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元スレ料理人「料理対決でフグ料理出したら審査員が全員死んじゃった」
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司会『さぁ、世紀の料理対決がいよいよ本格的に始まりました!』
司会『料理人さんが作っているのは……これはフグのチリ鍋でしょうか!』
料理人「よし、鍋に材料を入れていくぞ」
弟子「はいっ!」
料理人「おい、そうじゃない! ちゃんと入れる順番を考えろ!」
弟子「す、すみません」
グツグツ…
司会『おおっ、鍋からおいしそうな匂いが立ちこめてきたぁっ!』
料理人「あの、ツバが飛んでますよ」
司会『失礼しましたぁっ! ……対して、女シェフさんはどうでしょうか!?』
司会『料理人さんが作っているのは……これはフグのチリ鍋でしょうか!』
料理人「よし、鍋に材料を入れていくぞ」
弟子「はいっ!」
料理人「おい、そうじゃない! ちゃんと入れる順番を考えろ!」
弟子「す、すみません」
グツグツ…
司会『おおっ、鍋からおいしそうな匂いが立ちこめてきたぁっ!』
料理人「あの、ツバが飛んでますよ」
司会『失礼しましたぁっ! ……対して、女シェフさんはどうでしょうか!?』
司会『この料理はなんでしょうか!?』
女シェフ「ポトフです」
司会『ポトフ!』
女シェフ「牛肉と野菜をふんだんに使った、フランスの代表的な家庭料理です」
司会『家庭料理……いいですねえ~』
司会『私にとっては、実に羨ましくなる料理であります!』
女シェフ(この戦いに勝てば、私の名声はさらに高まる!)
女シェフ(男なんかに負けてたまるもんですか! 絶対に勝たなきゃ!)
女シェフ「ポトフです」
司会『ポトフ!』
女シェフ「牛肉と野菜をふんだんに使った、フランスの代表的な家庭料理です」
司会『家庭料理……いいですねえ~』
司会『私にとっては、実に羨ましくなる料理であります!』
女シェフ(この戦いに勝てば、私の名声はさらに高まる!)
女シェフ(男なんかに負けてたまるもんですか! 絶対に勝たなきゃ!)
司会『フグ料理において、一番難しいところはなんでしょうか?』
料理人「それはもちろん、フグから毒を取り除くところです」
料理人「ご存じでしょうが、フグは猛毒を持ってますから」
司会『たしかに! 私は何度もフグにあたったことがありますが、あれはとても苦しい!』
弟子「ですが、師匠はそんな事故を起こしたことはないですよ!」
料理人「わざわざ誇ることじゃないだろ、バカ」
司会『料理人さんを尊敬してらっしゃるんですね?』
弟子「はいっ! だけどいつかボクは師匠を越えてみせます!」
司会『これは頼もしい後継者の言葉です!』
料理人「ふん、こいつなんてまだまだですよ」
料理人「それはもちろん、フグから毒を取り除くところです」
料理人「ご存じでしょうが、フグは猛毒を持ってますから」
司会『たしかに! 私は何度もフグにあたったことがありますが、あれはとても苦しい!』
弟子「ですが、師匠はそんな事故を起こしたことはないですよ!」
料理人「わざわざ誇ることじゃないだろ、バカ」
司会『料理人さんを尊敬してらっしゃるんですね?』
弟子「はいっ! だけどいつかボクは師匠を越えてみせます!」
司会『これは頼もしい後継者の言葉です!』
料理人「ふん、こいつなんてまだまだですよ」
料理人「さぁ、仕上げだ。グズグズするなよ!」
弟子「はいっ!」
女シェフ「よし……もうすぐ完成だわ!」
司会『両陣営、もうまもなく料理が完成する模様です!』
司会『それではここで改めて、本日の審査員の方々を紹介していきましょう!』
弟子「はいっ!」
女シェフ「よし……もうすぐ完成だわ!」
司会『両陣営、もうまもなく料理が完成する模様です!』
司会『それではここで改めて、本日の審査員の方々を紹介していきましょう!』
司会『食の求道者、美食家さん!』
美食家「うぉっほん、よろしく」
司会『舌の肥えたナイスガイ、食通さん!』
食通「公平な審査をさせてもらうよ」
司会『よく食べよく笑う、大食いさん!』
大食い「どんな料理が食べられるか楽しみなんだな~」
司会『美人でグルメな、女評論家さん!』
女評論家「うふふ……私の舌は甘くなくてよ」
司会『いずれも業界で名を知られた方たちです!』
司会『あなたがた四人はかつて、辛口な料理評論雑誌を出してたこともあるとか……』
美食家「ハハハ、まぁね。あれは若気の至りだったよ」
美食家「うぉっほん、よろしく」
司会『舌の肥えたナイスガイ、食通さん!』
食通「公平な審査をさせてもらうよ」
司会『よく食べよく笑う、大食いさん!』
大食い「どんな料理が食べられるか楽しみなんだな~」
司会『美人でグルメな、女評論家さん!』
女評論家「うふふ……私の舌は甘くなくてよ」
司会『いずれも業界で名を知られた方たちです!』
司会『あなたがた四人はかつて、辛口な料理評論雑誌を出してたこともあるとか……』
美食家「ハハハ、まぁね。あれは若気の至りだったよ」
ビーッ!
司会『ここでタイムアップ! 調理をやめて下さい!』
司会『それじゃメイドさん、それぞれの料理を審査員の方々に配って下さい』
メイド「は、はい!」
メイド「おっとっと……」ヨタヨタ…
司会『だ、大丈夫ですか』
メイド「はいっ!」
メイド「田舎から出てきてやっとありつけたお仕事……立派にこなしてみせます!」
司会『ここでタイムアップ! 調理をやめて下さい!』
司会『それじゃメイドさん、それぞれの料理を審査員の方々に配って下さい』
メイド「は、はい!」
メイド「おっとっと……」ヨタヨタ…
司会『だ、大丈夫ですか』
メイド「はいっ!」
メイド「田舎から出てきてやっとありつけたお仕事……立派にこなしてみせます!」
司会『それではまず、ポトフから試食ターイム!』
メイド「ど、どうぞ!」
美食家「ふむ……素晴らしい味だ」
食通「僕は本場のポトフを食べたことがあるけど、負けてないね」
大食い「うまいんだなぁ~!」
女評論家「私の舌を満足させるなんて、やるじゃないの」
【合計38点】
司会『10点二名、9点二名の38点! これは高得点が出ました!』
女シェフ(当然よ! 40点満点じゃないのは納得いってないけどね!)
メイド「ど、どうぞ!」
美食家「ふむ……素晴らしい味だ」
食通「僕は本場のポトフを食べたことがあるけど、負けてないね」
大食い「うまいんだなぁ~!」
女評論家「私の舌を満足させるなんて、やるじゃないの」
【合計38点】
司会『10点二名、9点二名の38点! これは高得点が出ました!』
女シェフ(当然よ! 40点満点じゃないのは納得いってないけどね!)
司会『では続いて、フグのチリ鍋を食べていただきましょう!』
メイド「あちち……さ、どうぞ!」
美食家「これは……うまい!」
食通「すごい……! フグの味をここまで引き出せるなんて!」
大食い「いくらでも食べられるんだなぁ~」
女評論家「パーフェクトだわ!」
司会『こちらも大好評! それでは得点をどうぞ!』
弟子「頼む! 満点出てくれ!」
料理人「…………」
メイド「あちち……さ、どうぞ!」
美食家「これは……うまい!」
食通「すごい……! フグの味をここまで引き出せるなんて!」
大食い「いくらでも食べられるんだなぁ~」
女評論家「パーフェクトだわ!」
司会『こちらも大好評! それでは得点をどうぞ!』
弟子「頼む! 満点出てくれ!」
料理人「…………」
美食家「――うっ!?」
司会『え!?』
美食家「ぐおおっ……! く、苦しい……!」
食通「呼吸が……できない……」
大食い「うげぇぇぇぇぇっ……!」
女評論家「急に……気分が……!」
弟子「え!?」
料理人(なんだ!? なにが起きた!?)
司会『え!?』
美食家「ぐおおっ……! く、苦しい……!」
食通「呼吸が……できない……」
大食い「うげぇぇぇぇぇっ……!」
女評論家「急に……気分が……!」
弟子「え!?」
料理人(なんだ!? なにが起きた!?)
司会『皆さん、どうされたんですか!?』
メイド「どうしましょ、どうしましょ!」オロオロ
美食家「ぐ……おぉ……」
食通「……うぁ……」
大食い「うう……」
女評論家「あぅ……」
ザワザワ… ガヤガヤ… ドヨドヨ…
司会『――だ、誰か! 救急車! 救急車をッ!』
メイド「どうしましょ、どうしましょ!」オロオロ
美食家「ぐ……おぉ……」
食通「……うぁ……」
大食い「うう……」
女評論家「あぅ……」
ザワザワ… ガヤガヤ… ドヨドヨ…
司会『――だ、誰か! 救急車! 救急車をッ!』
ピーポーピーポー… ウーウー…
刑事「……なるほど、料理対決でフグ料理をねえ」
刑事「もしかして、そのフグにあたっちまったんじゃないか?」
料理人「そんなはずありません。俺はちゃんと毒のある部位を取り除きました」
刑事「しかし、ミスってのは誰にでもあるからなァ」
弟子「ありえません! 師匠はフグの調理師免許を持ってるんですから!」
刑事「ふん、運転免許を持ってるのに事故起こす奴なんていくらでもいるじゃねえか」
女シェフ「…………」
刑事「……なるほど、料理対決でフグ料理をねえ」
刑事「もしかして、そのフグにあたっちまったんじゃないか?」
料理人「そんなはずありません。俺はちゃんと毒のある部位を取り除きました」
刑事「しかし、ミスってのは誰にでもあるからなァ」
弟子「ありえません! 師匠はフグの調理師免許を持ってるんですから!」
刑事「ふん、運転免許を持ってるのに事故起こす奴なんていくらでもいるじゃねえか」
女シェフ「…………」
部下「これを」
刑事「おう」
刑事「…………」ペラ…
刑事「料理人さん、あんたに悪い知らせが二つ入った」
料理人「なんです?」
刑事「一つ目は……あの審査員たちは全員病院で亡くなった」
料理人「な……!」
刑事「そして、もう一つ……」
刑事「被害者たちの体から、テトロドトトキシンが検出された」
料理人(テトロドトキシンが……!)
刑事「おう」
刑事「…………」ペラ…
刑事「料理人さん、あんたに悪い知らせが二つ入った」
料理人「なんです?」
刑事「一つ目は……あの審査員たちは全員病院で亡くなった」
料理人「な……!」
刑事「そして、もう一つ……」
刑事「被害者たちの体から、テトロドトトキシンが検出された」
料理人(テトロドトキシンが……!)
>>16
テロドトキシン
テロドトキシン
刑事「テトロドトトキシンが、フグ毒だってのはもちろん知ってるな?」
料理人「ええ……知ってます」
刑事「どうやらやっちまったようだなァ」
刑事「あんたを業務上過失致死の容疑で逮捕する!」ガチャッ
弟子「師匠!」
料理人「心配するな。俺は必ず戻ってくる」
刑事「さぁ、来るんだ! 聞きたいことは山ほどあるからな!」
弟子「…………」
料理人「ええ……知ってます」
刑事「どうやらやっちまったようだなァ」
刑事「あんたを業務上過失致死の容疑で逮捕する!」ガチャッ
弟子「師匠!」
料理人「心配するな。俺は必ず戻ってくる」
刑事「さぁ、来るんだ! 聞きたいことは山ほどあるからな!」
弟子「…………」
― 取調室 ―
料理人「俺はちゃんとフグを調理しました。食中毒が起こるわけがありません」
刑事「しかし、現に起こったじゃねえか! 食中毒が!」
刑事「料理対決ってのは非常に神経を使うそうだし、きっと疲れがあったんだろう!」
刑事「そしてなにより、テトロドトトキシンが被害者から検出されたのは紛れもない事実なんだ!」
料理人「ぐっ……!」
刑事「なんにせよ四人も死なせてるんだ。これからは気をつけてね、じゃ済まさねえぞ!」
刑事「徹底的にお前の罪を糾弾し、二度と調理場に立てなくしてやる!」
料理人「俺はちゃんとフグを調理しました。食中毒が起こるわけがありません」
刑事「しかし、現に起こったじゃねえか! 食中毒が!」
刑事「料理対決ってのは非常に神経を使うそうだし、きっと疲れがあったんだろう!」
刑事「そしてなにより、テトロドトトキシンが被害者から検出されたのは紛れもない事実なんだ!」
料理人「ぐっ……!」
刑事「なんにせよ四人も死なせてるんだ。これからは気をつけてね、じゃ済まさねえぞ!」
刑事「徹底的にお前の罪を糾弾し、二度と調理場に立てなくしてやる!」
部下「あの~」
刑事「なんだ?」
部下「我々警察関係者に、お菓子の差し入れがあったんですが……どうします?」
刑事「この取り調べは長丁場になりそうだ。ありがたくいただこうじゃないか」モグッ
部下「では私も!」モグッ
刑事「うおほっ、これはうまい!」
部下「甘いチョコレートが口の中で溶けますね!」
刑事「いっとくが、お前にはやらんからな」
料理人「この状況で、食欲なんてありませんよ……」
刑事「だろうな、ハハハ」
刑事「なんだ?」
部下「我々警察関係者に、お菓子の差し入れがあったんですが……どうします?」
刑事「この取り調べは長丁場になりそうだ。ありがたくいただこうじゃないか」モグッ
部下「では私も!」モグッ
刑事「うおほっ、これはうまい!」
部下「甘いチョコレートが口の中で溶けますね!」
刑事「いっとくが、お前にはやらんからな」
料理人「この状況で、食欲なんてありませんよ……」
刑事「だろうな、ハハハ」
刑事「なにか話すことはあるか?」
料理人「俺はちゃんと毒を取り除いて……」
刑事「だから、もう言い訳なんて通じねえんだよ! お前にできることは謝罪と反省だけだ!」
刑事「被害者の体からテトロドトトキシンが検出されたんだから!」
料理人(ダメだ……この刑事は聞く耳を持たない!)
料理人「あの、一ついいですか?」
刑事「ん?」
料理人「『テトロドトトキシン』じゃなく『テトロドトキシン』です。“ト”が一つ多いです」
刑事「え、ウソ!? ありがとう!」
料理人(あ、意外と聞く耳を持ってた……)
料理人「俺はちゃんと毒を取り除いて……」
刑事「だから、もう言い訳なんて通じねえんだよ! お前にできることは謝罪と反省だけだ!」
刑事「被害者の体からテトロドトトキシンが検出されたんだから!」
料理人(ダメだ……この刑事は聞く耳を持たない!)
料理人「あの、一ついいですか?」
刑事「ん?」
料理人「『テトロドトトキシン』じゃなく『テトロドトキシン』です。“ト”が一つ多いです」
刑事「え、ウソ!? ありがとう!」
料理人(あ、意外と聞く耳を持ってた……)
刑事「う……?」クラッ
刑事「なんだか、急に眠く……」
部下「私も……です……。どうして……」
料理人「?」
刑事「ぐぅ、ぐぅ……」
部下「すやすや……」
料理人「眠ってしまった……! これは一体……!?」
「こっちよ!」
刑事「なんだか、急に眠く……」
部下「私も……です……。どうして……」
料理人「?」
刑事「ぐぅ、ぐぅ……」
部下「すやすや……」
料理人「眠ってしまった……! これは一体……!?」
「こっちよ!」
料理人「君は……!」
女シェフ「なにやってんの! 早く!」
女シェフ「逃げないと、あなたが中毒を起こした張本人にされちゃうわよ!」
料理人「……すまない!」
タタタタタッ…
刑事「ぐぅ、ぐぅ……」
部下「すやすや……」
女シェフ「なにやってんの! 早く!」
女シェフ「逃げないと、あなたが中毒を起こした張本人にされちゃうわよ!」
料理人「……すまない!」
タタタタタッ…
刑事「ぐぅ、ぐぅ……」
部下「すやすや……」
女シェフ「とりあえず、ここまで来れば安心ね」
料理人「なぜ……俺を助けた?」
料理人「君に俺を助ける義理はないはず……」
女シェフ「私にもよく分からないわ」
女シェフ「ただ……あなたがフグの毒を取り除き損ねるなんてミスをするとは思えない」
女シェフ「あなたの包丁さばきを見ていて、同じ料理人としてそう思っただけよ」
料理人「……ありがとう」
女シェフ「ふ、ふん! 別に100パーセントあなたを信じたわけじゃないんだから!」
女シェフ「それに、はっきりいって時間がないわよ」
女シェフ「私が差し入れたチョコに盛った睡眠薬の効果は、せいぜい数時間……」
女シェフ「その間に真相を突き止めないと……」
料理人「真相……いったいなぜ、フグ中毒が起こってしまったということか」
料理人「なぜ……俺を助けた?」
料理人「君に俺を助ける義理はないはず……」
女シェフ「私にもよく分からないわ」
女シェフ「ただ……あなたがフグの毒を取り除き損ねるなんてミスをするとは思えない」
女シェフ「あなたの包丁さばきを見ていて、同じ料理人としてそう思っただけよ」
料理人「……ありがとう」
女シェフ「ふ、ふん! 別に100パーセントあなたを信じたわけじゃないんだから!」
女シェフ「それに、はっきりいって時間がないわよ」
女シェフ「私が差し入れたチョコに盛った睡眠薬の効果は、せいぜい数時間……」
女シェフ「その間に真相を突き止めないと……」
料理人「真相……いったいなぜ、フグ中毒が起こってしまったということか」
女シェフ「あなたの調理ミスじゃないんであれば、考えられるのは――」
女シェフ「あなた以外の誰かがテトロドトキシンをフグ鍋に盛ったってことになるわね」
料理人「あの鍋は俺が作ったんだ。そんなことできる奴はいない」
女シェフ「あら、一人有力な容疑者がいるじゃない」
料理人「誰だ?」
女シェフ「あなたのアシスタントを務めてた弟子よ。彼なら簡単に毒を盛れる」
料理人「バカな! あいつがそんなことするはずがない!」
女シェフ「人は見かけによらないものよ?」
女シェフ「あなた、結構彼に対してきつく接してたし……」
女シェフ「もしかしたら、ずっとあなたを憎んでたって可能性もある」
料理人「…………!」
女シェフ「否定しきれないようね。確かめてみましょ!」
女シェフ「あなた以外の誰かがテトロドトキシンをフグ鍋に盛ったってことになるわね」
料理人「あの鍋は俺が作ったんだ。そんなことできる奴はいない」
女シェフ「あら、一人有力な容疑者がいるじゃない」
料理人「誰だ?」
女シェフ「あなたのアシスタントを務めてた弟子よ。彼なら簡単に毒を盛れる」
料理人「バカな! あいつがそんなことするはずがない!」
女シェフ「人は見かけによらないものよ?」
女シェフ「あなた、結構彼に対してきつく接してたし……」
女シェフ「もしかしたら、ずっとあなたを憎んでたって可能性もある」
料理人「…………!」
女シェフ「否定しきれないようね。確かめてみましょ!」
― 店 ―
オーナー「まさか、料理人があんなミスをやらかすとは……」
オーナー「これでうちの店に悪評が立ってしまったら……バカなことをしてくれたもんだ!」
弟子「師匠はミスなんてしてません! 必ず戻ってきます!」
オーナー「だが、審査員の体からはテトロドトキシンが検出されたんだ」
オーナー「これはもう決定的じゃないか!」
弟子「それはきっとなにかの間違いなんです! ボクは最後まで師匠を信じます!」
オーナー「信じるというのならクビにする、といってもか」
弟子「……はい!」
オーナー「ぬう……分かった……。もう少し様子を見てみよう」
オーナー「まさか、料理人があんなミスをやらかすとは……」
オーナー「これでうちの店に悪評が立ってしまったら……バカなことをしてくれたもんだ!」
弟子「師匠はミスなんてしてません! 必ず戻ってきます!」
オーナー「だが、審査員の体からはテトロドトキシンが検出されたんだ」
オーナー「これはもう決定的じゃないか!」
弟子「それはきっとなにかの間違いなんです! ボクは最後まで師匠を信じます!」
オーナー「信じるというのならクビにする、といってもか」
弟子「……はい!」
オーナー「ぬう……分かった……。もう少し様子を見てみよう」
料理人(あいつ……!)
女シェフ「うーん、あの感じ、ウソをいってるようには見えないわね……」
女シェフ「ごめんなさい、あなたの弟子を疑ってしまって」
料理人「いや、俺だって正直“もしかしたら”と思ってしまった」
料理人「どうやら俺もあいつを見くびってたようだ」
女シェフ「彼があなたを尊敬する気持ちは本物だったようね」
料理人「だが、これで俺の調理ミスだったことが確定したようだ」
料理人「他に毒を盛れる人間はいないからな……」
女シェフ「いいえ、もう一人いるわ!」
料理人「……だ、誰だ?」
女シェフ「うーん、あの感じ、ウソをいってるようには見えないわね……」
女シェフ「ごめんなさい、あなたの弟子を疑ってしまって」
料理人「いや、俺だって正直“もしかしたら”と思ってしまった」
料理人「どうやら俺もあいつを見くびってたようだ」
女シェフ「彼があなたを尊敬する気持ちは本物だったようね」
料理人「だが、これで俺の調理ミスだったことが確定したようだ」
料理人「他に毒を盛れる人間はいないからな……」
女シェフ「いいえ、もう一人いるわ!」
料理人「……だ、誰だ?」
女シェフ「料理を運んだメイドよ」
料理人「ああ、田舎から出てきたっていう……」
女シェフ「彼女、配膳する時にやたらよろめいてたじゃない?」
女シェフ「あれがもし、演技だったとしたら……」
料理人「あの時に毒をそっと混ぜたってことか」
女シェフ「もう時間がないわ! 彼女に会って、問い詰めてみましょう!」
料理人「ああ、田舎から出てきたっていう……」
女シェフ「彼女、配膳する時にやたらよろめいてたじゃない?」
女シェフ「あれがもし、演技だったとしたら……」
料理人「あの時に毒をそっと混ぜたってことか」
女シェフ「もう時間がないわ! 彼女に会って、問い詰めてみましょう!」
メイド「テトロドトキシン?」
女シェフ「そう、テトロドトキシン。あなた、もちろん知ってるでしょ!」
メイド「あ、あの……テトロドトキシンってなんですか?」
メイド「あ、すみません……あたし、田舎者で……ホント、バカで……」
メイド「知ってることといえば、イナゴの佃煮の作り方ぐらいで……」
女シェフ「…………」
料理人「…………」
女シェフ「そう、テトロドトキシン。あなた、もちろん知ってるでしょ!」
メイド「あ、あの……テトロドトキシンってなんですか?」
メイド「あ、すみません……あたし、田舎者で……ホント、バカで……」
メイド「知ってることといえば、イナゴの佃煮の作り方ぐらいで……」
女シェフ「…………」
料理人「…………」
女シェフ「うーん、メイドも違うわね。あれが演技だったら大したもんだわ」
料理人「俺も彼女はシロだと思う」
女シェフ「じゃあ、いったい誰がフグ毒を……?」
料理人(やはり、俺の調理ミスだったのか……?)
女シェフ「ところで、フグってなんで毒を持ってるの? なんで自分の毒で死なないの?」
料理人「えっ、シェフなのにそんなことも知らないのか」
女シェフ「う、うるさいわね! フグなんか扱わないんだからしょうがないでしょ!」
料理人「俺も彼女はシロだと思う」
女シェフ「じゃあ、いったい誰がフグ毒を……?」
料理人(やはり、俺の調理ミスだったのか……?)
女シェフ「ところで、フグってなんで毒を持ってるの? なんで自分の毒で死なないの?」
料理人「えっ、シェフなのにそんなことも知らないのか」
女シェフ「う、うるさいわね! フグなんか扱わないんだからしょうがないでしょ!」
料理人「フグは生まれつき毒を持ってると思われがちだが、実はそうじゃないんだ」
料理人「毒のある餌を食べて、体内にテトロドトキシンを蓄積していると考えられている」
料理人「いわゆる“生物濃縮”というやつだな」
女シェフ「へぇ~、毒を食べることで、毒を蓄積するんだ……面白いわね!」
料理人「――――!」ハッ
料理人(毒を食べることで、毒を蓄積……!)
料理人「毒のある餌を食べて、体内にテトロドトキシンを蓄積していると考えられている」
料理人「いわゆる“生物濃縮”というやつだな」
女シェフ「へぇ~、毒を食べることで、毒を蓄積するんだ……面白いわね!」
料理人「――――!」ハッ
料理人(毒を食べることで、毒を蓄積……!)
料理人「このあたりに、古い新聞を読めるような場所はないだろうか?」
女シェフ「あっちにある大きな図書館は、新聞がデータベース化されてて」
女シェフ「かなり古い新聞まで読めるはずよ」
料理人「よし、そこに行こう!」
料理人「俺の考えが正しければ、それで今回のフグ中毒が起こった“理由”が明らかになる!」
女シェフ「慎重に行動してよ! あなたは今、追われる身なんだから!」
女シェフ「あっちにある大きな図書館は、新聞がデータベース化されてて」
女シェフ「かなり古い新聞まで読めるはずよ」
料理人「よし、そこに行こう!」
料理人「俺の考えが正しければ、それで今回のフグ中毒が起こった“理由”が明らかになる!」
女シェフ「慎重に行動してよ! あなたは今、追われる身なんだから!」
― 図書館 ―
女シェフ「どう?」
料理人「……これだ!」
『グルメ雑誌に酷評され客足遠のき、店主が自殺……一家は離散……』
女シェフ「ひどい話ね、他人事とは思えないわ」
料理人「この……店主の名前は……」
女シェフ「どう?」
料理人「……これだ!」
『グルメ雑誌に酷評され客足遠のき、店主が自殺……一家は離散……』
女シェフ「ひどい話ね、他人事とは思えないわ」
料理人「この……店主の名前は……」
……
……
― 料理対決の会場 ―
グツグツ…
料理人「…………」
女シェフ「…………」
司会「あっ、料理人さん! 女シェフさん! どうしてお二人がこんなところに!?」
司会「実は私、何者かに電話で呼び出されまして……もしかして、あなたたちも!?」
料理人「いえ、あなたを呼んだのは俺なんです」
司会「ど、どういうことです!? フグ中毒事故について何か分かったんですか?」
料理人「いいや……あれは事故なんかじゃなく、立派な殺人事件だったんだ」
司会「えっ……」
料理人「俺のフグ鍋に毒を盛ったのは……あんただな」
……
― 料理対決の会場 ―
グツグツ…
料理人「…………」
女シェフ「…………」
司会「あっ、料理人さん! 女シェフさん! どうしてお二人がこんなところに!?」
司会「実は私、何者かに電話で呼び出されまして……もしかして、あなたたちも!?」
料理人「いえ、あなたを呼んだのは俺なんです」
司会「ど、どういうことです!? フグ中毒事故について何か分かったんですか?」
料理人「いいや……あれは事故なんかじゃなく、立派な殺人事件だったんだ」
司会「えっ……」
料理人「俺のフグ鍋に毒を盛ったのは……あんただな」
司会「いきなり何をいうかと思えば……」
司会「私はずっと司会をしていて、あなたの鍋に触れる機会なんてなかったんですよ?」
司会「どうやって毒を盛るっていうんです?」
料理人「一つだけ方法がある」
司会「ほう? どんな?」
料理人「ツバだよ」
料理人「あんたはテトロドトキシンの混ざったツバを、俺の鍋に混入させたんだ」
司会「へ? ……ふっ、はははははっ!」
司会「ツバで毒を盛る……? あなた、料理のしすぎで疲れてるんじゃないですか?」
司会「事前に口にテトロドトキシンを含んで、ツバのように吐き出したという主張らしいが」
司会「そんなことしたら、とてもしゃべる仕事である司会なんて務まりませんよ!」
司会「仮にそれをやり遂げたとして、そんな少量で四人も殺せるわけないでしょう!」
司会「フグ中毒は助かるケースだって多いんですからね!」
司会「私はずっと司会をしていて、あなたの鍋に触れる機会なんてなかったんですよ?」
司会「どうやって毒を盛るっていうんです?」
料理人「一つだけ方法がある」
司会「ほう? どんな?」
料理人「ツバだよ」
料理人「あんたはテトロドトキシンの混ざったツバを、俺の鍋に混入させたんだ」
司会「へ? ……ふっ、はははははっ!」
司会「ツバで毒を盛る……? あなた、料理のしすぎで疲れてるんじゃないですか?」
司会「事前に口にテトロドトキシンを含んで、ツバのように吐き出したという主張らしいが」
司会「そんなことしたら、とてもしゃべる仕事である司会なんて務まりませんよ!」
司会「仮にそれをやり遂げたとして、そんな少量で四人も殺せるわけないでしょう!」
司会「フグ中毒は助かるケースだって多いんですからね!」
料理人「あんたはある方法でツバに極めて高濃度のテトロドトキシンを混ぜたんだ」
司会「どうやって?」
料理人「ずばり、あんたは自分でフグ毒を摂取しまくり、体内にフグ毒を溜め込んだんだ!」
司会「!」
料理人「料理対決の時、あんたはこういってたな?」
司会『たしかに! 私は何度もフグにあたったことがありますが、あれはとても苦しい!』
料理人「俺はあの発言をある種のジョークとして聞き流してたが、そうじゃなかった!」
料理人「あんたは長い時間をかけ、命がけでフグ毒を何度も摂取し、何度も苦しみ、やがて克服した!」
料理人「テトロドトキシンを自在に分泌できるフグ人間になったんだ!」
料理人「――全てはあの四人を殺害するために!」
料理人「“生物濃縮”を利用した、実に巧妙なトリックだよ……」
司会「どうやって?」
料理人「ずばり、あんたは自分でフグ毒を摂取しまくり、体内にフグ毒を溜め込んだんだ!」
司会「!」
料理人「料理対決の時、あんたはこういってたな?」
司会『たしかに! 私は何度もフグにあたったことがありますが、あれはとても苦しい!』
料理人「俺はあの発言をある種のジョークとして聞き流してたが、そうじゃなかった!」
料理人「あんたは長い時間をかけ、命がけでフグ毒を何度も摂取し、何度も苦しみ、やがて克服した!」
料理人「テトロドトキシンを自在に分泌できるフグ人間になったんだ!」
料理人「――全てはあの四人を殺害するために!」
料理人「“生物濃縮”を利用した、実に巧妙なトリックだよ……」
司会「ハ、ハハハ……ひどい妄想だ」
料理人「妄想かどうか、あんたの体を病院で調べればすぐに分かるだろう」
司会「…………」
司会「では百歩譲って私がテトロドトキシンを操れるフグ人間だとしましょう」
司会「しかし、なぜ私があの四人を殺さなきゃならないんです?」
司会「私には動機がない! 動機がない以上、私はただの罪なきフグ人間――」
女シェフ「残念だけど、もう動機も分かってるのよ」
司会「な……!」
料理人「妄想かどうか、あんたの体を病院で調べればすぐに分かるだろう」
司会「…………」
司会「では百歩譲って私がテトロドトキシンを操れるフグ人間だとしましょう」
司会「しかし、なぜ私があの四人を殺さなきゃならないんです?」
司会「私には動機がない! 動機がない以上、私はただの罪なきフグ人間――」
女シェフ「残念だけど、もう動機も分かってるのよ」
司会「な……!」
女シェフ「あなたのお父さんも……私たちと同じ料理人だったようね?」
女シェフ「小さな店を経営してたようだけど、ある時あの四人のグルメ雑誌で店を酷評され」
女シェフ「店は潰れ、お父さんは自殺、一家はバラバラになってしまった」
女シェフ「あなたが家庭料理を羨む理由はこれよ」
女シェフ「だからあなたは復讐のために、自分をフグ人間化することにしたのよ!」
料理人「……どうだ?」
司会「……その通りだよ」
女シェフ「小さな店を経営してたようだけど、ある時あの四人のグルメ雑誌で店を酷評され」
女シェフ「店は潰れ、お父さんは自殺、一家はバラバラになってしまった」
女シェフ「あなたが家庭料理を羨む理由はこれよ」
女シェフ「だからあなたは復讐のために、自分をフグ人間化することにしたのよ!」
料理人「……どうだ?」
司会「……その通りだよ」
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