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    元スレ北斗「趣味はヴァイオリンとピアノかな☆」

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    102 = 97 :

    星井

    103 = 83 :

    『~♪ ♪』

    北斗「これは…………俺の、……!!!」




    疾走。快活なテンポで、野を行く一匹の兎。純真を帯びるアレグロ。

    その音は次第に装飾を重ね。

    潜んだ影がうねりを伴い表層に浮かび、哀切の響きをもたらしていく。

    転調。しかしそこに在るのは悲痛さだけではなくて――――




    煌いて、輝いて、不屈で、強くて、素晴らしくて、元気で、まっすぐな、






               希望が乗っている。
     

     

    104 = 83 :

    歌。――そう歌だ。


    綴られていく世界は、夢見る幼い子どもの希望と試練。


    零れる寒さと、暗き道。


    宝物を見失い、寄る辺なく漂って。


    それでも手を取り歩き出す。


    光。――――光。光。光。


    前進する。憂いに涙が溢れても。


    背中が熱い。


    それは来し方。かつての夢からの熱い風。


    背を押され。手に導かれ。――――そうこの道こそ。

    106 = 83 :

    『――――――――――あの日私が求めた世界』
















    ――おいっ! 北斗! どこに行くんだ!

    ――待ってよ! ねえ!

    107 = 83 :

    千早「それでは。また来週お会いしましょう……」

    千早(作曲されてない後半部分。私はその空白に仲間に貰った暖かさと、強さを入れた)


    控室

    千早「ふう。……やれたわ。私」

    「やったな! 千早!」

    春香「千早ちゃん!」ギュッ!

    千早「わ、春香!」

    春香「えへへ。生歌聴いてたらなんかすっごく千早ちゃんありがとーって気分になっちゃって」

    千早「そう……」

    春香「伝わってるといいね」

    千早「うん。伝えられた、と思う」

    「そろそろ控室出るぞ。事務所でささやかな打ち上げでも……」


    バン!


    北斗「……はっ……はっ……ッ!」

    109 :

    ほくほく

    110 = 83 :

    「うおっ! 北斗!? お前女性アイドルの控室に……」

    千早「伊集院さん!? あの――」

    北斗「――――『なんてことを』」ツカツカ









    北斗「してくれたんだっ!!!」ガシッ!!

    千早「きゃっ……!」

    春香「わわっ!?」

    「なっ!」

    111 = 83 :

    千早「え、あの」

    北斗「人の曲をっ!! 勝手に!! あんな風に歪めて…………っ!!!」

    千早「か、肩、い、痛……い……!!」

    「!! 北斗! 千早を放せ!」ガッ!

    北斗「あの曲はっ、あんなんじゃない!! あんな意味を持っていない!! あんな! あんなあんな!!!」

    北斗「あんな…………曲じゃっ…………!」

    千早「う……ぁ……」




    冬馬「北斗ォォォッッッー――!!!」ドガッ!!!

    北斗「ぐっ!?」


    春香「冬馬くん!?」

    112 = 83 :

    冬馬「てめぇ……!! なにやってやがる!!」

    北斗「こいつは……俺の、俺だけの曲を、奪い去ったんだよ! 冬馬!!」

    (! あの北斗が女性を『こいつ』呼ばわり……!?)

    千早「はっ、はぁ……」

    春香「千早ちゃん大丈夫!?」

    千早「奪い、去った……?」

    北斗「あの曲は……俺がピアニストを目指してた頃から作って……その夢が挫折してからも作って……もう二度と作れない、過去を閉じ込めた曲なのに……!!」

    千早「――え」

    北斗「最後をあんな曲調にして……どんなアナリーゼだ……っ!! 無責任に希望をばら撒くような安易な曲にして……っ!」

    北斗「よくも……!!」バッ


    三条馬「ぜはっ! 北斗くんストーップ!! 落ち着いて!」

    「マネージャーさん!」

    113 :

    ジュピターSSとは珍しい

    114 :

    しえん

    115 = 83 :

    北斗「たった一つ、たった一つしか無かったのに……」

    千早「い、伊集院さん。私は……夢が繋がっていることを伝えようと――」

    北斗「そんなことは知っている!! あの曲に入れるな!」

    千早「!! …ぁ…あぁ……」

    冬馬「北斗止まれバカ野郎!! おい! あんた手伝ってくれ!」

    「わ、分かった!」

    翔太「うわ、わわ! どういう状況これ? とりあえず、北斗くん止めた方がいいよね!」

    三条馬「部屋どっか借りてくる!」

    千早「私……私は……」

    春香「落ち着いて!」



    千早「取り返しのつかないことを……」

    117 = 105 :

    しえん

    118 = 83 :

    ――

    ――――

    冬馬「北斗……お前……」

    (どうにかこうにか部屋に連れ込んだと思ったら、北斗顔に手を当てて突っ伏してしまったな)

    翔太「これ……」

    三条馬(泣いている、わよね)


    北斗「――……」




    前の検査から、ほとんど腱の再建は不可能だと言われていた。

    だから今回精密検査を受ける前から、ピアニストの夢はもう二度と蘇らない予感はしていた。

    だが自分のためのピアノを見つけ、絶たれた夢のための曲を伊集院北斗は創っていた。

    119 = 95 :

    ちーちゃんの心情を考えると胸が痛む

    120 = 113 :

    この手の相手を思ってのことなのに傷つけちゃう展開は辛い

    121 = 114 :

    どっちも自分の思いを音楽に綴ろうとしただけなのにな

    122 = 83 :

    それは北斗が夢に向けて綴る葬送の曲であり、ピアノと出会えた感謝を表す曲であり、これからもピアノを愛することに誓いを立てる曲だった。

    どこにも繋がらなくてもいい、伊集院北斗とその夢とピアノが捧ぐ、ミューズへの届かぬ恋文。

    ――自分と夢と音楽へのけじめの曲。


    それが、きらめく少女達の手に渡り。希望を積まれ、未来への前進の意思を注がれ、弱っている人に響くようにと。

    ――――応援曲に『整形』させられていた。




    もう二度と作れない、あの日の閃きによって成る曲。

    静粛に自分に向き合い彫琢した音階。

    続きを作曲しようと思っても、この日歪められたという記憶が、その指針を見失わせる。


    新たに入ってきた失望と、憤激と、悲哀。そして、変形した完成版の曲調。

    心からそれを排除して作曲は、望むべくもないだろう。


    この日。伊集院北斗だけのあの曲は、失われた。――再建しようがないほどに。

    125 = 83 :

    765プロ

    律子「着いたわよ。千早……」

    律子(プロデューサーから連絡が合って千早と春香を迎えに行ったものの……)

    千早「うっ……うぅぅっ……」グスッグスッ

    律子(こんな風に泣いてるなんて……)


    律子(ジュピターとはプロデューサーが話をつけるとして、問題はどう千早を慰めるかね)

    春香「千早ちゃん泣かないで」

    千早「ひぐ……っ……ぅぅ」

    あずさ「ほら。よしよし。伊集院さん怖かったわね?」

    千早「違うんです! 悪いのは……私なんです……っ」

    千早「盗作です…………侮辱です……っ!」

    春香「要所要所のフレーズだけでしょ? 思い出してもらえるようにって……」

    千早「それが、歪めているってことなのよ!!」

    やよい「千早さん……っ」

    126 = 114 :

    ここからどうなるのか

    127 = 83 :

     
    千早「自分に勝手に重ね合わせて! 夢は続いていくなんて……なんて無責任なおせっかいを!」

    千早「そのせいで、そのせいで……彼が心の大事な部分で守っていた、たった一つの宝物を……私は汚してしまったんだ……!」

    千早「あの人は。もう……覚悟を決めていたのに!」

    千早「久遠に在る音楽の神様が微笑んでくれなくても、その後ろ姿をずっと追いかけるって……

       自分の夢を無かったことにしないって、そうやって、しっかり乗り越えていたのに!」

    千早「あの人だけの曲を、あの人だけの痛みを……こんな、まるで違う風に歪めて……っ!!

       私……最低だ……」

       

    千早「なんてことを……して、しまったのかしら……っ」
     

    128 = 94 :

    なんかワロタ

    129 = 94 :

    失礼>>128は誤爆

    130 = 83 :

    冬馬「――そういうことか。そんな大事な曲ならよ、趣味だなんて言ってごまかさなきゃ良かったんだよ」

    翔太「ちょっと冬馬くん」

    北斗「……」

    冬馬「誰にも触れてほしくない、一人でやりたい、そんな言い方もあったはずだぜ。自業自得だ」

    「おい……そんな言い方、北斗があまりに……」

    北斗「……そうだな」

    北斗「なんてことはない。俺のせいだ」

    「千早はな、声出なくなったことがあるからさ、お前をほっとけなかったんだと思うんだ」

    「それで希望を持ってもらいたいって……その想いは純粋で、本当なんだ。そこは分かってくれ」

    北斗「……はい。ひどい真似をしてしまいました」

    「ああ。どうだろう。今回歌ったこの曲、CDに収録するのやめるから、この件に対しては……」

    北斗「問題にする気はありませんよ。CDに収録して下さっても結構です。あれはもう、彼女の曲になっている」
       彼女は、あの曲が表に出ないと知って、拾いあげてくれようとしたんでしょう…………」

    三条馬(北斗くん。声に起伏がない……)

    北斗「こちらこそ乱暴してしまって。謝罪します」

    「いや、こちらこそ……」

    131 = 114 :

    泣いてる千早って正直ドキッとしてしまう

    132 = 83 :

    (男の意地、みたいなもんか)

    (正直、気持ちは分かる)

    (もし765プロが無くなって、アイドル達が離れて行っても……俺はプロデュースをやめないだろう)

    (最後に残った一人に全てをかけて、輝かせようとするだろう)

    (それは仕事というより、自分自身と不可分になってしまった営みなんだろうな)

    (男の自己満足……とも言えるが。その頂点に肉薄しようとする気持ちとかは、全然馬鹿に出来ない)

    (それは、本当に純粋な思いだから)

    (千早もそれがわかるだろう。だからこそ、傷ついてしまうんだろうな……)


    (問題は、千早のケアか)

    133 = 83 :

    ――

    ――――

    北斗「…………」

    北斗(ピアノの前に座ったはいいものの……全然作曲する気にならない)

    北斗(だが、涙が出てこなくは、なった)

    北斗(喪失感には慣れたか。ようやく)

    北斗(千早ちゃんとの話し合いの時刻。まだ時間があるが……)

    北斗(もう、やれることはないだろう)

    北斗「……行くか」

    北斗「謝らないとね」

    134 = 96 :

    北斗さん男前すぎて辛い

    135 :

    なぜかケンシロウかと思ってしまった

    136 = 83 :

    ――


    千早「すいませんでした!」

    北斗「っ!」

    「本当にすまなかった北斗」

    千早「私! 本当にとんでもないことを! あなたの人生に土足で踏み行って! どうお詫びしていいか……!!」

    北斗「待ってくれ千早ちゃん」

    千早「は、はい」

    北斗「まず、一つ。あの時乱暴な真似をしてすまなかった。伊集院北斗にあるまじき行為……いや男として間違った振る舞いだった。傷ついたのなら許してほしい」

    千早「…………っ! あれくらい当然です! 私があなたの立場だったらもっとひどいことをしています!」

    「おい、千早!」

    三条馬「まあまあ、お互い悪いって思ってるんなら、話は早いわ! 765プロさん。この度は本当に……」

    「いえいえジュピターさんの方にも……」


    千早「――わかってるんです。私が謝ってもあなたのあの曲は帰ってこない……」

    北斗「もうその話は無しだ千早ちゃん。俺の振る舞いが悪かったんだよ」

    137 :

    まあちょっと安易に踏み込んじゃったよね

    138 = 83 :

    千早「あなたが許しても、私自分で自分を許せません!」

    北斗「千早ちゃん……そう自分を追い詰めちゃダメだよ。俺は女性にそんな顔をしてもらいたくはないんだ」

    北斗「格好、つけさせてくれ。頼む……」

    千早「……あなたが、そんな悲しい目をしてることが私には耐えられません」

    千早「責任の取り方ずっと考えたんです。あなたの音楽的な失望につり合うのはどんなことかって……」

    千早「悩んで悩んで、決めました。伊集院さん」


    千早「私――――あなたに言われた曲を封印します」


    「千早……! それは保留だと言っただろ!」

    北斗「君の歌声が聴けなくなることに、メリットはないよ。むしろデメリットに感じる」

    千早「私も……あなただけの、あの曲が完成しなかったら、悲しいと思います。だから、です。こうしないと釣り合わない……!」

    139 :

    北斗軍団のボスかと

    140 = 83 :

    北斗(この子…………本気だね)

    千早「――!!」

    北斗(なんて、音楽にひた向きな……全身全霊をかけていないと、こんな償い方出てこない……)

    北斗(許す……か。俺はどうやったらこの子を許せる。問題は……そこだ)

    遠く響いていたBGMが、この喫茶店の個室の沈黙の上に積もっていく。


    北斗(これ、ブルックナーか……)

    北斗(小さな時から、好きだったな)

    北斗(あの時の純心を……まだ残していたのが、あの曲の冒頭なんだった……)


    あの曲を思い出す。そしてそれは連鎖して、耳に残るバレンタインデーのあの千早の歌を否応なしに思い出させる。


    北斗(そう、あの歌は……この子が作ったんだ)

    141 = 83 :

    北斗(女のことが歌を贈ってくれた。それ自体は、嬉しいことだ)

    北斗(そして、女性の思いを無碍にするのは、伊集院北斗のするところじゃない)

    北斗(人生に降ってわいたこの出来事)

    北斗(それが悪いことか、いいことか。決断しなきゃならないのは…………俺か)

    北斗(女の子の決意がかかってる)

    北斗(そんな時。俺の出す、答えは……?)


    あの時のように。目を閉じて、本心を感じる。


    北斗「……………………」

    北斗「…………」

    北斗「……」


    北斗(愛が、なければ)

    142 = 83 :

    北斗(愛がなければ、あんな曲はできないよな。誰かから与えられた愛が、誰かのための愛に。俺のあの曲は千早ちゃんの愛を受けた……)

    北斗「アモーレこそ伝えるべき気持ち……」

    「え?」

    北斗「言われてみれば、原点だ……千早ちゃん」

    千早「はい!」

    北斗「封印は無しだよ」

    千早「でも!」

    北斗「代わりに」



    北斗「ピアノを始めてくれ」


    千早「――――え?」

    143 :

    ふむ

    144 = 83 :

    ・・・

    ・・



    冬馬「うっし! 今日のところはこれで解散だ」

    翔太「おつかれ――」

    北斗「ああ、お疲れ」

    翔太「また、行くのー?」

    北斗「ああ。自分で決めたことだからね」

    冬馬「北斗」

    北斗「ん?」

    冬馬「また、『見つけろ』よ」

    北斗「…………ふ、言われるまでも、無く」

    145 = 114 :

    そうきたか

    146 = 83 :

    北斗(結局、俺は……うやむやにしたんだろうな)

    北斗(あの曲を失ったの痛みを、女性への対応の範疇に押し込めたんだ)

    北斗(それでは、あの曲が報われないと知りながら)


    北斗(でも、でもだ)

    北斗(あの歌詞のように。希望を持ってしまうことさえ――――あの曲に対する裏切りだろうか?)

    北斗(まだ、答えは出ない)

    北斗(だから、この選択に責任を持って進む。そして…………音楽の神のジャッジを待つ。)

    北斗(俺に出来るのはそれくらいしかない)




    千早「先生! お待ちしていました」
     

    147 = 83 :

    北斗「週一で見てるか見てないかってぐらいなのに、先生なんて呼ばなくていいよ……あ、これ差し入れです」

    「おお、ありがとう」

    北斗「がんばるね、千早ちゃん」

    千早「……私。先生を満足させるまでやめません」

    北斗「あぁ、だからさ、それはもういいって……」

    千早「それに、私とてもピアノが好きになっているんです」

    北斗「――それは良かった! そうじゃないと」

    千早「本当の音は出てこない、ですよね。……課題曲。なんとか、最後まで弾けるようになりました」

    北斗「そういうこと、わかってるね☆ ……じゃあ聞かせてくれるかな」

    「おう、聞かせてやれ! 千早」

    千早「はい!」

    千早「――!」~♪ ――♪♪


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