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    元スレカズマ「どうしたダクネス、もう限界か? ワレメが濡れてヒクついてきたぞ」 ダクネス「ああ……見ないでくれカズマ」

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    101 = 1 :

    ―― 作戦会議中 ――


    カズマ「さて、まずは現状のおさらいだ。俺達はターゲットの存在を確認するも、敵の抵抗に合って一時撤退」

       「幸いにも物理攻撃や魔法攻撃はなかったが、強力な精神攻撃により全員がダメージを受けた……ここまではいいな?」

    ダクネス「うむ、続けてくれ」

    カズマ「じゃあ次……アイテムを奪取してクエストを達成するには、敵の精神攻撃を無力化する必要があるワケだが、何かいい対策はあるか?」

    めぐみん「ちょっと待って下さい。私達は敵の姿を確認していませんし、他の攻撃手段も警戒すべきではないですか?」

    カズマ「ああ、その点については問題ない。恐らく敵は他に攻撃手段を持たない筈だ」

    ダクネス「しかしカズマよ、敵に戦闘能力が無いと断定するのは早計ではないか?」

    カズマ「根拠はある。俺の敵感知スキルには反応が無かったからな。安全もしくは戦闘力を持たないと推測できる」

       「そもそも邪魔者を追っ払いたいなら手っ取り早く武力排除に出る筈だし、こんな回りくどい手を使うって事は他にやりようがない証拠だろう」

    103 = 1 :

    めぐみん「ならば遠距離からの爆裂魔法で決まりですね。ふふふ……塵一つ残さずこの世界から完全消滅させてやります!」

    カズマ「だからその短絡思考をやめろ。ターゲットまで消し飛ぶっての!」

    ダクネス「ではアクアのマジックバリアはどうだ? 先程は虚を突かれて浮足立ってしまったが、試してみる価値はあると思う」

    カズマ「そうだな、そいつは俺も考えたが失敗した時のリスクでかいし、それにダクネスが簡単に敵の術中に嵌ったのが気に掛かる」

    ダクネス「私が?」

    カズマ「ダクネスは物理防御力は勿論、魔法への耐性も相当な高レベルだ。なのにあっさりと心を読まれたのが腑に落ちなくてな」

       「それにアクアやめぐみんも魔法防御力の高い上位魔法職だし、あれは魔法とは違う攻撃かもしれない」

    ダクネス「カズマはこう言っているが、どう思うめぐみん?」

    104 = 1 :

    めぐみん「確かに……言われてみれば違和感があります。魔法を行使したならば必ず何らかの痕跡が残るはず」

        「術に抗えるかは別にして『使われた事』にすら気付かないのはおかしいです」

    ダクネス「というと?」

    めぐみん「具体的には魔力の乱れです……先程はそれを全く感じなかった。いかに敵の奇襲で戸惑っていたとはいえ、こと魔法に関して私が見誤る事はあり得ません」

    ダクネス「そうか、めぐみんがそう言うならば確度は高いな」

    105 = 1 :

    カズマ「なあめぐみん、ギルドでの話の続きになるけど、実際に宝玉を魔道具職人が作製した可能性はどのぐらいあると思う?」

    めぐみん「そうですね……結局の所、魔道具職人も商売ですから、新たな魔道具を作る時には量産化を視野に入れる筈です」

        「こんな能力を持つ魔道具を量産出来るとは思えませんし、可能性は低いんじゃないでしょうか」

    ダクネス「確かにその通りだな。もしこんな魔道具が市井に出回ったら、世界中が大混乱に陥るぞ」

    106 = 1 :

    めぐみん「それに魔法に依らない技術体系が使用されてるのであれば、現代では作製不可能……古代文明の遺産、アーティファクトである可能性が高いと思われます」

    カズマ「大昔に今より優れた魔道具を作ったってのか?」

    ダクネス「いや、過去には今より高度な文明が発達していたが、魔王軍の侵攻によって多くの文化や技術が失われた。その結果、この世界の文明は退行したのだ」

    カズマ「そういや、デストロイヤーみたいなトンデモ兵器なんかも作っちまうぐらいだしな」

    めぐみん「真偽は不明ですが紅魔族の祖も、魔法の扱いに特化した新種族を生み出す計画の産物だという言い伝えもあるぐらいです」

    カズマ「お前、そんな重い秘密をそんなにあっさりと語るなよ」

    めぐみん「そうですか? 昔の話など確かめようもありませんし、もし本当だったとしても逆にカッコイイじゃないですか」

        「呪われし宿命をその血に秘めた魔の眷族……燃える設定です!」

    107 = 1 :

    カズマ(今日もめぐみんの厨二魂は絶好調の様だ。まあ、それは置いといて、魔道具職人による作製の可能性は低くなったが、他の可能性が浮上したな)

       (……いや、本当にそうか? 仮にアーティファクトだとしたら、新たな疑問が湧いて来る)

       (過去に作られた遺物であるなら、めぐみんやダクネスがその存在を知らなかったのはおかしい。それが稀有な存在なら尚更だ)

    アクア「ねえ、カズマ」

    めぐみん「しっ、駄目ですよアクア。カズマの邪魔になりますから、静かにしていましょう」

    108 = 1 :

    カズマ(そうだ、ルナさん【※ギルドの受付嬢】だって、宝玉については詳しく知らなかった。あくまで依頼主から得られた情報を、語っていただけにすぎない)

       (あり得るか? あらゆる情報が集まるギルドですら把握してない、未知の宝物だなんて……)

       (それが前人未到のダンジョン奥深くに隠されていたり、ドラゴンみたいに誰も手出し出来ないぐらい強力なモンスターが護ってるなら話は分かる)

       (でも、こんな何もない森の中にあったら、金になりそうな財宝の情報に耳聡い冒険者連中がすぐに嗅ぎつけて噂になってるはずだ)

       (そうだよ、こんな始まりの街に近い場所、それこそ日本から来たチート持ちの連中なら一人だって簡単に……あ!)

    109 = 1 :

    めぐみん「どうしましたカズマ?」

    カズマ「繋がった……確かにそれなら、一応の筋は通る」

    ダクネス「おい、カズマ!?」

    カズマ「あ、わりい、こっちの話だ。それよりみんな、攻略法を思い付いた!」

    ダクネス「本当か!? カズマよ、どんな方法を思い付いたのだ?」

    カズマ「聞かれて困る秘密なら、誰にも聞かれない状況……つまり一人で行けばいい。簡単な理屈だろ?」

    ダクネス「それはそうだが」

    めぐみん「しかし危険ではないですか? 迂闊に一人で向かった矢先に、他のモンスターにでも襲われたら目も当てられませんよ」

    カズマ「確かにな。だが、これなら敵の脅威を確実に無効化出来る」

    めぐみん「でも!」

    ダクネス「待てめぐみん、そう急いで結論を出さずともよかろう。なあカズマ、他に策はないのか?」

    カズマ「あるにはあるけど……」

    アクア「なによ、歯切れが悪いわね」

    カズマ「いや、問題点が多くてな」

    めぐみん「聞かせて下さい。全員で検討すれば、改善出来るかもしれませんし」

    110 = 1 :

    カズマ「わかった。まず前提として、敵の攻撃が脅威となるのは一つの条件を満たす必要がある」

    アクア「条件?」

    カズマ「パーティー内に、秘密を聞かれて困る相手が居た場合だ」

       「親しき仲にも礼儀あり……互いに命を預ける仲間だからこそ、些細な秘密でさえ致命的な亀裂となり得る。ならば特に親しくない相手と組めばいい」

       「赤の他人や顔見知り程度の相手に聞かれて困る秘密なんて、そうそうないだろ?」

    ダクネス「カズマよ、しかしそれは!」

    カズマ「言いたい事は分かる。現状の面子じゃどう足掻いても無理だからな」

    アクア「それじゃあ意味ないじゃない!」

    めぐみん「待って下さいアクア、意味ならあります。ねえカズマ、そうでしょう?」

    111 = 1 :

    カズマ「ああ、現時点では実行不可能だが、一旦アクセルに戻れば他所との臨時パーティーを編成出来るだろう」

    ダクネス「なるほど、良い手に思えるが……どこが問題なのだ?」

    カズマ「まずは合同クエストによる報酬金額の分配が減る事。参加人数が増えば、それだけ取り分が少なくなるのは当然だな」

    アクア「それは確かに困るわね……ん? って事は、まだ他にもあるの?」

    112 = 1 :

    カズマ「このクエストは既に何組かのパーティが挑戦してる。その中から同じ方法を思い付いて攻略に向かう連中が現れてもおかしくない」

       「後日出直しだと、そいつらに先を越される可能性が高い」

    ダクネス「そういえば、ダスト達も挑んだ後だったな」

    カズマ「それに、ウチはアクセル一のパーティーだ。これは自惚れや思い上がりじゃなく、クエストの攻略実績を客観的に見ても間違いない」

       「そんな俺達が失敗すれば、ギルドのネットワークを通じて他の街にもこのクエストの依頼が伝わるだろう。そうなれば本格的にアウトだ」

       「他の街から高レベルの冒険者が出張れば、あっさり攻略される可能性が高い。なにせこの森を単独で踏破可能なら、苦も無く攻略出来るだろうからな」

       「……だから、俺が一人で行こうと思う」

    113 = 1 :

    めぐみん「でも、カズマ!」

    カズマ「いや、別にやけっぱちになってる訳じゃない。その逆だ」

    めぐみん「逆?」

    ダクネス「カズマよ、我等が納得出来る様に説明してくれ。そうでなくてはお前一人を危険な目に合わせる訳にはいかん」

    カズマ「わかった、じゃあ順を追って説明しよう。めぐみんは継戦能力が皆無なので論外。ダクネスは単独じゃ敵を倒せないし、アクアはこの森の魔獣系モンスターとは相性が悪い」

    アクア「そうね、私もアンデッドや悪魔相手なら一人で無双出来るけど、脳筋の体力自慢は苦手だわ」

    カズマ「対する俺は直接戦闘こそ苦手だが、偵察を始めとした単独行動は得意分野だし、この中では最も成功の可能性が高いだろう」

    めぐみん「カズマ……」

    カズマ「心配すんなってめぐみん。俺がそんな殊勝な男だと思うか? ヤバくなったらすぐにトンズラこくさ……だから、そうなる前にカタを付ける!」

    114 = 1 :

    めぐみん「……分かりました。でも、絶対に無理はしないって約束して下さいね」

    カズマ「ああ、約束する。俺だって命は惜しいし、毎回命を張るほど仕事熱心じゃねえよ」

    アクア「ねえカズマ、もし死んでも後で蘇生してあげるけど、食べられちゃダメよ! 傷は塞がっても欠損した部位は治せないんだから!」

    カズマ「お前、俺がしくじる前提で話を進めるのやめてくれる?」

    ダクネス「まあ、そう言うなカズマ。アクアなりにお前を心配しての言葉だ」

    めぐみん「そうですね、生きてさえいれば次に繋がります」

    アクア「そうよ、私達にはいずれ魔王を倒すっていう大きな目標があるんだから!」

    カズマ「あー、ハイハイ。そのうちな」

    アクア「本当に頼むわよカズマ。私の為に」

    めぐみん「?」

    115 = 1 :

    カズマ「さて、方針が固まったところで改めて一つ問題がある。先程の場所だ」

    アクア「どういうこと?」

    カズマ「あの地形がネックになる。あんな開けた遮蔽物の無い場所でモンスターに周りを囲まれたら確実に詰む」

    めぐみん「複数で警戒に当たれば安全な場所でも、単独で退路を絶たれたら危険だという事ですか」

    カズマ「理解が早くて助かる。特にこの森のモンスター共は群れて行動する習性があるし、潜伏中は他のアクティブスキルを併用出来ない」

       「逃げ回るだけならなんとでもなるが、お宝をゲットするにはもう一工夫必要だな。」

    116 = 1 :

    ダクネス「ならば我等でその方法を考えればいいのだな?」

    カズマ「ああ、短時間で構わない。邪魔者を完全に取り除き、俺が自由に動ける状況を作ってくれ」

    カズマ(俺の予想だと周囲の安全さえ確保出来れば、アレが使えるはずなんだが……)

    めぐみん「それならばいい案があります。ダクネスのデコイと私の爆裂魔法のコンボなら、カズマが自由に動ける時間をある程度なら稼げる筈です」

    117 = 1 :

    カズマ「となると、ダクネスのスキル次第か。お前のデコイなら、どの程度モンスターを引きつけられる?」

    ダクネス「そうだな……この森に棲息しているのは殆どが知能の低い魔獣ばかりだから、魔族や亜人族を相手にするよりは効果も高くなるはずだ」

    カズマ「具体的には?」

    ダクネス「周囲数キロ……半径にして約1500メートルといった所か」

    カズマ「ばッ、馬鹿かお前は!? 一体何考えてスキルを習得してやがる?」

    118 = 1 :

    ダクネス「何を言うのだカズマ、騎士たるもの体を張って仲間の盾となるのが当然の務め。その為に敵の注意を引き付ける挑発系スキルを伸ばすのは、至極当然の選択ではないか」

    カズマ「何事にも限度があるわい! 精々が交戦距離にいる敵の囮になるだけで十分なのに、視認出来ない様な遠距離にいる敵まで引き寄せてどうするつもりだ!?」

       「限りあるスキルポイントを無駄遣いしやがって、このへっぽこクルセイダーが! 言え!! 何の為にそんな無意味なスキルの育成をしやがった!?」

    ダクネス「カズマよ、それではまるで私が敵に蹂躙されるのを、心のどこかで待ち望んでいるかのようではないか」

    カズマ「ほお、違うってのか?」

    ダクネス「いや、違わないが」

    カズマ「うわ、開き直ったよコイツ!」

    119 = 1 :

    めぐみん「まあ、いいじゃないですかカズマ。今回はそのおかげで上手くいきそうなんですから」

    カズマ「……お前は随分と上機嫌だなめぐみん」

    めぐみん「そんなことはないですよ? ダクネスの掻き集めたモンスターを一網打尽にすれば気分爽快、レベルアップに新スキル習得と良いとこ尽くめ。最高に美味しい役どころだなんて思ってませんとも!」

    カズマ「お前はちったあ奥歯に衣を着せろや」

    めぐみん「……ですが許して下さいカズマ。美味しい所をかっさらうのは紅魔族の宿命、この身に流れる紅き魔の血の定めなのです!」

    120 = 1 :

    カズマ(今更ながら、このアホ共の無能っぷりに眩暈がしてきた……)

       (片や一発しか撃てない大魔法に全振りのアークウイザード。片や攻撃スキルを全く覚えないクルセイダー)

       (こいつらが余りにも酷過ぎて、アクアが優秀なんじゃないかと錯覚しそうになるぜ)

       (しかし馬鹿も極めると力になる。マイナスにマイナスを掛けたらプラスになったというか、混ぜるな危険というか……)

       (この連携は条件次第で有効に扱える場合があるかもしれないから覚えておこう)

       (逆を言えばそれ以外の状況では応用の効かない、汎用性に欠けるポンコツともいえるが)

    121 = 1 :

    カズマ「まあ、何にせよこれで作戦は決まったな。考えられる可能性は沢山あるが全てを検証してる時間はない」

       「だから最も確率の高い予想に賭けてみようと思う。根拠が状況証拠と俺の推測ってのは弱い気もするけど」

    ダクネス「カズマよ何を言い出すのだ、お前が出した結論に我等が異を挟むと思ったか?」

    アクア「そうそう」

    カズマ「自分で言い出しといてなんだけどいいのか!? 正直博打だぞ?」

       「読みが外れたら今回のクエストは失敗、後日出直そうにも他のパーティーに先を越される可能性が高い……それでも信じて任せてくれるか?」

    122 = 1 :

    めぐみん「でも、自信があるんでしょう?」

    カズマ「めぐみん、何でそんな風に思うんだ?」

    めぐみん「そんなのカズマの顔を見れば一目で分かります。だって、ずっと一緒にやってきた仲間なんですから」

    カズマ「……ちっ、しゃあねえなあ。もし失敗しても文句言うなよ」

    アクア「は!? 何言ってんの? 失敗したらボロクソ貶すに決まってんじゃん」

    カズマ「おまっ!? この場面でそういう事言っちゃう?」

    アクア「当然じゃない、私を誰だと思ってるのよ……それが嫌なら、ちゃんと決めてよね!」

    カズマ「……ったくしょーがねえなあ。ダクネスの復帰祝いだ、ぱっぱと片付けて酒場で祝杯をあげようぜ!」

    ダクネス「頼むぞカズマ」

    めぐみん「頼りにしてますよカズマ」

    カズマ「ああ、任せとけ!」

    123 = 1 :

    カズマ「それじゃあ最終確認だ。ダクネスがデコイで周囲のモンスターを引き寄せて、めぐみんが爆裂魔法で一掃。俺はその間にターゲットを奪取する」

    アクア「私は?」

    カズマ「アクアは俺と来てくれ。そうだな、声の届かない場所……広場の手前で待機してくれ」

       「アンデッドはダクネスのデコイで引き付けられないだろうし、念の為だよ。それに、アイテムゲット後にやってもらいたい事もあるしな」

    アクア「……ああ、そういう事ね。分かったわ」

    カズマ「よし、それじゃあ作戦開始だ!!」

    124 :

    おいつたけどエロまだか

    125 = 1 :

    ―― 作戦実行 ――


     静寂に満ちた空気を突如として振るわせ、狂獣の咆哮が響き渡る。森のしじまを掻き乱し、連鎖的に湧き上がるその雄叫びは、瞬く間に荒々しい大斉唱となって周辺一帯へと轟いた。
     声の主である魔獣達は皆一様に苦悶の表情を浮かべ、心の奥底から湧き上がる狩猟と殺戮の衝動――ケモノとしての本能に支配されていた。
     やがて一匹が耐えかね駆け出すと、まるで堰を切ったように全ての魔獣が、ある一点を目掛けて我先にと雪崩れ込む。
     白目を剥き、巨大な牙の立ち並ぶ顎から泡を吹くその姿は、幻惑に翻弄される憐れな麻薬中毒者を連想させた。
     草や花、木々の梢を踏み拉き、行く手を遮る樹木や岩石に体躯を激突させながらも疾走するその様は、明らかに常軌を逸した豹変ぶりだった。
     これだけの大規模な騒乱、その元凶は当然ながら自然に発生したものでは有り得ない。だが、この異常事態を引き起こしたのは、僅か一騎の聖騎士がその能力を発動させた結果だった。
     クルセイダーのスキル『デコイ』――自らが囮となって敵の注意を引き付け、打たれ弱い後衛職への攻撃を逸らすというクルセイダーの固有スキル。
     攻撃特化型のソードマスターと違い、防御にも秀でるのがクルセイダーのクラス特性だが、その本分はあくまでアタッカーである。故にこのスキルは副次的な意味合いが強く、有用性はさほど高くない。
     そもそも後衛職は前衛の『壁』に守られる陣形が基本で、元々の被弾率が低い。だが回復の要であるプリーストや、範囲攻撃の要たるウィザードを危険に晒すのを厭んじる慎重派のパーティーが、保険として採る戦術の一端だ。
     それ故ダクネスの様に本来の職分を放棄してまで、一見無意味とも思えるスキルの育成をする特異な例は他に類を見ない。
     しかし率先して修得すべき攻撃スキルの分までスキルポイントを注ぎ込んだ結果、その効果は本来の用途とは全く懸け離れた異質な能力へと変貌を遂げた。敵の正気と思考を奪い、己の元へと誘導するその能力は、最早広域精神操作のレベルにまで昇華されていた。
     スキルの影響下にある魔獣達は、まるで羽虫が誘蛾灯に吸い寄せられるかの如くダクネスの元へと大挙して押し寄せる。
     その先に不可避の破滅が待ち受けているとも知らずに――否、もしその危機を認知していたとしても、抗う事など不可能であっただろう。ダクネスの使うデコイは、それ程の強制力を秘めていた。
     けたたましい騒音を掻き立てながら、刻々と迫る狂獣の群れ。その凶悪な暴威に蹂躙される様を妄想したダクネスは、頬を紅潮させながら恍惚とした表情を浮かべる――しかし、そんな興奮気味のダクネスに冷水を浴びせるように、めぐみんが鷹揚に告げる。

    「ご苦労様でしたダクネス、デコイの効果を解除してください」
    「ま、待てめぐみんよ。せめて少しぐらいモンスター達に痛め付けられる迄待ってくれ!」

     高揚した面持ちで、抗議する女騎士。だが少女は、そんな懇願を素気無く撥ね付ける。

    「駄目です。これ以上敵を引き付けると、ダクネスまで爆裂魔法に巻き込む可能性があります」
    「そ、それはそれで魅力的な展開だな。一度めぐみんの爆裂魔法を、この身に受けてみたいと思っていたのだ」

     その発言に少々惘れながらも、紅魔の少女は溜息交じりに語った。

    「いかにダクネスが堅牢堅固だろうと、もし直撃を受ければ無事には済みません。ダクネスが倒れたら爆裂魔法使用後に動けなくなった私を、誰が運んでくれるんですか? アクアも傍にいない事ですし自重してください」

     年下の少女に諫められて流石に面目を失ったのか、女騎士は不満気に答える。

    「分かった、今回は諦めるとしよう。だがめぐみんよ、いつかまた機会があれば是非頼みたい」
    「はいはい。そんな退っ引きならない事態があるとは思えませんが、その折には。約束しますよ」

    126 = 1 :

     殺気だち、大地を踏み鳴らしながら迫り来る魔獣の群れ。
     その前に立ち塞がるかのように、一人の少女が躍り出る。黒い外套を颯爽と翻し、愛用の魔杖を振り翳すその姿は、恐怖や緊張などの感情とは全くの無縁であった。
     これほどの大群を前に単身その矮躯を晒す少女は、その荒事向きではない可憐な外見とは裏腹に昂然たる風格に満ちていた。
     例え歴戦の冒険者であろうと、思わずその表情を固く曇らせ躊躇するであろう絶望的な状況。だが、そんな死地にあってなお、少女はその口元に不敵な笑みを浮かべる余裕さえあった。

    「此処より先は現世と幽世の境界にて、黄泉へと続く冥府の門。我は死と破壊を司りし者……汝等を煉獄へと誘う、紅き魔の眷族なり」

     手にした魔杖を上段で軽く回転させ、おもむろに正眼へと突き付ける。そして一拍の間を置いて、幼き死神は哀れな獲物達へと向けて死の宣告をする。

    「さあ、森の静謐を掻き乱す異形の怪物共よ、我が必滅の一撃にて常世の闇へと帰るがいい!」

     己の口上を述べ終えた少女が、満面の笑みで振り返る。

    「どうですかダクネス、決まってましたか!?」
    「ノリノリだな、めぐみんよ」

     半ば呆れ顔で、気のない返事をするダクネス。しかし、そんな仲間の態度もどこ吹く風か、嬉しさを堪え切れない調子で少女は声を弾ませる。

    「当然です! こんな絶好の好機、興奮せずにはいられません!!」

     欣喜してそう語る様は、普段の大人びた言動と相反して、彼女に年相応の愛嬌を感じさせた。

    127 = 1 :

    「嗚呼、感謝しますよカズマ。こんな最高の御膳立てをしてくれて。これだけのモンスターの群れを一掃すれば、新スキル修得に必要なスキルポイントも十二分に溜まるでしょう。そして我が爆裂魔法は更なる魔導の高みへと至り、世界中にその名声を轟かせるのです!」

     瞑目しながら将来の展望を朗々と語る少女は、陶酔しきった表情を浮かべて微かにその身を震わせた。そして一頻りの妄想を終え、手にした得物を構え直すと、弛緩した空気が一瞬にして張り詰める。
     ――めぐみんの目が大きく見開かれ、その紅い瞳が一際妖しい輝きを増す。鮮血よりも艶やかに、黄昏よりも濃密に。仄かに煌く虹彩は、深みと彩りを兼ね備えた美しい緋色をしていた。
     紅魔族――その名の元にもなった、特徴的な真紅の瞳。それは極度の興奮状態において、淡き光を放つという不可思議な特性を備えていた。
     それによって肉体のリミッターが解除されたり、封印されし第二人格が顕現する、などといった効果は一切なく、ただ単純に目が光るだけである。
     しかし極度の興奮状態とは、言い換えれば気力が最高潮に充実した状態であり、普段以上の実力を発揮する事が往々にしてある。
     その為、紅魔の里に住まう者の多くは、それが真の力に覚醒した際に起きる現象だと頑なに信じて疑わない――何故なら、その方がカッコいいからである!

    128 = 1 :

    「宵闇を統べる夜魔の皇、此岸に災禍と破滅を齎し無明の混沌へと還す者。我が血と贄を供物とし、汝を深淵の獄へと封ずる縛鎖を引き千切りて再び現世に顕在せよ」

     流麗な詠唱が紡がれると周囲に藍白い光が立ち籠め、少女の足元に円形の魔法陣が描き出されていく。大地に刻まれし真円から沸き立つ風が螺旋となりて、ローブやマントの裾を緩やかにはためかせる。
     やがて吹き荒ぶ膨大な魔力は世界を黒く暗転させ、虚空に巨大な魔法陣を幾重にも張り巡らせた。
     限界まで充填された魔力が逃げ場を求めて猛り狂い、数多の紫電を走らせる。その濁流の如き凄まじい力の奔流を、少女は平然とした面持ちで事も無げに御してみせる。
     ――魔術を生業とする者であれば、その卓越した技量に感嘆の念を抱かずにはいられなかったであろう。

    129 = 1 :

    「……焦熱の地獄で燃え盛りし終焉の炎よ、我が敵を討つ極大の焔剣となりて、大地を紅蓮の業火で焼き尽くせ! ……エクスップローージョンッッ!!」

     迸る雷光を伴って、秘中の奧技たる大魔法が炸裂する。耳を劈く轟音と共に特大の火柱が吹き上がり、凶禍の具現たる獰猛な魔獣達をいとも容易く散華させてゆく。
     荒れ狂う爆発のエネルギーはそれのみに留まらず、天を引き裂き大地を穿ち、崩壊という名の禍々しくも美麗な大輪の花を開かせた。
     幼少の砌より紅魔族でも随一の天才と称された神童が、その半生を費やした研鑽の果てに会得し練り上げた魔術の集大成。全魔力を収束させて放つという特質の為、一日に一回という制限はあるものの、その圧倒的な破壊力は他の追随を許さない。
     これこそが『爆裂魔法』――世界にも数名しか使い手の居ない、アークウィザード最強の――否、全クラスでも最強を誇る究極の攻撃魔法である。

    130 = 1 :

     大地を揺るがす爆音と、天高く燃え盛る紅蓮の炎が巨大な狼煙となってカズマに合図を送る。
     その馴染みある肌を焼く熱気と、体の芯まで響く低音を身に受けた彼は、潜伏スキルを解除させ待機していた木上の枝から飛び降り駆け出した。

    「今日は96点ってトコか。えらく気合い入ってんな」

     めぐみんの爆裂道の良き理解者でもあるカズマは、本日の一品をこう評価した。
     少女の日課である『一日一爆裂』――彼女が仲間に加わって以来、雨の日も、風の日も、雪の日も――その、ほぼ毎日を付き添い、身近で見届けて来たのは他ならぬ彼である。
     今やカズマは、爆裂魔法評論家(意味不明)と評しても差し支えない程、爆裂魔法に対する知見を得てその造詣を深めていた。
     その彼を以てして満点に近いと言わしめる魔術の冴えは、少女の心情を慮れば当然の結果であった。

    131 :

    途中までしか読んで無いがこいつなんもわかってない

    132 = 1 :

     木々の合間を縫って疾走するカズマ。
     今回の作戦、その鍵を握るのは、かくも迅速な行動である。己が身の安全を図るだけならば、それなりの時間的余裕はある。
     だが、彼の考える攻略の手法には、自らの周囲に誰も存在しない状況が必要不可欠――只一人、宝玉の守り手を除いては。そして事を成した後に、ささやかながらもやっておきたい事があった。
     ――不意に鬱蒼とした森が途切れ、視界が開けてくる。苦々しい敗走の記憶も新しい、先程の広場にカズマは再び舞い戻る。

    「念の為に聞いておくけど、隠れてるんなら出てこいよ。こっちは一人だ。さっきと同じ轍は踏まないぜ!」

     彼は遠くにまで届く様、大声を張り上げて警告を発する。だが、その問い掛けは虚しく、森の静寂に黙殺された。
     ここまでは予想通り。カズマ達一行のクエスト達成を阻む謎の『敵』――彼はその正体について、既にとある目星を付けていた。

    133 = 1 :

    《アクセルの町には、あらゆる男達の理想を叶える神聖不可侵の領域がある》

     何処からともなく、抑揚のない虚ろな声が響き渡る。先刻の忌まわしき凶事の再現。だが今度は、その禁秘を剔抉されようとも狼狽える事は無い。
     あえて隠しておきたい秘密を強く心に念じる事で、相手の出方を窺う腹積もりだ。それは先程の邂逅における、彼なりの状況分析であった。
     そっと瞼を閉じて、聴力を研ぎ澄ませる。どの道この深い霧の中では目を凝らした所で高が知れている。ならばいっそ五感の中で最も多くの情報量を占める視覚を自ら封ずる事によって、他の感覚を鋭敏にする算段である。
     彼の切り札は、対象から遠ざかるほど成功率が落ちる。その為、より正確を期するならば、少しでも間合いを詰める必要があった。
     耳を凝らして、慎重に声の出所を探り歩を進めるカズマ。やがて極度の精神集中により高められた直感が、指先に確かな手応えを予覚させる。

    134 = 1 :

    《アクセルに住まう男なら、必ずやお世話になっているであろう日常のオアシス。世界平和に最も貢献しているであろう無何有郷。オトコたちのユメを叶える最後の楽園》
    「悪いがそこまでだ。あの店はアクセルに住まう全ての漢達にとって、掛け替えの無い希望の光。その秘密を暴かれる訳にはいかない! ……スティールッ!!」

     カズマのスティールが発動する。一見何もない空間に向けて無造作に放たれたかに見えたソレは、だが確かに捉えるべき獲物へと喰らい付き、彼の右手にその証である輝ける宝玉を顕現させた。

    135 = 1 :

    カズマ「装飾品だと思ってたけど、腕輪だったか」

     手にした戦利品を繁々と凝視するカズマ。とは言え、この宝玉を鑑定するのは彼ではない。予め、その役割に相応しい要員を帯同させている。

    「おーいアクア、もういいぞー」

     離れた場所で待機していたアクアの元へ戻り、呼び掛けるカズマ。その声を聞き付けた彼女は、小走りで彼の元へと駆け寄った。

    「終わったの?」
    「ああ、コイツが真実の宝玉さ。それで、これはやっぱり神器なのか?」

     アクアへ腕輪を渡してから、そう尋ねるカズマ。その問い掛けに、暫しの間を置いてから彼女は答えた。

    「うん、間違いないわ。正規の所有者以外には、リミッターを解除出来ない仕様になってる」
    「何だよそのリミッターって?」

     聞き慣れない単語が飛び出した事に少々面食らって、即座に疑問を投げ掛ける。

    136 :

    長文はきついわ

    137 = 1 :

    「神器のリミッター解除コード……真の力を解放する為に必要な個人認証キーよ。勇者候補たる転生者の魂を数値情報化して、神器を下賜する際に個別登録してあるの」
    「何でまたそんな事を?」
    「神器はね、その名の通り『神の力』その一部を宿したアイテムなの。その強大な力故に、使用には大きな制限がかかる。
     例えばレベル1の村人でさえドラゴンを倒せる聖剣……それが誰にでも使用可能だったらどうなると思う? もし悪人や魔王軍の手に渡ったとしたら? 
     そういった神器の悪用を防ぐ為に、本人以外は使いこなせないシステムになってるのよ」

     そう粛々と語る彼女の横顔は、普段の放漫さを感じさせぬ、女神としての威厳に満ちていた。

    138 = 84 :

    グズマ!

    139 = 1 :

    >>136
    ごめんね
    ここだけだから

    140 = 1 :

    「そもそも神器をこの世界に持ち込む事も本来ならご法度なんだけど、そこはそれ。魔王軍の侵攻阻止って名目で、特例で勇者候補のみ所持を許されてるの。
     この宝玉も他の人が使っても真の力を発揮する事は出来ないわ。本来なら深層心理や記憶すら探れる力を秘めてるみたいだけど、精々表層的な思考を読むのが関の山でしょうね」
    「そっか、なら大丈夫そうだな」

     カズマがこのクエストを引き受ける切っ掛けとなった懸念事項――自身に火の粉が降りかかる可能性。
     最初はアルダープの関与を疑っていた彼だが、奴はああ見えて狡猾な男である。それならば配下を使って秘密裏に行い、カズマの所属する冒険者ギルドに依頼するなどという愚は犯さないであろう。
     結局、クエストの依頼主が何者なのかを確かめる術はないが、万が一カズマを陥れる意図があったとしても、種が割れていれば対処のしようもある。
     アクアの語る通り表層の意識しか読めぬのならば、虚言を弄するのを得意とする彼には脅威と成り得ない。
     後ろ暗い事など何もないが、ウィズの正体や屋敷を入手した経緯などは人様に聞かれて問題の無い話でもないのだ。
     だが、その僅かばかりのリスクの為に、目前に控えた一千万という報酬を棒に振る選択肢を彼は持ち合わせていなかった。

    141 :

    追いついた
    めっちゃ面白いと思うけど評価悪いの何故だ?

    142 = 1 :

    「大丈夫そうって、何が?」
    「いや、こっちの話。それよりアクア、ちょっと探してもらいたいモノがあるんだ。多分お前ならすぐに見つけられると思う」
    「探してもらいたいモノ?」

     やがて程なくして、探し物は見つかった。それは原型を留めぬほどに朽ち果てた、痛ましくも憐れな骸だった。
     カズマは手頃な木の枝を削って即席の墓標を作ると、大きな樹木の近くに埋葬用の穴を掘り始める。彼の傍でその光景を見守っていたアクアは、やや不思議そうな面持ちで尋ねた。

    「ねえカズマ、どうしてこの人にお墓を作ってあげようと思ったの?」

     そのアクアの問い掛けに、彼は憂いを帯びた表情で答えた。

    143 = 1 :

    >>141
    ありがとう
    めっちゃ嬉しいです!

    144 = 1 :

    「こいつも転生者って事は、多分俺の後輩なわけだろ? せっかく生まれ変わった新天地で、こんな風に犬死にしちまうなんて遣る瀬無いじゃんか。せめて、同郷のよしみで弔うぐらいはな」

     彼の脳裏に浮かぶのは、生前日本でプレイした数多のゲームと、天界でアクアに謁見した時の事だった。
     初めて異世界に降り立った日の事を思い出す。あの時の昂揚感と、その後の失望感。思い描いていた華々しい活躍とは無縁の苦しい日々。それどころか冒険者ギルドの登録にすら右往左往し大変な苦労を強いられた。
     もしそんな右も左も分からぬ状態で、うっかりこの森に迷い込んでしまったとしたら?
     無論、神器の強大な力を以てすれば、こんな辺境で苦戦する事など万に一つも有り得ない。だが、何事にも例外が存在する。
     そう、神器の選択ミス。

    145 = 1 :

     確かに宝玉の力は神器の名に恥じぬ破格のモノだ。戦闘においても敵の手の内を見切り、行動を予見せしめる能力は圧倒的なアドバンテージとなる。だが、それはあくまで己の身体能力備わってこそであり、ステータスの底上げをしてくれる効果はない。
     魔剣グラムは素手にて岩をも砕き、鉄をも拉ぐ膂力を与えてくれる。
     聖鎧アイギスは刃を弾いて魔法を阻み、ドラゴンのブレスですら防ぐ無敵の守りを与えてくれる。
     冒険開始直後にして、歴戦の勇士をも凌駕する驚異的な戦闘力を齎してくれるのだ。
     そういった『分かり易い』効力の神器であれば、順風満帆に冒険を進められたであろう。

    146 = 1 :

     これがゲームであれば、不親切だのクソゲーだのと詰られるだけで済んだかもしれない。だが此処は異世界といえ紛れもない現実なのだ。ほんの些細なミスでさえ死へ直結し、リセットしてやり直す事など出来ない。
     かつてカズマも同様の痛恨のミスを犯した忌まわしき記憶が蘇り、傍らの女神を眺めながら苦笑する。
     あの時、一時の激情に駆られず無難に聖剣でも選んでおけば、今頃は勇者として可愛い女の子にちやほやと持て囃され、どこぞの国のお姫様と恋仲にでもなっていたのかもしれない。
     非ざるべき未来の夢想に、そっと涙するカズマ。
     そんな彼に、少々怪訝な表情でアクアが言った。

    147 = 1 :

    「ねえカズマ、感傷に浸ってるトコ悪いんだけど、このひと転生者じゃないわよ。生前は盗賊だったみたい」
    「へ!?」

     彼女の意外な発言に、彼は目を丸くさせる。

    「お宝を盗んだはいいけど、この森に迷い込んで命を落としたそうよ。それで死後も盗んだ宝を取られたくなくて、近付く冒険者に嫌がらせしてたみたいなの」
    「……それじゃあ俺は、この盗人野郎のせいで一生ものの生き恥をかかされたってのか?」

     肩を震わせ、全身に怒りを漲らせるカズマ。

    「ちくしょう、この野郎ブッ殺す!!」
    「もう死んでるってば」

    148 = 1 :

     ――余談ではあるが、この神器の本来の所有者の話をしよう。
     彼の名前は七篠権兵衛。日本からの転生者だ。
     真実の宝玉を手にアクセルに降り立った彼は、各地のカジノで荒稼ぎし一財産を築き上げた。一生遊んで暮らせるだけの蓄えを手にした後は各地を豪遊し、正に理想の異世界生活を過ごしていた。
     だが、たまたま立ち寄ったアクセルの街で盗難にあい、自身は戦闘力が皆無の為、ギルドに宝玉の奪還を依頼したという訳だ。
     勇者候補としての天命から背いて、金儲けに奔走した小心者――それがギルドに身元の秘匿を頼んだ理由である。

    149 = 1 :

    後はエピローグで終了です
    是非とも感想お願いします
    特に分かり辛かった所なんかを指摘してくれると嬉しいです

    150 = 1 :

    ―― 冒険者ギルド ――


    アクア「カズマのスティールって、女の子のぱんつを剥ぎ取るだけかと思ってたけど、ちゃんと役に立つのね。見直しちゃった」

    カズマ「そんな訳あるか! ミツルギにも華麗に決めてただろうが!」

    ダクネス「まあまあ、落ち着けカズマ。今回の立役者はお前だ……誇ってもいいぞ」

    めぐみん「そうですね。カズマの活躍無しにクエスト達成は難しかったでしょうし、異論なしです」

    カズマ「おっ、おう」

    カズマ(素直に褒められると、なんだか照れるな)


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