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    元スレ京太郎「俺たちの……」マホ「可能性……?」

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    251 : 以下、名無しにか - 2017/08/29(火) 19:41:27.48 ID:aPEd3P/00 (+24,+29,-10)
    1ヶ月過ぎてたか、忙しいなら仕方ないし無事なことだけ祈ろう
    252 : 以下、名無しにか - 2017/09/14(木) 23:36:36.33 ID:vXIg4mlSo (-18,-6,-4)
    253 : ◆3em28n - 2017/09/20(水) 07:36:57.42 ID:zLP7ncc40 (+24,+29,-21)
    そろそろ二ヶ月経つので生存報告。もう半年も止まってると思うと待ってくれている人に申し訳なく思います。
    少しずつ進んではいるので、まだエタることはないです。
    254 : 以下、名無しにか - 2017/09/20(水) 08:05:30.29 ID:YY9Gp0LQO (+0,+14,-1)
    待ってる
    255 : 以下、名無しにか - 2017/09/20(水) 12:25:49.79 ID:76+ibd3AO (+5,+20,-2)
    待ってます~
    256 : 以下、名無しにか - 2017/10/19(木) 18:07:44.48 ID:N7hEp2mB0 (+8,+23,-3)
    待ってるぞ
    257 : ◆3em28n - 2017/11/18(土) 15:19:26.44 ID:21TfPOVE0 (+30,+30,-46)
    もうそろそろこのスレも記念すべき一周年(白目)
    多分今年のうちには投下する……したい。がんばる。
    敦賀も三部構成にしておけば良かったと後悔してますが、もうかなり出来上がってるんで後編は一気にやります。
    258 : 以下、名無しにか - 2017/11/18(土) 20:33:56.17 ID:luJBKFkko (+19,+29,-3)
    エタってなかったやったー!
    259 : 以下、名無しにか - 2017/12/16(土) 21:52:04.13 ID:RMI4JoYzO (+8,+23,-4)
    生きてる?
    260 : ◆3em28n - 2017/12/20(水) 22:29:00.31 ID:L/j4VbIY0 (+24,+29,-15)
    マホ誕いぇい~
    生きてるけどインフルかもしれない。
    投下できない非力な私を許してくれ……
    261 : 以下、名無しにか - 2017/12/23(土) 01:18:55.90 ID:j7d+aAdco (+19,+29,-3)
    いつまででも待つぜ。
    262 : 以下、名無しにか - 2017/12/26(火) 15:12:16.14 ID:x7768ZJCO (+13,+28,-1)
    生存報告来てた
    263 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 22:35:03.31 ID:tgL1bz3k0 (+24,+29,-6)
    ようやく最終チェックまで終わったんでひっそり投下します
    264 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 22:36:05.77 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,+0)
    二日目、宿にて


    マホ「ふあぁ……おはようございます、せんぱ――って、なんですかそのクマ!?」

    京太郎「……おはよう、マホちゃん。ごめん、もうちょっとトーン下げてくれないかな……」

    寝不足の頭に、マホの高い声がガンガン響く。

    京太郎「昨夜は、あまり寝れなくて……」フア

    マホ「……またですか」

    京太郎「また……まあ、まただな。大丈夫、慣れてるから」ニヘラ

    相手を安心させる笑いを心掛けたつもりだったが――マホは、表情をさらに暗くしただけだった。

    マホ「先輩の普段の生活が、不安です」

    京太郎「……さすがに、いつもこんなクマ作ってるわけじゃないから。いやほんと、普段は寝てるって」

    マホ「……今日は、どのくらい寝たんですか?」

    煙に巻こうかと思ったが、マホの真剣な顔を見てやめた。

    京太郎「寝てない」

    マホ「えっ……」

    京太郎「寝てないんだ、昨夜は……全く眠れなかった。……なんでかっていうと、」

    言葉を切って、頭を少しだけ働かせる。

    京太郎「昨日、東横さんに負けたのが……結構ショックだった、というか。なんか、落ち着かなくてな……」

    マホ「……」

    マホの労るような視線に、申し訳ない気持ちになる。なんとか空気を変えられないものかと、声を明るくする。

    京太郎「でも、おかげで東横さんと打つ算段はついた……一晩中、考えて。マホちゃんはどう?」

    マホ「マホは……一応、考えてはきました。忘れないように、メモってます」

    京太郎「忘れないように、な……」

    マホの言葉を反芻して、今まで後ろに隠していた左手を出す。

    マホ「あ、それ……」

    京太郎「俺もな、買ったんだ。つい昨日」

    京太郎の手はそのメモを包み込むように――否、握り締めるように持っていた。

    マホ「……あまり、無理はしないで下さいね」

    京太郎「……ああ。わかってるよ」
    265 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 22:36:50.64 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,-204)
    ――――

    マホ「先輩、ふらふらしてますよ……見てて危なっかしいです」

    京太郎「はは、まさかマホちゃんに……そんなこと言われるとはな……」

    軽口を叩きながら、廊下を歩く京太郎の足取りはやはり覚束ない。

    京太郎(ん、もう着いた……?いや、違う。確かこの一つ上だ)

    部室によく似た教室を見かけて、すぐに否定する。

    京太郎(危ない危ない……こんなんで間違えてたらまたマホちゃんに心配される)

    間違えそうになりつつも、マホの前を歩くことはやめない。
    見られていると思った方が、しっかりできると思ったからだ……今のところ、上手くはいってないが。

    京太郎(階段、意外とキツくなかったな……)

    すぐそこに部室が見える。うん、鶴賀学園麻雀部で間違い無い、ドアに手を当て――

    京太郎「……?」

    押す。硬い感触しか返ってこない。

    マホ「先輩……?」

    京太郎「……いや、なんでもない」

    すぐ気付く――引き戸だ。取っ手を見れば一目瞭然だ。

    京太郎(……俺、相当判断力鈍ってんなぁ)

    ようやく自分の状態に気付き、苦笑する。だが、ここで素直に帰るなどという選択肢は今の京太郎には無かった。

    京太郎「失礼します……!」ガラ
    266 : 以下、名無しにか - 2017/12/31(日) 22:37:30.93 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,-180)
    マホ「おはようございます~」

    睦月「うむ、おはよう」

    京太郎「おはようございます」

    ゆみ「どうした、随分と顔色が悪いぞ」

    智美「もしや、きょーたんも当たったのか!」

    京太郎「いえ、その……少し、眠れなかっただけです」

    ゆみ「そうか。……大丈夫なんだな?」

    京太郎「はい。――ていうか、なんですか『当たった』って」

    睦月「部ちょ――蒲原先輩、お腹壊したんだって」

    桃子「全然、元気そうっすけどね……」

    智美「いやー、今朝起きたら腹がすごく痛くってな。まいったまいった……」

    佳織「また、何か賞味期限切れのものでも食べたんでしょ」

    智美「ワハハ、今までそんなことをした覚えは無いなー!まあ、腹痛の方はもう大丈夫だ。適当に風邪薬のんだら治まった」

    ゆみ「腹痛に風邪薬……プラシーボ効果というやつか……?」ブツブツ

    佳織「もう……」
    267 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 22:38:14.14 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,-141)
    ――――

    ゆみ「さて、津山?今日は……」

    睦月「はい、準備はできています」

    ゆみ「そうか。楽しみにしていたぞ」

    京太郎「?」

    マホ「何の話ですか?」

    智美「今日は、むっきーが部長になって初の『対策会議』の日なんだ」

    京太郎「対策会議……?」

    桃子「そういえば、今日だったっすね。すっかり忘れてたっすよ」

    佳織「他校の打ち手を調べて、その対策を練るの」

    睦月「うむ。今日はとりあえず、私だけ発表する……でも、質問・意見はどんどん言って下さい」

    ゆみ「ん、了解した」
    268 : 以下、名無しにか - 2017/12/31(日) 22:39:04.71 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,+0)
    ――――

    睦月「――つまり、突然スピード重視の打ち回しになったわけですが――」

    マホ(はえー、すごいです……)

    机の上に置かれている仮想敵の写真を見て、なにかの手配書のようだとマホは感じた。

    ゆみ「――なるほど。しかし、それまでは――」

    睦月「――はい、状況も見たのでしょうが、IH以前から考えていたことは充分にあり得るかと――」

    マホ(ううん……難しくてよく分かんないです……)

    鶴賀の面子が意見交換をしているのを、別世界の出来事のように見ることしかできない。

    睦月「では、次に中堅、これも三年の――」

    京太郎「……」

    マホ(先輩、凄い集中してる……)

    手元の資料を凝視する京太郎に、ちらちらと視線を向けるが全く気付かれない。

    睦月「――さて、次は副将ですが……この人は大将と一緒に説明すべきでしょう」

    佳織「……大丈夫?ついていけてる?」ボソ

    睦月が説明を続ける中、佳織が顔を向けてくる。心配してくれているのだろうが――

    マホ(むっ……そういう妹尾さんだって、本当に理解してるんですか?)

    いつもなら素直に分からないですと言えるのに、佳織に対しては、妙なプライドが邪魔をする。

    マホ「……大丈夫ですよ」

    佳織「そっかぁ……私は全然ついてけないよ。あ、智美ちゃん」

    智美「んー?」

    佳織「スピード重視とか打点重視とかのスタイルって、変えるのそんなに難しいことなの?」

    智美「あー、それはな――」

    マホ(あ、れ……?)

    てっきり「分かんないよねー」と同意して欲しいだけだと思っていた。だが、佳織はちゃんと分からない所を智美に聞いている。
    これではまるで……

    マホ(マホだけ、本当に何も分かってないみたいじゃないですか!?)

    実際その通りなのだが、心のどこかで佳織を侮っていたマホにとってはショックだった。

    マホ(運が良すぎるから……何も考えずに打っても勝てるとか、そんな風に考えてるんだと……思ってたのに……)

    真剣に話す鶴賀の面子を見て、マホは一人取り残されたような気分になった。
    269 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 22:40:06.56 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,-152)
    ――――

    睦月「では、今回はこんなもので」

    対策会議は一時間ちょっとで終わった。

    睦月「次回はまだ未定ですが、できれば発表する側にも積極的に参加して欲しいです」

    パチパチパチハ……

    ゆみ「お疲れ様。良かったよ」

    津山「ありがとうございます」

    マホ「……」

    あの後、なんとか理解しようと努力したものの――残念ながら、頭がショートしただけだった。

    京太郎「……マホちゃん?」

    マホ「……」

    京太郎「マホちゃん!」トントン

    マホ「はっ!す、すいません。ぼーっとしてて」

    京太郎「……今からウォーミングアップみたいな感じで東風打つらしいけど、大丈夫?今はやめといた方がいいか」

    マホ「いえっ、大丈夫です!全然いけます!」

    京太郎「ん……じゃあ卓ついて。俺も打つ」
    270 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 22:41:00.14 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,-115)
    ――――
    東一局

    マホ「起家です!」タン

    佳織「……これかな」トン

    睦月「……む」トッ

    京太郎「……チー」パラ

    ――――

    京太郎「ん……ツモ。タンヤオ三色、えーっと……」

    睦月「500-1000だよ」チャラ

    京太郎「あっ、はい。すいません」

    睦月「……」

    ――――
    東二局

    マホ「ポン!」

    睦月「二鳴きか……」

    マホ(妹尾さんの親、早く和了らなきゃ……!)

    ――――

    三人「「「ノーテン」」」

    マホ「テンパイ……です」

    佳織「あ、役無しだったんだ」

    マホ(少し、急ぎすぎました……)
    271 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 22:41:58.40 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,+0)
    ――――
    東三局一本場

    京太郎「……リーチ、しとくか」タン

    マホ「五巡目……」トン

    タッ……トン……

    京太郎(やっぱり来ないな……字牌単騎じゃ)タン

    睦月「ロン。白東ドラ2、12300」

    京太郎「はい」チャラ

    京太郎(取り込まれてたか……これは痛いな)パタン

    ――――
    東三局二本場

    京太郎「……」タン

    マホ「……」トッ

    睦月「ポン」パラ

    京太郎「……」ピク

    睦月(ん、あの表情……勝負手だな)トン

    京太郎「……」タッ

    トン……ストッ……

    睦月「……ツモ。タンヤオのみ、700オール」バラ

    京太郎「……!」パタン

    睦月(リードしている身としては安手で連荘したくなかったが……うむ。難しい所だ)フゥ

    ――――
    東三局三本場

    京太郎(安手で清一色の三倍満を流されたか。さっきの津山さんの顔……もしかして俺、読まれたのか?)チャッ

    コンディションが悪いせいでポーカーフェイスを保てていないのかもしれない。

    京太郎(く……痛ぇな。でも、捨て牌の判断は絶対に間違えないようにしないと)タン

    ――――

    京太郎「よし、ロン……チートイ、ドラ1。4100」パラ

    佳織「あ……これ、だめだったかぁ」チャラ

    睦月「字牌の地獄待ち……うむ、これは仕方ないな」

    マホ「ですね……」パタン
    272 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 22:43:11.90 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,-210)
    ――――
    オーラス

    京太郎(ラス親……逆転できるか?)タン

    マホ「……」タン

    佳織「あ、これなら……」チャッ

    京太郎(……?)

    佳織「……」トン

    ――――

    マホ「よおし、カン!」パタ

    睦月(まさかこれは……!)

    マホ「嶺上……開花ならず、です」つ八萬

    京太郎「……」フゥ

    睦月「カンドラ、めくるよ……九索、つまり一索か」

    佳織「あ……夢乃さんそれ、チーです」つ九萬

    (789m)

    睦月(む……鳴きか。珍しいな……とりあえずオリておこう)トン

    京太郎「……」トッ

    マホ「……」トン

    佳織「……あっ!で、できましたっ、ツモです!」バラッ

    111m11s11199p ツモ1s (789m)

    佳織「純チャン、三暗刻、三色同刻ドラ3……4000-8000、です!」

    睦月「倍満……ああ、ちょうど捲られたか」パタン

    京太郎「凄い手牌ですね、相変わらず……」

    マホ「あ……マホの、カンで……っ!」

    佳織「うん、カンドラが増えたから、捲れるなって……えっと、清老頭?も和了りたかったんだけどね」

    智美「ほー……佳織、成長したな」

    佳織「ふふっ……。まあ、ともあれ……」

    「「「「ありがとうございました」」」」
    273 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 22:44:53.55 ID:tgL1bz3k0 (+65,+30,+0)
    ――――

    智美「じゃあ、次は私たちだ」

    ゆみ「モモ、打つぞ」

    桃子「はい!三麻っすか?」

    智美「人数足りてるのにそれもなー……よし、むっきー入ってくれ」

    睦月「はい」

    ジャラジャラ……

    佳織「ふう……暑いねー」

    マホ「……妹尾さん。ごめんなさい」

    佳織「? なんで?」

    マホ「さっきまで、その……妹尾さんのこと、『マホと同じ』初心者さんだと思ってました」

    佳織「?同じかどうかは分かんないけど、私はまだまだ初心者だと思うよ」

    マホ「妹尾さんは……マホみたいな初心者じゃありません。凄く運が良いのに、それだけに頼らない……マホとは全然違う」

    佳織「……」

    マホ「最後の局……マホは頼りました。自分の『真似』に。宮永先輩の強さに。そして……失敗しました。
    妹尾さんは、マホとは真逆……。増えたカンドラを見てすぐ、役満手を崩してテンパイしました」

    何も考えずに能力に頼ったマホ。状況の変化にも柔軟に対応して、与えられた幸運を有効に使った佳織。

    佳織「……私だって、『幸運』ありきだよ。役満も作れるような恵まれた配牌だったからこそ、鳴いても捲りきれたんだから」

    マホ「いいえ……妹尾さんは、幸運を力にできている。
    それに比べてマホは、ただ真似してみただけです。嶺上牌で和了れる確信も無かったのに……」

    和が言っていた。安直なカンはかえって損をする……と。マホの損は、相手のドラを増やしただけではない。
    「嶺上開花ならず」……その宣言はテンパイを教えるようなもの。佳織に、早和了りを目指す理由の一つを与えたとも言える。

    マホ「あんなの、ゼロどころかマイナスです。失敗ばっかりするぐらいなら、真似なんてしない方が……妹尾、さん?」

    佳織「うん、ちょっと待ってね……」

    佳織がゴソゴソとバッグを漁っている。

    佳織「ん……あ、あったあった」

    マホ「……これは……」

    佳織がバッグから取り出したのは、数冊のメモ帳だった。

    佳織「夢乃さん。失敗するのって、そんなに悪いことかな?」

    マホ「え……?」

    佳織「ううん……もちろん、絶対に失敗しないなら、それが一番良いのかもしれない。
    でも、私は失敗から多くのことを学んできたと思う」

    マホ「失敗から、学ぶ……」

    佳織のメモ群に目を落とす。もうだいぶ使い込まれたあとのようで、角が少しすり減っていた。

    佳織「これね、私が失敗する度に……智美ちゃんや加治木先輩なんかが、色々教えてくれたの。
    それを、忘れたくないから……こうやって、メモしてって……」

    一つ一つを開く。チョンボと罰則について、和了率を上げるためにどんな打ち方をすればいいか、オリる基準は……。
    それらのほとんどが、佳織自身の失敗例から綴られていた。

    佳織「失敗は成功のもとって言うでしょ。同じ失敗を繰り返すこともあるけど、それはもう一回反省すればいいだけ。
    私は、そうやって成功に……前に向かって進んで行くんだと思う。だから、夢乃さんも失敗を怖がらなくていいんだよ」

    マホ「……そう、ですね。失敗しても、くじけてちゃ……ダメですよね!」

    佳織「うん!そう……今回の失敗から、また一つ成長できた……そんな風に、プラスに考えていけばいいんだよ」

    マホ「じゃあ……妹尾さん!次こそ、負けませんよ!」

    佳織「ふふ……お手柔らかに、ね?」
    274 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 22:46:31.49 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,+0)
    ――――

    京太郎「……」


    桃子「ポン」カシャ

    智美「ん……」トン


    京太郎(……ダメだ、全然頭が働かない)

    ゆみたちのウォーミングアップを観戦しているのだが、徹夜からくる疲労感と痛みのせいで集中できない。


    佳織「へ~、能力の理解ね……」

    マホ「はい、だからまだ染谷先輩のは――」


    京太郎(さっきから、マホちゃんと妹尾さんは何を話してるのか……いや、気を逸らすな。加治木さんの打ち筋を見るんだ……)


    ゆみ「ロン、チートイのみ」バラッ

    智美「あちゃー、そこだったか……」チャラ


    京太郎(昨日から見てて思ってたけど、結構チートイ和了るな……)

    だが、まだ誤差で片付けられる程度だ。それよりも……


    ゆみ「……」ピタ

    ゆみ「ん……これだな」トッ


    京太郎(うん……やっぱり、当たり牌を察知する能力みたいなのが、高いのか……?)

    厳密には振り込みがゼロということは無いが、不注意な振り込みはまず無い。

    京太郎(今止めた牌も、河を見ればそんなに危険そうじゃないけど、津山さんの和了り牌……どうやって判断してるんだ)


    桃子「ロン。リーチ白ドラ……6400っす」

    睦月「あっ……」

    ゆみ「……終わりだな。津山、見失っていたのか?まだ少し早いと思うが」

    睦月「いえ……普通にうっかりしてました」

    智美「ワハハ、そういうこともあるよなー」


    京太郎(――く、加治木さんに関しては……もう、体当たりで情報集めるしかないか……)

    痛みに悩まされながら、京太郎は役に立たないメモ帳を握りしめた。
    275 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 22:47:44.92 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,-258)
    ――――

    睦月「うむ……ウォーミングアップはこんなものか」

    佳織「時間は……お昼まであと一時間半くらいか。マホちゃんたちは何時に帰るんだっけ?」

    マホ「えっと……大体12時半くらいですよね?先輩」

    京太郎「ん……だな。半荘2、3回ぐらいですね、参加できるのは」

    智美「いやー、悪いな。対策会議の日とたまたま被ったせいで、あんまり打つ方に時間取れなくて」

    京太郎「いやいや、そっちも勉強になりましたから」

    マホ「それに、一回で十分です!今日は、佳織さんに勝つのが最終目標ですから」

    ゆみ「なるほど……いい気合いだ」

    京太郎(いつの間に名前呼び……いや、それはさておき)

    京太郎「……東横さんはいいのか?」ボソッ

    マホ「はっ!?……忘れてました!」

    桃子「……ま、良いっすけどね」ユラッ

    マホ「い、いえっ!ごめんなさい、でも東横さんにも負けませんからね!」ビシッ

    桃子「――あっ、電話……」スッ

    マホ「……あ、相手にされてない……!?」

    京太郎「ま、がんばれ」ポン
    276 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 22:48:48.19 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,-295)
    ――――
    東一局
    桃子(起)25000
    マホ(南)25000
    智美(西)25000
    佳織(北)25000

    桃子「起家っすか」ポチッ

    コロコロコロ……

    佳織「よろしくお願いします」

    智美「よろしくなー」

    マホ「……よろしくお願いします」

    桃子「よろしくっす……サイコロは……左四っすか……」カチャカチャ

    マホ(東横さんが起家……。なら……!)

    ――――

    トン……タン……

    桃子「……」トッ

    マホ(……よし)チャッ

    自分は腹芸が得意ではない、とマホは自覚している。

    マホ(だから様子見は無しで、最初から全力でいきます。東横さんが親の、この時に……)タンッ

    智美「……」トン

    佳織「……」トン

    マホ(本当は、自分の親で全力を出すべきなのかもしれないけど……)

    今真似しているのは、今までに真似したことの無い人物。

    マホ(上手くいかない可能性を考えると……親の時はやめておこうと思いました)

    桃子「……」トン

    マホ(それに――この打ち方は、親じゃなくても充分な威力が出る!)スッ

    考えるのは『最も近い役満』。一見して無謀な狙いこそ、愚直な初心者の特権。

    マホ「ツモ!」バラッ

    佳織「あっ……!」


    2333466688s發發發 ツモ3s


    マホ「緑一色……8000-16000!」

    ――ビギナーズラック。それは初心者の全てに降りかかる物ではない。

    マホ(強運だけじゃない……自分のツモを信じて、まっすぐに一つの役を目指す。
    そんなことができる人を――)

    佳織「……さすが、マホちゃん」チャラ

    マホ(マホは、尊敬します!)ゴッ
    277 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 22:49:57.25 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,-312)
    ――――
    東二局

    マホ「親、このまま押し切ります……!」モグモグ

    智美「ワハハ、タコスか……お腹空いてきた」トッ

    マホ(ん、なんかあんまり……タコスぢからを感じないです。これはダメかも……)

    トン……タッ……

    ――――

    智美(もう七巡目、あのタコス娘なら張っててもおかしくないなー……)トン

    佳織「ん……」タッ

    智美(お、あの捨て牌……)

    佳織にテンパイの香り。

    桃子「……」トン

    智美(マホからテンパイ気配はしない……でも、念のため流すか)

    幸い、佳織は二回鳴いて、捨て牌も偏っている。どこで待っているか大体わかる。

    マホ「……」タン

    智美(この筋だろ!)タッ

    佳織「あ、ロン。三色ドラ1、イーペーコー……は鳴いたら付かないんだった。2000?」バラ

    智美「ん、そうだな。30府二飜」チャラ

    マホ「……親、流れちゃいました」パタン

    ――――
    東三局

    マホ「リーチ!」タンッ

    智美「攻めるなー……」タン

    佳織「うーん、ちょっと待って……これ」トン

    桃子「……」トッ

    マホ「一発……ならずです」トンッ

    智美「お、それロン。平和ドラ3、11600」バラ

    マホ「ぁう……」チャラ

    佳織「あ、張ってたんだ……私の、見逃した?」パタン

    智美「ワハハ、まあなー」

    マホ(リードしてるからって、調子に乗っちゃいました……トップの方が狙われやすいんだから、気を付けないと)

    桃子「……」パタン
    278 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 22:51:28.06 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,+0)
    ――――
    東三局一本場

    智美(親)27600
    佳織(南)19000
    桃子(西)9000
    マホ(北)44400

    智美「リーチ!」タッ

    マホ「今度は振り込みません……!」

    佳織「……」トン

    ――――

    佳織「……もうそろそろ、終わり?」トッ

    桃子「チー」カシャッ

    智美「そうだな、もう流局だ」

    マホ「……これで最後ですね」トン

    智美「テンパイ。いやー、三面待ちでも中々来ないな」バラッ

    マホ「ノーテンです」パタン

    佳織「ノーテン……」パタ

    桃子「テンパイ」バラ

    ――――
    東三局二本場

    智美「お、良いな……リーチ」タンッ

    佳織「え、ダブルリーチ……?」トッ

    桃子「元部長、ちょーしイイっすね」トン

    マホ(四向聴……安牌もあるし、ひとまずオリです)トン

    タン……トン……

    ――――

    佳織「あ……ツモ」パラ

    智美「ん、先に和了られたか」パタン

    マホ「お手本みたいなタンピンですね!」パタン

    佳織「うん、でも2700点……いや、リーチ棒と積み棒で5300か。でもリーチかけたかったなあ……」

    少し悔しそうな佳織。

    智美「私のダブリーをちゃんと警戒したか。
    結果的にはリーチかけてた方が良かったけど、こういう判断ができるようになったのは良いことだ」チャラ

    智美(佳織は昔から、何やらしても運が良いやつだったけど……その分、基本的な所が弱いままってことが多かった。
    運の要素が強いゲームだと、あんまり考えなくても勝っちゃうからな)

    昨日も京太郎を相手に役満を連発していた。横で見ていて、宝くじでも買えば良いのにと思ったほどだ。

    智美(でも、佳織は確実に成長してる……麻雀はなんだかんだで、運だけでは勝てないからな)
    279 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 22:53:10.33 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,-163)
    ――――
    東四局

    佳織「サイコロ、振るね」

    ポチッコロコロ……

    マホ(来ましたね……)

    佳織の親。軽く目を閉じ、昨日の九蓮宝燈・16000オールを思い出す。

    マホ(佳織さんが幸運を発揮するタイミングは分からないけど……親の役満だけは、絶対に阻止したい)ザワッ

    ゆみ「ん……?」ピクッ

    集中する。卓を、山を、押さえつける感覚。

    マホ(ここは……奥の手を使います!)ゴッ

    ――――

    京太郎(この感じは……!)ゾワ

    忘れようもない、この感覚。対面側から見ているゆみも目を見張っている。

    京太郎(間違い無い。この力は……)

    天江衣の、『支配』。

    京太郎(まさか、衣さんの真似まで……マホちゃん、いつの間に……)

    戦慄する京太郎をよそに、粛々と配牌は進んでいく。
    280 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 22:54:30.29 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,-110)
    ――――

    マホ(この配牌……)

    1299m5(赤)78s799p北發中

    マホ(四向聴だけど、なぜか和了れそうな感じがします)

    ドラは八筒。山の最後を見る。

    マホ(海底をツモる番じゃないけど……海底で和了れる気がする)チャッ

    衣の話によれば、海底で和了れる確信がある時は自然と自分に海底が回ってくるという。

    マホ(自然と……つまり、普通に鳴けば海底コースに入れるはず……)つ赤五索

    ――――

    智美(いきなり赤ドラか)チャッ

    何やらヤバい匂いがする。

    智美(安手の二向聴……さっさと流せるなら流したいけど)タッ

    トン……タン……

    智美(今回は、そう上手くはいかない気がするな……)トン
    281 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 22:55:26.24 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,-225)
    ――――
    十巡目

    京太郎(マホちゃん……多分このスピードは、海底狙いだな)

    マホ「……」チャッ

    127899m789s1799p ツモ南

    マホ「……」つ南

    京太郎(でも、まだ誰も鳴いてない……このままだと海底はツモれないぞ)

    智美「……」つ東

    佳織「……」つ中

    京太郎(みんなツモ切りか……やっぱ怖いな、この能力)

    桃子「……」つ三萬

    京太郎(お、あれを鳴けば――)

    マホ「……」チャッ

    京太郎(スルー?……ああ、そうか。そうだったな……)

    マホ「……」つ四索

    智美「……」つ南

    佳織「……」つ東

    桃子「……」つ九筒

    京太郎(また全員ツモ切り……)

    マホ「……」チャッ

    ――――

    マホ「……」つ七筒

    智美(もう十二巡目……)チャッ

    三巡目に一向聴になってから、全く手が進んでいない。他家もほとんどツモ切りばかり。

    智美(龍門渕の天江か……とんでもない隠し球だな)ワハハ

    この状況を作り出せるのはマホしか考えられない。つまり、マホ以外は全員この状態と見ていいだろう。

    智美(逆に考えれば、マホにだけ気を付ければいいってことだ。……まあ、具体的な方策は無いんだけどな)つ九筒

    マホ「ポン!」つ七筒

    カシャッ

    智美(動いた……お)チャッ

    ここに来て悪くない引き。有効牌ではないが、待ちが広がる。

    智美(ようやくツモ切り地獄から解放されたか……よし、これは現物だな)つ二索

    トン……タッ……
    282 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 22:57:52.85 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,-178)
    ――――

    マホ(まだ海底コースに入れてない……)つ八索

    何か妙な違和感がある……マホは少し焦りを感じてきた。

    智美「……」つ北

    佳織「……」つ九萬

    マホ(ん、佳織さん手出し……?あっ、それ!)

    鳴ける牌。

    マホ「ポン!」カシャッ

    よし、これで――

    マホ(あ、れ……?)

    1278m789s1p(999p)(999m)

    マホ(これじゃ、海底コースにはなっても一向聴のままじゃないですか……)つ一筒

    さらに。

    智美「……」チャッ

    マホ(え?何か……下家から、変なオーラ?を感じます)ピリッ

    オーラというか、気配というか。マホが今まで感じたことの無い感覚。

    マホ(これが、衣さんの言ってた感覚……?だとしたら、もしかして蒲原さんが張った!?)

    智美「……」つ六筒

    マホ(手出し……やっぱり、テンパイした?でも、普通に打ってれば流局直前まで誰もテンパイできないはず……)

    佳織「……」つ西

    マホ(マホは、どこで間違えたんでしょう……)
    283 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 22:58:43.90 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,-235)
    ――――

    トン……トッ……

    智美(さて……マホの二回ポンでツモが増えたおかげか、なんとかテンパイできたけど……)チャッ

    山はあと七枚。

    智美(あのポンは海底ツモのためか。もう張ってるだろうし、このままじゃ流局は期待できないな……)トン

    佳織「……」トン

    桃子「……」トッ

    マホ「……」トン

    智美(全員ツモ切り……だめだな、やっぱり。完全に海底の流れだ)トン

    だが、諦めかけたその時。

    佳織「……」トン

    智美「あっ……それ、ポン!」パラ

    マホ「……!」

    最後の巡目でツモをずらせた。

    智美(手を崩すハメになったけど……海底和了られるよりはマシだ)フゥ

    佳織「……」トッ

    桃子「……」トン

    流局。

    マホ「……ノーテン」パタン

    智美(あれ、ノーテンだったのか?)

    海底の心配など必要無かったと知り、少し戸惑う。

    智美「ノーテンだ」パタ

    佳織「ノーテンです」パタ

    桃子「……ノーテン」パタ
    284 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 22:59:45.47 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,-217)
    ――――
    南一局一本場

    桃子(親)9600
    マホ(南)42000
    智美(西)25600
    佳織(北)22800

    桃子「……」スッ

    ポチッコロコロコロ……

    桃子(対七……)スッ

    努めて喋らずサイコロを振り、山から牌を取る。

    智美「さっきの、天江のやつだろ?龍門渕の」チャッ

    佳織「あぁ、あの……全然手が進まないと思った……」チャッ

    桃子「……」スッ

    周囲の会話は普通に聞く。だが、桃子自身は一言も発しない。

    マホ「うーん……でも、あんまり思った通りにいかなかったです。また衣さんに聞いてみなきゃ……」チャッ

    皆が理牌をすませた。桃子は静かに第一打を打つ。

    マホ「……」トン

    桃子(……もう、私は『消えた』っぽいっすね)

    前局、マホは桃子が出した九筒をスルーし、そのすぐ後に智美の九筒をポンした。

    桃子(西家で海底を狙っていたなら、私から鳴かないのはありえない)

    桃子の牌を鳴けばその時点で海底コースだったのに、そうしなかった。少なくともマホからは、もう桃子は見えていない。

    桃子(最近、鶴賀のみんなは私との対局で『見えてないフリ』をするようになったっすけど……)チラッ

    智美「……」タッ

    佳織「……」トン

    この局まで、かなりの時間がかかっている。この二人も問題無いだろう。

    桃子(さて、この親……配牌も良いし、ここから逆転するっすよ)
    285 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 23:00:55.93 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,-197)
    ――――

    トン……タッ……

    桃子「……リーチ」チャラ

    マホ「……」チャッ

    京太郎(……これ、こっちから見てると凄く不安になるな)

    マホを含む卓上のメンバーは、もう桃子を見失っている。それが分かるだけに、誰かが無警戒で振り込む未来が容易に想像できる。

    京太郎(東横さん、萬子の染め手っぽい捨て牌……って、マホちゃんそれ危ない!?)

    マホ「……」つ東(生牌)

    智美「……」チャッ

    京太郎(……ふう、通ったか……)

    だが、このままでは誰かが振り込むのは時間の問題だろう。

    京太郎(だけど、俺の立場から東横さんのことで警告はできない……それはフェアじゃない)

    歯痒い。こんなに近くで見ていて、マホに何もしてやれない。そして卓は、京太郎の想像した未来にすぐ追い付き――

    桃子「ロン」バラッ

    マホ「え……あっ!」

    桃子「リーチ・ホンイツ・イッツー、赤1……裏、一枚。24300」

    京太郎(予想通りの染め手……これは痛い!)

    マホ「ああ、また……見失っちゃいました……」

    桃子「返してもらうっすよ……あの役満のぶん、利子付きで」
    286 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 23:02:01.75 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,-290)
    ――――
    南一局ニ本場

    桃子(よし、トップになった……)

    配牌は五向聴。和了るのは難しそうだが……桃子は自嘲気味に笑う。

    桃子(和了るのを諦めた私ほど、厄介な存在は無いっすよ)タン

    ――――

    佳織(うん、良い感じ……)

    タンピンドラ2のテンパイ。

    佳織(リーチかけたいなあ……でも、この捨て牌だと待ちがバレちゃうかも)

    リーチをかければ出和了りは難しくなる……最近はそういうことにも気が回るようになった。

    佳織(確実に和了りたいし、ここはそのまま!)タッ

    桃子「……」トン

    マホ「……」タン

    佳織(あ、マホちゃんの……惜しいところ……)

    あまり警戒されていないようだ。リーチを我慢した甲斐があった。

    智美「これ……通るかー?」ワハハ

    佳織「あ……智美ちゃん、それロン――『無理っす』……え?」

    ユラッ

    智美「……振り込んだかと思ったけど、モモが切ってたか」フゥ

    桃子「正解っす……同巡フリテン、かおりん先輩はその牌で和了れないっすよ」ユラッ

    佳織「っあ……」

    佳織が改めて河を見ると、確かに桃子が最後に切った牌は智美と同じだ。

    マホ「まさか……狙って?」

    桃子「さあ、どうっすかね。……かおりん先輩、手は倒してないし、特にデメリット無しの続行でどうっすか?」

    佳織「……えっ、あ、あぁうん。ごめん、それで……良いです……」

    ――――

    智美「ツモ。三暗刻、南、ツモで2200-4200だ」パラ

    佳織「あう……先にツモられた……」チャラ

    桃子(さすがに私も、ツモは防げない……)チャラ
    287 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 23:03:20.03 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,-87)
    ――――
    南ニ局

    桃子「リーチっすよ」タン

    タッ……タン……

    京太郎(うん……やっぱり、一度見失うとその状態が続くみたいだな)

    先ほど振り込んだマホも、ロンを妨害された佳織も、もうそのことを忘れたように普通に打っている。

    京太郎(まさに独壇場。他家の警戒すら許さない……)

    智美「よし、リーチ!」タン

    桃子「通さないっすよ。ロン」バラッ

    三人「……!」

    京太郎(全く、怖いな……あの顔)

    自分も昨日、あの内の一人だった。

    桃子「リーチ・タンヤオ・ドラ1……5200っす!」
    288 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 23:04:50.19 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,-298)
    ――――

    マホ(だめ、このままじゃ負ける……!)

    持ち点、15500。ギリギリの点数、というわけではない……はずなのに、
    なぜか今は『倍満に振り込むと飛ぶ』という事実がとても恐ろしく思える。

    マホ(そんな、簡単に倍満や親ハネに振り込んだりしないはずなのに……!)

    智美「……」ポチッ

    コロコロ……

    サイコロが転がるのが、やけに長く感じる。どうしても次に、自分が和了っているイメージを持てない。

    マホ(佳織さんは……違う。蒲原さんも……)

    自分より持ち点は高いが、この二人に対してここまでの恐怖を抱くのはおかしい。

    マホ(何、この……この怖さは、何なんですか!?)

    自分が何を恐れているのか分からない不安。サイコロが勢いを失い、止まりかける――

    マホ(やっぱり、だめ……っ!)

    こんな状態で打てない。マホは卓から逃げるように、後ろを向いた。

    マホ「せん、ぱい……」

    ――――

    京太郎(マホちゃん……)

    振り向いたその顔は、追い詰められて泣きそうになっていた。

    京太郎(ああ、この顔も……俺だ)

    衣にボコボコにされた時を思い出す。箱下直前で、早くこの苦しさから抜け出したいと……そればかり考えていた。

    京太郎(あの時は、自分一人だとやばかったな)

    誰かが、逃げそうになった京太郎を止めてくれた。それが誰だったのか、今となってはもう分からないが……

    京太郎(衣さんに勝つためのヒントをもらったわけじゃない。ただ、俺に考えるきっかけをくれた。だから今度も……)

    左手を、上げる。

    京太郎(これで充分、そうなんだろ?)

    言葉が無くても、マホにはそれで通じると思った。
    289 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 23:05:46.36 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,-237)
    ――――

    マホ(先輩……手?)

    京太郎「……」

    左手の甲をこちらに突き出した京太郎。

    マホ(いや、違う……手じゃない)

    京太郎の握る手から、はみ出して見えている物――手帳。

    マホ(!そうだ……)

    ポケットに手を入れる。そこには、昨日色々と考えてマホ自身が記したメモがあった。

    マホ(先輩に、頼っちゃだめです……まだ、ここにマホの作戦が残ってるんだから!)バッ

    ――――
    南三局

    桃子(手帳を、確認した……)トン

    マホ「……失礼します」チャッ

    桃子(無表情……そしてこの一打目からの長考)

    マホ「……」パシッ

    タン……トン……

    桃子(ついに来たっすね)トッ

    マホ「……」ヒュンッ

    迷いの無い打牌。まるで次に引く牌が分かっているようだ。

    桃子(でも、違う……次にどの牌が来たら何を切るか、事前に決めてあるだけ)

    そしてマホの目は、常に牌の動きだけを追っている。

    桃子(誰も、『見ていない』……とても人間とは思えないっすね)

    この局は、気持ちを切り替える必要があるだろう。

    桃子(ここだけは、ガチの麻雀っす)トン
    290 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 23:06:41.95 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,-165)
    ――――

    京太郎(和の真似、か……)

    マホ「……」ヒュッ

    風を切るような、高速の打牌が気持ちいい。

    京太郎(マホちゃんが一番尊敬して、信じているのは和だけど……)

    今、和を真似ているのはそんな理由ではないだろう。マホはマホなりに考えた結果、和を模倣している。

    京太郎(インターハイで東横さんと当たった和は、その時も打ち筋がブレることはなかった)

    マホは昨晩、それを思い出してメモ帳に記したのだろう……和の真似をしろ、と。

    『他者を気にし過ぎるという弱点を克服した結果、私は相手の打ち筋にほとんど注目しなくなりましたから』

    京太郎(和は、他家の一人一人を差別化して見ていない。だから東横さんを見失うこともないんだろうな)

    マホ「リーチ」チャラッ
    291 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 23:08:26.91 ID:tgL1bz3k0 (+93,+30,+0)
    ――――

    トン……ヒュッ……

    マホ(今は、さっきみたいな不安を感じません……さっきと何が違うんだろう?)

    牌効率、リーチの基準。そういう技術的な部分が和と同じになったことから安心しているのか。

    マホ(でも、さっきまでは他家に対して、もっと……不安を抱いていた気がするんです)タンッ

    リーチをかけると、できることはほぼなくなる。だが、裏を返せば今はあまり打つ方に集中しなくていい……

    マホ(ぼんやりとした不安……その原因が他家にあるのなら、今のマホがそれを怖く思わないのはそれなりの理由があるはず)

    その余分な思考領域を使って、マホは自分を分析する。

    マホ(和先輩は、他の誰かを恐れたりはしない……なぜ?)

    この際、自分が何を恐れていたのかなどどうでもいい。

    マホ(答えは決まってます。和先輩にとっては、そんな気持ちは麻雀を打つのに余計なことだから)

    和と同じように、他人を気にせずに打てるようにさえなれれば。

    マホ「……」チャッ

    模倣をやめてツモ牌を置く。手牌に目を落とし、今までの思考をまとめる。

    マホ(つまり……マホが、人のことを気にし過ぎだったんですね)

    辿り着いた、一つの答。次局の方策が決まった。

    マホ「ツモ!リーチ・ツモ・平和・一盃口……ドラ、3!3000-6000!」

    ――――

    京太郎(やっぱり、東横さんは振り込まなかったな……)

    マホが和の模倣をすることを、最初から警戒していたのだろう。この局だけはリーチを見て普通にオリていた。

    京太郎(オーラスはスピード勝負になりそうだな……つっ!)

    また強い痛みを感じて、顔をしかめる。

    京太郎(く……この調子じゃ、ポーカーフェイスなんてできそうもないな……)ハァ
    292 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 23:12:05.96 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,-137)
    ――――
    南四局

    佳織(親)17600
    桃子(南)31900
    マホ(西)27500
    智美(北)23000

    桃子(さすがに振り込みはしなかったっすけど……だいぶ点差を詰められたっすね)

    下家のマホを見る――もう前局のような無表情ではない。

    桃子(真似っこさん、模倣は一局だけっすからね……)トン

    そして、さっきの模倣でマホに対する桃子の能力がリセットされているとも思えない。

    桃子(清澄のおっぱいさんは、私を見ているわけじゃない……真似っこさんが私のことを思い出せるはずがないっす)

    実際マホは今桃子に視線を向けていない。目を細めて、卓をじっと見ている。
    もし桃子の存在を思い出したのなら、少しぐらいこちらを見るはずだ。

    桃子(……でも、この点差じゃツモでも簡単に捲られる)チャッ

    幸い、手は軽い。もう一盃口が完成して、二向聴だ。

    桃子(どうせ私は振り込まない……なら、全力で和了りに向かうだけっす!)タン
    293 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 23:13:34.64 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,-271)
    ――――

    マホ「……」タッ

    トップとの点差、4400。

    マホ(このぐらいなら、早和了りを目指しても充分捲れる……)

    今のマホにはもう、あの漠然とした不安は無い。

    マホ(和先輩の真似をして、わかりました……他家に気を取られるのは自分の責任だって)

    他人を恐れていては、自分のベストを尽くせない……自分が誰を恐れていたのか、その答えはわからずじまいだが――

    マホ(気にしなければいい。人と打つ意識を無くして……卓だけに集中すれば……!)タンッ

    目を限界まで細める。視界が暗くなり、卓だけがぼんやりと見える。

    マホ(これも、応用なんでしょうか……)

    本来の使い方ではないが、今のマホには必要な技術――染谷まこの模倣。

    マホ(染谷先輩と同じように……卓上の情報を集中して拾う)

    経験値の足りないマホに、その情報から『卓の表情』を読み取ることはできない。だが――

    マホ(牌だけを追えば……人を意識せずに済む。どうやら、上手くいったみたいです)チャッ

    下家は捨て牌がバラバラで、七対子あたりを狙っていそうだ。対面からは、まだテンパイ気配はしない。

    マホ(上家は……タンヤオ狙いかな?)タン

    上家はトップなので、逃げ切るために早和了りを狙っているのだろう。だが、こちらももう一向聴だ。

    12233m577s88p白白白

    マホ(スピード勝負……負けません!)
    294 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 23:14:46.39 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,-270)
    ――――

    佳織(マホちゃん……さっきの局から、雰囲気が違う)トン

    点が削られた直後は分かりやすく怯えていたが……今はそんな様子をおくびにも見せず、毅然として打っている。

    佳織(吹っ切れた、って感じかな……今は、私のことも気にしてないみたい)

    今までのマホは、佳織を意識しすぎて空回っていたように思える。
    天江衣のコピーという切り札を、佳織の親を潰すために使ったこともそうだ。

    佳織(幸運、幸運ってよく言われるけど……私なんて全然強くない。自分の思い通りに運を引き寄せてるわけじゃないんだから)

    実際、この半荘ではまだ役満手は来ていない。昨日よりよほどやる気を出しているのに。

    佳織(昨日は役満を何度も和了ったし、さすがに普通の確率じゃないってわかるよ。でも、狙って出せなきゃ偶然でしかない)

    自分でコントロールできないなら、それは力とは言えない。

    佳織(今も、最下位なのに……こんな安い手を狙ってる)チャッ

    88m24789s134p北中中 ツモ3p

    佳織(……二向聴。中を鳴いてそれで和了るしかない、か)

    安手で連荘し、次の局に繋ぐ。今はそのくらいしか策がなく、他家が早和了りを狙っていればなお難しいだろう。

    佳織(でも、マホちゃん。あなたが、私を認めてくれたから。だから、私……絶対、負けないから!)タンッ
    295 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 23:15:59.81 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,-185)
    ――――

    智美(佳織、成長したなー……)

    佳織「……」ジッ

    マホ「……」タン

    向かい合って打つ佳織とマホ。二人だけの決闘を横から眺めているような気分だ。

    智美(マホ、お前が来てくれて良かったよ)チャッ

    今まで佳織には、明確に足りない物があった――競争心だ。

    智美(佳織には、なまじ初心者としての自覚があるから、私らに負けても悔しがらない。それが、今……)チラッ

    佳織「……」ジッ

    対面のマホを、睨みつけるように見ている。智美はその目に、こいつにだけは負けないという強い意思を感じた。

    智美(マホの、本気で勝ちたいって思いに感化されたのか。佳織の中で、勝負に対する意識が変わった)

    ある意味、初めて自分の意思で勝利を目指しているのかもしれない。そう思うと、智美の中にも熱い気持ちが込み上げてくる。

    智美(佳織の成長は嬉しいが……もちろん私も負けたくない)タン

    この勝負は、二人だけのものではない。

    智美(楽しいな……佳織。麻雀って、楽しいよな!)
    296 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 23:17:53.24 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,+0)
    ――――

    様々な思いを乗せた勝負は、しかし――綺麗な終わりを迎えることはなかった。

    桃子(一萬……いらないっすね)タン

    ドラ。誰に対しても危険すぎる牌だが、桃子には関係無い――そのはずだった。

    マホ「チー!」バラッ

    桃子「――えっ?」ユラッ

    マホの手が、その牌を――存在しないはずの牌を、掴みかける。そして――

    「あっ、待て!」

    バラッ

    智美「ロ、ロン!国士無双……48000!」

    ……。

    桃子(え?)

    沈黙。役満で一発逆転という、劇的な終結に――誰も、反応しない。

    桃子(……振り込んだ?私が……)

    何が起こったのか。和了った智美も含む全員が混乱していた。

    睦月「あの……一つ、良いですか?」

    静寂を破ったのは、睦月の声。

    智美「……あっ、はい。なんだ?」

    睦月「その、『見えた』んですか?」

    やはり、役満に対する驚きは無い。睦月は視点を何度か変えながら観戦していたので、智美の手牌も見たのだろう。

    睦月「……変なことを聞いてしまったな。和了ったんだから、見えてたのは当然ですね」

    智美「いや……ついさっきまで、正直モモのことは……見失ってた、けど……」

    茫洋とした目が、マホを捉える。

    マホ「え、マホ……ですか?」

    智美「うん。マホのチーで、見つけたんだ……」

    佳織「マホちゃんがチーしたから、桃子さんが見えた?」

    怪訝な顔をする佳織。

    智美「モモが……というより、その、牌が?かな」

    ゆみ「……恐らく、夢乃の鳴きで、本来なら見えないモモの牌に意識がいったんだろう」

    桃子「そんなことが、あるっすね……でも、なんで……あなたは『見えた』んすか?」

    今度は、全員がマホに注目し――

    マホ「ご、ごめんなさい……マホにも、分からない……です」

    ――結局、しばらく落ち着くまで事の真相は分からなかった。
    297 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 23:19:14.14 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,+0)
    ――――

    京太郎「マホちゃんの話を総合すると……染谷先輩の真似で卓に集中することで、
    和と同じように、東横さんの影響を受けなくした。だから最後の局、東横さんの牌を鳴けた」

    マホ「はい……そうみたいです」

    京太郎「でも、鳴いたことで蒲原さんがあの一萬に気付いた。ロンは鳴きより優先されるから、後追いで和了られた、と」

    マホ「……マホ、どうすれば勝てたんでしょうね」

    京太郎「……あとで牌譜を見ながら考えればいい。今は、自分の頑張りを褒めてあげろ」

    ぽん、と頭に手を乗せる京太郎。

    京太郎「東横さんは、見えたんだろ?一時的にとはいえ」

    マホ「はい」

    京太郎「なら、その部分では勝ったじゃん。妹尾さんや蒲原さんは、自力では見えなかったんだしさ」

    やや無理のある励ましだが、

    マホ「先輩……ありがとうございます」

    気持ちは切り替えられた。

    京太郎「それじゃ……次は、俺が行こうかな」

    立ち上がり、卓を見る京太郎。冷房は効いているが、その顔には汗が浮いていた。

    マホ「……先輩も、東横さんの対策は考えたって言ってましたけど……」

    今朝会った時から一度も手放さず、握りしめていたメモ。

    マホ「そのメモ、どんなことが書いてあるんですか?」

    もうマホの勝負は終わった。今なら聞いてもいい……そう思っての質問だった。しかし――

    京太郎「っ!」サッ

    マホ「?」

    あからさまに左手を隠し、マホの怪訝そうな様子を見て、しまったという顔をする。

    マホ「……先輩?」

    京太郎「えっと、その……これは俺流というか。普通とはちょっと違うから……」

    何故か目を合わせようとしない京太郎。

    京太郎「ほら、前に約束しただろ?俺の真似はしないって。まだこれが正解かどうか分からないし……だから今は……」

    マホ「……」

    京太郎「……ごめん。秘密だ」

    マホ「……」

    息をゆっくり吸い込んで、止める。何を言いかけたのか、マホ自身分からなかったが――

    マホ「……いってらっしゃい、です」

    京太郎「……うん、行ってくる。次は、勝ってくるから」

    呑み込んだ思いは、そのまま消えてしまった。
    298 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 23:20:31.66 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,-184)
    ――――

    京太郎(起)25000
    睦月 (南)25000
    桃子 (西)25000
    ゆみ (北)25000

    「「「「よろしくお願いします」」」」

    ゆみ「……そのメモ帳、私は構わないが。マナーが良いとは言えないから、気を付けた方がいい」

    京太郎「はい……けど、必要なことなので。俺が……勝つためには」

    桃子「……加治木先輩に、っすか?」

    鋭い目を向ける桃子。そこに込められた二重の意味を、京太郎は即座に理解した。

    京太郎「もちろん、こんなメモだけで勝てるとは思ってない。加治木さんにも……東横さんにも、な」

    桃子「……!」

    今度は京太郎が睨み返す。

    京太郎「昨日、自分で言ったことを俺は覚えてる。俺はもう、忘れない……あなたのことを……!」

    ゆみ「……なるほど。だが、私のことも忘れてしまっては困るな」

    京太郎「……はい。麻雀で勝つというのは、三人に勝つということですから」

    睦月「うむ……もちろんだ」
    299 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 23:21:32.25 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,-148)
    ――――
    東一局

    京太郎「……」タン

    睦月「……」トッ

    桃子「……」トン

    ゆみ「……」タン

    トン……タッ……

    智美(モモがいる卓では、序盤でポイントを上げる必要がある)

    終盤になるにつれ、桃子は有利に、他家は不利になる。

    京太郎「……ポン」カシャ

    智美(桃子は『消えて』からが本番……そしてそれまでにはいくらか時間がかかるからな)

    相対的に見て、桃子の能力の影響を受けない序盤でより多く稼ぐ必要がある。

    睦月「ポン」カシャ

    智美(だからみんなスピードダッシュを意識する……でも)

    それは、今なら絶対和了れるという意味ではない。

    桃子「……ツモ。平和ドラ1、700-1300」バラ

    睦月「……はい」チャラ

    智美(ステルスしてなくたって、デジタル打ちでモモは強い。ゆみちんが欲しがるぐらいに、な)
    300 : ◆3em28n - 2017/12/31(日) 23:22:36.27 ID:tgL1bz3k0 (+95,+30,-172)
    ――――
    東ニ局

    京太郎(三巡目に役無しテンパイ……運が良い、と思うべきか)

    寝不足のせいか、痛みのせいか……集中できない。流れが全く読めない。

    京太郎(純さんなら、こんな状態でも分かるのかね……む)チャッ

    来てしまった。

    京太郎「……ツモ、のみ。300-500」バラ

    京太郎(やっぱリーチしとけば良かったかな……)

    ――――
    東三局

    ゆみ「リーチ」チャラ

    京太郎(ん、安牌ないな……加治木さんの捨て牌は……チートイか?)チャッ

    比較的筒子が多いが、かなりバラついている。

    京太郎(……しゃーない、分からないなら自分の手を優先だ)タン

    トン……トッ……

    ゆみ「ロン。リーチ・チートイ・ドラ1。6400」バラッ

    京太郎「ここだったか……」チャラ
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