元スレ男「エルフの書物が読めなくて不便だ……奴隷でも買うか」

みんなの評価 : ★
1 :
男「ここまで頑張ってきてすげぇ今更だけど、辞書を引くのが面倒すぎる」
男「今なんか、エルフの奴隷が市場にいるみたいだし、買おうか」
男「幸いにもお金はあるし」
男「というか、メイドが玉の輿で結婚してしまってから、どうにも屋敷が汚いし……」
男「奴隷って言うぐらいだから、掃除とか料理とかもしてくれるだろう」
男「今思えば満足な食事もしてないし」
男「独り言も多くなってきてしまったし」
男「一人は寂しいし」
男「…………」
男「……うん」
男「どれ、ちょっくら久しぶりに外に出て、奴隷市場にでも足を向けるか」
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2 = 1 :
(できれば)毎日三十分ほどてきとうに書いてく
気長にチラチラとたまにたまに覗いてくれるだけで良いです
暇つぶし兼オナニー的なね
3 = 1 :
◇ ◇ ◇
山道
◇ ◇ ◇
男「はぁ……はぁ……はぁ……」ザッザッザッ…
男(全く……なんでこんな山奥の屋敷なんだ……)ザッザッザッ…
男(おかげで馬車は呼べないし、近くの城下街に行くまで半半日もかかる……!)ザッザッザッ…
男(街道に出たら馬車を捕まえられるが……それまでこの距離を歩かされるのは……辛い)ザッザッザッ…
男(……まぁ、近くに湖はあるし、食べられる野草も多いから、滅多に街まで降りなくて済むからまだ良いほうか……)ザッザッザッ…
男(なんだかんだで城下街からも近いってことだし……うん、悪いことばかりじゃない)ザッザッザッ…
男(悪いことばかりじゃないはずなんだ……!)ザッザッザッ…
男(言い聞かせろボク! そうしないと心が折れそうだ……っ! この山道に……っ!!)ザッザッザッ…!!
男「……はぁ……はぁ……よしっ、街道に、ついた……」
男(あとは馬車が通るまで街へと向かって歩いて……通ったらお金を払ってでも乗り込んでやる……!)
4 :
見てやろう
5 = 1 :
◇ ◇ ◇
城下街
◇ ◇ ◇
男「着いた……」
男(すぐに馬車が通ってくれて良かった……まだ日が沈んでないのに着けたのは正直大きい)
男「おじさん、ありがとうございました。それで、お代の方は……?」
商人「ああ、いいよいいよ。お代は結構」
男「え?」
商人「困ったときはお互い様、ってね」
男「でも……本当に良いんですか?」
商人「構わんさ。どうせ途中で乗せてやっただけだし、荷物みたいなもんさ。
商人「昔みたいに戦争してたってんなら、戦争のためとか言って取られてた通行税分ぐらいは貰ったかもしれねぇが……今は、そういうのも無くなったからな」
男「はぁ……」
商人「ま、気にすんなって。平和になった世の中に、感謝感謝」
男「ん~……でもそれじゃあ、ボクの気が済まないというか……」
男「あ、それじゃあ、その商品を何処に卸すか教えてくれませんか? 用事を済ませた後にでも買い物に寄らせてもらいますよ」
商人「おっ、そうかい?」
男「はい。直接的なお礼にはならないかもしれませんが……それぐらいなら、ボクにも出来ますから」
6 = 1 :
◇ ◇ ◇
街の中
◇ ◇ ◇
テクテクテク…
男(戦争……ね)
男(エルフとの激しい戦争が終わって……もうそろそろ一月、か……)
男(軍事費の徴収を、商業の中心ともいえるこの城下街への通行料でまかなっていたっていうのに……)
男(軍事費から復興費用と名目を変え、税収を上げたままにすることも出来たのに、ソレをせずにすぐに止め……)
男(それでも、復興費用が捻出できると計算した……)
男「…………」
男(沢山の若い男が兵として駆り出され、死んで……)
男(……化物に変えられ、理性を保てず、命を絶って……)
男(おかげで、人以外の犠牲を少なくして、勝った戦争……)
男「その復興費のアテが……敗戦国となったエルフの奴隷、か……」
男(金持ち貴族から無理矢理お金を取り上げようとも渋るに決まってる)
男(それ故の交換条件、と言ったところか)
男(……一つの命に対し、なんて扱いだ……)
男「……でもまぁ、その奴隷を買いに来てる時点で、ボクも同じか……」
7 = 1 :
男(でも、一つ疑問なんだよなぁ……)
男(そもそも貴族は、人間の奴隷を買っているはずだ)
男(ということは、今更新しく奴隷を買う必要性もない訳で……)
男(例えそれがエルフでももう必要ない可能性が大きい訳で……)
男(……それで一体全体どうやってこの国は、エルフの奴隷、ってだけで、復興費のアテになるだろうと読んだんだろう……)
男(買い手がほとんどいなくなり、商品が行き渡った後に、類似品を売るようなものだ)
男「……この国は賢いのかバカなのか、分からないなぁ……」
男(奴隷――まぁ詰まるところ、召使いだとか執事だとかメイドだとか言われる人って、そんなに大勢はいらないと思うんだけど……)
男(奴隷だとお金を一括で払うだけで済む、っていっても、多かったら邪魔になるわけで……食費などなどの維持費で)
男(ボクのところに前までいてくれたメイドみたいに「雇用」となると、月々お金を払わないとならない代わりに維持費はそれぞれが負担してくれるけれど……結局、雇用費が奴隷でいう維持費みたいなもんだし)
男「…………」
男(……ん~……ダメだ。色々と思案してみたけど、やっぱりよく分からない。エルフの奴隷、ってだけで、復興費にあてられるほどの税収を期待できる理由が)
8 = 4 :
俺は>>1は上げていいと思うがな
9 = 1 :
男(……まぁ、ボクがそこまで真剣に考える必要もないか)
男(案外ボクみたいに、エルフ文字を読ませたいだとか、魔法とは違うエルフだけが使える“秘術”とやらが見てみたいだとか、そういう理由があったりする人対象なのかもしれない)
男「……にしても……」
男(エルフの奴隷市場はどこだ……? 看板も何も無いから分からないな……まぁ、他国民の売買だから、公には出来ないんだろうけれど)
男(……そういえばボク、そもそもの人間の奴隷市場も見たことがないや……)
男「…………」
男(……仕方が無い。てきとうに店の人に聞くか)
男「あの、すいません」
店主「はいいらっしゃい! なんにしましょう」
男「あ、ごめんなさい。買い物じゃなくて、訊ねたいことがあるんですけど……」
店主「おっ、なんだい?」
男「エルフの奴隷市場って、こっからどうやっていけますか?」
店主「っ!?」
10 = 1 :
店主「……おい兄ちゃん。若いのに、どえらいことを聞いてくるねぇ……」
男「あ、いえ。ボクこれでも、あまり若くは――」
店主「いや、すまねぇ。若いからこそ必要なんだよな」
男「ん~……あ~……そう、ですね……そうかもしれません」
男(若いときの時間は貴重だから、家事全てを引き受けてくれる存在が一人いるだけで、かなり時間が取れるもんなぁ……)
店主「……で、奴隷市場、だったな」
男「あ、はい。そうです。エルフの、ですけど」
店主「兄ちゃんも物好きだねぇ……エルフだなんて」
男「ちょっと、必要になりまして」
店主「おいおい……そんな料理に一品足りなくて、みたいに言ってるけど、結構な値段だぜ?」
男「分かってますよ。人――ああ、この場合はエルフですけど――ともかく、命一つ……他人の人生一つ丸々を、買うわけですからね」
店主「それなりの金はあるって訳か……」
11 = 1 :
店主「……悪いが、コッチも危ない橋を渡るんだ。タダ、って訳にはいかねぇな」
男「あ~……なるほど」
男(やっぱり、道徳的に命を買うというのはどうか、とか言ってる団体もいるだろうし……当然か)
男(そういう団体の目から逃れるために、情報のやり取りには慎重になるはずだ)
男(そしてもし、この人のせいで、その団体に場所が知られてしまったら……その先は言わずもがな)
男(その市場にその団体が押し入り、法律上は奴隷市場が認められているからといっても、その団体は奴隷制度を許さない)
男(だから市場に対し、法律で許される範囲での嫌がらせをし……もしくは、買われる前の奴隷に人権はあるが誰の所有物でもない、という法律の部分を利用し、勝手に逃がしたりし……市場を崩壊させる)
男(そして、そのキッカケを作ってしまったこの人は、同じ商売仲間からの、迫害に遭う)
男(情報という商品を、アッサリとばら撒いてしまうのだから)
男(……確かに。そんなリスクがあるのにタダで教えて、というのは、ムシが良すぎる)
男「……分かりました。では、このぐらいでどうでしょう?」
ジャラ
男「一応、金貨にして三十枚ほど用意しました。これならあなたのせいで情報が漏洩したとバレてしまった場合でも、どこかに逃げ、三年は贅沢をして暮らしていけるかと思います」
店主「えっ……お、おい! こりゃ……マジもんかっ!?」
男「もちろんです。あなたを危険な目に遭わせるかもしれないというなら、このぐらいは出すべきでしょう」
店主「おいおい……おめぇ、一体なにもんだ?」
男「ちょっと小金を持っているだけの、見た目だけ若作りなただのオッサンですよ」
男「それで、どうですか? 教えてくださるなら、これはあなたのものですけれど」
店主「ははっ。ああ、いいぜ。これだけもらえるってんなら、教えてやるよ」
男「ありがとうございます」
12 :
金貨30枚って3年どころじゃないだろ
と無駄に突っ込んでみる
13 = 1 :
男「あ、そうだ。適当な場所を教えてもらうと厄介なので、コチラも」
トン
店主「……? なんだ、この水が入ったビンは」
男「ボク、これでもちょっと魔法をかじってまして。もし教えてもらえた場所が嘘だった場合、もしくはこの水を捨てようとした場合、すぐさまこの中身が暴れまわります」
店主「は? 水が、か?」
男「はい。まぁ、あなたの顔を覆って窒息死させる分には十分な量かと」
店主「っ!?」
男「ボクの命令一つで動きます。あ、でも次の朝日が昇れば自動的に魔法は解除されますので、その時は普通に飲み水として使ってください」
店主「……ただの小金持ってるオッサンが、魔法使いねぇ……」
男「魔法を使えたから小金を持ってる、といった方が正しいかもしれません」
店主「はん。ま、良いぜ。金貨三十枚のやり取りだ。これぐらいの賭けは当然だろうな」
男「賭け、ですか?」
店主「ああ。もしかしたらお前が、場所を聞き出すと同時にその魔法を使うかもしれないし、言った通り使わないかもしれない、っていう賭けだよ」
男「ボクはちゃんと教えてくれたら使いませんよ」
店主「俺だってこんなことされなくてもちゃんと教えるさ」
男「あ……そうか。そうですね。その日にあった人間同士ですから、互いに信用しないのは当然ですね……忘れてました」
店主「なんだそりゃ。ま、俺は三十枚という大金のために、命ぐらい賭けてやろうってだけさ」
14 = 1 :
今日はここまで
眠いし明日仕事だし…
っていうかもう書き溜め無くなってきたや……
>>12 スマヌ……スマヌ!!
ファンタジー小説とか読まないし現実での金の価値も分からんかったのよ……
でもそうか…もう少し金貨枚数少なくても良かったのか
15 :
>>14
いや、自分のやりたいようにやってくれ
あんまりスレ内の意見を尊重しすぎるともたないで
とりあえず期待
16 = 15 :
まあ金貨30枚が三年間働かずに暮らせる分の世界
それでいいじゃないか
とりあえず乙
17 = 12 :
でしゃばったな俺
>>1申し訳ない
激しく期待
18 :
乙
久しぶりに期待
20 :
金貨の枚数が適正か不安なら
金貨の大きさを変えればいいじゃない
21 :
過度のデフレだったから金貨の価値をさげて大量に発行したんだろう
22 :
もうその話題はいいだろ
23 :
再開させてもらいます
もう金貨に対しては無知が招いたミスなので…笑ってやってください
このままの貨幣価値でいくけど
24 = 1 :
テクテクテク…
男(さて……奴隷市場の場所を教えてもらったけど……本当にエルフはいるのだろうか……?)
男(今はエルフとの戦争が終わったばかりだから、逆にエルフしかいないだろと言われたけど……)
男(……エルフ以外の奴隷は買う気がしないからなぁ……)
男「あ」
男(ここだ)
男(外観は普通の民家……だけど、扉の付け根に白い造花が咲くように二つ植えられてる……)
男(間違いない……と思う)
男「えっと……」
男(ノックの回数は、三回。で、四秒待った後、二回。そして十秒待つと……)
トントントン
……
トントン
……………………
ガチャ
奴隷商「ようこそいらっしゃいました。地下の市場へようこそ。さ、中へお入りください」
男(ランプと机と椅子が一つずつあるだけの部屋。その奥に見える下りの階段……良かった。話に聞いていた通りだ)
25 = 1 :
奴隷商「本日の御用は……訊ねるまでもありませんね。早速ですが、どういった子をご所望で?」
男「えっと……エルフの子っていますか?」
奴隷商「もちろんですとも。○○商人協会からのご来店ということですので、取り扱わせてもらっております」
男「え? 誰から紹介されたのかとか、分かるの? あ、ノックの回数か」
奴隷商「左様で」
男(他の紹介だとまた別のノックの仕方だったんだろうなぁ、きっと)
奴隷商「それで、エルフの、どのような子を?」
男「そうだなぁ……」
男(やっぱり、召使いとしての仕事よりも、文字を読んでもらうのが本業みたいになる訳だし……)
男「最低条件としてはやっぱり、頭が良い子かな」
奴隷商「なるほど……物分りが良い子と。すでに調教されている子ですね?」
男「調教?」
男(あ~……教育されてる子、ってことかな? でも確かエルフの文化って、全員が自分達の文字ぐらいなら読めるはずだったような……?)
男(改めて教えることなんて何もないんじゃ……。……あ、もしかして――)
男「――それって、こちらの文字は読めますよね?」
奴隷商「それはもしかして……人間の文字、ということですか?」
男(うわっ……ヒゲを蓄えたおっさんにキョトンとされたよ……)
26 = 1 :
奴隷商「そうですな……まぁ、読める子を用意することは出来ますよ。ですが、それが何か?」
男「いえ、やっぱり読めた方が色々と捗りそうですし」
奴隷商「はあ……」
男(得心いってないって感じだなぁ……まぁ良いや)
男「あ、それと出来れば、料理が出来た方がありがたいかも」
奴隷商「料理、ですか……? ……さすがに、わたくし共ではそこまで把握しきれておりませんなぁ」
男「そうですか……あ、いえ、なら別に良いんです。あわよくば出来れば便利、だと思った程度ですから」
男(それに頭が良い子を連れて帰れれば、きっと料理ぐらい覚えてくれるだろう)
27 = 1 :
奴隷商「それよりもお客様、外見のご要望などはありますか?」
男「外見……。……ん~……でもエルフって、基本的に皆美しいですし……大丈夫ですよ」
奴隷商「まぁ、わたくし達人間にしてみれば、あの珠のような肌とそこから造形された顔立ちは、どれも美しく見えますからな」
男「ですね」
奴隷商「それで……なんなら、味見でもされていきますか?」
男「味見?」
男(……もしかして、さっき言った料理のことでも気にしてくれてるのかな……?)
男「いえいえそんな、お気遣いなく」
奴隷商「そうですか……? まぁ、帰ってからのお楽しみ、というのもありですからな」
男「はい。そうさせてもらいます」
奴隷商「若い見た目にも関わらず、随分とがっつかない。ここにくるあなたぐらいの年代……特に傭兵業を営んでいたり、冒険者をしている方などは、味見だけして帰っていく方もいるというのに」
男「へぇ~……」
男(まぁ、エルフが作ってくれる料理、ってのには、確かに関心がくすぐられるものがあるかも)
男(……でも、探せばそういう食堂もありそうなんだけどな……意外にもないのかな……?)
男「でもそれだと、商売にならないんじゃないんですか?」
奴隷商「いえいえ、味見料はしっかりと頂きますので、大丈夫ですよ」
28 = 1 :
エルフメイド「長。終わりました」
奴隷商「ああ、ご苦労」
奴隷商「申し訳ありません。随分と玄関で長話をさせてしまいまして」
男「あ、そんな。気にしませんよ。わざわざありがとうございます」
奴隷商「見た目の指定がないようですので、どうぞ地下に降りて吟味してください」
奴隷商「地下からは、こちらのエルフがあなたを案内いたしますので」
エルフメイド「よろしくお願いいたします」ペコ
男「あ、これはどうもご丁寧に。よろしくお願いします」
エルフメイド「では、私についてきてください。暗いですから、ランプの明かりを見失ってしまいますと、足を踏み外してしまいますよ」
男「何から何まで、ありがとうございます」
奴隷商「では、よきお買い物を」
29 = 1 :
カツン、カツン、カツン…
男(うわ、本当に真っ暗……っていうか結構深い……? 街の地下なのに、こんなに……)
エルフメイド「……大丈夫ですか?」
男「あ、はい。大丈夫です」
エルフメイド「そうですか」
男「ありがとうございます。気を遣っていただいて」
エルフメイド「…………」ジッ
男「……? ……あの、何か?」
エルフメイド「……いえ……ただ、こういう場面で、人にお礼を言われたのは、初めてでしたので……少し驚きました」
男「そうですか? あ~……でも、自分はお客様だぞ、って客が多いから、そうなのかも」
エルフメイド「そういうわけではないのですが……」
男「?」
エルフメイド「……いえ、なんでもありません」
エルフメイド(ネットリと絡みつくような視線……隙あらば犯そうとしている気配……それらが全く無い)
エルフメイド(見た目も若いし……どうしてこんな人が、私達を買いに……?)
30 = 1 :
カツン
エルフメイド「着きました」
男「うわ……階段よりも暗い。あ、でも声が響く……結構広い?」
エルフメイド「こちら、階段側の壁にある部屋が、味見用の部屋となっております」
男「はあ……いえ、まぁボク、味見するつもりはないんで」
男(料理を作ってもらってる間、こんな暗いところにいるのもヤだし……)
エルフメイド「えっ……? では、どの子を買うのか決めて、すぐに買っていかれるのですか……?」
男「まぁ、そうなるかな……?」
エルフメイド(冒険者でも傭兵でもない装備だけれど若いから、テッキリ……)
エルフメイド(まさか、肥やしに肥やした貴族がやるような、外見だけでの買い物を……? でもあの人たちみたいに、誰でも良いから犯したい、って感じでもないし……何故?)
男「ともかく、見て行って良いですか?」
エルフメイド「あ、はい。では、ご案内致します。右側の通路と左側の通路、どちらから行かれますか?」
男(広い通路の左右に、それぞれ牢屋のような形で無数の部屋がある……そうだなぁ……)
男「左利きなんで、左からで」
31 = 1 :
コツ、コツ、コツ……
男(ん~……こうやって、牢屋の中を照らされながら見て回っても、やっぱりよく分からないな……)
男(そもそも外見だけ見て回らされても、頭が良いかどうかなんて分かんないし)
男(それに……牢屋の中をランプが照らすたびに、中の子が息を呑んで、怯える……)
男(服も……服、なんて定義していいかどうか分からない代物だし……)
男(まぁ、服に関しては、奴隷という扱い上、人間でもそうなんだけど……)
男(でも……この怯え様は……?)
男(この……怖いけれど、今以上に怖いことをされそうだけれど、それでも、何かに期待しているような……)
男(光を浴びることを望んでいるのに……恐怖心が蓋をしてくるけれど、ちょっとだけ期待しているような……
男(怯えていながらそんなものが垣間見える、この様子は……?)
男(少しだけ異様な、この空気は……一体……なんなんだ?)
32 = 1 :
男(そもそも、奴隷、といっても、暴力を振るったり、相手を傷つけたりすることは、人間が信仰する神によって否定されている)
男(ボク自身はそんなことをあまり気にしてはいないけれど……国家という枠組みにおいて、信仰心は重要視しなければならないことだ)
男(だからこそ、奴隷制度自体、否定している団体がいる)
男(奴隷という言葉は人間の心を傷つける行為であり、神の意思に背く行為だと)
男(だが、それなら……行き場を無くした子供や人間は、どうやって居場所を見つければ良いのだろうか……?)
男(奴隷制度を無くした先に……親を亡くした戦争孤児の行き先は、無い)
男(だからこそ、奴隷への暴力は禁じられている。道徳的に、もあるが、法律的にも)
男(それは、捕虜と同じ扱いではないこのエルフ達にも、適応されているはずだ)
男(この子たちもまた、戦争孤児なのだから)
男(この、ボクを案内してくれている、メイド服を着たエルフさんも……)
33 = 1 :
男(……だからこそ、どうしてこんなに怯えの色を見せるのか……分からない)
男(親を亡くして、この場に押し込められ、陽の光を浴びていないから……?)
男(いや、それは期待している部分だろう。怯えの向こう側のものだ。外に出られるかもしれない、といった感情だ)
男(なら……怯えは? まだまだココにいないといけないのかもしれないという絶望……?)
男「…………」
男(……バカなボクに、分かる訳も無い、か……)
エルフメイド「……その子にされるのですか?」
男「えっ?」
エルフメイド「いえ、先ほどからその子の前で立ち止まり、見つめているようでしたので……てっきり」
34 = 1 :
男(金色の長い髪……ランプの明かりで反射して尚輝いて見える白い肌……)
男(そして、キレイな――今まで見てきた人間という種族を超えるほど可愛い、少女)
男(今まで見てきたエルフよりも、少し幼く見える顔立ちをした、そんな子)
エルフ少女「…………」
男(……もしかしたら、こういうのを運命っていうのかもしれない)
男(この子だけが、怯えの中に、強い決意を秘めているように見える)
男(やっぱり、バカなボクには、その決意が何なのかは、分からないけれど……)
男(それでも、ココを出た先――出ることを希望としているのではなく、出た先で――
男(自分がしたいことを、どんな困難や苦痛があろうとも成し遂げようと、覚悟しているような、そんなモノが見える)
男(昔のボクみたいで、若くて……無謀と周りから蔑まれそうな……そんな……)
男「……そうですね」
エルフ少女「っ!」
男「この子にします。いいえ、この子にしたい」
エルフメイド「そうですか。お買い上げ、ありがとうございます」
35 = 1 :
エルフメイド「…………」ジッ
男「……? あの、手続きとか――」
エルフメイド「この子、私達の中でも、まだ若い子です」
男「……は?」
エルフメイド「ついたった今、この地下に閉じ込められました」
エルフメイド「今まで必死に、あなた達人間から逃げて、逃げて、逃げ続けていたのに……」
エルフメイド「一緒に逃げていた親は陵辱され、この子のために自殺して、この子を狙う人間を殺して……
エルフメイド「そして、この子だけが生き残り、貧困に喘ぐ人間の女に拾われ……お金と引き換えに、ここに売られました」
男「…………」
エルフメイド「人間という生き物を、信じていません。いえ、それを言ったら、他の皆も信じてはいないのですが……
エルフメイド「ただ、抗ってもムダだと、抗えば抗うほど辛いと、教え込まれていません。……それでも、良いのですか?」
男「…………」
男(そう……思えばこの子たちは、敵国の男に売られる子、なのだ。
男(例えこの国が奴隷への非暴力を法律で定めていようとも、敵国であった彼女達に、ソレが信じるに値するものになるはずがない)
男「……そりゃ、怯えもするわな」ボソッ
エルフメイド「えっ?」
36 = 1 :
男(何をされるか分からないんじゃ……当然だ)
男(ましてこの子のように、親を目の前で殺されたり、法律を無視した人間に目の前で陵辱された子なんて、この場には沢山いるだろう。最悪、直接陵辱された子だって……)
男(そして、そんな奴らに捕まって、捕まった先で、人間に、人間はそんなことをしないと、教え込まれても……信じられるはずがない)
男(それでも……無理矢理、信じ込まされて、一種の催眠状態のようなものにされ、売られる……)
男(いや……そうならないと出られないと、思い知らされる)
男(そして、出た先では、自分を救ってくれたヤツだから尽くしに尽くせと、教え込まれ……)
男(もう……元々自分が“こう”なってしまったのが、同じ人間だと言うことも忘れてしまい……)
男「……いえ、なんでもありません」
男(……きっと、怯えていた子達はまだ、悪いのはそもそも人間だったというのを忘れていない、誇り高い子達なんだ)
男「ただ、それでも構いませんと、そう言いました」
エルフメイド「そうですか……分かりました。それでは、長を呼んで参りますので、しばらくお待ちください」
男「あ、ランプは……」
エルフメイド「大丈夫です。私、目はよく見えますので。暗闇の中でも、上まで上がっていけます。ですので、ランプはあなた様にお預けします」
男「……ありがとうございます」
エルフメイド「いえ。こちらこそ、お買い上げ、ありがとうございます」
エルフメイド「きっと……あなたに買われたこの子なら、幸せになれる……そんな気がします」
37 = 1 :
すいません
今日はここまでにします
もう明日には書き溜めが無くなりそうな勢い
38 :
>>37
いいところで終わった
楽しみにしてる
39 :
乙―
がんばれ超がんばれ
41 :
頑張れ超頑張れ
42 :
これはマジで期待してる。乙
43 :
wktkで寝れなくなったじゃないですかー
これは期待
46 :
男の鈍感さにそろそろ笑えてくる
乙
47 :
良作に巡り合えた
48 :
頭でっかちな男とエルフ
しえんぬ
49 :
続ける
…けれど、今日はちょっと時間無いかもです
支援してくれてる方、すいません
50 = 1 :
~~~~~~
エルフ少女(わたしは、人間という生き物を信用していない)
エルフ少女(むしろ大嫌いだ)
エルフ少女(そもそも、わたし達を商売道具や性欲の捌け口としてしか見ない、戦争に勝ったからと言って敗戦国の民であるわたし達にこんな扱いを強いてくる彼らを、好きになれというのは……無理な相談だ)
奴隷商「へへっ……いい買い物をしたぜ」
ガチャリ
エルフ少女(首輪……?)
奴隷商「その辺にいる女が拾ってきたとは思えねぇ上玉だ。こりゃ、金貨五十枚の価値は確かにある」
エルフ少女(私一人の命を、金貨たった五十枚と称する)
エルフ少女(そもそも命に値段をつけること自体が、間違いだというのに)
奴隷商「おい」
エルフメイド「はい」
奴隷商「コイツを空いてる牢に入れておけ。今日あたりから調教を始める」
エルフメイド「かしこまりました」
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