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元スレ美穂子「京太郎くん!」京太郎「……美穂子姉」
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『……そこで、わが校では麻雀部への募集を行っております!女子はもちろん男子の希望者もどんどん歓迎するわ!』
先程の入学式における議会長の発言を反芻して、金髪が特徴的な少年――須賀京太郎は自分の机の椅子に微妙な表情で座り込んでいた。
「…………」
「よっ、須賀。どうしたよ?放課後だってのに神妙な顔しやがって」
「嫁田」
中学からの知り合いの声に振り向いて目を合わせるも、京太郎はすぐに目線を落とす。
「麻雀部、入らないのか?その表情だと決めかねてるって感じだが」
「察しの良い奴だな、相変わらず」
「付き合いも長いからな。まあお前の問題だしつべこべ言う気もねえけど」
「悪いな」
「いいってことよ。……そういや咲ちゃんはどうした?」
「さあ。俺にだってわからないことぐらいある」
「『俺にだって』とはご挨拶だねぇ。咲ちゃんに聞かせてやりたいぜ」
「お前なぁ」
「ははは。じゃ、俺はサッカー部でも見てくるけど。お前はどうする?」
「……とりあえず、見るだけは見てくる。咲に連絡だけつけてな」
「ふぅん。ま、後悔はすんなよ」
「あぁ。ありがとう」
「へっ」
いかにも爽やかな笑顔を作り、嫁田は去っていった。
(さて)
ここで待っているというのも手だが、咲がここにまっとうにたどり着けるとも到底思えない。
京太郎は早々に鞄を取り出し、咲の教室へと足を運び始めた。
SSWiki :http://ss.vip2ch.com/jmp/1381062651
先程の入学式における議会長の発言を反芻して、金髪が特徴的な少年――須賀京太郎は自分の机の椅子に微妙な表情で座り込んでいた。
「…………」
「よっ、須賀。どうしたよ?放課後だってのに神妙な顔しやがって」
「嫁田」
中学からの知り合いの声に振り向いて目を合わせるも、京太郎はすぐに目線を落とす。
「麻雀部、入らないのか?その表情だと決めかねてるって感じだが」
「察しの良い奴だな、相変わらず」
「付き合いも長いからな。まあお前の問題だしつべこべ言う気もねえけど」
「悪いな」
「いいってことよ。……そういや咲ちゃんはどうした?」
「さあ。俺にだってわからないことぐらいある」
「『俺にだって』とはご挨拶だねぇ。咲ちゃんに聞かせてやりたいぜ」
「お前なぁ」
「ははは。じゃ、俺はサッカー部でも見てくるけど。お前はどうする?」
「……とりあえず、見るだけは見てくる。咲に連絡だけつけてな」
「ふぅん。ま、後悔はすんなよ」
「あぁ。ありがとう」
「へっ」
いかにも爽やかな笑顔を作り、嫁田は去っていった。
(さて)
ここで待っているというのも手だが、咲がここにまっとうにたどり着けるとも到底思えない。
京太郎は早々に鞄を取り出し、咲の教室へと足を運び始めた。
SSWiki :http://ss.vip2ch.com/jmp/1381062651
「咲」
「あ、京ちゃん!」
京太郎を視認するなり、咲はまるでしっぽをはためかすように駆け寄ってきた。
「よく動かないでいたな。偉いぞ」
「えへへ。よく知らない所で動くと危ないからね、私」
自慢気に顔をほころばせる咲にやれやれと苦笑した。
「ところで、咲はこれからどうするんだ?俺は麻雀部に向かってみようかと思うんだが」
「あー……そっか、そうだよね」
「……で、どうするんだ?帰るなら校門まで送るけど」
「んぅー……それも捨てがたいけど……京ちゃんに付いて行ってもいいかなって」
「お前が?どういう風の吹き回しだ」
「私にだってそういう気分の時ぐらいあるのっ」
なんでそんなに嬉しそうなのかいまいち測りかねたが、そう言われたらそうなのだろうと強引に納得することにする。
咲の了承も得たので京太郎と咲はそのまま麻雀部の部室へと歩を進めていった。
「あ、京ちゃん!」
京太郎を視認するなり、咲はまるでしっぽをはためかすように駆け寄ってきた。
「よく動かないでいたな。偉いぞ」
「えへへ。よく知らない所で動くと危ないからね、私」
自慢気に顔をほころばせる咲にやれやれと苦笑した。
「ところで、咲はこれからどうするんだ?俺は麻雀部に向かってみようかと思うんだが」
「あー……そっか、そうだよね」
「……で、どうするんだ?帰るなら校門まで送るけど」
「んぅー……それも捨てがたいけど……京ちゃんに付いて行ってもいいかなって」
「お前が?どういう風の吹き回しだ」
「私にだってそういう気分の時ぐらいあるのっ」
なんでそんなに嬉しそうなのかいまいち測りかねたが、そう言われたらそうなのだろうと強引に納得することにする。
咲の了承も得たので京太郎と咲はそのまま麻雀部の部室へと歩を進めていった。
「なんで旧校舎に部室があるんだろうね?」
「人が足りないから部屋が取れないのか、単に五月蝿いからか……まあそんなとこだろ」
「なるほど、あったまいいなあ京ちゃんは」
「勝手な推測を事実のように思われても困るんだけどな……」
そんななんの気なしの問答を繰り広げる内に、部室の前へとたどり着いていた。
「じゃあ咲、開けろよ」
「なんで?京ちゃんが開ければいいんじゃないの」
「いや、お前のほうが歓迎されそうだしさ」
「私は別にただの付き添いだよ!?それに私は――」
「おや?今日は千客万来じゃのう」
扉の前でギャーギャーわめいていたから先に補足されてしまったらしい。
「おんしらも入部希望者かの?」
「いえ、そこまでは。ですがひとまず見学したいと思って伺いました」
「ほぅ、若いのに礼儀の出来た男子じゃのう」
親の顔が見てみたいの、と部の先輩と思しきメガネの女性はニヤリと笑った。
(親というか、どっちかというと姉の影響なんだろうけど)
京太郎は反射的に脳裏に金髪で柔和な女性を浮かべ、すぐさまそれを振り払うかのように頭を振った。
「人が足りないから部屋が取れないのか、単に五月蝿いからか……まあそんなとこだろ」
「なるほど、あったまいいなあ京ちゃんは」
「勝手な推測を事実のように思われても困るんだけどな……」
そんななんの気なしの問答を繰り広げる内に、部室の前へとたどり着いていた。
「じゃあ咲、開けろよ」
「なんで?京ちゃんが開ければいいんじゃないの」
「いや、お前のほうが歓迎されそうだしさ」
「私は別にただの付き添いだよ!?それに私は――」
「おや?今日は千客万来じゃのう」
扉の前でギャーギャーわめいていたから先に補足されてしまったらしい。
「おんしらも入部希望者かの?」
「いえ、そこまでは。ですがひとまず見学したいと思って伺いました」
「ほぅ、若いのに礼儀の出来た男子じゃのう」
親の顔が見てみたいの、と部の先輩と思しきメガネの女性はニヤリと笑った。
(親というか、どっちかというと姉の影響なんだろうけど)
京太郎は反射的に脳裏に金髪で柔和な女性を浮かべ、すぐさまそれを振り払うかのように頭を振った。
「ま、こんな所で立ち話もなんじゃ。歓迎するぞえ」
「ありがとうございます」
「お、お邪魔します」
メガネの女性に促されるように京太郎と咲は部室へと足を踏み入れると、そこには3人の女性がまた居た。
「新入生!?」
ダッと効果音が付きそうな勢いでその中の1人が駈け出して来ると、少し前に立っていた俺を素通りして咲の正面へと向かっていった。
「見た?まこ!私は賭けに勝ったのよ!」
「まだ何もわかっとらんじゃろうに、とんだ皮算用もあったものよな」
「あ、あの……?」
件の目を光らせる明るい茶髪の女性――すなわち議会長の剣幕にメガネの先輩は頭を抱え、咲はあわあわと反応に困っている様子だった。
「……咲が5人目だってことでしょう?要するに」
「あら、察しがいいわね。ひょっとしてこの子の彼氏?」
「か、かれ……」
「彼氏違います。ただの中学からの付き合いです」
「う」
議会長がいたく詮索したがっている様子だが、生憎俺たちには掘り下げうるような関係では決してない。
京太郎はひとつ大きく溜息をついて、不敵な笑みを崩さない議会長へと視線を向け直す。
「ありがとうございます」
「お、お邪魔します」
メガネの女性に促されるように京太郎と咲は部室へと足を踏み入れると、そこには3人の女性がまた居た。
「新入生!?」
ダッと効果音が付きそうな勢いでその中の1人が駈け出して来ると、少し前に立っていた俺を素通りして咲の正面へと向かっていった。
「見た?まこ!私は賭けに勝ったのよ!」
「まだ何もわかっとらんじゃろうに、とんだ皮算用もあったものよな」
「あ、あの……?」
件の目を光らせる明るい茶髪の女性――すなわち議会長の剣幕にメガネの先輩は頭を抱え、咲はあわあわと反応に困っている様子だった。
「……咲が5人目だってことでしょう?要するに」
「あら、察しがいいわね。ひょっとしてこの子の彼氏?」
「か、かれ……」
「彼氏違います。ただの中学からの付き合いです」
「う」
議会長がいたく詮索したがっている様子だが、生憎俺たちには掘り下げうるような関係では決してない。
京太郎はひとつ大きく溜息をついて、不敵な笑みを崩さない議会長へと視線を向け直す。
「それに、俺はともかく咲はただの付き添いです。な?」
「う、うん……私、そんなに麻雀は……」
「大丈夫よ、初心者でも手取り足取り教えてあげるし。それに今年は大型新人もいるわけだしね」
「大型新人?……あぁ」
議会長が視線を向けた先の桃色の長髪を誂えた女子へと同じく目線を向け、京太郎は得心したように目を細めた。
「ほぅ?おんし、原村の事を知っとるのか?」
「TVで見たことがあるぐらいには」
「……はじめまして。原村和です」
「初めまして、須賀京太郎です」
ぺこりと恭しくお辞儀をする少女に対し京太郎も同様に礼を返す。
「う、うん……私、そんなに麻雀は……」
「大丈夫よ、初心者でも手取り足取り教えてあげるし。それに今年は大型新人もいるわけだしね」
「大型新人?……あぁ」
議会長が視線を向けた先の桃色の長髪を誂えた女子へと同じく目線を向け、京太郎は得心したように目を細めた。
「ほぅ?おんし、原村の事を知っとるのか?」
「TVで見たことがあるぐらいには」
「……はじめまして。原村和です」
「初めまして、須賀京太郎です」
ぺこりと恭しくお辞儀をする少女に対し京太郎も同様に礼を返す。
「こらーっ!勝手に二人の世界に入っとるんじゃないじぇ!」
「「「……はぁ?」」」
京太郎と和、まこの言葉が第三者の突っ込みに対してユニゾンを起こす。
その声の主は和の横のまだ中学生……いや小学生とも形容しうるような少女であった。
「そうよ、そのまさかだじぇ!こののどっちに並ぶ逸材、片岡優希様を忘れてもらっては困るじょ!」_
何がまさかなのかはさっぱりわからんが、向こうがどうであれまず礼を尽くすというのは京太郎の体に染み付いた習性であった。
「……片岡優希さんか。さっきも言ったけど須賀京太郎です。片岡さん……って呼んでいいのかな」
「じょっ!?」
ちょっと堅苦しすぎたかな、と思いながら一度目線を落としてから片岡の顔を見直すと、妙に顔を赤らめた姿が京太郎には珍妙に映った。
「ゆ……」
「ゆ?」
「優希でいいじぇ!ちょ、ちょっとトイレ!」
「……あ」
文字通り脱兎のように駆け出していった優希の姿に京太郎は思わず頭を掻く。
「……彼、いつもこうなの?」
「まぁ……そうですね。京ちゃんったらまったく……」
先程にも増してニヤニヤを崩さない議会長と、いかにも面白くなさそうな咲の姿を横目で見ながら、メガネの先輩がこちらへと近づいてきた。
「「「……はぁ?」」」
京太郎と和、まこの言葉が第三者の突っ込みに対してユニゾンを起こす。
その声の主は和の横のまだ中学生……いや小学生とも形容しうるような少女であった。
「そうよ、そのまさかだじぇ!こののどっちに並ぶ逸材、片岡優希様を忘れてもらっては困るじょ!」_
何がまさかなのかはさっぱりわからんが、向こうがどうであれまず礼を尽くすというのは京太郎の体に染み付いた習性であった。
「……片岡優希さんか。さっきも言ったけど須賀京太郎です。片岡さん……って呼んでいいのかな」
「じょっ!?」
ちょっと堅苦しすぎたかな、と思いながら一度目線を落としてから片岡の顔を見直すと、妙に顔を赤らめた姿が京太郎には珍妙に映った。
「ゆ……」
「ゆ?」
「優希でいいじぇ!ちょ、ちょっとトイレ!」
「……あ」
文字通り脱兎のように駆け出していった優希の姿に京太郎は思わず頭を掻く。
「……彼、いつもこうなの?」
「まぁ……そうですね。京ちゃんったらまったく……」
先程にも増してニヤニヤを崩さない議会長と、いかにも面白くなさそうな咲の姿を横目で見ながら、メガネの先輩がこちらへと近づいてきた。
「挨拶が遅れてすまんな。わしが染谷まこ、ここの副部長をやらせてもらっとる。そんでアレが」
「議会長の竹井久先輩……部長……ですよね?」
「アレとか疑問符つけたりとかご挨拶ねぇ。れっきとした乙女なのよ、これでも」
「乙女ってのは和みたいなのを言うんじゃがのう……」
「なんにせよ、覚えてもらってたのは光栄ね。それで、お二人さん」
おどけたような表情から一転、今日一番と言えるほど凛とした表情に思わず京太郎はおろか咲さえドキッとした。
「知っての通り、私は女子の団体戦に出て、全国制覇を目的としているの」
「で、でも私は……」
「……姉さんに逢いたくないから、か?」
「えっ……!?」
こっちを振り返って目をかっと見開いた咲を見て、京太郎の想像は半ば確信へと変わった。
「議会長の竹井久先輩……部長……ですよね?」
「アレとか疑問符つけたりとかご挨拶ねぇ。れっきとした乙女なのよ、これでも」
「乙女ってのは和みたいなのを言うんじゃがのう……」
「なんにせよ、覚えてもらってたのは光栄ね。それで、お二人さん」
おどけたような表情から一転、今日一番と言えるほど凛とした表情に思わず京太郎はおろか咲さえドキッとした。
「知っての通り、私は女子の団体戦に出て、全国制覇を目的としているの」
「で、でも私は……」
「……姉さんに逢いたくないから、か?」
「えっ……!?」
こっちを振り返って目をかっと見開いた咲を見て、京太郎の想像は半ば確信へと変わった。
「そういえば自己紹介してませんでしたよね。こいつの名前は『宮永』咲」
「みやなが……あの!?」
「…………」
「悪いな咲。俺も正直確信はなかった……というより下手に詮索したくなかったからだけど。
でもこうでもしないと部長は引き下がってくれないと思ったから」
「京ちゃん……」
「咲に会ったのは中2の時だったから、昔何が会ったかは知らないけどさ」
そこで京太郎は意図的に言葉を切った。
それ以上のことは麻雀雑誌で知っている程度でしかない以上、俺も部長も大差はないからだ。
そのまま京太郎は口を噤んで咲の言葉を待っていると、
「……勝っても、いいんですか?」
「え?」
「私は、勝ってもいいんですか?」
「…………ええ。もちろんよ。大歓迎だわ」
「わかりました。ねえ京ちゃん」
「ん?」
「私と一緒に、入部してくれないかな?不安なんだ、私」
何が、と聞き返すのも憚られたし、何より咲にこうして頼られて断る理由もなかった。
「ああ、わかった。後先になっちまったな」
「なんか良くわからないけれど……入部、ってことでいいのよね?
歓迎するわ。よろしく、宮永さん」
「……はいっ」
部長が差し出した手を咲が両手で掴む様子を微笑ましく眺めながら、京太郎は脳裏で今後のことへと思いを馳せていた。
ここ清澄で……というよりは、長野で麻雀をやっていくならばきっと避けては通れないであろう女性の存在を。
「みやなが……あの!?」
「…………」
「悪いな咲。俺も正直確信はなかった……というより下手に詮索したくなかったからだけど。
でもこうでもしないと部長は引き下がってくれないと思ったから」
「京ちゃん……」
「咲に会ったのは中2の時だったから、昔何が会ったかは知らないけどさ」
そこで京太郎は意図的に言葉を切った。
それ以上のことは麻雀雑誌で知っている程度でしかない以上、俺も部長も大差はないからだ。
そのまま京太郎は口を噤んで咲の言葉を待っていると、
「……勝っても、いいんですか?」
「え?」
「私は、勝ってもいいんですか?」
「…………ええ。もちろんよ。大歓迎だわ」
「わかりました。ねえ京ちゃん」
「ん?」
「私と一緒に、入部してくれないかな?不安なんだ、私」
何が、と聞き返すのも憚られたし、何より咲にこうして頼られて断る理由もなかった。
「ああ、わかった。後先になっちまったな」
「なんか良くわからないけれど……入部、ってことでいいのよね?
歓迎するわ。よろしく、宮永さん」
「……はいっ」
部長が差し出した手を咲が両手で掴む様子を微笑ましく眺めながら、京太郎は脳裏で今後のことへと思いを馳せていた。
ここ清澄で……というよりは、長野で麻雀をやっていくならばきっと避けては通れないであろう女性の存在を。
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―――――――――
――――
シャワーを浴びて体を清めた私は、女子寮の自室へと戻り早々に寝る支度を始めた。
明日もまたコーチの厳しい朝練が待っているのだから、早めに休んでおくのがここに入ってからの習慣だった。
「まったく、華菜ったら子供みたいに色んな所触ってくるんだから……」
だがコーチに目をかけられて絞られている華菜を労ってやれるのは上級生の自分しかいないのだ。
「私が守ってあげないとなんにも出来なかったあの子も、もう高1なのよね」
今年の正月に会った時にも随分シャイだったものね。
麻雀をやってるとは聞いたけれど、携帯をまともに扱えない私ではろくに確認する手段もない。
けれど今年も部活動として続けてくれてるのなら、もしかしたら……
「……なんて、考え過ぎかしらね。
明日も頑張るからね。おやすみ、京太郎くん」
ベッドの脇に拵えられた互いが中学生の時の金髪を両目でしばらく見据えながら、私は電気を消してすぐさま眠りへついたのだった。
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シャワーを浴びて体を清めた私は、女子寮の自室へと戻り早々に寝る支度を始めた。
明日もまたコーチの厳しい朝練が待っているのだから、早めに休んでおくのがここに入ってからの習慣だった。
「まったく、華菜ったら子供みたいに色んな所触ってくるんだから……」
だがコーチに目をかけられて絞られている華菜を労ってやれるのは上級生の自分しかいないのだ。
「私が守ってあげないとなんにも出来なかったあの子も、もう高1なのよね」
今年の正月に会った時にも随分シャイだったものね。
麻雀をやってるとは聞いたけれど、携帯をまともに扱えない私ではろくに確認する手段もない。
けれど今年も部活動として続けてくれてるのなら、もしかしたら……
「……なんて、考え過ぎかしらね。
明日も頑張るからね。おやすみ、京太郎くん」
ベッドの脇に拵えられた互いが中学生の時の金髪を両目でしばらく見据えながら、私は電気を消してすぐさま眠りへついたのだった。
やっとヒロイン出てくるところまで書けたので立てました
今日はここまで
今日はここまで
乙ー
ようやくキャプスレが立ったか。でもこのまま清澄だとまた雑用の日々のような
ようやくキャプスレが立ったか。でもこのまま清澄だとまた雑用の日々のような
乙
キャップ以外にも京太郎が麻雀経験者で咲も初日から入部と色々変わってるし期待
キャップ以外にも京太郎が麻雀経験者で咲も初日から入部と色々変わってるし期待
前々から思ってたが節操ねぇな
つーか美穂子と咲の姉妹モノのパクリか?
つーか美穂子と咲の姉妹モノのパクリか?
速攻で咲のトラウマ部分に触れているのはそこまで長期的に書く気がないからかしら?
期待する
期待する
今日中には投下したいと思っていたら急に社内の飲み会に捕まってしまったのでちょっと厳しいかも
総合スレで話題に上がってた頃から期待してて、いざたって喜んでたら凄いじらされるこの感じ
嫌いじゃないわ!
嫌いじゃないわ!
入学式から1週間が過ぎた土曜日。
麻雀部の上級生二人は肩を並べて部室へと歩を進めていた。
「今年は本当に大豊作の年ね。
原村さんはもちろん、片岡さんも始めの勢いはかなりのもの。
そして宮永さんの底知れない実力……今年は波乱を起こせるかもしれないわね」
「……まったくだのう」
「あら、まこともあろう人が随分な生返事ね」
「少し、思うところがあっての。もう1人のことでな」
「あぁ、須賀君のこと?」
話に出てきた6人目の男子の存在を久は脳裏で思い浮かべた。
「彼も、もう少し麻雀が上達すればいいんだけれどね」
「……」
「……?」
まこの思案面に久はどうにも要領を得ず、そうこうする内に二人は部室の前へとやってきていた。
ドアを開けると、和を除く3人はもうやって来ていて、優希は至福といった面持ちでタコスを頬張っている。
「あぁ~……まったく京太郎のタコスは最高だじぇ!」
「お気に召したようなら嬉しいな。何せあんまり作り慣れてないもんでな」
「きょ、京太郎の作ったものなら別に……」
「ん?何か言ったか?」
「な、なんでもないじょ!あは、あははは……」
顔を逸らしてかつ小声だったのと、横から振りかかる圧迫感が優希の背筋を凍らせた。
目線すら向けていないものの、そのページを読む手は先程から動いていなかった。
麻雀部の上級生二人は肩を並べて部室へと歩を進めていた。
「今年は本当に大豊作の年ね。
原村さんはもちろん、片岡さんも始めの勢いはかなりのもの。
そして宮永さんの底知れない実力……今年は波乱を起こせるかもしれないわね」
「……まったくだのう」
「あら、まこともあろう人が随分な生返事ね」
「少し、思うところがあっての。もう1人のことでな」
「あぁ、須賀君のこと?」
話に出てきた6人目の男子の存在を久は脳裏で思い浮かべた。
「彼も、もう少し麻雀が上達すればいいんだけれどね」
「……」
「……?」
まこの思案面に久はどうにも要領を得ず、そうこうする内に二人は部室の前へとやってきていた。
ドアを開けると、和を除く3人はもうやって来ていて、優希は至福といった面持ちでタコスを頬張っている。
「あぁ~……まったく京太郎のタコスは最高だじぇ!」
「お気に召したようなら嬉しいな。何せあんまり作り慣れてないもんでな」
「きょ、京太郎の作ったものなら別に……」
「ん?何か言ったか?」
「な、なんでもないじょ!あは、あははは……」
顔を逸らしてかつ小声だったのと、横から振りかかる圧迫感が優希の背筋を凍らせた。
目線すら向けていないものの、そのページを読む手は先程から動いていなかった。
「いったい何を……って、何、その冷蔵庫?とレンジ?」
「優希がタコスをもっとこまめに補給したいっていうものですから、家にある小型のものを持ってきたんです」
「……わざわざ、ここまで持ってきたの?」
呆れた声の久に向けて京太郎ははいと首を縦に振る。
「料理するのは好きですし、案外作り置きが効くようなので」
「あぁ……うん、そう。それならいいんだけど」
何が良いのか自分でもよく分かっていないが、好きでやっているというならむざむざ止める理由も久にはなかった。
「それに、これらがあれば飲み物を冷やしたりおしぼりを用意したりも出来ますし」
「……おんし、本当に高校生か?
うちの雀荘の店員に今からでもスカウトしたいぐらいじゃ」
久共々苦笑を貼り付けたまこの顔を見て、京太郎もつられたように頭を掻いて笑った。
「優希がタコスをもっとこまめに補給したいっていうものですから、家にある小型のものを持ってきたんです」
「……わざわざ、ここまで持ってきたの?」
呆れた声の久に向けて京太郎ははいと首を縦に振る。
「料理するのは好きですし、案外作り置きが効くようなので」
「あぁ……うん、そう。それならいいんだけど」
何が良いのか自分でもよく分かっていないが、好きでやっているというならむざむざ止める理由も久にはなかった。
「それに、これらがあれば飲み物を冷やしたりおしぼりを用意したりも出来ますし」
「……おんし、本当に高校生か?
うちの雀荘の店員に今からでもスカウトしたいぐらいじゃ」
久共々苦笑を貼り付けたまこの顔を見て、京太郎もつられたように頭を掻いて笑った。
そう答えたのは咲だ。
「じゃあ、とりあえず始めましょうか。時間は有限ですもの」
「……それじゃあ、わしが先に抜けておくな。京太郎入ってくれ」
「俺?ですか」
「あぁ」
「……はい」
基本、京太郎は入部してからも頭数が揃っている時は進んで卓に着くことはほとんどなく、大抵雑事をこなしているかネトマに興じているかのどちらかだった。
曰く、『俺はその方が性に合ってますし、大した実力でもありませんから』とのことで、久もそれを認めていたのだが。
「ああ、あと京太郎がその2半荘で一度でも三着以下だったらわしが皆にジュース一本奢る」
「なっ」
「本当に!?」
まさかのまこの言に京太郎と優希は正反対の態度を取る。
優希の態度が京太郎が以下に振るわない成績かを顕著に表しているようだったが、
「ま、そういうわけじゃ。頑張ってくれな」
まこは京太郎の肩をポンと叩いて、ニッと不敵な笑みを浮かべた。
「……金ドブでも知りませんよ?」
「おう、気にするな。おんしは気にせず堂々と打ちゃあよろしい」
「…………わかりました」
京太郎は深く大きな溜息を一つ吐き出すと、左手で左目を覆うように顔へと添えた。
「京ちゃん、それ……」
「それじゃあ――始めましょうか」
咲が何か言いかけた言葉は久の開始宣言にかき消され、ゆるやかに勝負は始められた。
「じゃあ、とりあえず始めましょうか。時間は有限ですもの」
「……それじゃあ、わしが先に抜けておくな。京太郎入ってくれ」
「俺?ですか」
「あぁ」
「……はい」
基本、京太郎は入部してからも頭数が揃っている時は進んで卓に着くことはほとんどなく、大抵雑事をこなしているかネトマに興じているかのどちらかだった。
曰く、『俺はその方が性に合ってますし、大した実力でもありませんから』とのことで、久もそれを認めていたのだが。
「ああ、あと京太郎がその2半荘で一度でも三着以下だったらわしが皆にジュース一本奢る」
「なっ」
「本当に!?」
まさかのまこの言に京太郎と優希は正反対の態度を取る。
優希の態度が京太郎が以下に振るわない成績かを顕著に表しているようだったが、
「ま、そういうわけじゃ。頑張ってくれな」
まこは京太郎の肩をポンと叩いて、ニッと不敵な笑みを浮かべた。
「……金ドブでも知りませんよ?」
「おう、気にするな。おんしは気にせず堂々と打ちゃあよろしい」
「…………わかりました」
京太郎は深く大きな溜息を一つ吐き出すと、左手で左目を覆うように顔へと添えた。
「京ちゃん、それ……」
「それじゃあ――始めましょうか」
咲が何か言いかけた言葉は久の開始宣言にかき消され、ゆるやかに勝負は始められた。
――――――――――
「まさか……京太郎がこんな」
「――とんでもない猫かぶりもあったものねぇ」
「…………すみません」
「京ちゃん……」
その結果に関して、京太郎はあくまで淡々としていたが、その言葉がそのまま肯定を示していた。
直後、ドアが開き特徴的な桃色の髪が美しい女子――和が入ってきた。
「すみません、遅れました――どうかしたんですか?」
「卓を見たままの結果じゃよ。まさかここまでとはわしも思わなじゃがのう」
「卓をって……えっ」
促されるままに卓上を見た和は、驚きで口が塞がらなかった。
「須賀君が連続1位……!?天和でも和了ったんですか?」
「生憎そんな事はな。なんでそうなのかは知らんが、こいつは自分の勝ち負けにまるで固執してないんじゃ」
「…………」
「そんな目をするな京太郎。確かにほじくり返したわしも悪いが、元々はお前がこんなもん見せつけてくるからじゃろう」
まこは鞄からファイル群を取り出してかざすように自身の顔の前へ突き出した。
「まさか……京太郎がこんな」
「――とんでもない猫かぶりもあったものねぇ」
「…………すみません」
「京ちゃん……」
その結果に関して、京太郎はあくまで淡々としていたが、その言葉がそのまま肯定を示していた。
直後、ドアが開き特徴的な桃色の髪が美しい女子――和が入ってきた。
「すみません、遅れました――どうかしたんですか?」
「卓を見たままの結果じゃよ。まさかここまでとはわしも思わなじゃがのう」
「卓をって……えっ」
促されるままに卓上を見た和は、驚きで口が塞がらなかった。
「須賀君が連続1位……!?天和でも和了ったんですか?」
「生憎そんな事はな。なんでそうなのかは知らんが、こいつは自分の勝ち負けにまるで固執してないんじゃ」
「…………」
「そんな目をするな京太郎。確かにほじくり返したわしも悪いが、元々はお前がこんなもん見せつけてくるからじゃろう」
まこは鞄からファイル群を取り出してかざすように自身の顔の前へ突き出した。
「……それは」
「何ですか、これ?」
和はまこからファイルを受け取ると、その内容に息を呑んだ。
「私達の牌譜……それも、1人でこれほどの情報量を」
「ああ。昨日、須賀がわしに渡してきたんじゃ。暇だからってな。
それにさっきの打ち筋にしても、周りの流れを常に意識できているようじゃった」
そのプリントにはさすがに配牌やツモに関しては一人分しか伺い知れなかったものの、
河の内容から他家がどこにツモを入れてどこを切ったかまでが漏れ無く網羅されていた。
「……久々に見たよね、京ちゃんのその癖」
「癖?」
「はい。京ちゃん、特に集中してる時は左目を隠すクセがあるんです。
最近見てなかったとは思ってたけれど」
「なんだか中二病みたいだじぇ」
「…………」
咲の発言に関しては京太郎は否定も肯定もしない。
だが、とにもかくにも白日になったのは京太郎は手を抜いていたという単純な一点だった。
「……私達とは、真面目に打つ気にもなれなかったという事ですか?」
「違う」
「どう違うんですか!こんな事されて……私はちっとも楽しくありませんよ!」
「それは……」
「あなたには本当に助けられていますが――こんなこと、知りたくありませんでした。
正直、幻滅しています」
「……ごめん」
和の叱責に対して京太郎はぐうの音も出せず、伏し目がちに謝罪した姿に和ははっとしていた。
「何ですか、これ?」
和はまこからファイルを受け取ると、その内容に息を呑んだ。
「私達の牌譜……それも、1人でこれほどの情報量を」
「ああ。昨日、須賀がわしに渡してきたんじゃ。暇だからってな。
それにさっきの打ち筋にしても、周りの流れを常に意識できているようじゃった」
そのプリントにはさすがに配牌やツモに関しては一人分しか伺い知れなかったものの、
河の内容から他家がどこにツモを入れてどこを切ったかまでが漏れ無く網羅されていた。
「……久々に見たよね、京ちゃんのその癖」
「癖?」
「はい。京ちゃん、特に集中してる時は左目を隠すクセがあるんです。
最近見てなかったとは思ってたけれど」
「なんだか中二病みたいだじぇ」
「…………」
咲の発言に関しては京太郎は否定も肯定もしない。
だが、とにもかくにも白日になったのは京太郎は手を抜いていたという単純な一点だった。
「……私達とは、真面目に打つ気にもなれなかったという事ですか?」
「違う」
「どう違うんですか!こんな事されて……私はちっとも楽しくありませんよ!」
「それは……」
「あなたには本当に助けられていますが――こんなこと、知りたくありませんでした。
正直、幻滅しています」
「……ごめん」
和の叱責に対して京太郎はぐうの音も出せず、伏し目がちに謝罪した姿に和ははっとしていた。
「……染谷先輩、今日は失礼させていただきます」
「ああ。じゃが、わしも悪かった。それだけは言わせてくれ」
「いえ。……では、失礼します」
そう答え部屋を出て行く京太郎の背を追いかけようとする咲を久は制止する。
「どうしてですか!あんな言い方……」
「残酷なようだけれど、腕利きはいくら居ても損はしないの。
けど、あんな腑抜けた打ち方をされてたらお互いの為にならないわ」
「だからって!」
「あなたが行って原因が解消するのならいくらでも行かせるけれど」
「それは……」
「……そう。じゃあ、何か他に原因があるのね。あなたの知らない」
「……私が京ちゃんと会ったのは中2の春でした。
あまりそれ以前の話はありませんが……風越の方にいたって話は小耳に挟んだ事があります」
「風越って、あの風越女子のある?」
「だと思います。京ちゃん、あまりその頃の話話さないから……」
「ふぅん。ま、当たってみる価値はあるかもしれないわね。どの道今のうちに知っておきたい相手だし」
久はやれやれという風に髪に手櫛をかけ、咲の方を向き直った。
「それに、彼が居ないとあなた達も困るでしょう?」
「達ってどういうことですか(だじぇ)!」
「あら、どうしてあなた達が応えるのよ」
「「っ」」
「やれやれ、まさか原村さんまでとはね……罪作りな子ね」
「わ、私は別に!」
「……まあいいわ。とにかく今はあなたたちは練習してなさい。まこ」
「ん」
「頼めるかしら?」
「あぁ。元々焚きつけたのはわしじゃけぇ、できる限りのことはする」
「有難う」
そう言うと、まこは携帯を開きながら部室を後にしていった。
「それじゃ、私達は練習を続けるわよ」
あまり釈然とはしていない様子ながら、新入生三人は久の言葉に渋々頷くのだった。
「ああ。じゃが、わしも悪かった。それだけは言わせてくれ」
「いえ。……では、失礼します」
そう答え部屋を出て行く京太郎の背を追いかけようとする咲を久は制止する。
「どうしてですか!あんな言い方……」
「残酷なようだけれど、腕利きはいくら居ても損はしないの。
けど、あんな腑抜けた打ち方をされてたらお互いの為にならないわ」
「だからって!」
「あなたが行って原因が解消するのならいくらでも行かせるけれど」
「それは……」
「……そう。じゃあ、何か他に原因があるのね。あなたの知らない」
「……私が京ちゃんと会ったのは中2の春でした。
あまりそれ以前の話はありませんが……風越の方にいたって話は小耳に挟んだ事があります」
「風越って、あの風越女子のある?」
「だと思います。京ちゃん、あまりその頃の話話さないから……」
「ふぅん。ま、当たってみる価値はあるかもしれないわね。どの道今のうちに知っておきたい相手だし」
久はやれやれという風に髪に手櫛をかけ、咲の方を向き直った。
「それに、彼が居ないとあなた達も困るでしょう?」
「達ってどういうことですか(だじぇ)!」
「あら、どうしてあなた達が応えるのよ」
「「っ」」
「やれやれ、まさか原村さんまでとはね……罪作りな子ね」
「わ、私は別に!」
「……まあいいわ。とにかく今はあなたたちは練習してなさい。まこ」
「ん」
「頼めるかしら?」
「あぁ。元々焚きつけたのはわしじゃけぇ、できる限りのことはする」
「有難う」
そう言うと、まこは携帯を開きながら部室を後にしていった。
「それじゃ、私達は練習を続けるわよ」
あまり釈然とはしていない様子ながら、新入生三人は久の言葉に渋々頷くのだった。
――――――――――
「練習試合、ですか?」
「ああ。来週の土曜にな」
活動後のミーティングで久保コーチがそんなことを言い出した時、私は別にどうと思うこともなかった。
「有り難い申し出ですけど、随分急ですね」
「だな。だから返事も保留にしてあるんだが」
「どこからだったんですか?」
「清澄高校からだ。今年になって団体戦に出る人数が揃ったらしくてな。その中にあの原村和もいる」
「清澄……」
「キャプテン?どうかしたんですか?」
「いや、なんでもないわ」
華菜の問いかけに何でもない風を装いながら私は胸に手を当てた。
「それに、ちょっと困ったこともあるしな」
「困ったこと?」
「ああ。なにやら男子部員がいるらしいんだが――金髪のが一人な」
瞬間、私は反射的に右目を見開いていた。
「なんでそんな細かくわかってるんですか?」
「向こうがそう言ってきたからだよ。こっちから聞くものか」
「……受けましょう」
「キャプテン……?」
「彼や彼女らの実力を推し量っておくことは大切なことでしょう。
それに、あの原村和がいるとあれば、なおのこと決して損はしないはずです」
「――まあ、そうだな。他、何か依存のある奴はいるか?
……ないなら、レギュラーは勿論全員集合として、二軍以下も可能な限り集まれるようにしておくこと。以上だ」
「練習試合、ですか?」
「ああ。来週の土曜にな」
活動後のミーティングで久保コーチがそんなことを言い出した時、私は別にどうと思うこともなかった。
「有り難い申し出ですけど、随分急ですね」
「だな。だから返事も保留にしてあるんだが」
「どこからだったんですか?」
「清澄高校からだ。今年になって団体戦に出る人数が揃ったらしくてな。その中にあの原村和もいる」
「清澄……」
「キャプテン?どうかしたんですか?」
「いや、なんでもないわ」
華菜の問いかけに何でもない風を装いながら私は胸に手を当てた。
「それに、ちょっと困ったこともあるしな」
「困ったこと?」
「ああ。なにやら男子部員がいるらしいんだが――金髪のが一人な」
瞬間、私は反射的に右目を見開いていた。
「なんでそんな細かくわかってるんですか?」
「向こうがそう言ってきたからだよ。こっちから聞くものか」
「……受けましょう」
「キャプテン……?」
「彼や彼女らの実力を推し量っておくことは大切なことでしょう。
それに、あの原村和がいるとあれば、なおのこと決して損はしないはずです」
「――まあ、そうだな。他、何か依存のある奴はいるか?
……ないなら、レギュラーは勿論全員集合として、二軍以下も可能な限り集まれるようにしておくこと。以上だ」
来てたー!と思ったら終わってたー!
続きを紳士スタイルで待ってるよ
続きを紳士スタイルで待ってるよ
「……まったく、とんだ墓穴もあったもんだな」
大した意味もなく走って帰宅した京太郎は、先程の顛末を思い返してそう自重した。
少なからず部長の夢に共感できる部分があったし、それは自分が関わらない所であったからこそつい熱が入ってしまっていた。
それにこんなことを続けていて何の益も無いことぐらいは京太郎自身がよくよく知っていたのだ。
(……けど、これが俺の2年も続けてきてしまった惰性なんだよな……)
悪く言えばきっかけを他者に与えて欲しいに過ぎないのだが、それ程までに京太郎の内面はコールタールのごとく塗り固められてしまっていた。
「……ある意味で、これが良いきっかけなのかもしれない」
そんな風に考えつつベッドの上で横になっていた矢先に、不意に玄関のチャイムが鳴った。
大した意味もなく走って帰宅した京太郎は、先程の顛末を思い返してそう自重した。
少なからず部長の夢に共感できる部分があったし、それは自分が関わらない所であったからこそつい熱が入ってしまっていた。
それにこんなことを続けていて何の益も無いことぐらいは京太郎自身がよくよく知っていたのだ。
(……けど、これが俺の2年も続けてきてしまった惰性なんだよな……)
悪く言えばきっかけを他者に与えて欲しいに過ぎないのだが、それ程までに京太郎の内面はコールタールのごとく塗り固められてしまっていた。
「……ある意味で、これが良いきっかけなのかもしれない」
そんな風に考えつつベッドの上で横になっていた矢先に、不意に玄関のチャイムが鳴った。
「こんな時間に一体誰だ……?」
両親は出かけていて自分しかいないので、渋々京太郎は体を起こして玄関先へと足を向ける。
と言いつつも、京太郎自身も特定まではできずともどんな人かぐらいは見当がついていた。
玄関のドアを開けると、世話焼きなメガネの先輩の顔が見え、呆れとも喜びともわからぬ表情で京太郎は一息をついた。
「よぅ」
「……こんちわ。よく知ってましたね」
「咲に聞いたが、どうにも要領を得なかったけぇ部長に調べてもろうた」
「正しい判断ですね」
京太郎はあいつらしいとカラカラ笑う。
「ふふ」
「何です?」
「いんや。おんしにはやっぱり辛気臭い顔は似合わんと思うてな」
「口説き文句ですか?」
「そう思うか?どうとっても構わんよ」
再び2人が同時に笑みをこぼした。
両親は出かけていて自分しかいないので、渋々京太郎は体を起こして玄関先へと足を向ける。
と言いつつも、京太郎自身も特定まではできずともどんな人かぐらいは見当がついていた。
玄関のドアを開けると、世話焼きなメガネの先輩の顔が見え、呆れとも喜びともわからぬ表情で京太郎は一息をついた。
「よぅ」
「……こんちわ。よく知ってましたね」
「咲に聞いたが、どうにも要領を得なかったけぇ部長に調べてもろうた」
「正しい判断ですね」
京太郎はあいつらしいとカラカラ笑う。
「ふふ」
「何です?」
「いんや。おんしにはやっぱり辛気臭い顔は似合わんと思うてな」
「口説き文句ですか?」
「そう思うか?どうとっても構わんよ」
再び2人が同時に笑みをこぼした。
「さて。それで、おんしこれからどうするつもりじゃ?」
「どうもこうも、嫌われてしまったようですし」
「……やれやれ、おんしも相当なひねくれ者じゃの。あれだけ緻密な気配りができように」
「…………」
「一体何をそんなに怖がってるんじゃ?」
まこの真摯な問いかけに京太郎は目線を外すことも出来ず、ただただメガネの先の瞳に目線が吸い寄せられるばかりだった。
「正直、うちの部に気に入らない所があるならそれでも構わん」
「そんな事は……」
「……じゃが、それだけの光るものを持ちながら濁っているおんしを見るのも忍びない。少なくともわしはな」
「先輩……」
「どうせ今から暇なんじゃろ?ならちょっと付いてこんか」
言外に否定を許さない素敵な笑みに京太郎は両手を挙げ、「好きにしてください」と呟いた。
「どうもこうも、嫌われてしまったようですし」
「……やれやれ、おんしも相当なひねくれ者じゃの。あれだけ緻密な気配りができように」
「…………」
「一体何をそんなに怖がってるんじゃ?」
まこの真摯な問いかけに京太郎は目線を外すことも出来ず、ただただメガネの先の瞳に目線が吸い寄せられるばかりだった。
「正直、うちの部に気に入らない所があるならそれでも構わん」
「そんな事は……」
「……じゃが、それだけの光るものを持ちながら濁っているおんしを見るのも忍びない。少なくともわしはな」
「先輩……」
「どうせ今から暇なんじゃろ?ならちょっと付いてこんか」
言外に否定を許さない素敵な笑みに京太郎は両手を挙げ、「好きにしてください」と呟いた。
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