元スレモバP「脱・響子宣言」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ☆
1 :
響子「いいですか、冷蔵庫に食材一式を入れておきましたから」
響子「必要に応じてチンして食べてくださいねっ」
P「はい」
響子「ご飯も小分けにして冷凍してありますから」
響子「炊く時間がないときはこっちを食べてくださいね」
P「はい」
響子「Yシャツは洗ってアイロンをかけておきましたっ」
響子「シミも綺麗にとれましたよっ、ほらっ」
P「おー」
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2 = 1 :
響子「あっ、あとこれ買ってきたんです」
P「?」
響子「シューキーパーっていうんですよ」
響子「革靴を保管するとき、中に入れて使うんです」
響子「靴が長持ちしますから、脱いだら必ず入れるようにしてくださいねっ」
P「うん」
響子「それと、洗剤が切れかけていたので」
響子「ストック用も含めて買い置きしておきました」
響子「常に予備をおいておくと便利ですよっ」
P「うん」
3 = 1 :
響子「あっ、もうこんな時間!」
響子「それじゃあ私は学校に行きますから」
響子「Pさんもお仕事に遅れないようにしてくださいね!」
P「うん」
響子「そうだ、お鍋にお味噌汁が入っていますから」
響子「温めて食べてくださいね、それと……」
響子「はいっ、これ、お弁当ですっ」
P「うん」
響子「今日のは自信作なんですっ」
響子「あとで感想、聞かせてくださいね!」
P「うん」
4 = 1 :
響子「ふふ、じゃ、行ってきますね」
響子「戸締まりとガスの元栓だけ、忘れないようにしてくださいね」
P「うん」
響子「しっかり朝ご飯、食べなきゃダメですよっ」
響子「それじゃまた、事務所で!」
ガチャ
バタン
P「……」
5 :
ええ嫁さんや…
6 = 1 :
P「……」
P「そうだ、味噌汁……」
カチッ
P「温めて……」
ズズー
P「……」
P「うまい」
P「でも」
7 = 1 :
P「まずいよな、これは」
8 = 1 :
―――
――――――
9 = 1 :
美穂「脱?」
卯月「響子ちゃん宣言?」
10 = 1 :
P「うん」
美穂「えっと……?」
卯月「どういうことですか?」
P「読んで字のごとく」
P「響子からの脱却を図ろうと思ってな」
卯月「だっきゃく?」
美穂「響子ちゃんと、何かあったんですか?」
11 = 1 :
P「よく聞いてくれた」
P「二人ともうすうす感付いていると思うが」
P「最近の俺と響子はその、なんつうか……」
P「目に余るというかな、まあひどいもんだろ?」
卯月「?」
美穂「?」
卯月「ひどい、ですか?」
P「うん」
P「相談する相手、間違えたかな……」
12 = 1 :
P「まあ、実際に見せた方が早い」
P「例えばこれだ」スッ
美穂「あ、お弁当」
卯月「Pさんのお弁当箱ですか?」
卯月「ちっちゃくてかわいいですね!」
P「ありがとう」
P「何を隠そうこれは、響子が作ってくれたものでな」
美穂「えっ! そうなんですか!」
卯月「へえー! 中見てもいいですか?」
P「いいよ」
パカッ
美穂「わあ~」
卯月「すごい、おいしそうです!」
13 = 1 :
P「だろ?」
P「俺のオススメはこれだ」
P「うずらの卵をベーコンで巻いたやつな」
P「爪楊枝に刺してあって、非常に食べやすくてグッドだ」
P「ベーコンをわざわざ焼いてくれてるのもポイントが高い」
卯月「いいなあ~」
美穂「こっちのハンバーグもすごい手が込んでますよね」
P「これソースがな、お手製なんだよ」
P「肉も粗挽きだし、冷えててもすっごい美味いぞこれ」
美穂「お腹すいてきちゃいました……」
卯月「これ全部響子ちゃんが?」
P「うむ」
P「おかしいだろ?」
美穂「えっ?」
卯月「おかしい、ですか?」
P「……」
P「おかしいだろ! どう見ても!」
P「どこの世界にプロデューサーに手作り弁当を差し入れるアイドルがいるんだよ!」
14 = 1 :
美穂「といわれましても……」
卯月「響子ちゃん、料理得意ですもんね……」
P「(得意不得意の問題か?)」
P「まあいい、これでもまだ序の口だ」
P「ここ最近は輪をかけてひどくてな」
P「なんと、休日になると家にあがり込んできて」
P「炊事洗濯家事掃除と、全部やってくれるようになったんだ」
P「信じられるか? ありえんだろ!」
P「若干15歳のアイドルが、男やもめの、家にだよ!」
美穂「……」
卯月「……」
P「薄いな、反応」
卯月「いえ~……その、実はですね」
美穂「私たち、響子ちゃんから全部聞かされていたので……」
P「え」
15 :
合法的に響子なしでは生きていけなくするんだな
16 = 1 :
卯月「響子ちゃんがPさんのおうちに通うようになったのも」
卯月「毎日お弁当作っているのも、全部知っていましたよっ」
P「知っててあんな白々しいリアクションしたんか」
卯月「い、いえっ、実際に見たのは初めてだったので」
美穂「シ、シャツを洗濯している姿も見ましたっ」
美穂「同じ寮なので、色々お話ししてくれるんです」
P「……」
P「それで、問題があるとは思わんのか、君らは」
卯月「でも、響子ちゃん楽しそうですし……」
美穂「毎日献立考えるのが大変だとは、聞きましたけど」
美穂「響子ちゃん、以前と違って最近すごく笑うようになったんです」
美穂「だから、よかったねって卯月ちゃんと話してて……」
P「ふむ……」
卯月「Pさんは、その、嫌なんですか?」
卯月「響子ちゃんがおうちに来るの……」
P「まさか、嫌なわけないよ」
P「でもな」
17 = 1 :
P「少し、歪んでる気がしてな」
18 = 1 :
―――
――
19 = 1 :
P「……」フムフム
P「豚ひき肉」
P「キャベツ」
P「ニラ……と」カキカキ…
響子「何見てるんですかっ?」ヒョコッ
P「わっ」
P「きょ、響子、いたのか」
20 = 1 :
響子「ふふっ、驚きました?」
響子「学校が終わって急いできたんです」
響子「やっぱり事務所のみんなといるのが一番落ち着きますから!」
P「う、うん、そうか」
響子「それで、何見ていたんですか?」
P「あー、いや……」
響子「……くっくぱっど?」
21 = 1 :
P「うん」
P「いろんなレシピが載っててな」
P「眺めてるとちょっと面白いんだ、これが」
響子「へえー……あれ?」
響子「Pさん、まだ冷蔵庫に食べるもの残ってますよね?」
P「まだあるよ」
P「食べきれないくらい」
響子「ですよね! よかったです」
響子「てっきりもう無くなっちゃったのかと思いました」
P「あー、えと、大丈夫だよ」
P「今週いっぱいはもつよ、きっと」
響子「はいっ、足りなくなったらまた言ってくださいね!」
響子「すぐに作って持っていきますから!」
22 = 1 :
P「……そのことなんだけど、響子」
P「あの、別に無理して毎日弁当とか作ってくれなくてもいいんだぞ?」
P「今はこうやって、手軽にレシピやら何やら検索できる時代なんだし」
P「簡単な料理なら、俺にだって……」
響子「そんな、全然無理なんてしてないですよ!」
響子「私、好きなんです、誰かのためにお料理したりお洗濯したりするのが」
響子「全部私が好きでやっていることなんですから、遠慮なんていりませんよっ」
P「いや、遠慮というか」
響子「それに私、少しでもお役に立ちたいんです」
響子「いつも遅くまでお仕事してくれているPさんのために」
響子「せめてご飯くらいはちゃんとしたものをと思って……」
P「う」
響子「だから、心配しなくても大丈夫ですよ」
響子「明日もおいしいお弁当、作ってきますから!」
23 = 1 :
P「……」
響子「ささっ、お弁当箱、回収しますからねっ」
響子「ふふっ、味の感想も聞かせてくださいねっ♪」
P「あ、ああ」スッ
パカッ
響子「あっ、すごい! 全部食べてくれたんですね!」
響子「これ、どうでしたか? 私、ちょっと味が濃いかなって不安だったんですけど」
P「や、ちょうどよかったよ」
P「おいしかった」
響子「本当ですか? ふふ、ありがとうございます」
響子「あ、そうだ、ここにあった里芋なんですけど……」
P「これな、俺これ好きだわ、すごい好きな味」
響子「やっぱり! Pさん好きだろうなって思ったんです」
響子「えへへ、じゃこれは当たりですね、次も入れておきますね」
響子「そうだ、明日の献立案、考えてきたんです、ほら――」
P「……」
P「(うーん……)」
24 = 1 :
P「(無理してない、か)」
P「(これは、本腰入れる必要がありそうだ)」
25 :
何が問題なのかサッパリわからないな(すっとぼけ)
26 = 1 :
――――
――週末
27 = 1 :
響子「♪~~」
ピンポーン
P「はーいっ」
ガチャッ
P「あ、響子」
響子「はいっ、響子ですっ」
響子「今週もお世話になりますっ」
P「おう」
P「まああがってくれ」
28 = 1 :
響子「失礼します」
響子「ふふっ、今日もいろいろ買ってきましたよ」
P「ん?」
響子「卵が安かったんです、だから鶏肉と合わせてですね」
響子「オムライスなんかいいかなって――」
響子「――あれ?」
P「ああ、買い物してきてくれたのか」
P「悪いことしたな、そりゃ」
響子「Pさん、あの」
響子「それは……」
P「これか」
P「これはニラだ」
P「みじん切りにしてやった」
29 = 1 :
響子「ニラ?」
P「これからキャベツも刻む」
響子「キャベツ?」
響子「えっと……」
響子「Pさん、ひょっとして料理、するんですか?」
P「うん」
P「なんでまあ、響子は適当にくつろいでいてくれ」
P「また少ししたら呼ぶからさ」
響子「え、あ」
響子「あ、あの、私、手伝いますよっ」
響子「というか、言っていただければ私が作りますっ!」
響子「だって私、そのために来たんですから!」
P「ありがとう」
P「でも俺はそうは思っちゃいない」
響子「え?」
30 = 1 :
P「響子は俺のお手伝いさんじゃないからな」
P「あくまで俺の友人であり、客人だ」
P「客人に夕食を作らせるやつはいないよな」
響子「え? で、でも」
響子「今までは……」
P「そう」
P「だから今までがおかしかったんだな」
P「これからは無しにしよう、そういうのは」
響子「」
P「とは言っても俺は料理なんて慣れてないからさ」
P「そばで見ていて、いろいろと口出ししたくなるとは思うけど」
P「とりあえずは何も言わず、見守っていてくれないか?」
響子「えと……」
P「そうしてくれると、俺も嬉しい」
響子「……」
31 = 1 :
P「……」
響子「……」
トントントントン……
P「……」
響子「……あの、もしかしてご迷惑、でしたか?」
響子「私がおうちにお邪魔したり」
響子「お料理、作ったりするの」
P「まさか」
P「そう思ったことはない」
響子「じゃあ……」
P「あと、豚ひき肉を……」
響子「あ、ここに……」スッ
P「お、ありがとう」
P「かきまぜて……」
カチャカチャ……
響子「……」
32 = 1 :
P「……このままだと良くないと思った」
P「このままだと、きっといずれ依存してしまうことだろう」
P「だから、そうなる前になんとかしようと思ってな」
P「えーと、にんにく、ごま油……」
カチャカチャ……
響子「依存だなんて、そんな……」
響子「私はほんの少し、身の回りのお世話をさせてもらっているだけで」
響子「それにPさんは、ちゃんとお仕事だってこなしているじゃないですか」
響子「私に依存なんて――」
P「ちがう」
P「逆だ」
響子「え?」
P「俺が響子に依存することを危惧しているんじゃない」
P「逆だ」
33 = 1 :
響子「逆?」
響子「えと、それってつまり」
響子「私がPさんに、ってことですか?」
P「……」
P「ここで蓮根を入れる」
P「シャキシャキしておいしいらしい」
トンットンットンッ…
響子「……」
P「……おかしいと思った」
P「どうしてこんなにあれこれ世話を焼いてくれるんだろうって」
P「俺が響子のプロデューサーだから? まさか」
P「流石にそこまでうぬぼれちゃいない」
P「色々考えると、一つだけ思い当たる節があった」
P「前に響子の、鳥取の実家に行ったときのことだ」
響子「……私の、実家ですか?」
34 = 1 :
P「あのとき響子、言ったよな」
P「東京だとなんでも一人分なんです、って」
響子「一人分……」
P「料理も、洗濯も、掃除も、買い物も」
P「こっちでは自分一人のためだけにしかやらない」
P「でも、実家は違う、両親がいて、弟妹がいて、……一人じゃなくて」
P「誰かの為に家事をする事ができて」
P「余計なことを考える時間もない」
P「それが例えようもなく嬉しいんです、と」
P「そう言っていたこと、俺は覚えてる」
響子「……」
35 = 1 :
P「あのとき、俺はいくつかの質問をすべきだった」
P「"東京の生活はもう慣れたか?"」
P「"新しい高校に友達はできたか?"」
P「"女子寮のみんなとは仲良くしているか?"」
P「"卯月や美穂とは、どうか?"」
響子「……」
P「俺は鈍感に過ぎたな」
P「何も疑問に思わなかったんだから」
P「響子がうちに上がり込んでくる、そのときまでな」
カチャカチャ……
P「……もう、混ざったかな」
36 = 1 :
響子「……つまり、Pさんはこう言いたいんですか」
響子「私は寂しさを紛らわすために、Pさんの家にきていると」
響子「一人でいたくなくて、誰かのお世話がしたくて、Pさんに依存している、と」
P「何言ってんだって思うよな」
P「さんざん飯やらなんやら作ってもらっておいてさ」
P「もちろん、これは俺の勝手な推測でしかない」
P「聞いた限りじゃ、卯月や美穂とも仲良くやってるみたいだし」
P「俺の勘違いってことも、十分にあるだろう」
P「でも、たとえ俺の杞憂だったとしても」
P「やはりこのままでいるのは問題だと思う」
P「だから――」
響子「……そうですか?」
P「え?」
響子「問題なんて、ありますか?」
P「へ?」
37 = 1 :
響子「い、いいじゃないですか、別に」
響子「Pさんのおうちに行く理由が何であっても」
響子「だってPさん言ってくれましたよね?」
響子「私がこうすること、迷惑じゃないって」
P「いやまあ、それは」
P「確かに助かってはいるけどな」
響子「だったら、何も問題ないじゃないですかっ」
響子「よく言いますよね、Win-Winの関係って」
響子「私たち、きっとそれだと思うんです」
響子「私がお世話することで、Pさんの負担が軽くなる」
響子「私は家事したい欲を満たせて、一人でいる時間がなくなる」
響子「まさに、理想的な関係じゃないですか」
P「Win-Win……」
響子「その結果、私がPさんに依存することになったとしても」
響子「私、それはそれで、いいかなって」
響子「ちょっとだけ思うんです、あの、ちょっとだけ、ですけどね」
P「……」
38 = 1 :
響子「それに、もとからこういう性格なんですよ」
響子「いつも考えちゃうんです」
響子「誰かの役に立ちたいって」
響子「誰かのお手伝いをしたいって」
P「……」
響子「好きなんです、人のため、みんなのためっていうのが」
響子「きっと私がアイドルをしているのも、その延長線なんだと思います」
響子「ファンの人に笑顔を届けるのが、アイドルのお仕事ですもんねっ」
P「……」
響子「そうです、これもトップアイドルになるための修行のひとつなんですよ!」
響子「だからやっぱり、Pさんは遠慮なんかしなくていいんですっ!」
P「……」
P「なるほど、やっとわかった」
P「本当の問題が何か」
響子「……え?」
P「響子は、多分」
P「与えることに慣れすぎてる」
39 = 1 :
響子「与えることに……?」
P「ここ数週間、一緒に過ごしてきて」
P「俺は一度も響子のわがままを聞いたことがなかった」
P「食べるものでも行くところでも」
P「常に俺の意思を優先してくれたよな」
P「俺は思ったよ、すげえいい子だなって」
P「でも同時にこうも思った」
P「あまりに一方的すぎるな、って」
P「俺はいつも受け取る側で、響子はいつも与える側にいる」
P「さっき言ってくれたように」
P「響子はいつも誰かのために動いてる」
P「それが少し、歪んでるように見えたんだろうな」
40 = 1 :
響子「私が……?」
P「さて、もういいだろう」
P「タネは完成したから、後はあっちの机でやろう」
響子「え」
P「新聞紙ひいて……」
ガサガサッ
響子「あ、あの」
P「あと薄力粉、水、皮だな」
P「ここからは響子にも手伝ってもらうぞ」
P「なんせ引くほど不器用だからな、俺は」
響子「これって……」
P「もう気づいてると思うし、今更だけど」
P「餃子、作ろうぜ、一緒に」
41 = 1 :
―――
――
P「このな、皮を包むのがどうも不慣れなんだ」
P「まず具を乗せるだろ」
P「そんで皮の周りに水をつける」
P「で端からひだを作るように閉じていって……」
グチャ
P「……失敗しました」
響子「……はみ出てますね」
P「というわけで、響子さん、教えてください」
響子「は、はいっ、それはいいんですけど」
響子「あの、さっきの話は……」
P「まあ、それは作りながらでいいじゃないか」
響子「え、あ」
P「さ、はじめからやり直すぞ」
響子「は、はいっ」
42 = 1 :
P「まず具を乗せる……」
響子「あんまり乗せすぎない方がいいんです」
響子「そして全体的に平べったくしてですね……」
P「ふむふむ」
P「こんな感じか」
響子「周りは1センチくらい余らせるようにするんです」
響子「それでこれは私のやり方なんですけど」
響子「端からじゃなくて真ん中から閉じていくんです、ほら、こんな感じに」
P「ほお」
響子「それから左右にひだを作っていって……」
響子「はいっ、完成ですっ!」
P「すげえ」
P「超きれい」
響子「えへへ……そうですか?」
43 = 1 :
P「俺もやるぞ」
P「中央から閉じるんだったな……」
響子「はい」
響子「そして両側を交互に閉じていって」
響子「三日月型になるよう意識してくださいね」
P「うむ」
P「こう……こうか」
響子「あっ、いいじゃないですか」
P「できた」
P「比べるとだいぶ不格好だが、どうだろう?」
響子「ふふっ、おいしそうですよ」
P「よし、ちょっとコツが分かったかもしれん」
P「この調子でばんばんと……ん?」
響子「?」
44 = 1 :
P「響子、それ、何個目?」
響子「ええと、1、2、……これで4個目ですね」
P「……」
P「俺が1個作る間に、か?」
響子「えへへ」
響子「慣れてますからっ」
P「……」
P「うおおっ」バババッ
響子「あっ、駄目ですよ! 形が崩れちゃいますって!」
45 = 1 :
―――
――
響子「お水を入れて……」
P「うん」
ジューー
響子「しばらく蒸し焼きにします」
P「よし、ふたをして……」
カポッ
46 = 1 :
ジューー
P「……」
響子「……」
P「さっきの話な」
P「俺はどっちに偏っていてもいけないと思う」
響子「……偏る、ですか?」
P「世の中ギブアンドテイクで回ってるなんていったら」
P「単純な奴だって鼻で笑われるかもしれない」
P「でも俺は割とそれを信じていてさ」
P「どっちが多くてもいけないって思ってる」
P「誰かから受け取ったら、その分誰かに与えてやる」
P「誰かに与えたら、その分誰かから受け取るようにする」
P「そうやって世の中バランス取ってんじゃないかって感じるんだ」
響子「……私は、みんなに与えることを考えすぎだと」
響子「そう、仰りたいんですよね?」
47 = 1 :
ジューー
P「……あと何分かな」
響子「……3分くらいですね」
P「そうか」
P「……ここは鳥取じゃない」
P「響子が家事をする必要もない」
P「だからもう少し、肩の力を抜いてもいいんじゃないかと思う」
P「もっと、自分のために時間を使っていいんだ」
P「卯月や美穂と遊ぶのでもいい」
P「うちに来て、何をするでもなくぼんやりしているのでも構わない」
P「もっと誰かに寄りかかって、誰かに甘えて生きても」
P「誰も文句は言わないって、そう思う」
P「誰かを頼ることは、依存することとは全く違うからさ」
響子「……」
48 = 1 :
ジューー
響子「……私、こっちにきてから一人の時間が増えたんです」
P「……」
響子「実家だと毎日忙しくて、特にご飯のときなんててんやわんやで」
響子「料理を運んだり弟たちのお代わりをよそったりで」
響子「私自身、ろくに食べる暇もありませんでした」
響子「それがこっちに来ると、まるで逆で」
響子「自分で作って、自分で食べて、自分で片づけて……」
響子「本当に、自分のためだけの時間が増えたんです」
響子「私、いつもそわそわして落ち着きませんでした」
響子「こんなことしてていいのかなって罪悪感すらわいてきました」
P「……」
響子「でも、今ならその理由も分かります」
響子「私きっと、慣れていなかったんですね」
響子「変な話ですよね、誰かに何かしてあげることは得意なのに」
響子「自分自身を甘やかすのは、大の苦手だなんて」
P「……そういう人も世の中にはいる」
P「自分に厳しくて、他人にやさしい人も」
P「それを変えるかどうかは、その人次第だけどな」
49 = 1 :
ジューー
響子「……Pさん、私、いいんでしょうか?」
P「ん?」
響子「何もしなくても、Pさんのおうちに来てもいいんでしょうか?」
響子「料理をしなくても、家事をしなくても、何の用が無くても」
響子「ただ私が行きたいからという理由で来ても、いいんでしょうか?」
P「……もちろんだ」
P「今までずっと、受け取る側だったからな」
P「これからは全力で与える側にまわってやるさ」
P「精一杯おもてなししてやるからな、覚悟しろよ」
P「……といっても、餃子すら満足につくれない男だけどな」
響子「Pさん……」
50 = 1 :
P「それに、俺だけじゃない」
P「響子には卯月や美穂、それにファンのみんながいる」
P「そいつらにもたくさん迷惑かけてやりゃいい」
P「大丈夫、みんなきっと自分が喜ぶことよりも」
P「響子が喜ぶことを優先してくれるはずだよ」
P「少しくらい甘えたって、罰は当たらないさ」
響子「……」
響子「ふふっ」
P「ん?」
響子「いえ、よかったって思って」
P「よかった?」
響子「Pさんが私のプロデューサーさんで、よかったって」
響子「今、そう思ったんです」
P「……」
P「それは、その」
P「ど、どういたしまして」
響子「はいっ、ふふふ」
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