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元スレ潤滑油「本日より入社する潤滑油です」社畜「油じゃねえか」
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<会社>
課長「えー……今日からウチの社に入社することになった、潤滑油君だ」
課長「自己紹介を」
潤滑油「はいっ!」
潤滑油「本日より入社する潤滑油と申します。よろしくお願いします!」ヌルンッ
社畜(……油じゃねえか)
課長「彼の教育係は……えー、君にお願いするよ」
社畜(俺かよ!)
課長「えー……今日からウチの社に入社することになった、潤滑油君だ」
課長「自己紹介を」
潤滑油「はいっ!」
潤滑油「本日より入社する潤滑油と申します。よろしくお願いします!」ヌルンッ
社畜(……油じゃねえか)
課長「彼の教育係は……えー、君にお願いするよ」
社畜(俺かよ!)
社畜『ハァ!? ふざけんなよ!』
社畜『ただでさえ、この課で一番忙しいのは俺なのに、なんで油の面倒なんか見なきゃいけねーんだ!』
社畜(……といえたらどんなに楽か)
社畜「分かりました」
課長「じゃあ後は任せたよ」
潤滑油「よろしくお願いします!」
社畜「はぁ……」
社畜『ただでさえ、この課で一番忙しいのは俺なのに、なんで油の面倒なんか見なきゃいけねーんだ!』
社畜(……といえたらどんなに楽か)
社畜「分かりました」
課長「じゃあ後は任せたよ」
潤滑油「よろしくお願いします!」
社畜「はぁ……」
このひろい東京で~歯車と潤滑油が~であったぁ~(下條アトム)
角刈り「ガッハッハ、頑張って指導してやれよ!」
社畜「……はい」
青年「先輩……ぼくにも手伝えることがあれば……」
社畜「お前に手伝ってもらうことなんかねえよ」
OL「…………」
社畜(この女はいつも何考えてんのか分からねえ)
社畜「じゃあとりあえず、電話番しといてくれるか」
潤滑油「はい!」
社畜「……はい」
青年「先輩……ぼくにも手伝えることがあれば……」
社畜「お前に手伝ってもらうことなんかねえよ」
OL「…………」
社畜(この女はいつも何考えてんのか分からねえ)
社畜「じゃあとりあえず、電話番しといてくれるか」
潤滑油「はい!」
プルルルルル…
潤滑油「!」
社畜「おい、電話だぞ、出てくれ」
プルルルルル…
潤滑油「はいっ!」ヌルッヌルッ
社畜「おい、電話はワンコール以内に出るのが基本だぞ! 早く出ろ!」
潤滑油「は、はいっ!」ヌルッヌルッ
プルルルルル…
社畜(潤滑しすぎて受話器を取れねえのか!)
社畜「あーもういい! 俺が出る!」サッ
潤滑油「!」
社畜「おい、電話だぞ、出てくれ」
プルルルルル…
潤滑油「はいっ!」ヌルッヌルッ
社畜「おい、電話はワンコール以内に出るのが基本だぞ! 早く出ろ!」
潤滑油「は、はいっ!」ヌルッヌルッ
プルルルルル…
社畜(潤滑しすぎて受話器を取れねえのか!)
社畜「あーもういい! 俺が出る!」サッ
社畜「やっぱり電話番はやめだ」
社畜「これコピー取ってきてくれ」サッ
潤滑油「分かりました!」
……
潤滑油「取ってきました!」
社畜「ご苦労――」
社畜「ってちょっと待て! この書類、油でベトベトじゃねえか!」
潤滑油「あ、すみません! 取り直してきます!」
社畜「もういい、俺が行くよ!」ガタッ
青年「あ、あの……先輩、ぼくが……」
社畜「いいっていってんだろ!」スタスタ
社畜「これコピー取ってきてくれ」サッ
潤滑油「分かりました!」
……
潤滑油「取ってきました!」
社畜「ご苦労――」
社畜「ってちょっと待て! この書類、油でベトベトじゃねえか!」
潤滑油「あ、すみません! 取り直してきます!」
社畜「もういい、俺が行くよ!」ガタッ
青年「あ、あの……先輩、ぼくが……」
社畜「いいっていってんだろ!」スタスタ
社蓄「(こいつぬるぬるして気持ちよさそうだな)」
社蓄「(バレないように入れれば問題ないよね)」
潤滑油「(…うそっ!何かが僕の中に入ってきてる!!)」
社蓄「(バレないように入れれば問題ないよね)」
潤滑油「(…うそっ!何かが僕の中に入ってきてる!!)」
社畜「課長!」
課長「……ん?」
社畜「あの潤滑油ってヤツはなんなんですか!?」
社畜「電話は取れないわ、コピーも取れないわ、そもそも人間じゃないわで、使い物になりませんよ!」
社畜「なんであんなのをウチの課で引き取っちゃったんです?」
課長「人事が物珍しさで採用したらしいが、どの部署も欲しがらず、ウチが引き取ることになったんだ」
社畜「なんですかそれ!? ちゃんと断って下さいよ! おかげで――」
課長「とにかく……私は君に任せたんだから、君がなんとかしてくれよ。私は知らんよ」
社畜「…………!」
社畜(くっ、この課長は……いつもいつも……!)
課長「……ん?」
社畜「あの潤滑油ってヤツはなんなんですか!?」
社畜「電話は取れないわ、コピーも取れないわ、そもそも人間じゃないわで、使い物になりませんよ!」
社畜「なんであんなのをウチの課で引き取っちゃったんです?」
課長「人事が物珍しさで採用したらしいが、どの部署も欲しがらず、ウチが引き取ることになったんだ」
社畜「なんですかそれ!? ちゃんと断って下さいよ! おかげで――」
課長「とにかく……私は君に任せたんだから、君がなんとかしてくれよ。私は知らんよ」
社畜「…………!」
社畜(くっ、この課長は……いつもいつも……!)
潤滑油「先輩、お茶入れてきました!」
社畜「お、気が利く――」
社畜「って、油が浮いてるじゃねえか、飲めるかこんなもん!」
潤滑油「すみません、入れ直してきます!」シュタタタッ
角刈り「ガッハッハ、苦労してるようだな」
社畜「角刈りさん……」
角刈り「ま、お前みたいな若造はどんどん苦労しなきゃならねえ!」
角刈り「これ、オレの仕事だけど、やっといてくれや!」ドサッ
社畜「……分かりました」
社畜「お、気が利く――」
社畜「って、油が浮いてるじゃねえか、飲めるかこんなもん!」
潤滑油「すみません、入れ直してきます!」シュタタタッ
角刈り「ガッハッハ、苦労してるようだな」
社畜「角刈りさん……」
角刈り「ま、お前みたいな若造はどんどん苦労しなきゃならねえ!」
角刈り「これ、オレの仕事だけど、やっといてくれや!」ドサッ
社畜「……分かりました」
夜になり――
社畜「…………」カタカタカタカタ
潤滑油「あのー……もう10時ですけど、帰らないんですか?」
社畜「これ終わったら帰る」カタカタカタカタ
潤滑油「終わったらって、いつ終わるんです?」
社畜「分かるかよ、そんなもん。少なくとも終電までには終わらせるよ」カタカタカタカタ
潤滑油「もしも終わらなかったら?」
社畜「持ち帰るしかねえだろ。角刈りさん怖いし」カタカタカタカタ
潤滑油「毎日こんな遅いんですか?」
社畜「ああ」カタカタカタカタ
潤滑油「それじゃ体が――」
社畜「あーもう、うるせえな! とっとと帰れ! 仕事のジャマだ!」カタカタッ ターン
潤滑油「失礼します……」ヌルヌル…
潤滑油「…………」
社畜「…………」カタカタカタカタ
潤滑油「あのー……もう10時ですけど、帰らないんですか?」
社畜「これ終わったら帰る」カタカタカタカタ
潤滑油「終わったらって、いつ終わるんです?」
社畜「分かるかよ、そんなもん。少なくとも終電までには終わらせるよ」カタカタカタカタ
潤滑油「もしも終わらなかったら?」
社畜「持ち帰るしかねえだろ。角刈りさん怖いし」カタカタカタカタ
潤滑油「毎日こんな遅いんですか?」
社畜「ああ」カタカタカタカタ
潤滑油「それじゃ体が――」
社畜「あーもう、うるせえな! とっとと帰れ! 仕事のジャマだ!」カタカタッ ターン
潤滑油「失礼します……」ヌルヌル…
潤滑油「…………」
翌日――
<会社>
社畜「今日は一緒に得意先に向かう」
潤滑油「はいっ!」
社畜「くれぐれも粗相のないようにな」
社畜「あと……応接室のソファなんかを油で汚すんじゃないぞ」
潤滑油「大丈夫です、任せて下さい!」
社畜(心配だ……)
<会社>
社畜「今日は一緒に得意先に向かう」
潤滑油「はいっ!」
社畜「くれぐれも粗相のないようにな」
社畜「あと……応接室のソファなんかを油で汚すんじゃないぞ」
潤滑油「大丈夫です、任せて下さい!」
社畜(心配だ……)
<得意先>
得意先部長「ほう、油を入社させたのかね!」
社畜「はい、ウチの会社も変わったことをするもんで……」
得意先部長「いやいや、なかなか斬新で結構じゃないか!」
潤滑油「ありがとうございますっ!」
社畜(こいつ……新入りのくせに話に割り込んでくるんじゃねえよ……)
得意先部長「どうかね、ウチの社に来ないかね?」
潤滑油「そしたらまず、部長さんの御顔に配属させてもらいます!」ヌルヌル
得意先部長「ハッハッハ、これ以上ギトギトになったらかなわんよ!」
ハハハ…… ワハハハ……
社畜(この部長さんとここまで会話が弾むのははじめてだな……)
社畜(こいつ、潤滑油だけあって、人に好かれる性質があるのかもしれないな)
得意先部長「ほう、油を入社させたのかね!」
社畜「はい、ウチの会社も変わったことをするもんで……」
得意先部長「いやいや、なかなか斬新で結構じゃないか!」
潤滑油「ありがとうございますっ!」
社畜(こいつ……新入りのくせに話に割り込んでくるんじゃねえよ……)
得意先部長「どうかね、ウチの社に来ないかね?」
潤滑油「そしたらまず、部長さんの御顔に配属させてもらいます!」ヌルヌル
得意先部長「ハッハッハ、これ以上ギトギトになったらかなわんよ!」
ハハハ…… ワハハハ……
社畜(この部長さんとここまで会話が弾むのははじめてだな……)
社畜(こいつ、潤滑油だけあって、人に好かれる性質があるのかもしれないな)
社畜「さっきはなかなかよかったぞ。おかげで商談が少し進捗した」
潤滑油「ありがとうございます!」
社畜「バカとハサミは使いようっていうけど、油も使いようなんだな」
潤滑油「そうですよ! 油は潤滑も、燃料も、料理も、放火も、なんでもいけるんです!」ヌルヌル
社畜(放火はダメだろ)
潤滑油「きっと、あの青年さんって人もちゃんと使ってあげれば……」
社畜「あいつ? あいつはダメだ。営業に向いてない」
潤滑油「でも……」
社畜「さ、帰るぞ。今日も残業しなきゃいけないからな」
潤滑油「ありがとうございます!」
社畜「バカとハサミは使いようっていうけど、油も使いようなんだな」
潤滑油「そうですよ! 油は潤滑も、燃料も、料理も、放火も、なんでもいけるんです!」ヌルヌル
社畜(放火はダメだろ)
潤滑油「きっと、あの青年さんって人もちゃんと使ってあげれば……」
社畜「あいつ? あいつはダメだ。営業に向いてない」
潤滑油「でも……」
社畜「さ、帰るぞ。今日も残業しなきゃいけないからな」
<会社>
社畜(さーて、今日のことを日報に書いて、と……)カタカタ
角刈り「おう! 今日も商談成立させてきたぜ!」
社畜「あ、角刈りさん……さすがですね」
角刈り「だろう? 営業はオレの天職よ! もっと褒めろ、ガッハッハッハ!」バシッ バシッ
社畜(いてっ!)
角刈り「ってわけで、オレの報告書、書いといてくれや! オレああいうの苦手なんだ!」
社畜「ま、またですか?」
角刈り「あん!?」ギロッ
社畜「あ、いや……書きます書きます」
角刈り「おめえ、顔色悪いぞ? もっとちゃんと寝ろよ、ガッハッハッハ!」
社畜「ハ、ハハ……」
社畜(また終電だな、こりゃ……)
社畜(さーて、今日のことを日報に書いて、と……)カタカタ
角刈り「おう! 今日も商談成立させてきたぜ!」
社畜「あ、角刈りさん……さすがですね」
角刈り「だろう? 営業はオレの天職よ! もっと褒めろ、ガッハッハッハ!」バシッ バシッ
社畜(いてっ!)
角刈り「ってわけで、オレの報告書、書いといてくれや! オレああいうの苦手なんだ!」
社畜「ま、またですか?」
角刈り「あん!?」ギロッ
社畜「あ、いや……書きます書きます」
角刈り「おめえ、顔色悪いぞ? もっとちゃんと寝ろよ、ガッハッハッハ!」
社畜「ハ、ハハ……」
社畜(また終電だな、こりゃ……)
課長「じゃ、お先に」スタスタ
角刈り「ガッハッハ、帰ったら筋トレすっか!」スタスタ
OL「お先に失礼します」スタスタ
社畜「…………」カタカタカタカタ
青年「あ、あの先輩……ぼくも手伝いましょうか?」
社畜「いらねえよ。さっさと帰れ」カタカタカタカタ
青年「す、すみません……」
角刈り「ガッハッハ、帰ったら筋トレすっか!」スタスタ
OL「お先に失礼します」スタスタ
社畜「…………」カタカタカタカタ
青年「あ、あの先輩……ぼくも手伝いましょうか?」
社畜「いらねえよ。さっさと帰れ」カタカタカタカタ
青年「す、すみません……」
社畜「…………」カタカタカタカタ
潤滑油「もうすぐ夜の11時ですよ、先輩」
社畜「で?」カタカタカタカタ
潤滑油「なんで先輩ばかり、いつもこんなに残業してるんですか?」
社畜「仕事が残ってるからだよ」カタカタカタカタ
潤滑油「なんで一人でやってるんです? 他の人を頼ればいいじゃないですか」
社畜「頼れるのなんかいねえよ。お前を含めてな」カタカタカタカタ
社畜「俺に助けなんかいらねえんだ。怒鳴られたくなきゃ、とっとと帰れ」カタカタカタカタ
潤滑油「失礼します」シュタタタッ
社畜「あーあ……こりゃ休日も出ないと、とても間に合わないな」
潤滑油「…………」
潤滑油「もうすぐ夜の11時ですよ、先輩」
社畜「で?」カタカタカタカタ
潤滑油「なんで先輩ばかり、いつもこんなに残業してるんですか?」
社畜「仕事が残ってるからだよ」カタカタカタカタ
潤滑油「なんで一人でやってるんです? 他の人を頼ればいいじゃないですか」
社畜「頼れるのなんかいねえよ。お前を含めてな」カタカタカタカタ
社畜「俺に助けなんかいらねえんだ。怒鳴られたくなきゃ、とっとと帰れ」カタカタカタカタ
潤滑油「失礼します」シュタタタッ
社畜「あーあ……こりゃ休日も出ないと、とても間に合わないな」
潤滑油「…………」
そんなある日――
<会社>
社畜「んー……終わった」ググッ…
社畜(今日は久々に10時前に帰れるな……何ヶ月ぶりだろう?)
社畜(さて、家に帰るか)
潤滑油「先輩、一緒に帰りましょうよ!」
社畜「お前もまだいたのかよ……まあいいけど」
<会社>
社畜「んー……終わった」ググッ…
社畜(今日は久々に10時前に帰れるな……何ヶ月ぶりだろう?)
社畜(さて、家に帰るか)
潤滑油「先輩、一緒に帰りましょうよ!」
社畜「お前もまだいたのかよ……まあいいけど」
<電車>
ガタンゴトン…… ガタンゴトン……
社畜「お前、家どこなんだよ?」
潤滑油「今は会社近くのガソリンスタンドに下宿させてもらってます」
社畜(油に相応しい下宿先だな……)
社畜「ってちょっと待てよ。だったら、なんで電車に乗ったんだよ」
潤滑油「いや、せっかくなんで先輩の家にお邪魔しようかなって」
社畜「来るなよ! このままついてきても、家になんか入れねえからな!」
ガタンッ……
社畜「おっと、揺れたな」ヨロッ…
キャーッ!
社畜「……ん?」
ガタンゴトン…… ガタンゴトン……
社畜「お前、家どこなんだよ?」
潤滑油「今は会社近くのガソリンスタンドに下宿させてもらってます」
社畜(油に相応しい下宿先だな……)
社畜「ってちょっと待てよ。だったら、なんで電車に乗ったんだよ」
潤滑油「いや、せっかくなんで先輩の家にお邪魔しようかなって」
社畜「来るなよ! このままついてきても、家になんか入れねえからな!」
ガタンッ……
社畜「おっと、揺れたな」ヨロッ…
キャーッ!
社畜「……ん?」
女「痴漢よっ!」
女「今お尻さわられたわーっ!」
社畜「は……!?」
女「今、この人、私のお尻をさわったのよーっ! なで回したのよーっ!」
社畜(く……帰りの電車だからって油断してた! とんでもないことになっちまった!)
女「みなさーんっ! こいつを捕まえて下さい! こいつは痴漢でぇーっす!」
ザワザワ…… ドヨドヨ……
社畜(まずい……他の客もみんな俺が犯人だと思ってやがる!)
社畜(こんなことで……こんな下らないことで俺の人生終わりかよ……!)
女「今お尻さわられたわーっ!」
社畜「は……!?」
女「今、この人、私のお尻をさわったのよーっ! なで回したのよーっ!」
社畜(く……帰りの電車だからって油断してた! とんでもないことになっちまった!)
女「みなさーんっ! こいつを捕まえて下さい! こいつは痴漢でぇーっす!」
ザワザワ…… ドヨドヨ……
社畜(まずい……他の客もみんな俺が犯人だと思ってやがる!)
社畜(こんなことで……こんな下らないことで俺の人生終わりかよ……!)
潤滑油「待って下さい!」ベチャッ
社畜「!」
潤滑油「この人の手はこのとおり、油でベトベトです」
「ホントだ……」 「うわ、すげえ」 「ベトベトじゃん」
潤滑油「にもかかわらず、この女の人のスカートにはまったく油はついていない!」
潤滑油「これは明らかに矛盾しています!」
女「うっ!?」
潤滑油「よって、この人は無罪です!」ヌルンッ
女「ぐぐぐ……!」
「そうだそうだ!」 「無罪だ!」 「金欲しさの狂言だろ、このクソ女!」
女「ちくしょう……ちくしょおおおおおおおおお!!!」
社畜「!」
潤滑油「この人の手はこのとおり、油でベトベトです」
「ホントだ……」 「うわ、すげえ」 「ベトベトじゃん」
潤滑油「にもかかわらず、この女の人のスカートにはまったく油はついていない!」
潤滑油「これは明らかに矛盾しています!」
女「うっ!?」
潤滑油「よって、この人は無罪です!」ヌルンッ
女「ぐぐぐ……!」
「そうだそうだ!」 「無罪だ!」 「金欲しさの狂言だろ、このクソ女!」
女「ちくしょう……ちくしょおおおおおおおおお!!!」
<駅>
社畜「……ありがとう、助かった」
潤滑油「いえいえ、とっさに先輩の手にボクの一部をぶつけて正解でした!」ヌルヌル
社畜「…………」
社畜「よし、俺の家に寄ってけよ。ビールくらいご馳走してやる」
潤滑油「いいんですか!?」
社畜「痴漢冤罪になるとこ助けられて、恩返ししないわけにはいかないだろ」
社畜「……ありがとう、助かった」
潤滑油「いえいえ、とっさに先輩の手にボクの一部をぶつけて正解でした!」ヌルヌル
社畜「…………」
社畜「よし、俺の家に寄ってけよ。ビールくらいご馳走してやる」
潤滑油「いいんですか!?」
社畜「痴漢冤罪になるとこ助けられて、恩返ししないわけにはいかないだろ」
<アパート>
社畜「ほれ、ビール」カシュッ
潤滑油「ありがとうございます!」
社畜「ところで、お前ってビール飲めるのか?」
潤滑油「こうやって体全体でビールを吸収すれば……」ジュルジュル…
潤滑油「そのうち混ざったビールがボクの体と同化して潤滑油になるんです」ジュルジュル…
社畜「へぇ~……(変わった生き物だ……いや生き物なのか?)」
潤滑油「ところで、先輩」
社畜「ん?」グビグビ
潤滑油「先輩はなんで、みんなに頼らず一人で仕事をしてるんですか?」
社畜「…………」グビグビ
社畜「ほれ、ビール」カシュッ
潤滑油「ありがとうございます!」
社畜「ところで、お前ってビール飲めるのか?」
潤滑油「こうやって体全体でビールを吸収すれば……」ジュルジュル…
潤滑油「そのうち混ざったビールがボクの体と同化して潤滑油になるんです」ジュルジュル…
社畜「へぇ~……(変わった生き物だ……いや生き物なのか?)」
潤滑油「ところで、先輩」
社畜「ん?」グビグビ
潤滑油「先輩はなんで、みんなに頼らず一人で仕事をしてるんですか?」
社畜「…………」グビグビ
どんな見た目なんだ?
モンスターファームのゲルみたいな感じか
モンスターファームのゲルみたいな感じか
社畜「…………」プハーッ
社畜「前にもいったろ? ウチの課に頼れる奴なんかいないだろ」
社畜「やる気のない課長に、威勢だけの体育会系、なに考えてんのか分からない女……」
潤滑油「でも、青年さんはあなたを助けたがってるみたいですけど」
社畜「あいつはダメだ」
潤滑油「どうして?」
社畜「どうしてって……あいつ、いつも自信なさそうにビクついてるじゃん」
社畜「ああいう奴に重要な仕事やらせたら、トチるに決まってるからな」
社畜「あいつはあのまま社内ニートさせときゃいいんだよ」
社畜「まだ新米だし、そのうちもっと適した部署に異動になるだろ」ゲフッ
潤滑油「でも、あの人があんな風にオドオドするようになってしまったのは……」
潤滑油「先輩、あなたのせいなんじゃないんですか?」ヌルンッ
社畜「なんだと?」ピクッ
社畜「前にもいったろ? ウチの課に頼れる奴なんかいないだろ」
社畜「やる気のない課長に、威勢だけの体育会系、なに考えてんのか分からない女……」
潤滑油「でも、青年さんはあなたを助けたがってるみたいですけど」
社畜「あいつはダメだ」
潤滑油「どうして?」
社畜「どうしてって……あいつ、いつも自信なさそうにビクついてるじゃん」
社畜「ああいう奴に重要な仕事やらせたら、トチるに決まってるからな」
社畜「あいつはあのまま社内ニートさせときゃいいんだよ」
社畜「まだ新米だし、そのうちもっと適した部署に異動になるだろ」ゲフッ
潤滑油「でも、あの人があんな風にオドオドするようになってしまったのは……」
潤滑油「先輩、あなたのせいなんじゃないんですか?」ヌルンッ
社畜「なんだと?」ピクッ
社畜「聞き捨てならねえな。俺のせいってどういうことだよ」
潤滑油「あの人の教育をしたのは、多分あなたですよね」
社畜「まあな」
社畜「俺が課長や角刈り先輩からろくに指導されなかった分、丁寧に教えてやったよ」
潤滑油「丁寧に上から押さえつけてやったわけですか」
社畜「……どういう意味だよ?」
潤滑油「だって先輩、いつもあの人にきつく当たってるじゃないですか」
潤滑油「あれじゃどんな人だって委縮してしまいますよ」
潤滑油「先輩はあの人を褒めたことってあるんですか? ないでしょ?」
社畜「なんだとぉ!? 油ごときが偉そうに!」ガタッ
社畜「俺はちゃんと……!」
社畜「!」ハッ
社畜(潤滑油に、俺の顔が映ってる……)
社畜(俺は……俺はこんな疲れた顔をしてたのか……? イライラしてる顔をしてたのか……?)
潤滑油「あの人の教育をしたのは、多分あなたですよね」
社畜「まあな」
社畜「俺が課長や角刈り先輩からろくに指導されなかった分、丁寧に教えてやったよ」
潤滑油「丁寧に上から押さえつけてやったわけですか」
社畜「……どういう意味だよ?」
潤滑油「だって先輩、いつもあの人にきつく当たってるじゃないですか」
潤滑油「あれじゃどんな人だって委縮してしまいますよ」
潤滑油「先輩はあの人を褒めたことってあるんですか? ないでしょ?」
社畜「なんだとぉ!? 油ごときが偉そうに!」ガタッ
社畜「俺はちゃんと……!」
社畜「!」ハッ
社畜(潤滑油に、俺の顔が映ってる……)
社畜(俺は……俺はこんな疲れた顔をしてたのか……? イライラしてる顔をしてたのか……?)
~
社畜『いいか、学生気分を捨てろ! 社会ってのは荒波なんだ! 理不尽なんだ!』
社畜『なんだ今の電話の取り方は! もっとハキハキしろ、ハキハキと!』
社畜『なんだこの日報は! 朝顔の観察日記じゃねえんだぞ!』
~
社畜「…………」
社畜(そういや俺、あいつを褒めたことってあったっけ……)
社畜(あいつが成果上げた時も、俺ならもっと上手くやれた、なんていってたような……)
社畜(ふふふ……俺は“いい先輩”のつもりだったけど……どこがいい先輩だよ)
社畜(俺みたいな奴の下についたら、誰だって自信をなくすに決まってるじゃないか……!)
社畜『いいか、学生気分を捨てろ! 社会ってのは荒波なんだ! 理不尽なんだ!』
社畜『なんだ今の電話の取り方は! もっとハキハキしろ、ハキハキと!』
社畜『なんだこの日報は! 朝顔の観察日記じゃねえんだぞ!』
~
社畜「…………」
社畜(そういや俺、あいつを褒めたことってあったっけ……)
社畜(あいつが成果上げた時も、俺ならもっと上手くやれた、なんていってたような……)
社畜(ふふふ……俺は“いい先輩”のつもりだったけど……どこがいい先輩だよ)
社畜(俺みたいな奴の下についたら、誰だって自信をなくすに決まってるじゃないか……!)
潤滑油「先輩?」
社畜「……なぁ、潤滑油」
社畜「俺はどうしたらいい……?」
潤滑油「青年さんを使ってやって下さい、いっぱい褒めてあげて下さい」
潤滑油「そうすれば、きっと彼のためにも、先輩のためにもなりますから……」
社畜「…………」
社畜「分かった、やってみるか!」
社畜「……なぁ、潤滑油」
社畜「俺はどうしたらいい……?」
潤滑油「青年さんを使ってやって下さい、いっぱい褒めてあげて下さい」
潤滑油「そうすれば、きっと彼のためにも、先輩のためにもなりますから……」
社畜「…………」
社畜「分かった、やってみるか!」
翌日――
<会社>
社畜(……といったものの、どうも気まずい。散々冷たく扱ってきたからな)
社畜(とりあえず……少し仕事やらせてみるか)
社畜「あ、あのさ……」
青年「は、はい」
社畜「悪いんだけど……これの見積もり計算やっておいてくれない?」
青年「…………!」
青年「分かりました!」
社畜「もちろん俺がちゃんとチェックするけど、しっかり頼むぞ」
青年「はいっ!」
<会社>
社畜(……といったものの、どうも気まずい。散々冷たく扱ってきたからな)
社畜(とりあえず……少し仕事やらせてみるか)
社畜「あ、あのさ……」
青年「は、はい」
社畜「悪いんだけど……これの見積もり計算やっておいてくれない?」
青年「…………!」
青年「分かりました!」
社畜「もちろん俺がちゃんとチェックするけど、しっかり頼むぞ」
青年「はいっ!」
青年「できました!」
社畜「どれどれ……」
社畜「ほう……ふむ……いいじゃん」
青年「ありがとうございます!」
社畜「今までは俺も余裕なくて、色々きつく当たってたけど……」
社畜「これからはあてにするから、よろしく頼む」
青年「は、はいっ!」
社畜(おお……こいつ、こんなに大きい声出せる奴だったのか)
社畜「どれどれ……」
社畜「ほう……ふむ……いいじゃん」
青年「ありがとうございます!」
社畜「今までは俺も余裕なくて、色々きつく当たってたけど……」
社畜「これからはあてにするから、よろしく頼む」
青年「は、はいっ!」
社畜(おお……こいつ、こんなに大きい声出せる奴だったのか)
社畜「…………」カタカタ
青年「先輩!」
社畜「……ん?」
青年「今、ウチの部署って、業務内容を紙で管理してることが多いですよね」
社畜「まぁな。古い部署だから仕方ない部分もあるけど……場所もかさむし非効率的だな」
青年「実は……ぼく、パソコンでこういうのを管理するシステムを作りまして……」
青年「これを使えば、業務をもっと短縮できて、ミスも少なく……」
社畜「どれどれ……?」
社畜「おお……すごいな、これ」
社畜(こいつ、こんなことやってたのか……)
社畜(だけど、俺に『余計なことすんな!』って言われるのが怖くて言い出せなかったんだな……)
青年「先輩!」
社畜「……ん?」
青年「今、ウチの部署って、業務内容を紙で管理してることが多いですよね」
社畜「まぁな。古い部署だから仕方ない部分もあるけど……場所もかさむし非効率的だな」
青年「実は……ぼく、パソコンでこういうのを管理するシステムを作りまして……」
青年「これを使えば、業務をもっと短縮できて、ミスも少なく……」
社畜「どれどれ……?」
社畜「おお……すごいな、これ」
社畜(こいつ、こんなことやってたのか……)
社畜(だけど、俺に『余計なことすんな!』って言われるのが怖くて言い出せなかったんだな……)
<居酒屋>
ワイワイ…… ガヤガヤ……
店員「ビールです……」コトッ
青年「そうだったんですか! 潤滑油君が!」
社畜「ああ、こいつに教えられたんだ。俺は全然いい先輩じゃなかったってな」
社畜「今まですまなかった……」
青年「いえ、ぼくの方こそ……」
潤滑油「さて、お二人が仲良くなったところで、次に進みましょう!」ヌルンッ
社畜「次?」
ワイワイ…… ガヤガヤ……
店員「ビールです……」コトッ
青年「そうだったんですか! 潤滑油君が!」
社畜「ああ、こいつに教えられたんだ。俺は全然いい先輩じゃなかったってな」
社畜「今まですまなかった……」
青年「いえ、ぼくの方こそ……」
潤滑油「さて、お二人が仲良くなったところで、次に進みましょう!」ヌルンッ
社畜「次?」
潤滑油「次はOLさんと仲良くなりましょう!」
社畜「え、あの女と? いきなりハードル高いな」
青年「ぼくもあの人は苦手ですね……なに考えてるか分からないんで」
社畜「だよな、俺ですら全然しゃべったことない」
社畜「どっかのゲームの主人公みたく『はい』『いいえ』しかいわないもんな」
社畜「自分の仕事はきっちりこなすから、それでいいか、と思ってたんだが……」
青年「でも、あの人がもっと協力的になってくれたら、すごい戦力になりますよ!」
社畜「ああ、それは間違いないな」
社畜「潤滑油、勝算はあるのか?」
潤滑油「ボクに任せて下さい!」ヌルルンッ
社畜「え、あの女と? いきなりハードル高いな」
青年「ぼくもあの人は苦手ですね……なに考えてるか分からないんで」
社畜「だよな、俺ですら全然しゃべったことない」
社畜「どっかのゲームの主人公みたく『はい』『いいえ』しかいわないもんな」
社畜「自分の仕事はきっちりこなすから、それでいいか、と思ってたんだが……」
青年「でも、あの人がもっと協力的になってくれたら、すごい戦力になりますよ!」
社畜「ああ、それは間違いないな」
社畜「潤滑油、勝算はあるのか?」
潤滑油「ボクに任せて下さい!」ヌルルンッ
<会社>
OL「…………」カタカタ
社畜「相変わらず、無言で事務仕事をこなしてるな」
青年「ええ、笑ってるところを見たことないです」
潤滑油「OLさん」ヌルヌル
OL「…………?」
潤滑油「油が下着を見つけた。あ、ブラ!」
OL「…………」
OL「…………」ブフォッ
社畜&青年「えええええええええええええ!?」
OL「…………」カタカタ
社畜「相変わらず、無言で事務仕事をこなしてるな」
青年「ええ、笑ってるところを見たことないです」
潤滑油「OLさん」ヌルヌル
OL「…………?」
潤滑油「油が下着を見つけた。あ、ブラ!」
OL「…………」
OL「…………」ブフォッ
社畜&青年「えええええええええええええ!?」
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