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    元スレ魔王娘「おかえりなさい、あなた様……」勇者「ああ、ただいま……」

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    251 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 20:40:22.85 ID:jfa0PGOc0 (+20,+30,-32)
    少年の喋り方が杉下右京っぽい
    252 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 20:40:30.29 ID:E0ZZJKv90 (+33,+30,-215)
    賢者「どうだ? 貴様達が望むなら、私の考えを聞かせてやっても構わんが?」

    僧侶「私たちはその為に来たのです。お聞かせください!」

    少年「賢者殿のご高察です。是非に」

    賢者「あとは貴様だけだ。どうする?」

    戦士「私は……」

    賢者「貴様が聞きたくないようなら、この話は『わからん』で終わりだ」

    戦士「……わかりました。お願いします」

    賢者「教会の情報網には引っ掛かり、私達の情報網に引っ掛からない理由は二つ考えられる」

    賢者「一つは私達の情報網が、教会のそれと比べて貧弱である可能性だ」

    少年「では、もう一つの可能性は?」

    賢者「教会の情報が出鱈目である可能性だな」

    僧侶「そんな馬鹿な!」
    253 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 20:43:45.67 ID:dd3/pv910 (+0,+14,-13)
    しえん
    254 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 20:44:43.35 ID:p0BbFhqA0 (+27,+29,-2)
    追いついちゃったああああ
    おもしろいっす
    255 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 20:45:14.97 ID:E0ZZJKv90 (+31,+30,-232)
    魔法使い「おい、馬鹿とはなんだ! 師匠への無礼は許さねぇぞ!!」

    賢者「まあ、待て」

    魔法使い「しかし!」

    賢者「……私は待てと言ったぞ?」

    魔法使い「あ……も、申し訳ありません」

    賢者「困ったものだな。少しは使えるようになったと褒めた途端にこれだ」

    魔法使い「くっ……」

    賢者「まあ、今回は私の名誉の為に、という事だろう? その気持ちは貰っておく」

    魔法使い「は、はい。ありがとうございます!」

    賢者「……さて、お嬢さん」

    僧侶「は、はい……」

    賢者「私を馬鹿者呼ばわりするという事は、それなりの反論を期待していいのだろう?」

    僧侶「は、反論ですか……?」

    賢者「そうだ。根拠もなく可能性を否定など出来まい? さあ、聞かせてくれ」

    僧侶「こ、根拠は……」
    256 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 20:49:16.67 ID:oZQ2ljIh0 (+17,+29,-4)
    追い付いたぞ
    257 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 20:49:56.36 ID:E0ZZJKv90 (+35,+30,-224)
    賢者「まさか根拠がないとは言わないだろう? さあ?」

    僧侶「うぅ……」

    少年「賢者殿」

    賢者「何だ?」

    少年「今回の魔物についての情報は、国王陛下にも報告されているものです」

    賢者「……それで?」

    少年「仮に教会の情報が出鱈目であった場合、教会が陛下を欺いている事になります」

    賢者「くふふっ……仮にそうだとしたら由々しき事態じゃないか?」

    僧侶「し、司教さまが陛下を騙すなど考えられません! 何の目的があってそんな事を!」

    少年「落ち着いてください。これはあくまで仮定の話です」

    僧侶「しかし!」

    少年「私達は賢者殿にお話を伺う為、二週間余りの旅をしてきました。そうですね?」

    僧侶「はい……」
    258 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 20:51:35.28 ID:MxGkyHocO (-23,-11,-2)
    259 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 20:51:59.47 ID:2/MUHyzR0 (-2,+9,-2)
    260 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 20:53:06.05 ID:mxRDNkZ50 (-25,-10,-1)
    261 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 20:53:09.96 ID:E0ZZJKv90 (+35,+30,-272)
    少年「では、二人にお聞きします」

    少年「この旅の間、一度でも魔物の噂を聞いたり、その姿を見た事があったでしょうか?」

    僧侶「いえ……」

    戦士「……」

    少年「では、あなたはどうです?」

    魔法使い「お、俺もそんな話は知らねぇよ」

    少年「そして、賢者殿もそういった情報はないと仰られています」

    僧侶「……」

    少年「私達には賢者殿が仰った『教会の情報が出鱈目』という可能性を否定する根拠がありません」

    戦士「勇者殿、よろしいですか?」

    少年「何ですか?」

    戦士「確かに、私達には『教会の情報が出鱈目』という可能性を否定できません」

    僧侶「あ、あなたまで……」

    戦士「しかし、『教会の情報網の方が優れている』可能性を否定する根拠もないはずです」

    少年「その通りです」
    262 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 20:55:35.21 ID:Nubo2BHR0 (-21,-9,-1)
    支援
    263 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 20:57:17.42 ID:E0ZZJKv90 (+35,+30,+0)
    戦士「私達は全世界を見て回った訳ではありません」

    少年「えぇ、あなたの言う通りです」

    戦士「だとすれば、私達の知らないところで魔物が出没しているのかも知れません。違いますか?」

    少年「いえ、それも正論だと思います」

    魔法使い「あのよ……」

    少年「何か?」

    魔法使い「さっきから聞いてりゃ、要するに両方の可能性に対して、決定的な証拠がないって事なんだろ?」

    少年「そうですね」

    魔法使い「教会を否定したり肯定したりするような事を言ってよぉ。てめぇは一体何が言いてぇんだ?」

    少年「皆さんに、自分の置かれた状況を自身で考えて、判断して、行動して欲しいと思っただけです」

    僧侶「自分の置かれた状況ですか?」

    少年「えぇ、与えられた情報が本当に正しいのか? 信じているものは本当に正しいのか?」

    戦士「……」

    少年「最西の街ではどうでした? あなた達の真実は正しかったですか?」

    僧侶「それは……」
    265 : 忍法帖【Lv= - 2013/04/20(土) 21:00:04.94 ID:+AwARtcHO (-27,-15,-1)
    266 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 21:01:17.27 ID:E0ZZJKv90 (+35,+30,+0)
    賢者「……そろそろ最後の質問に答えたいんだが?」

    少年「そうですね、宜しくお願いします」

    魔法使い「ま、待ってください!? 魔物が人間界に侵攻してるって話は?」

    賢者「何を言っている。さっきの遣り取りで答えは出ているだろう?」

    魔法使い「いやいや。だからわからないって……」

    賢者「そうだ。『わからない』が答えだ。現時点ではな」

    少年「魔物の襲撃があったという教会の情報と、魔物の襲撃を認知すら出来ていない私達の情報」

    少年「現時点で持ち合わせた情報だけでは、判断のしようがありません」

    賢者「だから最後の質問の答えが重要になってくる」

    魔法使い「そうか。魔王の復活……」

    賢者「そういう事だ……と言いたいが、この質問も貴様らが期待している答えを、私は持ち合わせていない」

    魔法使い「そ、そうなんですか?」

    賢者「先程も言ったぞ。魔王軍との戦い以降、私は魔物達の姿を見ていないし、見かけたという情報も得ていない」

    魔法使い「た、確かに……いや、しかし……」

    賢者「何の確証もない以上、魔王復活の真偽など答えようがない。私の話はここまでだ」
    267 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 21:02:55.49 ID:RcoK6/5i0 (+13,+25,-2)
    追いついたぁ
    268 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 21:03:09.43 ID:89768NAi0 (+19,+29,+0)
    地の文がないのは良い
    269 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 21:06:36.17 ID:cBTXgv2vI (+19,+29,-2)
    ぉもしろぃ
    続けたまへ
    270 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 21:06:37.20 ID:E0ZZJKv90 (+35,+30,-310)
    少年「賢者殿、貴重なお時間を割いて頂き、ありがとうございました」

    賢者「なに、古き仲間からの頼みだからな。お安い御用だ」

    僧侶「……」

    戦士「……」

    魔法使い「……」

    少年「どうしたんですか、三人共。さっきから黙り込んで」

    魔法使い「どうしたもこうしたもねぇだろう! 肝心な事が何もわからず仕舞いじゃねぇか!?」

    少年「国王陛下と司教猊下が危惧されていた、封印の結界は健在とわかりました。十分な成果です」

    魔法使い「結界の無事を確認しに来たのは、魔王復活と魔物達による襲撃の情報があるからじゃねぇのか!」

    僧侶「そ、そうです! その為に賢者殿にお話を伺いに来たのですから」

    少年「その賢者殿が『わからない』と仰られているんですよ?」

    僧侶「し、しかし、それでは陛下や司教さまに何と報告すればいいのか……」

    賢者「ありまま報告すればいいだろう。足りないと思うなら、通路のある遺跡も確認して来い。無駄足だがな」

    僧侶「参ります! 無駄足かどうかは行ってから判断いたします」

    賢者「好きにしろ。魔法使い、貴様も気になるのだろう? こいつらを遺跡に案内してやれ
    271 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 21:06:58.78 ID:p0BbFhqA0 (-23,-11,-2)
    272 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 21:08:02.73 ID:OePe3b2kO (-21,-9,-1)
    支援
    273 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 21:11:29.07 ID:E0ZZJKv90 (+33,+30,-290)
    ~~夜 賢者の塔 研究室にて~~

    僧侶「結局、何も見つけられませんでした……」

    戦士「……そうですね」

    魔法使い「魔力は微かに感じたけど、封印の場所すらも見つけられねぇとは……」

    賢者「当たり前だ。馬鹿が通路に辿り着けないないよう『不可視の天幕』の術を遺跡に仕込んである」

    魔法使い「……それだけじゃないですよね、師匠」

    賢者「魔力を込めた場所を特定する事が出来ないように、仕掛けを施してあるからな」

    魔法使い「昔、師匠に連れて行ってもらった時は、すんなり封印の場所まで行けたのに……」

    賢者「私が一緒だったからな。あの頃の貴様は仕掛けにすら気づかなかったんだ。成長したではないか」

    魔法使い「……今は褒められても嬉しくないです」

    戦士「では、私達が遺跡に行っても、何も出来ないと知って?」

    賢者「『無駄足』だと私は言ったはずだが?」

    僧侶「確かに仰いましたが……勇者さま、私たちはどうすればいいのでしょう?」

    少年「賢者殿が仰られたように、ありのままを陛下に報告しましょう」

    僧侶「……それで良いのでしょうか?
    274 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 21:12:42.68 ID:p0BbFhqA0 (-23,-11,-2)
    275 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 21:13:58.24 ID:E0ZZJKv90 (+35,+30,-285)
    少年「私達にはそれ以上の事は出来ません。封印の結界が無事とわかっただけでも朗報……」

    少年「あとの事は、陛下が適切な御判断をされるはずです」

    魔法使い「くそっ……何かすっきりしねぇな」

    賢者「だからといって、敵(かたき)である魔物共を求めて世界を周るか?」

    魔法使い「……そんな事、出来る訳がないです」

    賢者「そうだ。貴様の助けを待つ人を捨て、そんな事など出来はしない」

    魔法使い「言われるまでもありません! 師匠にこの命を救ってもらったように……俺も餓鬼共を!」

    賢者「魔物共の侵攻が真実なら、大局的見地ではその対策が急務だが……」

    賢者「誤った憶測に惑わされ、目の前の大事を見失うような真似だけはするなよ?」

    魔法使い「はい!」

    賢者「さて……もう夜も遅い。今日はここで休んでいけ」

    少年「ご厚情、感謝します」

    賢者「部屋は下の空き部屋を好きに使って構わん。おい、この二人を案内してやれ」

    魔法使い「へっ? 二人、ですか?」

    賢者「勇者には話しをした事がある。悪いが付き合ってもらうぞ」
    276 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 21:15:40.17 ID:E0ZZJKv90 (+30,+30,-29)
    × 賢者「勇者には話しをした事がある。悪いが付き合ってもらうぞ」

    〇 賢者「勇者には話しをしたい事がある。悪いが付き合ってもらうぞ」
    277 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 21:15:45.49 ID:uqVsem0G0 (+19,+29,-14)
    脱字増えてきたぞ
    278 : 忍法帖【Lv= - 2013/04/20(土) 21:16:38.01 ID:+AwARtcHO (-27,-15,-1)
    279 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 21:17:26.93 ID:NFVdGRQA0 (+2,+14,-13)
    しえん
    280 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 21:20:11.21 ID:u5+yh5l30 (+19,+29,-3)
    濡れ場期待
    281 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 21:20:31.69 ID:E0ZZJKv90 (+35,+30,-235)
    ~~夜 賢者の塔 居住階層にて~~

    魔法使い「うーん……」

    僧侶「どうかしましたか?」

    魔法使い「いや、師匠はあいつに、何の用があるんだろうと思ってよ」

    僧侶「そうですね……勇者さまのお父さまのことなど、お聞きしたかったのではないでしょうか?」

    魔法使い「そういえば、あいつの親父と師匠は仲間だったんだよな」

    僧侶「勇者さまのお父さまは、魔王の討伐後にそのお姿を隠されたそうですから」

    魔法使い「なら、色々聞きたい事もあるってもんか……」

    僧侶「それにしても……」

    魔法使い「あん? 今度はそっちで何かあんのか?」

    僧侶「……賢者殿は一体お幾つなのでしょうか?」

    魔法使い「幾つって聞かれてもなぁ……俺が初めて会った時からあんな感じだぜ?」

    僧侶「どうみてもわたしより少し上……そうですね、女戦士さんと同じ位の歳に見えるのですが?」

    戦士「……」

    僧侶「……あの、女戦士さん?」
    282 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 21:22:10.58 ID:+H+4J+GGO (+24,+29,-16)
    ようやくスレタイを理解した希ガス
    283 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 21:24:24.90 ID:E0ZZJKv90 (+35,+30,-244)
    戦士「……」

    僧侶「女戦士さん!」

    戦士「えっ!? も、申し訳ありません。何でしょうか?」

    魔法使い「呆ーっとしてたけど大丈夫かよ?」

    戦士「余りに色んな事があったので、少し頭が混乱しているようで……申し訳ありません」

    僧侶「私も同じです。確かに……色んな事があり過ぎて……」

    魔法使い「そういう時は変に考えないで、早めに寝ちまった方がいいぜ?」

    僧侶「……そうですね。それではお言葉に甘えさせていただきます」

    魔法使い「どの部屋も開いているはずだから、好きな部屋を使ってくれ。寝台と机以外は何にもねぇけどさ」

    僧侶「この塔には、賢者さま以外の方は誰もお住まいではないのですか?」

    魔法使い「昔は俺や俺の兄弟弟子もいたんだけどな」

    僧侶「誰も賢者さまの下に残らないなんて、少し寂しいですね」

    魔法使い「あぁ、そりゃあ違うっての」

    僧侶「えっと、何が違うんですか?」
    284 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 21:25:14.08 ID:xsKwj0pp0 (+28,+30,-20)
    賢者が魔王娘ってことか?
    んなわけねーか
    285 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 21:27:51.71 ID:p0BbFhqA0 (+9,+21,-1)
    予想はよそう
    286 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 21:28:58.64 ID:E0ZZJKv90 (+35,+30,+0)
    魔法使い「師匠はさ、弟子がある程度の段階まで行ったら、塔から追い出して独立させるんだよ」

    僧侶「まあ!? そうなんですか?」

    魔法使い「『実践なくして向上なし』ってさ。師匠の口癖でよ」

    僧侶「確かに。様々な経験は成長に欠かせませんもの」

    魔法使い「机上の論だけじゃ魔法も上達しねぇって、これは師匠自身の経験論なんだと」

    僧侶「魔王討伐の旅で色々なご経験をされたからこそのお言葉ですね」

    戦士「あの、よろしいですか?」

    魔法使い「あん?」

    戦士「先程、あなたは賢者殿に命を救われたと言っていましたが」

    魔法使い「ああ、その事か。別に大した話じゃねぇよ。聞きたいなら話してやるけど」

    戦士「よろしかったら、お願い出来ますか」

    魔法使い「まあ、期待するような面白い話でもねぇよ。俺の住んでた村が魔王軍の襲撃に遭ってよ……」

    魔法使い「大人達が子供だけでもって、何とか俺達を逃がしてくれたんだよ」

    僧侶「勇敢な方々だったんですね……」

    魔法使い「まぁな。でも、大人達は皆殺しだったんだろうな。あれから村の大人に会った事がねぇからさ」
    287 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 21:33:38.01 ID:E0ZZJKv90 (+35,+30,+0)
    魔法使い「んで、何とか逃げたのはいいんだけど、他の街や村も魔王軍によって壊滅状態でさ」

    魔法使い「最初は壊滅した街や村で食べるもんを漁ってたんだけど、それもなくなっちまって……」

    魔法使い「一緒にいた連中も一人減り、二人減りで最後に俺だけが残っちまってな」

    魔法使い「食べるもんを探して、何処をうろついたなんて全く憶えてねぇんだけど……」

    魔法使い「どっかの遺跡で倒れてた俺を、たまたま師匠が見つけて拾ってくれたんだよ」

    僧侶「そんな辛い経験を……」

    魔法使い「だからさ、飢える苦しさは知っているし、最西の街の餓鬼共が同じ目に遭うのを見たくねぇんだよ」

    戦士「それで、あのような盗賊紛いの事を……」

    魔法使い「ああ、人から物を盗るなんて、褒められた事じゃねぇのはわかってるさ。でもよ……」

    魔法使い「あの街にいる腐った連中が、餓鬼共から奪ったものはそんなもんじゃねぇんだよ!」

    魔法使い「商人のおっさんが殺されかかったみてぇに、何の罪もない連中だって命を落としてんだ」

    僧侶「……」

    戦士「……」

    魔法使い「教会に属しているあんたらに言う事じゃねぇんだろうけど……」

    魔法使い「あの街に寄生する屑共から、必ず街を開放するつもりだぜ、俺は」
    288 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 21:33:42.24 ID:guI+U4Vy0 (+16,+26,-1)
    追いついたしえん
    289 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 21:38:38.00 ID:E0ZZJKv90 (+35,+30,-289)
    魔法使い「……俺の話はこれで終わりさ。な? 面白い話でもなかっただろ?」

    戦士「いえ……ありがとうございました。お陰であなたがどういう人かよくわかりました」

    魔法使い「そうかい? ま、どういう人かってのは、あえて聞かないでおくぜ」

    僧侶「あの……」

    魔法使い「何だよ、まだ何かあんのか?」

    僧侶「王都に戻ったら、最西の街の苦境は必ず司教さまのお耳に入れます!」

    僧侶「司教さまなら、その状況を見過ごすなんて考えられません。ですから、早まった行動だけは……」

    魔法使い「……何ていうかさ。損な性格してるよな、あんたは」

    僧侶「えっ?」

    魔法使い「あんたみたいな奴が最西の街に居てくれりゃ、ちょっとは違ったのかもな」

    僧侶「ど、どういう意味ですか?」

    魔法使い「何でもねぇよ。……ま、期待も約束もしねぇけど、出来る限りは待ってやるさ」

    僧侶「本当ですか!」

    魔法使い「期待も約束もしねぇってんだろ。うるせぇからさっさと寝ちまえ」

    僧侶「それでも構いません。お役に立てなくてごめんなさい。あと……ありがとうございます」
    290 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 21:40:03.22 ID:JuctS8db0 (-24,-9,-1)
    支援
    291 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 21:42:10.76 ID:YkEkZ+d/0 (+24,+29,-16)
    チョロインすぎて寝取られそうww
    292 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 21:43:35.48 ID:E0ZZJKv90 (+35,+30,-150)
    ~~夜半 賢者の塔にて~~

    ??「……」 

     カチャッ……キィッ……

    ??「……」

    少年「……」

    ??(……これが最後の機会か?)

    少年「……」

    ??(もう、今しか……今しかない……)

    ??(……本当にいいのか、それで?)

    ??(私は……どうすれば……)

    少年「ふぅ……」

    ??「っ!?」

    少年「いつまでそうやっているつもりですか?」

    ??「……」

    少年「迷いのある人に人殺しなんて出来ませんよ、女戦士さん?」
    293 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 21:45:59.66 ID:JuctS8db0 (+13,+28,-2)
    これは急展開
    294 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 21:48:02.73 ID:E0ZZJKv90 (+35,+30,+0)
    戦士「……やはり、気づいておいででしたか」

    少年「旅に出たばかりの頃、休んでいる私の様子を何度か窺ってましたので、そうだろうとは」

    戦士「……その頃からお気づきでしたら、どうして今まで何も仰らなかったんです?」

    少年「疑念が確信に変わったのも昨日の事ですから」

    戦士「昨日? そうだったんですか?」

    少年「えぇ。最西の街で一騒動起こした後に、あなたの様子を見て確信しました」

    戦士「私の様子、ですか?」

    少年「あなたは私に言いましたよね。弟さんが教会で世話になっていると」

    戦士「確かに……でも、それだけでどうして?」

    少年「教会相手に揉め事を起こしたというのに、弟さんの事を心配されている様子がまるでない」

    戦士「あっ……」

    少年「普通に考えれば、教会が無体な事などする訳がない。だが、一つ間違えれば私達は背教者です」

    少年「その背教者の家族を、教会が放っておく訳がありませんよね?」

    戦士「それは……」

    少年「弟さんの心配をする必要がないのは、教会でも相当に力のある人に庇護を受けているから。違いますか?」
    295 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 21:53:24.87 ID:mxRDNkZ50 (-8,+6,-2)
    しえ
    296 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 21:53:41.12 ID:E0ZZJKv90 (+33,+30,+0)
    戦士「……」

    少年「だんまりですか? なら、勝手に話を続けさせていただきます」

    少年「後ろ盾を持つあなたは、教会に歯向かうような危うい真似をしても、弟さんを心配する必要がなかった」

    戦士「……仰る通りです」

    少年「その人ですか? 私を殺すように命じたのは」

    戦士「……申し上げられません」

    少年「まあ、聞かなくとも、誰が命じたのか想像出来ますけどね。でも理由ぐらいは教えてくれてもいいでしょう?」

    戦士「……」

    少年「それもだんまりですか。頑固な方ですね」

    戦士「……私をどうされるおつもりです? 無理矢理にでも口を割らせますか?」

    少年「何を馬鹿な事を……。話す気も殺す気もないなら、特に用はありません。早く部屋から出て行ってください」

    戦士「えっ?」

    少年「聞こえなかったんですか? 私は休みたいから部屋を出て行って欲しいと言ったんです」

    戦士「ど、どうして!?」

    少年「どうしてもこうしてもありません。私は休みたいからと言ったはずですが?」
    297 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 21:58:02.40 ID:E0ZZJKv90 (+35,+30,+0)
    戦士「あ、あなたを殺そうとした私を放っておくのですか?」

    少年「今のあなたに私は殺せない。それに話をする気もないのでしょう? なら、何の問題も用もない」

    戦士「くっ……は、ははっ……」

    少年「……何もおかしな事は言っていないつもりですが?」

    戦士「いえ、申し訳ありません。私などが勇者殿をどうにか出来る訳がない。そう思ったらつい」

    少年「そんな事はないでしょう。あなただって……」

    戦士「やめましょう。確か以前にも同じ遣り取りをしたはずです」

    少年「そういえば、そんな事もありましたね……」

    戦士「あなたが……勇者の血が邪魔なんだそうです」

    少年「私の血が?」

    戦士「はい。戦乱のない世界に勇者の血は不要、いらぬ諍いの種となる。そのように仰られていました」

    少年「そんな理由で……くだらない」

    戦士「私が勇者殿にお話し出来るのはここまでです。申し訳ありません」

    少年「構わないと言ったで……ああ、そうそう。あともう一つだけ」

    戦士「お答え出来るかはわかりかねますが、それでも良いのでしたら」
    298 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 21:59:35.39 ID:YS7nQrZ/0 (-8,+6,-2)
    しえ
    299 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 22:03:50.16 ID:gd0oUJNx0 (+28,+30,-19)
    そこまで右京さんに似せなくていいからww
    300 : 以下、名無しにか - 2013/04/20(土) 22:04:10.63 ID:E0ZZJKv90 (+33,+30,-311)
    少年「これは質問というより確認です。女僧侶さん、彼女は関係ありませんよね?」

    戦士「はい。彼女は全くの無関係です。それは亡き我が父の名に誓っても」

    少年「確認と言ったでしょう。そこまでする必要はありません」

    戦士「だとしてもです。ですから、彼女にこの件は……」

    少年「それこそ必要のない事です。彼女に話をする意味がありません」

    戦士「……ありがとうございます、勇者殿」

    少年「礼を言われる筋合いはありません」

    戦士「それでも……彼女の苦しむ顔は見たくありせん。ありがとうございます」

    少年「それで、あなたはこれからどうするおつもりです?」

    戦士「このまま逃げても、私には行く当てもありません。それに弟を見捨てては……」

    少年「ああ、弟さんといえば……病気の原因、わかるかもしれませんよ」

    戦士「ほ、本当ですか!?」

    少年「では、確認しに行きましょうか」

    戦士「確認しに行くって……」

    戦士「えっ!? こ、これは……転移魔法!?」ヒュン
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