を見ていつもほめてくれる」

    「ガボガボガボガボガボガボ!」


    喧々囂々。

    どうやら、スライム達も一枚岩ではないらしい。

    アオは、クロよりも私を尊重してくれているようだ。



    この日、私はクロとの子を作らずに済んだ。

    けど、クロは諦めてないように思える。

    ちょっと、怖いなあ。

    112 = 102 :

    ~66日目~



    アオの身体は、やはり私を模した物だった。

    アカと明確に違うのは、髪に類似した部位を纏めて後ろで垂らしている点。

    彼女達は個体差を守ろうとする意志がある。

    同じ「私と似た外見」であるが故に、意識して差異をつけたのだろう。



    アオ「母さま、あれとって」

    狩人「うん、いいよ」



    アオに請われて、私は指笛を吹く。

    驚き飛び交う蝙蝠に、礫を当てる。

    アオは大喜びでそれをキャッチ。

    楽しそうなその様子を見て、何故か私も嬉しくなる。

    113 = 102 :

    狩人「アオは、水の中とかも好きだよね」

    アオ「ちがうよ、母さま、ボクは魚をとるのがすきなの」

    狩人「そっか」

    アオ「石で遊ぶのも好き、母さまみたいに石投げしたい」

    狩人「……アオは、性質的にも私と似ているのかな」

    アオ「ボクも母さまみたいになれる?」

    狩人「どうだろう、他人にやり方を教えたことは無いけど」



    ふと、子供の頃を思い出す。

    父とは母、私の教育にとても熱心だった。

    ヒトとしての有り方を教えるよりも、狩人としての生き方を優先して教えてくれた。

    その知識は、まだ私の中に残っている。

    根付いている、と言ったほうがいい。

    なら、私にも、両親のように出来るのかもしれない。



    狩人「……そうだね、まずは弓の使い方を覚えないと」

    アオ「ゆみ?」

    狩人「そう、私が一番得意な得物、石なんかよりももっと速く遠くまで飛ぶ」

    アオ「すごい!見せて見せて!」

    狩人「ううん、それは難しいかなあ」

    アオ「どうして?」

    狩人「ここに落ちてくる時、無くしちゃった」

    アオ「ここに……」

    114 = 102 :

    アオは、天井の穴から外を眺めた。

    何か、考えているようだ。



    アオ「……ここの、外には、何があるの?」

    狩人「色々あるよ、森とか、村とか」

    アオ「それだけ?」

    狩人「……もう少し南にいくと、帝国領がある、その向こうはまた別の国があって」

    アオ「くに?」

    狩人「沢山のヒトや、ケモノが住んでいる所だよ」

    アオ「どれくらい沢山?」

    狩人「数えられないくらい」

    アオ「そんなに?」

    狩人「うん」

    アオ「ふーん……」



    途中から、予感があった。

    アオは、活発で好奇心が旺盛なのだ。

    この小さな洞窟だけで、満足が出来るはずはない。

    だから。



    アオ「母さま、ボク、外に出てみたい」

    アオ「連れて行って」



    こうなる事は、半ば必然だった。

    115 :

    ああ冒頭の状況まで残り20日切った

    116 :

    尊い

    117 = 102 :

    ~69日目~


    アオが協力してくれる。

    それは、とても心強い申し出だった。

    今の彼女の知能であれば、洞窟から出て蔦を見つけて来る事は容易いだろう。

    けど。



    「そのまま、あっさりとは脱出させてくれないだろうなあ」



    クロとアカは、私の脱出に対して否定的だ。

    私が蔦を登っているのを見たら、当然邪魔をしに来るだろう。

    アオ1人で、それを阻止できるかどうかは微妙だ。

    最悪、私はもう一度地面に叩きつけられる事になるかもしれない。

    なるべくなら、それは避けたい。

    もう少し、作戦を練る必要があるかな。



    「そういうのは、得意では無いのだけどね」



    ピチャン、ピチャンと音がする。

    天井の穴から、雫が入り込んでいるのだ。

    今夜は、久々に雨である。

    118 = 102 :

    雨音に混じって、妙な音が聞こえた。

    口笛?

    いや、もっと綺麗で鋭い音色だ。

    前に幼馴染が聞かせてくれた、横笛の音に似ている気がする。



    音は、壁際に座っている緑色の人影から聞こえる。

    ミドリだ。



    彼女の変体も、既に数日前に完了していた。

    アオやアカと同様、私の外見を模している。

    2人と明確に違う点は、髪の長さ。

    姉妹で一番大きかったミドリの体積は、その殆どが髪に長さに費やされている。



    「ミドリ、今、口笛吹いていた?」

    「……」



    無表情。

    返事は無い。

    クロの言葉が確かなら、ミドリは音に対して親和性が高いとの事。

    つまり「喋れないから返事が無い」という状況では無いと思うんだけど。

    前から、読めない所がある子だったからなあ。

    119 = 102 :

    「……」

    「とても、綺麗な音だったね」

    「……」

    「風鳴の音だったのかな」

    「……」



    再び、音がする。

    高く、低く、遅く、長く。

    ミドリの口は、閉じられている。

    だが、それは確かにミドリから聞こえていた。



    その音の連なりには、何故か聞き覚えがあった。

    120 = 102 :

    それは、私が何度かミドリに聞かせてあげた、あの歌。

    あの歌が、音の連なりとして流れているのだ。

    どうやっているのかは、不明だけど。

    きっと、これはミドリが奏でてくれているのだろう。

    そっか、ミドリはあの歌が好きだったからな。

    なら。



    「さあ眼を開けて」

    「私の大切な可愛いあなた」

    「生まれてくれてありがとう」

    「私と一緒に生きましょう」

    「暗いときも明るいときも」

    「私達が共に歩めますように」

    「最後に眼を閉じるその時まで」

    「共に歩めますように」



    私の声と、ミドリの音色が重なる。


    私は、この歌が好きだった。

    幼馴染が歌ってくれた、この歌が好きだった。


    そして、今日。

    私はこの歌の事を、もっと好きになった。

    121 = 102 :

    歌が終わった時、満足感があった。

    ミドリは何も言わないけど、きっと同じ気持ちなんだと思う。

    共鳴として、それが感じられる。



    「ミドリは、どうやってさっきの音を出していたの?」

    「まるで、楽器みたいだったけど」



    ミドリは私を見て、次に自分の髪を見た。

    髪といってもスライムの身体が変形して作られたものだ。

    どちらかというと、陶器のような滑らかさがある。

    その髪には、小さな穴がいくつも開いていた。



    「そっか、空気がこの小さな穴を通るときに、音が出るのか」



    笛と同じ仕組みなのだろう。

    最も、大きさと穴の数から考えると、ミドリの髪の方がもっと複雑なんだろうけど。

    もしかしたら、ミドリが喋らないのは、この仕組みが関係しているのかも。

    122 = 102 :

    「ミドリは、歌が好き?」

    「……」コクン

    「そっか、じゃあ、もっと歌を聞かせてあげたいけど」

    「……」

    「ごめんね、私が知ってる歌は、これだけなんだ」

    「……」フルフル

    「幼馴染なら、もっと沢山の歌を知ってるんだろうけど」

    「……」

    「もし、私が外に出られたら、幼馴染から、歌を教えてもらうよ」

    「……」

    「いっぱい、いっぱい教えてもらうから」

    「……」

    「それを、ミドリにも聞かせてあげるね」

    「……」コクン



    その時、ミドリは笑った。

    控えめにだが、とても可愛く笑った。

    123 = 102 :

    ~73日目~


    「雨は嫌いです、過剰湿度のお陰で、眠くなります」


    確かにクロの動きは鈍かった。

    鈍いというか、半分寝ぼけていた。

    アカやミドリにも、若干その傾向がある。

    皆が寝そべる、けだるい時間。


    その隙に、アオには洞窟の外に出る練習をしてもらった。

    具体的に言うと、雨水の流れる壁面を登ってもらったのだ。

    水中で活動することが出来るアオは、雨水にも負けず、天井の穴まで登ることが出来た。

    更に言うと、ほんの少しだけど外に出る事に成功したのだ。


    まあ、怖くなってすぐに戻ってきちゃったんだけどね。

    124 = 102 :

    ~77日目~


    雨はまだ止まない。

    降り続いている。

    洞窟の中にも水は入り込んできたから、私達は少し高い岩場の上に避難していた。



    アカが私に寄り添って、身体を暖めてくれている。

    だから、風邪を引く心配は無いのだけど。

    完全にアカから監視されている状態になっているから、身動きが取れない。



    良かった事といえば、アカの姿をちゃんと見れたことだ。

    何となく、アオやミドリと比べて幼い顔つきのような気がする。

    125 = 102 :

    ~80日目~


    「晴れです、晴れ、久しぶりに晴れましたよ、お母さん!」

    「見てください、お母さんに抱きついてもこびり付いたりしません!」

    「ちょうど良い湿度、ちょうど良い温度、ちょうど良いスキンシップ!」

    「ゴボゴボゴボゴボゴボ!」



    クロの機嫌はとても良い。

    良すぎる。

    離れない。



    性的なことをされる様子は無いのだけど。

    私は再び、身動きが取れなくなる。

    まあ、けど、クロだって一時的に興奮状態になっているだけなのだ。

    多分、数日もすれば落ち着いてくれるだろう。



    それまで、我慢、我慢。



    私は我慢した。

    けど、我慢できなかった子が居た。

    126 = 102 :


    ~83日目~



    「母さまは、ボクと一緒に外に行くんだから、邪魔しないで」


    この日、彼女達姉妹は正面衝突した。

    私と一緒に外へ行くと約束していたアオの我慢が頂点に達したからだ。

    もう少し気をつけておくべきだった。

    アオは行動的な分「先延ばしにされる事」が苦手だったのだ。



    アオの言葉を聴いたクロは、途端に不機嫌になった。

    127 = 102 :

    クロ「外に?一緒に?貴女が?お母さんと?」

    アオ「そう、ボクと母さまが」

    アオ「……ママ、いっちやうの?」

    クロ「行きません、そもそも何時そんな話になったのですか、誰の許可を得て?」

    アオ「しばらく前に、母さまは良いよって言ってくれた」

    クロ「お母さん、言ったんですか?」

    アカ「……ママ?」

    アオ「母さま、言ってくれたよね?」

    ミドリ「……」


    蜂の巣を突いたかのような騒ぎになった。

    もう少し、穏便に事を進めたかったんだけどな。


    まあ、けど成ってしまった事は仕方ない。

    あとは最善を尽くすだけだ。

    128 = 102 :

    狩人「言ったよ、アオに、一緒に外に出ようって」

    狩人「アオは、それを希望していたからね」

    狩人「私も同じ事を希望してるんだし、協力し合うのは当然のことだよね」

    狩人「私は前から」

    クロ「……」

    狩人「外に出たいって言って……」

    アカ「……」

    狩人「たと、思うんだけど……」

    ミドリ「……」

    狩人「……」

    アオ「……」





    空気が凍った気がした。

    アオが爆発した時とは、また別の雰囲気だ。

    129 = 102 :

    クロ「わた……ちに……」

    狩人「え?」

    クロ「私達に黙って、外に出ようとしたのですか」

    狩人「いや、黙ってというか」

    クロ「私達に黙って、行くつもりだったんですか」

    狩人「クロ、話を」

    クロ「私達に黙って、黙って、黙って、黙って」

    クロ「それで、終わるつもりだったんですか」

    クロ「私達を、私達を、捨て、捨て、捨て、捨ててて」

    アカ「……やだ」

    アカ「やだ、やだ、やだよぉ、ママ、いっちゃうの、やだ」

    アカ「アカ、悪いことしちゃったの?アカが悪いの?」

    アカ「悪いの悪いの悪いの悪いの悪いの悪悪悪悪悪」



    頭痛と、吐き気がした。

    眩暈がする、立っていられない。

    クロの声が、頭に響く。

    頭の中に入り込み大切な部分を壊そうとする。



    それと同時に、熱風を感じた。

    アカの声に呼応して、洞窟内の温度が上昇する。

    眼が開けていられない。

    肌が痛い。

    130 :

    あっ
    ついに冒頭に・・・・
    更新お疲れ様です

    131 :

    早々に展開が読めた俺は読解力のないレスしてるアホ共、後の展開見たらどう思うんだろうなぁーってのを主軸にして見てるわ

    132 :

    ボクっ子スライム尊い……

    133 :

    >>131
    いきなり何の話してるの君?

    134 :

    触るな

    135 :

    冒頭で逃げてた狩人が仮に捕まったら強制孕ませボテ腹展開だからみんなでクロ応援しようぜってことだろ?

    136 :

    ヤンデレズライムとかいう新ジャンル

    137 :

    ヤンデレと鈍感の相乗効果乙

    138 :

    クロはともかくアカには「みんなで一緒に外に出ようね」って刷り込んどけば問題無かったかもな

    139 :

    彼女達に、殺意は無いと思う。

    ただ、状況に適応できず過剰反応を起こしているだけだ。

    彼女達は、まだ生まれたばかりの赤子なのだから。

    ストレスに対する耐性が無いのだ。



    どうしよう。

    このままだと、文字通り話にならない。

    どうしたら。



    ふと、クロの言葉が頭に浮かんだ。



    「このような事は改めて言う必要もない、当たり前のことなのですが」

    「それでも、私はヒトが行う、言葉のやり取りを尊重したいと思います」

    140 = 139 :

    結局のところ、足りなかったのは交渉でも説明でもなく。

    コレなのかなと思う。



    私は、彼女達から母と呼ばれている。

    それは、私自身が選択した行動の結果だ。

    けど、決定的な言葉を、私は口にしていない。

    ずっと前から、心の中に浮かんでいたのに。

    何故か、決して言葉にはしなかった。



    多分、彼女達は、蝙蝠肉なんかよりも、この言葉を欲していたのだろう。

    今まで具体的な形として与えられていなかったから、不安だったのだろう。

    それが今回のような形になって、爆発したのだ。



    私が、両親からずっと与えてもらっていた言葉。

    私が、彼女に与えることが出来る言葉。

    141 :

    おっ、改善なるか…?

    142 :

    「いい子にしないとおやつ抜きにするよ!」

    143 :

     



    「クロ、アカ、そしてアオとミドリも」

    「私はね、みんなを」

    「みんなを」

    「愛してるよ」




     

    144 = 143 :

    荒れ狂っていたクロの動きが、止まった。

    悲しんでいたアカの動きが、止まった。

    クロに襲い掛かろうとしていたアオの動きが、止まった。

    1人静観していたミドリが、私のほうを見た。

    145 = 143 :

    「最初はね、私の中の感情が何なのか、判らなかった」

    「けど、今はわかるよ、これはきっと、愛情だ」



    「ちょっと思い込みが激しくて、けど誰よりも努力家なクロ」

    「照れ屋だけど、何時も私を気遣って、暖めてくれるアカ」

    「好奇心旺盛で、私や姉妹の為に魚を取って来てくれるアオ」

    「私と一緒に歌を歌ってくれる、ミドリ」



    「ここで生まれ育ったスライム達」

    「私の傍で育っていった大切なスライム達」

    「その良い部分も、悪い部分も」

    「今の私にとっては、凄く大切に感じられるんだ」

    146 = 143 :

    「勿論、私達は種族が違う」

    「考え方も、当然違うだろう」

    「けど、けどね」

    「クロ達が私に歩み寄ってくれたように」

    「私も、クロ達に色んなものを与えてあげたいんだ」

    「私がどんな場所で過ごしてきたか」

    「どんなヒトと過ごしてきたか」

    「どんな約束をしたのか」

    「何処へ行こうとしているのか」

    「そんな、私の全てを」

    「皆にも、知ってもらいたと思ってる」

    147 = 143 :

    クロ「……」

    アカ「……」

    アオ「……」

    ミドリ「……」

    狩人「うん、確かにクロが言ってたとおりだ」

    狩人「多分、これは直接口に出して伝えないと自覚できなかった事だと思う」

    狩人「少し、すっきりもしたかも」

    アカ「……ママ」

    狩人「うん」

    アカ「……本当に、アカのことが好き?」

    狩人「うん、大好き」

    アカ「……う、うん、アカも、ママのことだいすき」

    148 = 143 :

    アオ「母さま!母さま!ボクは!?ボクの事は!?」

    狩人「うん、アオも好きだよ、大好き」

    アカ「……ママ、もう一回言って」

    狩人「アカが大好きだよ」

    ミドリ「……」

    狩人「うんうん、ミドリの事も、勿論好きだよ」

    アカ「母さま!母さま!」

    アカ「ママ!ママ!」



    大騒ぎになった。

    そんな中、クロだけが沈黙していた。

    149 = 143 :

    狩人「クロ?」

    クロ「……」

    狩人「……外を怖がるのは理解できるよ」

    狩人「けどね、私はずっとそこで生きてきたんだ」

    狩人「それを捨てるなんて、簡単には出来ない」

    狩人「私は外に戻るよ」

    クロ「……」

    狩人「だから、出来れば、クロ達にもついてきて欲しい」

    クロ「……」

    狩人「もし怖い眼にあっても、大丈夫だよ、だって……」



    「森以外で暮すのが怖い?」

    「大丈夫よ、だって……」



    狩人「……だって、私が一緒にいてあげるから」

    150 = 143 :

    クロ「……」ブツブツ

    狩人「クロ?」

    クロ「……」ブツブツ

    狩人「おーい?」

    クロ「……」ブツブツ

    狩人「何か呟いて……?」




    「愛してるって言ってくれましたお母さんがお母さんがお母さんが私の事を」

    「愛してるってお母さんが愛してるって愛を与えてくれるってそもそも愛って」

    「愛って何でしょうかそれは全面的な肯定の言葉ですつまり私はお母さんに」

    「全面的に肯定された私の行為が思想が身体が全て全てお母さんに受け入れられた」

    「嬉しい嬉しい嬉しいです凄く満足で気持ちいいです私もお母さんが大好きです」

    「だから」


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