元スレ滝見春「神代の浄人」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ☆
52 = 7 :
このポンコツ娘め
53 = 1 :
「ふぅ……」
「あ、あの……」
「え、えっと貴女は……神代さん……でしたっけ?」
「はい、えっと……京太郎君に会いに来たんですよね?」
「よかったら一緒に会いに行きませんか?」
「あ、はい!」
また宮永咲も心細かった。
見知らぬ土地で一人歩く事が如何に大変か思い知ったのだ。
だが二人は知らない。
お互いが危なっかしい人物である事に。
方向音痴と天然箱入り娘が交差する時、騒動は始まる。
55 :
霞さんに見つかって終了の予感しかしない
56 = 1 :
――大阪――
車が止まった。
どうやら良子さんと話している間に千里山に着いたようだ。
車を降り、愛宕さんに付いて行く。
案内された場所はやはりと言うか麻雀部だった。
愛宕さんが部室に入って号令を掛ける。
どうやら俺たちを紹介するみたいだ。
「集合。」
「今日はあんたらと打ってくれる人が来たで。」
部室に居た全員が集まり、五人の女子にどよめきが立つ、少なくとも動揺している。
57 = 47 :
魔王と神とか負ける気がしない
59 :
ポンコツと天然とか負ける気しかしない
60 = 1 :
「はい、静かに。」
「自己紹介お願いしてもええ?」
「はい……戒能良子、一応プロフェッショナルです。」
良子さんが喋ると「やっぱり」だの「本物のプロや!」だの色めき立った声が上がる。
しかしそうなると隣に居る俺はなんなのかと疑問に思っているだろう。
「須賀京太郎です、よろしくおねがいします。」
俺は短く挨拶をした。
というよりも気の効いた挨拶をする頭の余裕がなかった。
すると愛宕さんが俺の短い挨拶を補完する様に話し出す。
「あー……須賀君はやな、元は長野の清澄麻雀部の一年で戒能プロと親戚でな、鹿児島の永水とも関わりがある子や。」
「皆仲良くするんやで。」
「「「「「はい」」」」」
62 :
経歴が凄まじいなww
64 = 1 :
部員達が揃って返事をする。
愛宕さんが少し離れたところに移り部員達が寄ってくる。
俺と良子さんに自己紹介をする為だ。
初めはノースリーブの制服を着た女子の挨拶。
「ウチは二条泉、須賀君は同い年やろ? 同じ歳同士仲良くしてな。」
「こちらこそよろしく。」
続いて眼鏡を掛けた女子の挨拶だ。
「ウチは船久保浩子、二年です、よろしゅう。」
「こちらこそよろしくお願いします。」
「須賀君清澄なんやってな、期待し取るで。」
「あんまり期待しないで下さい。」
66 :
しょうがないとはいえ期待されるとキツイなw
67 = 1 :
素人同然の俺に何を期待しているのやら。
そんな事を思いつつ次の紹介を受ける。
学ランを羽織ったやたらボーイッシュな人だ。
「俺は江口セーラや! 今日はよろしく頼むで!」
「はい、こちらこそよろしくお願いします。」
「なんや硬いなぁ! もっと気楽でええねんて!」
「あはは……」
最後の二人がおよそ問題を抱えてる人だろう。
俺の見立てではそう感じる。
片やにこやかな笑みを浮かべて挨拶をする女子と……
片や顔色が悪く、怪訝な表情で俺を見る女子……
69 = 1 :
「ウチは部長の清水谷竜華や。」
「……うちは園城寺怜。」
「園城寺さんに清水谷さんですね……"今日はよろしくおねがいします"。」
二人には何かある、と言うより何か見えた。
清水谷さんの横には小さい何かが。
園城寺さんの背後にはそれより大きい何かが。
72 = 1 :
雅枝「自己紹介終わったんなら卓に着き。」
雅枝「戒能プロ、早速で悪いんやけど入ってもらえます?」
良子「オーケーです。」
雅枝「竜華、怜、あんたらも入り。」
竜華・怜「「はい。」」
雅枝「……須賀君はどうする?」
京太郎「俺はこの腕なんで。」
雅枝「……せやな……セーラ入れるか?」
セーラ「よっしゃ! バリバリ打つで!」
雅枝「よし、全員良く聞いてほしいんやけど。」
雅枝「本気出して打て。」
雅枝「特に怜と竜華。」
雅枝「あんたらはきっちりな。」
竜華「はい。」
怜「……はい。」
74 = 1 :
卓打ちが始まる。
その間俺は二人の見立てを付ける。
対局中、何度か園城寺さんから気配が漏れでていた。
リーチをかけてからの一発……恐らく千里眼(透視)や未来予知の類だろう。
清水谷さんは何度かぶつぶつ呟いていた。
こっちは多分小さい何かと関係あるはずだ。
園城寺さんに憑いたものに対して見当はついたが腑に落ちないことがある。
『何故俺に来させたのか』だ。
『麻雀の腕を期待して』、なんてのは娘さん方から聞いてただろうから論外。
憑いてるものから別段悪い気配もしないし、例え祓うにしても神社に行けば済む話だ。
これには何か理由があるのだと窺い知れる。
76 = 7 :
怜…病んでさえいなければ!!
77 = 1 :
やがて対局が終わる。
園城寺さんはぐったりと卓に突っ伏していた。
それを気遣って園城寺さんを休ませる清水谷さん。
席を立った良子さんがこちらにやってきた。
なるべく周りに聞かれない様に小声で話す。
良子「どう? 京太郎。」
京太郎「見当は付きましたよ、多分狐です。」
良子「うん、私の見立てと同じだ。」
京太郎「でもなんで俺に?」
良子「それはまぁ……監督さんに聞いた方が良いかな。」
良子さんが目配せをすると愛宕さんが気付きこちらへやってきた。
79 = 1 :
雅枝「なんか分かりました?」
京太郎「ええ、まぁ。」
京太郎「ただ、一つ聞いても良いですか?」
雅枝「なんや?」
京太郎「俺たちを呼んだのって恐らく園城寺さんに憑いてるものに関してですよね。」
京太郎「でも俺たちの見立てでは単純に祓いたいなら神社に行けば良い話です。」
京太郎「それをしないのはどういう理由があるんですか?」
愛宕さんが少し顔を顰めて黙った。
言い辛い何かがあるのだろう。
少し間が空いて愛宕さんが自ら沈黙を破る。
81 = 1 :
雅枝「……怜の奴が行きたがらないんや。」
雅枝「あの子は体弱いくせに頑固でな、オカルトが無くなるのが嫌やったんやろ。」
雅枝「前までは三軍やった。」
雅枝「オカルトが手に入ってからは一軍になったんやけどそのせいで体長崩し気味でな。」
雅枝「インターハイでもそうや、病弱やのに無茶するから倒れてもうて……」
雅枝「病弱なのを知っていてインターハイのオーダー考えたのは私や……だから怜が倒れたのは私の責任でもある……」
雅枝「怜の事……何とかして貰えんやろか?」
京太郎「……俺は別に構いませんよ。」
雅枝「ほんまか?」
京太郎「ええ、ただ園城寺さんに了承してもらえないと俺は出来ませんよ。」
雅枝「……わかった、私らから話は付ける。」
話を聞いた愛宕さんは席を立って清水谷さんたちと話をし始めた。
隣に座っている良子さんが眉一つ動かさずに俺に聞いてくる。
84 = 1 :
良子「どう? 出来そう?」
京太郎「……何で俺なんですか? 良子さんでも出来るでしょう?」
良子「買被り過ぎだ、私は神職じゃない……それに万が一の事を考えて京太郎に頼んだ。」
京太郎「は?」
良子「……フォックスと言えば?」
京太郎「稲荷ですね。」
良子「稲荷と言えば?」
京太郎「伏見の稲荷神社とか……」
良子「ではそこが祀っているのは?」
京太郎「えーっと……宇迦之御魂神……」
京太郎「……あっ。」
そこまで言って気付いた。
何故一緒に来た春ではなく俺を連れて来たのか。
87 = 1 :
良子「最後に宇迦之御魂神のファザーは?」
京太郎「……家の主祭神ですね。」
良子「そういうこと。」
京太郎「……いつからです?」
良子「何が?」
京太郎「狐だって事前に分かってないとわざわざ俺を呼ばないでしょうよ……」
京太郎「つまり、以前に園城寺さんを見たことがあるってことですよね。」
良子「……インターハイ。」
良子「そのときに倒れた彼女を見て気付いた。」
良子「憑いてた狐が弱った身体で彼女の周りをうろうろとしてたからね。」
京太郎「はぁ……なるほどね……」
俺は溜め息を吐きながらぼやく。
何でこう俺は扱き使われるのだろうか。
89 = 1 :
九州は狐に関しての話が結構多い。
特に鹿児島なんかは野狐憑きの家筋が今でもいくつかある。
昔話を思い出していると園城寺さんたちがこちらにやってきた。
話が纏まったかと思えばどうやらそうでもないらしい。
90 = 1 :
怜「ちょっとええ?」
京太郎「いいですよ。」
怜「ウチに憑いてるのを何とかしたらどうなんねや?」
怜「病弱なん治るん?」
京太郎「率直に言うと病弱なのは治らないと思います。」
京太郎「園城寺さんの体の弱さは生来のものです。」
京太郎「一応祓えばオカルト使わない分は体力は減らないんでその分安全ですよ。」
怜「……ということは祓ったらオカルト使えんのに病弱なのは治らんのやな。」
京太郎「悪く言えばですけどね。」
京太郎「オカルトを使えば体力を消耗します。」
京太郎「無理をすれば命を落とす可能性もある。」
京太郎「例え命を落とさなくても寿命を縮めるのは間違いないですね。」
怜「やったら使わなければええねん。」
京太郎「でも園城寺さんはあればオカルト使っちゃうでしょう?」
怜「…………」
93 = 1 :
京太郎「千里眼や透視の類か、それとも未来予知かは知りませんけど。」
京太郎「人間使えるものがあると使ってしまうもんです。」
怜「……ウチに憑いてるもんて何?」
京太郎「狐ですね。」
京太郎「多分、ですけど園城寺さんが大怪我か何かで死に掛けた時に憑いたんでしょう。」
怜「そうなんか……」
京太郎「あと、清水谷さん。」
竜華「へ? ウチ?」
京太郎「ええ、清水谷さんに憑いてる小さいの……」
竜華「怜ちゃんが見えるん!?」
京太郎「……怜ちゃん?」
竜華「怜ちゃんは、ちっこい怜やから怜ちゃんや。」
京太郎「良く分かりませんけどとりあえず小さいのが一緒に居るのはわかります。」
94 = 1 :
怜「ウチ、実は今まで竜華の頭おかしくなったと思ってたんやけど……」
セーラ「俺もや……ちっこい怜とかなんやとか思たわ……」
竜華「ほらみい! ウチの頭は別におかしくなかったんやで!」
セーラ「すごい勝ち誇った顔やなぁ……」
京太郎「えっと、話進めても……?」
竜華「あ、ごめんな……」
京太郎「ええっと、結論から言っちゃうとその怜ちゃんとやらは園城寺さんに憑いてる狐の分霊みたいなものです。」
竜華「……分霊ってなに?」
京太郎「分霊っていうのは増えて分かれた霊のことです。」
京太郎「神社で言うなら分社とか分祀とか言いますけどね。」
京太郎「本来の分霊とかならそういうことは無いんですけど……。」
京太郎「園城寺さんのを親機、清水谷さんの方を子機って言った方が分かりやすいかな。」
竜華「ほ~……」
95 = 1 :
怜「竜華、あんまりわかってないやろ?」
竜華「なんとなしにはわかるんやけどな。」
怜「須賀君が言いたいのはウチのお狐さん祓ったら竜華に憑いてる怜ちゃんも居なくなる言う事やろ?」
京太郎「はい。」
竜華「でもなんで怜に憑いてたのがウチにも憑いてたん?」
京太郎「まぁ恐らくですけど……魂って人間のどこにあると思います?」
セーラ「胸ん中とかやろ?」
京太郎「実は頭なんです。」
怜「そうなん?」
京太郎「ええ、頭は考えるところでもあるから昔から魂は頭に宿ると言われてます。」
京太郎「贈り物で櫛を贈るのは『魂の宿る頭に飾るものだから自らの分身として贈る』からなんです。」
京太郎「そして神様や霊も頭に宿るんです。」
京太郎「だから頭に良く触れてる部分から清水谷さんに分霊として移ったんでしょう。」
竜華「そんなんやったのか……」
96 = 7 :
皆怜ちゃんのこと信じてなかったのか
まあそうだよな
97 = 1 :
そこまで言い終わると傍らから溜め息交じりに声を発した人が居た。
どうやら俺の言っていることは飲み込めないという感じだった。
「はぁ~うさんくさ。」
竜華「ちょっと! 何言うてんの!? 失礼やでセーラ!」
セーラ「んなこと言うても胡散臭いやんか。」
セーラ「この兄ちゃん、金髪に私服のどこにでも居るようなやつやで?」
セーラ「しかもどう見ても俺等より年下やし……」
竜華「ちょっとセーラ! ええ加減に……!」
京太郎「別に構わないですよ、俺は正式な神職でもないし、未熟なのも否定出来ませんから。」
京太郎「疑われるのはごもっともだと思います。」
京太郎「別に祓わなくても良いと言うならそれはそれで構いませんし。」
敢えて突放す様な態度を取る。
本当に聞かないといけないことがあるからだ。
99 = 1 :
竜華「なんやそれ……」
竜華「怜に何か憑いとるんやろ?」
京太郎「まぁ……憑いてるといえば憑いてますが……」
竜華「やったら、はよ取ってぇな!」
京太郎「……園城寺さんに聞きたいんですけど、貴女は良いんですか?」
こういうのは本人の意思が重要だ。
本人が納得していないなら例え祓ったとしても力を欲したら再度憑いたりする。
元の木阿弥になってしまったら何回祓っても意味がない。
だから園城寺さんに聞かなければいけない。
園城寺さんは俯いたまま応える。
自分の意思で、どうしたいのかを。
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