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元スレ京太郎「俺たちの……」マホ「可能性……?」
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――――
東四局
京太郎「……」タッ
マホ「タンピン二向聴……須賀先輩、良い調子に進んでます」
佳織「私、平和は苦手だけど、最近は綺麗な形だって思えてきたよ」
マホ「わかります。すっきりしてますよね」
京太郎「……」チャッ
マホ「東……生牌ですね」
佳織「んー、まだ五巡目だし……あ、切った」
ゆみ「ポン」カシャッ
睦月「ダブ東……」
トン……トッ……
ゆみ「……む、高目がきたか。ツモ、ダブ東・チャンタ、2000オール」バラ
佳織「ああ、取られたので和了られた……」
マホ「仕方ないですけど、こういうことがあると後悔しますよね」
佳織「でも、確率的にはこんなことあんまりないし……次同じような状況になっても、私なら東切るかな」
マホ「そうですね。デジタル的には……」
東四局
京太郎「……」タッ
マホ「タンピン二向聴……須賀先輩、良い調子に進んでます」
佳織「私、平和は苦手だけど、最近は綺麗な形だって思えてきたよ」
マホ「わかります。すっきりしてますよね」
京太郎「……」チャッ
マホ「東……生牌ですね」
佳織「んー、まだ五巡目だし……あ、切った」
ゆみ「ポン」カシャッ
睦月「ダブ東……」
トン……トッ……
ゆみ「……む、高目がきたか。ツモ、ダブ東・チャンタ、2000オール」バラ
佳織「ああ、取られたので和了られた……」
マホ「仕方ないですけど、こういうことがあると後悔しますよね」
佳織「でも、確率的にはこんなことあんまりないし……次同じような状況になっても、私なら東切るかな」
マホ「そうですね。デジタル的には……」
――――
東四局一本場
ゆみ (親)36400
京太郎(南)16400
睦月 (西)21800
桃子 (北)25400
睦月(駄目だな……急がないと)タッ
東四局でこの点差、普通はそこまで焦る段階ではない。しかし――
桃子「……」トン
睦月(まだ、大丈夫か……?いや、今霞んで見えたような……)
桃子が本領を発揮すれば、まともに打つこともままならなくなる。見失う前に勝負に出なければ。
睦月(そして、加治木先輩……)
ゆみ「……」タン
睦月(またツモ切り……それも中の方。張ってる……?)
トップ、ゆみとの点差も、絶望的なものではない……だが、睦月はゆみに対して気負うものがあった。
睦月(実質、この麻雀部を引っ張ってきたのはこの人……そしてこれからは、部長として私がその役を継ぐことになる)
人望、采配、麻雀のセンス……何一つとして、追いついているとは思えない。普段はそこまで考えないようにしているが――
京太郎「……」トッ
睦月(……他校の生徒の前だからかな。今だけは、どうしても先輩に勝ちたい……!)チャッ
タンヤオドラ2、一向聴。できれば和了りたい。
睦月(もうそろそろ流局……加治木先輩は張ってそうだし、慎重に……これは筋か)タン
桃子「……」トッ
ゆみ「……」タッ
京太郎「……」トン
睦月「……チー」パラ
睦月(よし、テンパイ……でも安牌はないか……?)チラッ
余り牌の内、かろうじて安全そうなのは筋の三筒か。
睦月(通れ……)トッ
ゆみ「ロン」バラッ
睦月(っ……!駄目か……)
ゆみ「タンヤオのみ、2300」
睦月「はい……」チャラ
――――
ゆみ「二本場」チャッ
智美(カンチャン待ちの、筋引っ掛け……さすがゆみちん、焦る人間の心理をよく分かってる)
観戦しやすい位置に椅子を動かしつつ、睦月の捨て牌を窺うと――
智美(あー……確かに、筋に頼ってるところがあるな。よく気付くもんだ)
わずかなヒントも見逃さない、ゆみの強さの一つである。
智美(……しかし、むっきーはらしくないな。流局直前に無理して攻めるなんて……)
東四局一本場
ゆみ (親)36400
京太郎(南)16400
睦月 (西)21800
桃子 (北)25400
睦月(駄目だな……急がないと)タッ
東四局でこの点差、普通はそこまで焦る段階ではない。しかし――
桃子「……」トン
睦月(まだ、大丈夫か……?いや、今霞んで見えたような……)
桃子が本領を発揮すれば、まともに打つこともままならなくなる。見失う前に勝負に出なければ。
睦月(そして、加治木先輩……)
ゆみ「……」タン
睦月(またツモ切り……それも中の方。張ってる……?)
トップ、ゆみとの点差も、絶望的なものではない……だが、睦月はゆみに対して気負うものがあった。
睦月(実質、この麻雀部を引っ張ってきたのはこの人……そしてこれからは、部長として私がその役を継ぐことになる)
人望、采配、麻雀のセンス……何一つとして、追いついているとは思えない。普段はそこまで考えないようにしているが――
京太郎「……」トッ
睦月(……他校の生徒の前だからかな。今だけは、どうしても先輩に勝ちたい……!)チャッ
タンヤオドラ2、一向聴。できれば和了りたい。
睦月(もうそろそろ流局……加治木先輩は張ってそうだし、慎重に……これは筋か)タン
桃子「……」トッ
ゆみ「……」タッ
京太郎「……」トン
睦月「……チー」パラ
睦月(よし、テンパイ……でも安牌はないか……?)チラッ
余り牌の内、かろうじて安全そうなのは筋の三筒か。
睦月(通れ……)トッ
ゆみ「ロン」バラッ
睦月(っ……!駄目か……)
ゆみ「タンヤオのみ、2300」
睦月「はい……」チャラ
――――
ゆみ「二本場」チャッ
智美(カンチャン待ちの、筋引っ掛け……さすがゆみちん、焦る人間の心理をよく分かってる)
観戦しやすい位置に椅子を動かしつつ、睦月の捨て牌を窺うと――
智美(あー……確かに、筋に頼ってるところがあるな。よく気付くもんだ)
わずかなヒントも見逃さない、ゆみの強さの一つである。
智美(……しかし、むっきーはらしくないな。流局直前に無理して攻めるなんて……)
――――
東四局二本場
京太郎(……む、ドラの東。自分で引けたか)チャッ
3m455(赤)66s789p東東南北 ツモ東
京太郎(場風にドラ4、大きいけど……)つ三萬
チラリとゆみの方を見る。
京太郎(駄目――だ、全然わからん)
またバラバラの捨て牌。オリているようにも見えるが、七対子なども考えられる。
京太郎(流れがもっと見えればなぁ……)
トン……タン……
ゆみ「……」つ七索
京太郎「……ん、それチーで」パラ
テンパイだ。あとは南か北のどちらで待つか――
京太郎(ん?)
45 6s789p東東東南北 (5(赤)67)
京太郎(……いや、あってる。南か北の単騎待ちだ)
左端に並ぶ四五索が目につき、一瞬そこで両面待ちになるイメージが浮かんで混乱した。集中力が落ちているせいだが――
京太郎(おっと、これは使えるかもしれない……)
ちょっとした思いつきだが、やらないよりはいい。
京太郎(まずテンパイして……)つ南
睦月「……」つ南
京太郎(一回、六索と七筒をまとめて触れる……で、すぐ四五索を寄せて、くっつける)スッ
たったこれだけ。しかし、他家からは晒した五六索の近くが余った、という風に映るだろう。
桃子「……」つ一萬
京太郎(北は生牌、しかも残り二枚。単騎待ちだとバレたら、抱え込まれそうだしな)
ゆみ「……」つ三萬
京太郎(全員安牌……警戒されてるなー)チャッ
――もう関係なくなったが。
京太郎「ツモ。満貫の二本付けです」バラ
ゆみ「ふむ。なるほど」チャラ
点棒を出しながら、どこか納得したような顔。
京太郎(加治木さん……余裕あるな。トップだから当然かもだけど)
――――
ゆみ(ふむ……やはり当たり牌だったか)
7889m78s45679p南北
ゆみ「親は流されてしまったな、残念だ」パタン
京太郎「いや、充分稼いだでしょう……そろそろ譲って下さい」
睦月「……うむ」
ゆみ「なに、冗談だよ」
東四局二本場
京太郎(……む、ドラの東。自分で引けたか)チャッ
3m455(赤)66s789p東東南北 ツモ東
京太郎(場風にドラ4、大きいけど……)つ三萬
チラリとゆみの方を見る。
京太郎(駄目――だ、全然わからん)
またバラバラの捨て牌。オリているようにも見えるが、七対子なども考えられる。
京太郎(流れがもっと見えればなぁ……)
トン……タン……
ゆみ「……」つ七索
京太郎「……ん、それチーで」パラ
テンパイだ。あとは南か北のどちらで待つか――
京太郎(ん?)
45 6s789p東東東南北 (5(赤)67)
京太郎(……いや、あってる。南か北の単騎待ちだ)
左端に並ぶ四五索が目につき、一瞬そこで両面待ちになるイメージが浮かんで混乱した。集中力が落ちているせいだが――
京太郎(おっと、これは使えるかもしれない……)
ちょっとした思いつきだが、やらないよりはいい。
京太郎(まずテンパイして……)つ南
睦月「……」つ南
京太郎(一回、六索と七筒をまとめて触れる……で、すぐ四五索を寄せて、くっつける)スッ
たったこれだけ。しかし、他家からは晒した五六索の近くが余った、という風に映るだろう。
桃子「……」つ一萬
京太郎(北は生牌、しかも残り二枚。単騎待ちだとバレたら、抱え込まれそうだしな)
ゆみ「……」つ三萬
京太郎(全員安牌……警戒されてるなー)チャッ
――もう関係なくなったが。
京太郎「ツモ。満貫の二本付けです」バラ
ゆみ「ふむ。なるほど」チャラ
点棒を出しながら、どこか納得したような顔。
京太郎(加治木さん……余裕あるな。トップだから当然かもだけど)
――――
ゆみ(ふむ……やはり当たり牌だったか)
7889m78s45679p南北
ゆみ「親は流されてしまったな、残念だ」パタン
京太郎「いや、充分稼いだでしょう……そろそろ譲って下さい」
睦月「……うむ」
ゆみ「なに、冗談だよ」
――――
南一局
桃子(……加治木先輩が連荘してくれたおかげで、南入までそこそこ時間はかかったけど)トッ
ゆみ「……」タッ
桃子(加治木先輩は絶対に私を見失ってない……この時間では、まだ)
京太郎「……」チャッ
桃子(京ちゃんさん……も、まだ見えてるっぽいっすね)
基本、デジタル打ちの桃子は人の表情を読むというのは苦手だが――
桃子(今日は分かりやすいっすね。今のツモで、手が良くなったみたい……かな)
京太郎「……」タン
睦月「……む。リーチ」チャラ
桃子(むっちゃん先輩も来てる……)チャッ
445677m335(赤)67s56p ツモ中
桃子(私も良い手……だけど、今はまだ抑えるべきっすね)
崩すのはもったいない気もするが、ここでオリても後から取り返す自信はある。
桃子(冷静に、機を見て……)トン
――――
睦月「これで海底牌……和了れないな。これ、大丈夫ですか?」タン
ゆみ「問題無い、通しだ。テンパイ」パラッ
睦月「ふぅ……テンパイです」パラ
京太郎「……テンパイ」パラ
桃子「ノーテン」パタン
南一局
桃子(……加治木先輩が連荘してくれたおかげで、南入までそこそこ時間はかかったけど)トッ
ゆみ「……」タッ
桃子(加治木先輩は絶対に私を見失ってない……この時間では、まだ)
京太郎「……」チャッ
桃子(京ちゃんさん……も、まだ見えてるっぽいっすね)
基本、デジタル打ちの桃子は人の表情を読むというのは苦手だが――
桃子(今日は分かりやすいっすね。今のツモで、手が良くなったみたい……かな)
京太郎「……」タン
睦月「……む。リーチ」チャラ
桃子(むっちゃん先輩も来てる……)チャッ
445677m335(赤)67s56p ツモ中
桃子(私も良い手……だけど、今はまだ抑えるべきっすね)
崩すのはもったいない気もするが、ここでオリても後から取り返す自信はある。
桃子(冷静に、機を見て……)トン
――――
睦月「これで海底牌……和了れないな。これ、大丈夫ですか?」タン
ゆみ「問題無い、通しだ。テンパイ」パラッ
睦月「ふぅ……テンパイです」パラ
京太郎「……テンパイ」パラ
桃子「ノーテン」パタン
――――
南一局一本場
トン……タン……
睦月(むう……)チャッ
メンホンニ向聴の手を見て、しかし睦月の顔は浮かばない。
睦月(ここ数局、引きは悪くないのに……)トン
全く和了れない。今日はそういう日なのだろうか。
睦月(前局も、加治木先輩に和了り牌を止められて……それどころか、取り込まれていた)
ゆみ「……」タッ
睦月(完全に上を行かれてる……)
京太郎「……」タン
睦月(……うわ、四萬。また引きたくないところ……)チャッ
染め手にはいらない、別の数牌――しかし周辺の牌が切れていない上に、ドラだ。
睦月(でも切るしかないな)トン
京太郎「ポン!」バラッ
睦月「うっ、取られたか……」
京太郎「……」パシッ
睦月(怖いな……この強打)スッ
そしてその恐れに追い打ちをかけるように、
睦月(うわ、五萬……)チャッ
すぐに来る危険牌――突っ張って良い思いをしたことは少ない。
睦月(オリるか……)トン
タン……パシッ…
ゆみ「……ふん」タッ
睦月(! 五萬……通るのか)
ゆみ「……そう簡単に騙されはしない」
京太郎「……」タンッ
睦月(そうか……ブラフか。全く、敵わないな。加治木先輩には)トッ
――――
ゆみ「ツモ。1400-2700」
京太郎「くっ……はい」チャラ
和了れそうもない手だったので、せめて他家をオロそうと思ったのだが……
京太郎(加治木さんにはバレバレだったな。また差が開いちまった……うっ!)
また痛みの波が来た。歯を食いしばり、耐える。
京太郎(……こんなんで、加治木さんに心理戦なんか仕掛けられるわけない、か)
南一局一本場
トン……タン……
睦月(むう……)チャッ
メンホンニ向聴の手を見て、しかし睦月の顔は浮かばない。
睦月(ここ数局、引きは悪くないのに……)トン
全く和了れない。今日はそういう日なのだろうか。
睦月(前局も、加治木先輩に和了り牌を止められて……それどころか、取り込まれていた)
ゆみ「……」タッ
睦月(完全に上を行かれてる……)
京太郎「……」タン
睦月(……うわ、四萬。また引きたくないところ……)チャッ
染め手にはいらない、別の数牌――しかし周辺の牌が切れていない上に、ドラだ。
睦月(でも切るしかないな)トン
京太郎「ポン!」バラッ
睦月「うっ、取られたか……」
京太郎「……」パシッ
睦月(怖いな……この強打)スッ
そしてその恐れに追い打ちをかけるように、
睦月(うわ、五萬……)チャッ
すぐに来る危険牌――突っ張って良い思いをしたことは少ない。
睦月(オリるか……)トン
タン……パシッ…
ゆみ「……ふん」タッ
睦月(! 五萬……通るのか)
ゆみ「……そう簡単に騙されはしない」
京太郎「……」タンッ
睦月(そうか……ブラフか。全く、敵わないな。加治木先輩には)トッ
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ゆみ「ツモ。1400-2700」
京太郎「くっ……はい」チャラ
和了れそうもない手だったので、せめて他家をオロそうと思ったのだが……
京太郎(加治木さんにはバレバレだったな。また差が開いちまった……うっ!)
また痛みの波が来た。歯を食いしばり、耐える。
京太郎(……こんなんで、加治木さんに心理戦なんか仕掛けられるわけない、か)
――――
南ニ局
睦月 (親)15900
桃子 (南)18800
ゆみ (西)42000
京太郎(北)23300
桃子(手が、来ないっすね……)トッ
そろそろ動き出したいのだが、折悪く無駄ヅモばかりだ。
ゆみ「……」タッ
桃子(もう、充分な時間は経った……)
京太郎「……」トン
桃子(京ちゃんさん……辛そうっすね)
顔を伏せているため、京太郎の表情は見えない……が、時折首を横に振ったり、歯ぎしりの音がしたりする。睡魔と戦っているのだろう。
桃子(『消える』までの時間は、相手の実力に比例して長くなる。それは一晩徹夜で練習しても、大きく変わることはない)
加えて、ただでさえ京太郎は集中力が落ちている。まず見えていないだろう。
睦月「リーチ」チャラ
桃子(むっちゃん先輩は……リーチっすか)チャッ
今は和了りも遠いため、オリ一択だが――
桃子(これだけ時間がかかったら、もう消えてるっすね)トン
堂々と危険牌を切る――予想通り、睦月はスルー。そして、一瞬の間――
ゆみ「……」チャッ
桃子(やっぱり、加治木先輩はまだっすか)
ゆみにステルスが通じていないと知り、むしろ嬉しく思ってしまう。
桃子(むっちゃん先輩が和了ると思って、ちょっとツモが遅れた。私の牌が見えてる証拠っす)
――――
睦月「ツモ。3900オールです」バラッ
ゆみ「ふむ。やはりそこだったか……」チャラ
睦月「はい。もしかして、また和了り牌止められてました?」
ゆみ「……いや、まあな。後で牌譜を見るといい」
適当に誤魔化しながら手を閉じるゆみ。
ゆみ(モモが、リーチ後に即切った牌だ……)
南ニ局
睦月 (親)15900
桃子 (南)18800
ゆみ (西)42000
京太郎(北)23300
桃子(手が、来ないっすね……)トッ
そろそろ動き出したいのだが、折悪く無駄ヅモばかりだ。
ゆみ「……」タッ
桃子(もう、充分な時間は経った……)
京太郎「……」トン
桃子(京ちゃんさん……辛そうっすね)
顔を伏せているため、京太郎の表情は見えない……が、時折首を横に振ったり、歯ぎしりの音がしたりする。睡魔と戦っているのだろう。
桃子(『消える』までの時間は、相手の実力に比例して長くなる。それは一晩徹夜で練習しても、大きく変わることはない)
加えて、ただでさえ京太郎は集中力が落ちている。まず見えていないだろう。
睦月「リーチ」チャラ
桃子(むっちゃん先輩は……リーチっすか)チャッ
今は和了りも遠いため、オリ一択だが――
桃子(これだけ時間がかかったら、もう消えてるっすね)トン
堂々と危険牌を切る――予想通り、睦月はスルー。そして、一瞬の間――
ゆみ「……」チャッ
桃子(やっぱり、加治木先輩はまだっすか)
ゆみにステルスが通じていないと知り、むしろ嬉しく思ってしまう。
桃子(むっちゃん先輩が和了ると思って、ちょっとツモが遅れた。私の牌が見えてる証拠っす)
――――
睦月「ツモ。3900オールです」バラッ
ゆみ「ふむ。やはりそこだったか……」チャラ
睦月「はい。もしかして、また和了り牌止められてました?」
ゆみ「……いや、まあな。後で牌譜を見るといい」
適当に誤魔化しながら手を閉じるゆみ。
ゆみ(モモが、リーチ後に即切った牌だ……)
――――
南ニ局一本場
睦月(焼き鳥を回避して、この配牌……)タッ
役牌が暗刻で揃っている。
睦月(あまりそういうのは信じない質だけど、流れというのが向いてきたかな?)
トン……トッ……
睦月(来たっ……!高めで三色、絶好のテンパイ!)
ゆみが張っていそうだが、ここは攻める。
睦月「通らば、リーチ!」タンッ
睦月(どうだ……!?)チラッ
ゆみ「……」スッ
牌に手をかけるゆみ。
睦月(あ、当たったか……?)
ゆみ「……」パタン
直後、ゆみは手牌を――俯せに倒していた。
睦月(――?)
桃子「――ロン」ユラッ
睦月「――あっ……!」
桃子「こっちっすよ……リーチ・平和・ホンイツ・一通……裏、一枚」
睦月(またやってしまった……!)
桃子「――16300!」
南ニ局一本場
睦月(焼き鳥を回避して、この配牌……)タッ
役牌が暗刻で揃っている。
睦月(あまりそういうのは信じない質だけど、流れというのが向いてきたかな?)
トン……トッ……
睦月(来たっ……!高めで三色、絶好のテンパイ!)
ゆみが張っていそうだが、ここは攻める。
睦月「通らば、リーチ!」タンッ
睦月(どうだ……!?)チラッ
ゆみ「……」スッ
牌に手をかけるゆみ。
睦月(あ、当たったか……?)
ゆみ「……」パタン
直後、ゆみは手牌を――俯せに倒していた。
睦月(――?)
桃子「――ロン」ユラッ
睦月「――あっ……!」
桃子「こっちっすよ……リーチ・平和・ホンイツ・一通……裏、一枚」
睦月(またやってしまった……!)
桃子「――16300!」
――――
南三局
桃子(ここからはガンガンいくっすよー)
桃子「リーチ」ユラッ
もう誰にも止められない――たとえ桃子が、それを望んでも。
桃子「ツモ!2600オールっす!」
ゆみ「……追いつかれそうだな」チャラ
――――
南三局一本場
ゆみ「ツモ。チートイのみ、900-1700」バラッ
桃子(……意外と早く止められたっす)チャラ
京太郎「くっ、跳満流された……!」チャラ
睦月「点差、大きいな……」チャラ
南三局
桃子(ここからはガンガンいくっすよー)
桃子「リーチ」ユラッ
もう誰にも止められない――たとえ桃子が、それを望んでも。
桃子「ツモ!2600オールっす!」
ゆみ「……追いつかれそうだな」チャラ
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南三局一本場
ゆみ「ツモ。チートイのみ、900-1700」バラッ
桃子(……意外と早く止められたっす)チャラ
京太郎「くっ、跳満流された……!」チャラ
睦月「点差、大きいな……」チャラ
――――
オーラス
ゆみ (親)39000
京太郎(南)15900
睦月 (西)7800
桃子 (北)37300
睦月(はあ……今回は、どうしてこう……)
457(赤)m236s399p東發發發 (ドラ:二索)
睦月(……運を、活かせないんだろう)
配牌で役牌の暗刻と、ドラ二つ。三向聴。和了を期待できる良い手だが、
睦月(……足りない。全然届かない、この点差にはっ……!)チャッ
トップ、ゆみとの点差は31200。このままではとても捲れそうにない。
睦月(何か、手を大きく変えられる牌……来て!)つ三筒
オーラス
ゆみ (親)39000
京太郎(南)15900
睦月 (西)7800
桃子 (北)37300
睦月(はあ……今回は、どうしてこう……)
457(赤)m236s399p東發發發 (ドラ:二索)
睦月(……運を、活かせないんだろう)
配牌で役牌の暗刻と、ドラ二つ。三向聴。和了を期待できる良い手だが、
睦月(……足りない。全然届かない、この点差にはっ……!)チャッ
トップ、ゆみとの点差は31200。このままではとても捲れそうにない。
睦月(何か、手を大きく変えられる牌……来て!)つ三筒
――――
睦月の祈りを嘲笑うように、四巡目――
睦月(……一向聴、か)チャッ
445(赤)m2346s99p東發發發 ツモ3m
高い手を目指すなら、染め手を作るべきだったのだろう。しかし、こうも早く有効牌が来てしまうとは思わなかった。
睦月(本当に、無駄に運が良い……)
文字通り、無駄に。あるいは中途半端に。
睦月(どうして私には、突出した能力が無いんだろう)つ四萬
こんな時、佳織が羨ましくなる。その運を少しでも分けて欲しいと思ってしまう。
睦月(……無い物ねだりか。みっともないな)
タッ……トン……
睦月(……こんな私が先輩に勝とうなんて、元々、無理だったか)
この対局中、ゆみに何度も実力差を思い知らされた。もう、諦めてしまおうか――
「カン!」
睦月(!)
(■南南■)
京太郎「ダブ南、確定……!」
睦月(須賀君……)
京太郎「……」ハァハァ
荒く呼吸しながら、新ドラをめくる京太郎。その目は茫洋とし、どこを見ているのかも定かではない――
京太郎「……」つ五索
だが、光を失ってはいない。ここではないどこかを見ながら、決して勝負を捨てていない。
睦月(その点差から……まだ本気で勝とうと思えるのか……)
新ドラは九筒。これも運良く、睦月は二枚持っている。そして――
睦月(……!これは……!?)チャッ
――四枚目の發。
睦月(……急にコレか。ちょっと出来過ぎだな。――でも、)
次はお前の番だ――そんな声を聞いた気がした。
睦月「カン!」カシャッ
(■發發■)
睦月(嶺上牌は……五索。新ドラは――)クルッ
一索、八筒に続き王牌に現れた牌は――白。
睦月(モロ乗り……っ!)
脳内麻薬が溢れる感覚。今は誰にも負ける気がしない。
睦月「リーチッ!」つ東
天が味方している。その確信を持って、睦月はゆみに勝負を挑んだ。
睦月の祈りを嘲笑うように、四巡目――
睦月(……一向聴、か)チャッ
445(赤)m2346s99p東發發發 ツモ3m
高い手を目指すなら、染め手を作るべきだったのだろう。しかし、こうも早く有効牌が来てしまうとは思わなかった。
睦月(本当に、無駄に運が良い……)
文字通り、無駄に。あるいは中途半端に。
睦月(どうして私には、突出した能力が無いんだろう)つ四萬
こんな時、佳織が羨ましくなる。その運を少しでも分けて欲しいと思ってしまう。
睦月(……無い物ねだりか。みっともないな)
タッ……トン……
睦月(……こんな私が先輩に勝とうなんて、元々、無理だったか)
この対局中、ゆみに何度も実力差を思い知らされた。もう、諦めてしまおうか――
「カン!」
睦月(!)
(■南南■)
京太郎「ダブ南、確定……!」
睦月(須賀君……)
京太郎「……」ハァハァ
荒く呼吸しながら、新ドラをめくる京太郎。その目は茫洋とし、どこを見ているのかも定かではない――
京太郎「……」つ五索
だが、光を失ってはいない。ここではないどこかを見ながら、決して勝負を捨てていない。
睦月(その点差から……まだ本気で勝とうと思えるのか……)
新ドラは九筒。これも運良く、睦月は二枚持っている。そして――
睦月(……!これは……!?)チャッ
――四枚目の發。
睦月(……急にコレか。ちょっと出来過ぎだな。――でも、)
次はお前の番だ――そんな声を聞いた気がした。
睦月「カン!」カシャッ
(■發發■)
睦月(嶺上牌は……五索。新ドラは――)クルッ
一索、八筒に続き王牌に現れた牌は――白。
睦月(モロ乗り……っ!)
脳内麻薬が溢れる感覚。今は誰にも負ける気がしない。
睦月「リーチッ!」つ東
天が味方している。その確信を持って、睦月はゆみに勝負を挑んだ。
――――
桃子(發・ドラ4、リーチ……!むっちゃん先輩、いっきに来たっすね)
正直、こんな番狂わせがあるとは思っていなかった。
桃子(でも、私のすることは変わらない)チャッ
245667m468s2345(赤)p ツモ2p
桃子(これを最速で和了る……)つ二萬
テンパイ時に余る四・八索はどちらも危険牌。しかし当然、今の桃子には関係無い。
桃子(まるで私だけ別のゲームをしてるみたいっすね)
トッ……タン……
桃子「……須賀君。これが私の運命っすよ」ボソッ
静かに、しかし卓の面子にははっきり聞こえる声量。ゆみは制止してはくれない。
桃子「加治木先輩でさえ、熱中すれば私のことを忘れてしまう……私を求めたくれた人でさえ」
その声は、もう誰にも届かない。
桃子「私のことを忘れないって、そう言ってくれた時は……ちょっと嬉しかったっすよ。
でも、その手にあるメモが何の役に立ったっすか?」
何が書かれていたのかは分からないが、京太郎はこの卓についてから一度もメモを見ようとはしなかった。
当然だ……桃子の存在を忘れてしまったら、そのメモの存在も同時に忘れてしまう。
桃子「事前に考えた対抗策すら、あなたは思い出せない。私とまともに麻雀を打てるのは、画面の向こう側の人だけっす」
そう、これはもうまともな麻雀ではない。桃子が本気を出せば、 相手は抗うこともできないのだから。
桃子「でも、これは仕方ないこと……麻雀部の一員として、この影の薄さを否定することはできない」
それは桃子の「力」だ。麻雀部に貢献するための。
桃子「いつか、ここを卒業して……みんなが離れ離れになったら、私のことは忘れられるかもしれない。
でも、今が幸せだから……誰の記憶に残らなくっても、私はそれで良いっすよ」
一人語りを終え、何度目かのツモ……白。
桃子(ツモ切りっすね)スッ
そして何の気なしに顔を上げ、対面を見る――
京太郎「……」ジッ
桃子「え……?」ゾクッ
思わず声が漏れた。
桃子(そんな、そんなはずは……!?)
その瞬間、桃子が感じたのは本能的な恐怖。
例えるなら、自分の部屋に一人でいたはずなのに、いつのまにか誰かが隣にいたような衝撃。
――京太郎が、桃子を見ている。
桃子(發・ドラ4、リーチ……!むっちゃん先輩、いっきに来たっすね)
正直、こんな番狂わせがあるとは思っていなかった。
桃子(でも、私のすることは変わらない)チャッ
245667m468s2345(赤)p ツモ2p
桃子(これを最速で和了る……)つ二萬
テンパイ時に余る四・八索はどちらも危険牌。しかし当然、今の桃子には関係無い。
桃子(まるで私だけ別のゲームをしてるみたいっすね)
トッ……タン……
桃子「……須賀君。これが私の運命っすよ」ボソッ
静かに、しかし卓の面子にははっきり聞こえる声量。ゆみは制止してはくれない。
桃子「加治木先輩でさえ、熱中すれば私のことを忘れてしまう……私を求めたくれた人でさえ」
その声は、もう誰にも届かない。
桃子「私のことを忘れないって、そう言ってくれた時は……ちょっと嬉しかったっすよ。
でも、その手にあるメモが何の役に立ったっすか?」
何が書かれていたのかは分からないが、京太郎はこの卓についてから一度もメモを見ようとはしなかった。
当然だ……桃子の存在を忘れてしまったら、そのメモの存在も同時に忘れてしまう。
桃子「事前に考えた対抗策すら、あなたは思い出せない。私とまともに麻雀を打てるのは、画面の向こう側の人だけっす」
そう、これはもうまともな麻雀ではない。桃子が本気を出せば、 相手は抗うこともできないのだから。
桃子「でも、これは仕方ないこと……麻雀部の一員として、この影の薄さを否定することはできない」
それは桃子の「力」だ。麻雀部に貢献するための。
桃子「いつか、ここを卒業して……みんなが離れ離れになったら、私のことは忘れられるかもしれない。
でも、今が幸せだから……誰の記憶に残らなくっても、私はそれで良いっすよ」
一人語りを終え、何度目かのツモ……白。
桃子(ツモ切りっすね)スッ
そして何の気なしに顔を上げ、対面を見る――
京太郎「……」ジッ
桃子「え……?」ゾクッ
思わず声が漏れた。
桃子(そんな、そんなはずは……!?)
その瞬間、桃子が感じたのは本能的な恐怖。
例えるなら、自分の部屋に一人でいたはずなのに、いつのまにか誰かが隣にいたような衝撃。
――京太郎が、桃子を見ている。
――――
京太郎(……気付かれたか)
こちらを見て、桃子が固まっている。牌はもう切れているため、ゆみは構うことなくもうツモっている。
桃子「……」
京太郎(全く……そんな顔するなよ、泣きたいのはこっちだっての)チャッ
青ざめる桃子。自分が「消えて」いなかったことに相当なショックを受けているようだが、京太郎の方も既に絶望的だ。
京太郎(これじゃ、もう誰も振り込んでくれなさそうだな……)
22245(赤)77799s(南南南南) ツモ3p
(ドラ:二索、九筒、發)
三六索待ち、三倍満。和了れば勝ちだが、最大の期待だった桃子の油断はもうありえない。
京太郎(俺の捨て牌は……)
聴牌を取った時に切った五索、そしてその数巡後に切った八索。それ以外に索子は無い……染め手はバレているだろう。
京太郎(……万策尽きたか。もう天運に掛けるしかないのか?)つ三筒
ここまでずっと雌伏していたのに、この土壇場で桃子に気付かれた。もう勝ち目は無いかに思われたが――
京太郎(……気付かれたか)
こちらを見て、桃子が固まっている。牌はもう切れているため、ゆみは構うことなくもうツモっている。
桃子「……」
京太郎(全く……そんな顔するなよ、泣きたいのはこっちだっての)チャッ
青ざめる桃子。自分が「消えて」いなかったことに相当なショックを受けているようだが、京太郎の方も既に絶望的だ。
京太郎(これじゃ、もう誰も振り込んでくれなさそうだな……)
22245(赤)77799s(南南南南) ツモ3p
(ドラ:二索、九筒、發)
三六索待ち、三倍満。和了れば勝ちだが、最大の期待だった桃子の油断はもうありえない。
京太郎(俺の捨て牌は……)
聴牌を取った時に切った五索、そしてその数巡後に切った八索。それ以外に索子は無い……染め手はバレているだろう。
京太郎(……万策尽きたか。もう天運に掛けるしかないのか?)つ三筒
ここまでずっと雌伏していたのに、この土壇場で桃子に気付かれた。もう勝ち目は無いかに思われたが――
京太郎(――いいやっ、まだだ!)ギリッ
顔を上げると、目に入ったのは対面の桃子。体の中に闘志が湧いてくる。
京太郎(こいつだけは……っ!こいつにだけは、負けない!)
それは京太郎自身のこだわり……執念に近かった。
京太郎(何か……まだ何かあるはず……!)
足掻く。疲労した体に鞭打ち、脳をフル回転させる。自分の拾える全ての情報に、全神経を集中させる。
睦月「……」つ四筒
京太郎(津山さんは……六飜確定だけど、捨て牌だけ見ると染め手っぽくも見える)
高打点を目指すならおかしくはない――が、捨て牌は萬子と筒子に偏っている。染め手なら索子か?
京太郎(索子は俺が大量に抱え込んでる……その線は無いだろ)
桃子「……」つ東
京太郎(東横さん……記憶があいまいだけど、多分ちょっと前からツモ切りばっかだったな)
桃子は今、ステルス状態になっている。危険そうな牌も切って、自分の和了りを目指していたのだろう。
京太郎(……そのまま俺に振り込んでくれれば助かったんだけどな。振り込みといえば……)
睦月と桃子の河を見比べる。
京太郎(津山さんは、もしかしたらもうフリテンになってるかもな)
四七索待ちなど、睦月の有力な待ちはまだいくつか残っている。
だが全く予想できない単騎待ちなどの場合、桃子がもう切っているかもしれない。
京太郎(……といっても、睦月さんがトップになるには、ロンだと役満を和了らなきゃいけない)
ありえなくはないが、染め手も無しで数え役満を狙うのはかなりハードルが高い。まだ三倍満ツモの方が現実的だろう。
京太郎(フリテンになってても関係なさそうだな……)
顔を上げると、目に入ったのは対面の桃子。体の中に闘志が湧いてくる。
京太郎(こいつだけは……っ!こいつにだけは、負けない!)
それは京太郎自身のこだわり……執念に近かった。
京太郎(何か……まだ何かあるはず……!)
足掻く。疲労した体に鞭打ち、脳をフル回転させる。自分の拾える全ての情報に、全神経を集中させる。
睦月「……」つ四筒
京太郎(津山さんは……六飜確定だけど、捨て牌だけ見ると染め手っぽくも見える)
高打点を目指すならおかしくはない――が、捨て牌は萬子と筒子に偏っている。染め手なら索子か?
京太郎(索子は俺が大量に抱え込んでる……その線は無いだろ)
桃子「……」つ東
京太郎(東横さん……記憶があいまいだけど、多分ちょっと前からツモ切りばっかだったな)
桃子は今、ステルス状態になっている。危険そうな牌も切って、自分の和了りを目指していたのだろう。
京太郎(……そのまま俺に振り込んでくれれば助かったんだけどな。振り込みといえば……)
睦月と桃子の河を見比べる。
京太郎(津山さんは、もしかしたらもうフリテンになってるかもな)
四七索待ちなど、睦月の有力な待ちはまだいくつか残っている。
だが全く予想できない単騎待ちなどの場合、桃子がもう切っているかもしれない。
京太郎(……といっても、睦月さんがトップになるには、ロンだと役満を和了らなきゃいけない)
ありえなくはないが、染め手も無しで数え役満を狙うのはかなりハードルが高い。まだ三倍満ツモの方が現実的だろう。
京太郎(フリテンになってても関係なさそうだな……)
ゆみ「……須賀?」
京太郎「……あっ、すみません」チャッ
河を見るのに没頭して、自分の番が来るのを忘れていた。一応ゆみの河も見ておくが、
京太郎(……オリ、だよな)
内容はそうとしか見えない……警戒のしようがない。
京太郎(……一周したけど、特に案は浮かばなかったな……)
22245(赤)77799s(南南南南) ツモ2m
京太郎(自分の捨て牌も、見とくか)
もはや思考を止めたら負けだ、という意地だけで打っている。
京太郎(……改めて見ると、索子そのものは確かに少ないけど……)
自分だけではない。索子が少ないのは河全体だ。
京太郎(ま、俺が抱え込んでるから当然か……)
つまり、絶対値だけ見れば京太郎の切った索子が特に少ないわけではない。
京太郎(……でも、この偏り……)
他家の捨て牌は字牌が多いのに比べ、京太郎の捨て牌にはやたらと中張牌が多い。もちろん、それらの多くは萬子と筒子だ。
京太郎(こんなの、染め手ですって言ってるようなモンだよなぁ――)
二萬をツモ切りしつつ、ため息を吐いて――
京太郎「――!!」
しかし、京太郎に電流走る。
京太郎(これ、は……!?)
中張牌。フリテン。ステルス。索子。染め手。――全てが、京太郎の中で繋がっていく。そして――
睦月「……」つ九索
京太郎(これだっ……!)
転機。紛れもない、天の配剤。
京太郎「ポン!」カッ
(999s)
京太郎(さあ、行け!)
力強く打ち出した、その牌は――
京太郎「……あっ、すみません」チャッ
河を見るのに没頭して、自分の番が来るのを忘れていた。一応ゆみの河も見ておくが、
京太郎(……オリ、だよな)
内容はそうとしか見えない……警戒のしようがない。
京太郎(……一周したけど、特に案は浮かばなかったな……)
22245(赤)77799s(南南南南) ツモ2m
京太郎(自分の捨て牌も、見とくか)
もはや思考を止めたら負けだ、という意地だけで打っている。
京太郎(……改めて見ると、索子そのものは確かに少ないけど……)
自分だけではない。索子が少ないのは河全体だ。
京太郎(ま、俺が抱え込んでるから当然か……)
つまり、絶対値だけ見れば京太郎の切った索子が特に少ないわけではない。
京太郎(……でも、この偏り……)
他家の捨て牌は字牌が多いのに比べ、京太郎の捨て牌にはやたらと中張牌が多い。もちろん、それらの多くは萬子と筒子だ。
京太郎(こんなの、染め手ですって言ってるようなモンだよなぁ――)
二萬をツモ切りしつつ、ため息を吐いて――
京太郎「――!!」
しかし、京太郎に電流走る。
京太郎(これ、は……!?)
中張牌。フリテン。ステルス。索子。染め手。――全てが、京太郎の中で繋がっていく。そして――
睦月「……」つ九索
京太郎(これだっ……!)
転機。紛れもない、天の配剤。
京太郎「ポン!」カッ
(999s)
京太郎(さあ、行け!)
力強く打ち出した、その牌は――
――――
京太郎「……」
桃子(な……)
――赤五索。誰に対しても危険な、ど真ん中の牌。
京太郎「……和了りですか?」
睦月「いや……」チャッ
桃子(……危なかった……)
もし京太郎が睦月に役満を振り込んでいたらと、嫌な汗をかく。
睦月「……」つ白
桃子(九索ポンして赤五切り……その意味は……)チャッ
京太郎の捨て牌は中張牌が多い。加えて京太郎の晒した牌は――南、九索。
桃子(ホンローで確定っすか)
九筒はドラだ。逆転に充分届き得る。
桃子(つまり、勝負に出た、と……)
リーチをかけたようなものだ。京太郎はここから、振り込みを覚悟で打ち続けるだろう。
桃子(そうなると……)
急いで睦月の捨て牌を再確認。
桃子(一番危ないのは、四七索の筋っすか……なら)
45667m468s22345(赤)p ツモ北
桃子(私が切るのは、これっすね)スッ
静かに、息を潜めて置いたその牌は――
京太郎「……」
桃子(な……)
――赤五索。誰に対しても危険な、ど真ん中の牌。
京太郎「……和了りですか?」
睦月「いや……」チャッ
桃子(……危なかった……)
もし京太郎が睦月に役満を振り込んでいたらと、嫌な汗をかく。
睦月「……」つ白
桃子(九索ポンして赤五切り……その意味は……)チャッ
京太郎の捨て牌は中張牌が多い。加えて京太郎の晒した牌は――南、九索。
桃子(ホンローで確定っすか)
九筒はドラだ。逆転に充分届き得る。
桃子(つまり、勝負に出た、と……)
リーチをかけたようなものだ。京太郎はここから、振り込みを覚悟で打ち続けるだろう。
桃子(そうなると……)
急いで睦月の捨て牌を再確認。
桃子(一番危ないのは、四七索の筋っすか……なら)
45667m468s22345(赤)p ツモ北
桃子(私が切るのは、これっすね)スッ
静かに、息を潜めて置いたその牌は――
睦月「……」
桃子(通った……!)
――四索。
桃子(これで一つ、可能性が消えた……!)
視界の端でゆみが山に手を伸ばし――
「そのツモ……取る必要無し、ですよ」
ゆみ「……何?」
桃子(え……)
京太郎「言っただろ、忘れないって……」バラッ
2224777s(南南南南)(999s)
京太郎「ロン。ホンイツ・トイトイ・三暗刻・ダブ南……ドラ、3。24000!」ゴッ
桃子(通った……!)
――四索。
桃子(これで一つ、可能性が消えた……!)
視界の端でゆみが山に手を伸ばし――
「そのツモ……取る必要無し、ですよ」
ゆみ「……何?」
桃子(え……)
京太郎「言っただろ、忘れないって……」バラッ
2224777s(南南南南)(999s)
京太郎「ロン。ホンイツ・トイトイ・三暗刻・ダブ南……ドラ、3。24000!」ゴッ
――――
終局
京太郎40900
ゆみ 39000
桃子 13300
睦月 6800
桃子「そんな……どうして!」ガタッ
京太郎「どうして、って言われてもな」
ゆみ「……」
京太郎「ああ、まあ……そうだな。津山さんに危険牌打ったら、東横さんが急いで潰しにいくだろうと思ってさ」
睦月「……なるほど。だからあんな所……」パタン
終局
京太郎40900
ゆみ 39000
桃子 13300
睦月 6800
桃子「そんな……どうして!」ガタッ
京太郎「どうして、って言われてもな」
ゆみ「……」
京太郎「ああ、まあ……そうだな。津山さんに危険牌打ったら、東横さんが急いで潰しにいくだろうと思ってさ」
睦月「……なるほど。だからあんな所……」パタン
マホ「じゃなくて!」
京太郎「おおっ」
マホ「なんで東横さんが見えたんですか!?」
桃子「そうっ、そこっすよ!」グイッ
京太郎「うわっ」
桃子「昨日打った時は、もっと早い段階で見失ってたはずっす!」
智美「……真面目に理由が思いつかないな。何か特別なことをしたんじゃ?」
ゆみ「……須賀。それを見せてくれないか」
ずっと左手に握り締めているメモ帳。そこに何かあるのかと、桃子も手を伸ばすが――京太郎はさっと手を上げて回避した。
京太郎「すいません、これはただのブラフなんですよ」
佳織「ブラフ?」
京太郎「ええ。最後まで開かなかったでしょう?」
ゆみ「……策など無い、と?」
桃子「そんなわけ――」
京太郎「まあ落ち着けって……その……」ポリポリ
桃子「?」
京太郎「……当たって、るから……」
……。
桃子「」バッ
マホ「……先輩?」ジトッ
京太郎「いや、俺は別に悪くないだろ!?」
智美「全く……だらしないな、きょーたんは」ニヤニヤ
京太郎「ぐっ……と、とにかく!」
謂れの無い罪を着せられる前に、びしっと桃子を指さす。
京太郎「おおっ」
マホ「なんで東横さんが見えたんですか!?」
桃子「そうっ、そこっすよ!」グイッ
京太郎「うわっ」
桃子「昨日打った時は、もっと早い段階で見失ってたはずっす!」
智美「……真面目に理由が思いつかないな。何か特別なことをしたんじゃ?」
ゆみ「……須賀。それを見せてくれないか」
ずっと左手に握り締めているメモ帳。そこに何かあるのかと、桃子も手を伸ばすが――京太郎はさっと手を上げて回避した。
京太郎「すいません、これはただのブラフなんですよ」
佳織「ブラフ?」
京太郎「ええ。最後まで開かなかったでしょう?」
ゆみ「……策など無い、と?」
桃子「そんなわけ――」
京太郎「まあ落ち着けって……その……」ポリポリ
桃子「?」
京太郎「……当たって、るから……」
……。
桃子「」バッ
マホ「……先輩?」ジトッ
京太郎「いや、俺は別に悪くないだろ!?」
智美「全く……だらしないな、きょーたんは」ニヤニヤ
京太郎「ぐっ……と、とにかく!」
謂れの無い罪を着せられる前に、びしっと桃子を指さす。
京太郎「特に理由なんかなくたって、見えたって良いだろ!」
桃子「えっ……」
京太郎「いいんだよ、影がどんだけ薄かったとしても。お前にだって、特徴はあるだろ?」
桃子「特徴……私にっすか?」
京太郎「麻雀強いし、口調も変わってるし、可愛いし。蒲原さんに言わせれば、匂いも独特らしいし」
あと胸もでかいし、というのは口にしないでおく。
桃子「か、可愛い……私が?」
京太郎「正直、凄くタイプだな。お友達になりたいくらい」
佳織「えっ、えぇっ……智美ちゃん、これって……」ボソボソ
智美「なんで佳織が慌てるんだよ」ワハハ
桃子「……友達……」
京太郎「だめか?」
桃子「でも、私、友達ってどうすればいいのか分からなくって……」
京太郎「そんなこと――」
ヴーッヴーッ
桃子「……バイブ、鳴ってるっすよ?」
京太郎「いや、良いんだ。今は東横さんと話してるだろ」
桃子「……ありがとう。それと……桃子でいいっすよ」ニコッ
京太郎「……うん。これからよろしくな、桃子」
智美「なんだこの甘い空気……」
ゆみ「……」
桃子「えっ……」
京太郎「いいんだよ、影がどんだけ薄かったとしても。お前にだって、特徴はあるだろ?」
桃子「特徴……私にっすか?」
京太郎「麻雀強いし、口調も変わってるし、可愛いし。蒲原さんに言わせれば、匂いも独特らしいし」
あと胸もでかいし、というのは口にしないでおく。
桃子「か、可愛い……私が?」
京太郎「正直、凄くタイプだな。お友達になりたいくらい」
佳織「えっ、えぇっ……智美ちゃん、これって……」ボソボソ
智美「なんで佳織が慌てるんだよ」ワハハ
桃子「……友達……」
京太郎「だめか?」
桃子「でも、私、友達ってどうすればいいのか分からなくって……」
京太郎「そんなこと――」
ヴーッヴーッ
桃子「……バイブ、鳴ってるっすよ?」
京太郎「いや、良いんだ。今は東横さんと話してるだろ」
桃子「……ありがとう。それと……桃子でいいっすよ」ニコッ
京太郎「……うん。これからよろしくな、桃子」
智美「なんだこの甘い空気……」
ゆみ「……」
――――
京太郎「それじゃ、今回はありがとうございましたー!」
マホ「ありがとうございました、です」
ゆみ「こちらこそ、勉強になったよ――いや、こういう挨拶は部長がするものだな」
睦月「はい。二人のおかげで、この二日間は大きな発見があったし……部員一同、学ばせてもらった。
あんまり学校の紹介もできなかったけど、うちに来るなら歓迎するよ」
マホ「はい!」
智美「むっきーも、かなり部長が板についてきたな。もう私がいなくても安心して任せられそうだ」ワハハ
佳織「元々、加治木先輩に任せっきりだったくせに……」
桃子「でも、本当に頼れる先輩っすよ」
京太郎「はは……では、またいつか打ちましょう」
睦月「うむ。楽しみにしているよ」
ガラッ
マホ「さよーならー!」
バタン
智美「――さ、私らも昼ごはんとするか」
睦月「そうですね、もういい時間です」
ゆみ「」スッ
桃子「先輩?」
ゆみ「……トイレだ」ガラッ
京太郎「それじゃ、今回はありがとうございましたー!」
マホ「ありがとうございました、です」
ゆみ「こちらこそ、勉強になったよ――いや、こういう挨拶は部長がするものだな」
睦月「はい。二人のおかげで、この二日間は大きな発見があったし……部員一同、学ばせてもらった。
あんまり学校の紹介もできなかったけど、うちに来るなら歓迎するよ」
マホ「はい!」
智美「むっきーも、かなり部長が板についてきたな。もう私がいなくても安心して任せられそうだ」ワハハ
佳織「元々、加治木先輩に任せっきりだったくせに……」
桃子「でも、本当に頼れる先輩っすよ」
京太郎「はは……では、またいつか打ちましょう」
睦月「うむ。楽しみにしているよ」
ガラッ
マホ「さよーならー!」
バタン
智美「――さ、私らも昼ごはんとするか」
睦月「そうですね、もういい時間です」
ゆみ「」スッ
桃子「先輩?」
ゆみ「……トイレだ」ガラッ
――――
鶴賀学園・校門前
マホ「それにしても……先輩。東横さんのこと、好きだったんですね」
京太郎「……」
マホ「先輩?」
京太郎「……へ?」
勝負の後で気が抜けたのか、京太郎はどこか上の空だ。
マホ「先輩……」
京太郎「あぁ、ごめんごめん。何の話だっけ?」
マホ「もういいです……そういえば、さっきかかってきた電話、結局誰だったんですか?」
京太郎「ああ……咲の家からだったけど。あとで掛け直してみるよ」
そして、角を曲がりかけた時――
「――須賀!」
京太郎「ん?」
マホ「加治木さん?」
ゆみ「すまない、少しいいか?」
京太郎「……時間は、と。はい、五分くらいなら大丈夫です」
マホ「マホ、また何か忘れ物でもしました?」
ゆみ「……単刀直入に聞こう。どうしてモモが見える?」
マホ「え……」
ゆみ「モモは……はっきり言って、普通じゃない。ただ影が薄いというのでは、説明がつかないんだ」
本人曰く、マイナスの気配。対局中の捨て牌やリーチといった、桃子の関わったあらゆる事象すら見えなくなる。
ゆみ「私は、自信が無い……もし、モモに会うことがなくなったら、すぐにモモのことを忘れてしまうんじゃないか」
京太郎「……」
ゆみ「教えてくれ。そのメモには……何が、書いてある?」
鶴賀学園・校門前
マホ「それにしても……先輩。東横さんのこと、好きだったんですね」
京太郎「……」
マホ「先輩?」
京太郎「……へ?」
勝負の後で気が抜けたのか、京太郎はどこか上の空だ。
マホ「先輩……」
京太郎「あぁ、ごめんごめん。何の話だっけ?」
マホ「もういいです……そういえば、さっきかかってきた電話、結局誰だったんですか?」
京太郎「ああ……咲の家からだったけど。あとで掛け直してみるよ」
そして、角を曲がりかけた時――
「――須賀!」
京太郎「ん?」
マホ「加治木さん?」
ゆみ「すまない、少しいいか?」
京太郎「……時間は、と。はい、五分くらいなら大丈夫です」
マホ「マホ、また何か忘れ物でもしました?」
ゆみ「……単刀直入に聞こう。どうしてモモが見える?」
マホ「え……」
ゆみ「モモは……はっきり言って、普通じゃない。ただ影が薄いというのでは、説明がつかないんだ」
本人曰く、マイナスの気配。対局中の捨て牌やリーチといった、桃子の関わったあらゆる事象すら見えなくなる。
ゆみ「私は、自信が無い……もし、モモに会うことがなくなったら、すぐにモモのことを忘れてしまうんじゃないか」
京太郎「……」
ゆみ「教えてくれ。そのメモには……何が、書いてある?」
京太郎「……後悔、しますよ……」
そう言いつつも、京太郎はもう逃げはしなかった。左手を緩めて、メモ帳の表紙に右手をかける。
マホ「先輩……?」
京太郎「……」
パラパラパラパラ……
ゆみ「……」
ゆみの目がメモ帳の中身を追う。しかし――
ゆみ「……?」
白紙、白紙、白紙――メモは全て白紙のまま、最後まで白紙だった。
マホ「本当に、ただのハッタリだったんですね……」
――しかし。
ゆみ「……須賀。私がこれで満足すると思うか?」
京太郎「……」ギリッ
顔に書いてある。「これで終わりではない」と――
ゆみ「全部だ。背表紙の裏まで……!」
京太郎「……」スッ
最後の一枚。メモ帳そのものを、めくる――
同時に、悲鳴が上がった。
背表紙の裏には、何も書かれて――否、何か書かれていたとしても、それは見えなかっただろう。
なぜなら、その背表紙には――赫く赫く、血がべっとりとついていたのだから。
マホ「せん、ぱい……」
だが、皆の視線は背表紙などには向いていなかった。更にその先――京太郎の、左手の平。
京太郎「……これが、俺の出した答えです」
そう言いつつも、京太郎はもう逃げはしなかった。左手を緩めて、メモ帳の表紙に右手をかける。
マホ「先輩……?」
京太郎「……」
パラパラパラパラ……
ゆみ「……」
ゆみの目がメモ帳の中身を追う。しかし――
ゆみ「……?」
白紙、白紙、白紙――メモは全て白紙のまま、最後まで白紙だった。
マホ「本当に、ただのハッタリだったんですね……」
――しかし。
ゆみ「……須賀。私がこれで満足すると思うか?」
京太郎「……」ギリッ
顔に書いてある。「これで終わりではない」と――
ゆみ「全部だ。背表紙の裏まで……!」
京太郎「……」スッ
最後の一枚。メモ帳そのものを、めくる――
同時に、悲鳴が上がった。
背表紙の裏には、何も書かれて――否、何か書かれていたとしても、それは見えなかっただろう。
なぜなら、その背表紙には――赫く赫く、血がべっとりとついていたのだから。
マホ「せん、ぱい……」
だが、皆の視線は背表紙などには向いていなかった。更にその先――京太郎の、左手の平。
京太郎「……これが、俺の出した答えです」
ゆみ「っ……!!」
絶句するゆみの前で、京太郎は痛みに顔を歪めながらまたメモを握り締める。
マホ「どうして、そんな……」
京太郎「……こうやって、痛い思いをしてれば……絶対、忘れられないだろ?」
ゆみ「だから、自分の手に……刻んだというのか……!?」
京太郎「ええ。カッターでね……痛くて痛くて、眠れませんでした」
はは、と乾いた笑いを漏らす京太郎。
ゆみ「なぜ、そこまで……」
京太郎「……なぜ、ですか」
何が京太郎をここまで駆り立てたのか。
京太郎「もちろん――勝つため、ですよ」
ゆみ「たった一回の、勝利のために……?」
京太郎「……俺にとっては、譲れないものだったんです」
桃子は仕方ないことだと言った。だが京太郎は受け入れられなかった。
京太郎「どんな理由があれ、誰だって……他人から、そう簡単に忘れられていいわけがない」
ゆみ「……!」
京太郎「そして、どんな理由があれ……俺はそう簡単に他人のことを忘れたくない。これは……」
京太郎「自分との、戦いっすよ」
絶句するゆみの前で、京太郎は痛みに顔を歪めながらまたメモを握り締める。
マホ「どうして、そんな……」
京太郎「……こうやって、痛い思いをしてれば……絶対、忘れられないだろ?」
ゆみ「だから、自分の手に……刻んだというのか……!?」
京太郎「ええ。カッターでね……痛くて痛くて、眠れませんでした」
はは、と乾いた笑いを漏らす京太郎。
ゆみ「なぜ、そこまで……」
京太郎「……なぜ、ですか」
何が京太郎をここまで駆り立てたのか。
京太郎「もちろん――勝つため、ですよ」
ゆみ「たった一回の、勝利のために……?」
京太郎「……俺にとっては、譲れないものだったんです」
桃子は仕方ないことだと言った。だが京太郎は受け入れられなかった。
京太郎「どんな理由があれ、誰だって……他人から、そう簡単に忘れられていいわけがない」
ゆみ「……!」
京太郎「そして、どんな理由があれ……俺はそう簡単に他人のことを忘れたくない。これは……」
京太郎「自分との、戦いっすよ」
――――
数日後、清澄高校麻雀部
優希「京太郎ー!タコス一丁ぉー!」
京太郎「へいへい、ちょっと待て」
和「ロンです」バラ
まこ「む、ここじゃったか……」チャラ
久「そうだ、須賀君。鶴賀はどうだったー?」
優希「勝ってきたかー?」
京太郎「ん、まあ一応……な。ただ、結局加治木さんからは直撃取れなかったわ」
久「あー、ゆみね……」
京太郎「ま、別に直撃取らなくても勝ちは勝ちなんですけどね……」
まこ「それは別として、京太郎。その手、大丈夫なんか?前から包帯グルグル巻きじゃが」
優希「あー……」
久「そういえば、まこはまだ聞かされてなかったわね……」
まこ「?」
狂堕狼「フッフッフ、安心して下さい。この魔手(て)はもう大人しいもので……くっ!こんな時に!
静まれ、俺の左手よ!……ふう。中々、手懐けるのも楽じゃないぜ……」
まこ「……こんなキャラじゃったか?京太郎」ボソ
久「しっ、そっとしておきましょう……」ボソボソ
京太郎「……ところで、咲は?最近あんまり見かけないけど……」
……。
京太郎「え?何この沈黙」
優希「知らなかったのかー?」
久「須賀君には真っ先に話してるものだと思ってたけど……」
京太郎「え?え?」
和「咲さん、転校するんですよ?」
京太郎「……は?」
To be continued……
数日後、清澄高校麻雀部
優希「京太郎ー!タコス一丁ぉー!」
京太郎「へいへい、ちょっと待て」
和「ロンです」バラ
まこ「む、ここじゃったか……」チャラ
久「そうだ、須賀君。鶴賀はどうだったー?」
優希「勝ってきたかー?」
京太郎「ん、まあ一応……な。ただ、結局加治木さんからは直撃取れなかったわ」
久「あー、ゆみね……」
京太郎「ま、別に直撃取らなくても勝ちは勝ちなんですけどね……」
まこ「それは別として、京太郎。その手、大丈夫なんか?前から包帯グルグル巻きじゃが」
優希「あー……」
久「そういえば、まこはまだ聞かされてなかったわね……」
まこ「?」
狂堕狼「フッフッフ、安心して下さい。この魔手(て)はもう大人しいもので……くっ!こんな時に!
静まれ、俺の左手よ!……ふう。中々、手懐けるのも楽じゃないぜ……」
まこ「……こんなキャラじゃったか?京太郎」ボソ
久「しっ、そっとしておきましょう……」ボソボソ
京太郎「……ところで、咲は?最近あんまり見かけないけど……」
……。
京太郎「え?何この沈黙」
優希「知らなかったのかー?」
久「須賀君には真っ先に話してるものだと思ってたけど……」
京太郎「え?え?」
和「咲さん、転校するんですよ?」
京太郎「……は?」
To be continued……
なんとか年内に投下完了。
また長いこと留守になると思いますが、どうぞのんびり待ってやって下さい。
それでは、良いお年を~
また長いこと留守になると思いますが、どうぞのんびり待ってやって下さい。
それでは、良いお年を~
京誕じゃないか……カプスレで思い出したよ
例によって更新できません。とりあえず京太郎おめでとう
例によって更新できません。とりあえず京太郎おめでとう
二ヶ月経ちそうなんでとりあえず生存報告。
最近カプ総合スレで闘牌がはやってるっぽいけど、
正直>>1はハイクオリティな普通の闘牌なんて書ける気がしないので
これからも能力全開な麻雀で行こうと思います。
最近カプ総合スレで闘牌がはやってるっぽいけど、
正直>>1はハイクオリティな普通の闘牌なんて書ける気がしないので
これからも能力全開な麻雀で行こうと思います。
二ヶ月おきの生存報告。
しかし状況がろくに進んでいない今日このごろ。
しかし状況がろくに進んでいない今日このごろ。
生存報告ー……
暑いけど今日も生きてます。
熱中症に気をつけて……
暑いけど今日も生きてます。
熱中症に気をつけて……
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