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元スレ末原「姫松高校入学したったwwwwww」

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末原(いよいよ今日から新しい生活が始まる……!)
末原(今まではひとりぼっちで空気みたいな学校生活やったけど)
末原(今度こそきっと青春をエンジョイするんや……!!)
末原(眼鏡もおしゃれなんに変えたし、髪もめっちゃ梳いたし、小粋なギャグも考えてきたし)
末原(目指すはネット麻雀部……!)
――ばんは――今日のニュースです
プロ麻雀――――リーグ――――――決定戦が――――
史上初の九冠を達成した恵比寿ゼータビア、小鍛治健夜選手の優勝パレードが地元渋谷区の――
――――――――――――喜びの声を伝え―――――
―――――グランドマスターの称号を――――――――――――――――
なお、敗れた――――選手は引退を表明
――――――――の現役生活に終止符を――――
―――――に敗れて引退した選手は――――――――
壊し屋と異名を―――――――――――――――協会は懸念をあらわに――――
――――――――
――――
――
プチッ
担任「みんな、入学おめでとう! ようこそ姫松高校へ」
担任「とりあえず背の順で席に座ろかー」
末原(うわ、背の順やと私また一番前で他の子と絡みにくなるやん)
??「えーーー、こういうのって普通は出席番号順なのよー」
??「ぶはは。諦めて一番前行けって」
??「ヒロポンかてどうせすぐ後ろの2番目なのよー!」プンスカ
担任「あんたらちっちゃいなぁ。えーと、確か麻雀部特待生の愛宕さんと真瀬さんやね」
生徒A「えー、そんな凄い人がクラスメイトなん?」ヒソヒソ
生徒B「うちの麻雀部ってめっちゃ強いんやろ? それの特待生ってごっついんちゃうの?」ヒソヒソ
生徒C「ていうか愛宕って名前なんか聞いたことない?」ヒソヒソ
愛宕「!?」
末原「!!??(目が合った!)」
愛宕「由子、仲間や! 仲間がおるでっ」
末原「え?……え?」
真瀬「素敵なのよー。名前なんて言うん? 私は真瀬由子よー」
末原「す、すすす末原恭子ですすすっ」
愛宕「うちは愛宕洋榎や。末原ちゃん、由子と背中合わせて! 背ぇ比べてみ」
末原「あ、え、あああ、あ、え?」
真瀬「失礼するのよー」ピト
真瀬「遂に最前列を譲るときが来たのよー!」
愛宕「ぶはははは! 残念でした! 由子は相変わらず先鋒で固定やな」
真瀬「キーーーーッ、ちゃんとシニヨンの分も測るのよーっ!」
愛宕「無駄無駄。てかお団子無理やり上げたらシルエットがミッキーマ○スみたいなるで」
真瀬「夢の国なんて糞食らえなのよー!」
真瀬「時代はウッディーなのよっ。ウッディーなら伏字も必要ないのよー」プンスカ
末原「え、あ、あ、え、えーと……」
担任「おチビちゃんトリオの完成やね。ほなみんな席に座ってー。最初のホームルームやでー」
愛宕「誰がおチビちゃんやーーーー!!」
真瀬「放課後なのよー」
愛宕「末原ちゃん、メガネかわいいなそれ。うちの妹もそんなメガネしとるねん」
末原「あ……う……」
愛宕「これからはメガ原ちゃんと呼ばせてもらおう。メガ丼眼鏡盛りや!」
生徒一同(メゲ原……?)(難聴)
真瀬「ひねりがないのよー。私がもっとええの考えたるでー。んーと、んーと……」
真瀬「すえはら……すえはら……うん、末原ちゃんは今日から"八っちゃん"なのよー」
生徒一同(なんじゃそら……)ガビーン
愛宕「で、出たーwww自分でつけたあだ名を誰にも使ってもらえへん奴wwwww」
真瀬「末広がりの"八"ちゃん。縁起がいいのよー」
愛宕「メガ原のがかっこええっちゅうねん!」
真瀬「クソ兎球団のギョロ目監督がメガってるみたいでイヤなのよー! 八っちゃんで決まりよー」
生徒一同(かわいそうな末原さん……)
末原「えと……その……」
真瀬「これから一緒に妖精さんトリオとしてがんばっていくのよー」
愛宕「おチビちゃんトリオが脳内フィルターかけられて自称"妖精さんトリオ"か……」
末原「あぅ……」
真瀬「八っちゃん、顔真っ赤やけど大丈夫?」
末原「は、はい……!」
末原(な、なんかいきなり友達できたみたいで嬉しい……感激っ!)
末原(あだ名で呼んでもらえるとかめっちゃ青春っぽい!)
生徒A「あ、あの……愛宕さん?」オズオズ
生徒B「もしかしてあの、"スーパーマジャンメオトーズ"の愛宕さんなん……?」
生徒C「一世を風靡した、あの夫婦麻雀プロの……!」
真瀬「その通りなのよー」
生徒一同「きゃあああ、すごーーーーい!!」
愛宕「その呼び方やめい! おとんがなんかオーバーオールの配管工っぽく聞こえてイヤやねん!」
真瀬「明らかにその路線で売り出してたのよー」
生徒A「あんな有名人の娘さんとクラスメイトになれるとか、めっちゃついてるー」
生徒B「ていうか愛宕さん、やっぱなんか大物のオーラ出てるわ……」
生徒C「(こいつ調子ええな……)」
キャーキャー
末原(うわ、人だかりで取り囲まれてしもた……)
末原(ていうか愛宕さんそんなに凄い人やったんや)
末原(でも私は完全に忘れ去られてるというか、蚊帳の外)
末原(いつものことやな……)ショボーン
愛宕「はいはーい! ごめんな、うちら今から部活行かなあかんねん」
生徒一同「キャーーーーー! 親子揃って麻雀なんやね。カッコええわぁ」
愛宕「また明日お話しよなー」
生徒一同「部活がんばってねー」フリフリ
愛宕「ほな妖精さんトリオ、でっぱつやーー」
真瀬「行ってくるのよー」
末原(あれ……私も?)ズルズル
愛宕「ごめんなメガ原ちゃん、囲まれて動けんかったやろ」
真瀬「よくあることなのよー」
末原「ううんっ、全然!」(気ぃ使って連れ出してくれたんや……)ジーン
愛宕「でもなんかちょっと気に入ってしもたな、妖精さんトリオ」
真瀬「私の命名よー」フフン
愛宕「メガ原ちゃん、部活とか決めとるん? うちらは麻雀部なんやけど、よかったら一緒に来おへん?」
真瀬「部活でもトリオとか素敵なのよー」
末原「えええええええ!!?? 姫松麻雀部って超強豪の!?」
愛宕「ルール知っとる? 経験なくても頭良さそうやからすぐ覚えれるやろうけど」
末原「うん、ルールはわかるけど……」
真瀬「じゃあ問題ないのよー」
末原「じ、実は私……麻雀部やなくて"ネット麻雀部"に入ろう思ってて……」
愛宕「ええええ、やること一緒やし普通の麻雀部でええやん!」
末原「無理無理無理無理! 私、牌も触ったことないしネット麻雀しかやったことないんよ……」
真瀬「女は度胸! なんでもためしてみるものなのよー」
末原(ていうか昨日までひとりの友達もおらんかったのに、今日になっていっぱいありすぎー!)プシュー
愛宕「おろ? なんかショートしてしもたな」
真瀬「……あんまり無理言うてもあかんかもね。また今度の機会にするのよー」
愛宕「うーん、しゃあないな。んじゃまあ、メガ原ちゃんまた明日なー」
真瀬「バイバイよー。バイバイよー」 ←ピー助っぽく
真瀬「ヒロポン残念だったのねー」
愛宕「な、なにがいな……」
真瀬「絹ちゃんにちょっと似てたのよー」ニヤニヤ
愛宕「ちゃうわ! 全然関係あらへんしっ!!」アセアセ
末原「うぅ、せっかく誘ってくれたのに悪いことしてしもたな……」
末原「でもさすがに私みたいな素人が全国常連トップレベルの姫松麻雀部ってのは無理あるわ」
末原「――でもでもでも、姫松はそれだけじゃ終わらん一味違う学校」
末原「なんと全国でも珍しい、ネット麻雀専用のネト麻部があるんやでっ」
末原「公式大会なんかはないけど、企業サイト主催のオープントーナメントでこないだ優勝しとったし」
末原「ネト麻やったらずっと打ってたし私でもなんとかなるはず……!」
末原「もうちょっと心の準備してからや思てたけど、こういうのは勢いや」
末原「今日はぜったいツイとるし、このままネト麻部直行やでっ」
末原「た、たたたたっ、たのもーーーーーーーーーーーーーー!!!」ガラララ
末原「にゅ、入部したいんですけど……!」
部長「末原恭子さん、やね……確認するけど、ほんまに入部したいん? 麻雀部と間違えてへんのやね?」
末原「は、はい! 私ネット麻雀が趣味で……もしかして入部試験とかあります?」
部長「とくにそういうのはないけど」
末原「こないだの咲ポ杯トーナメントで優勝してるの見て、憧れてたんです……!」
部長「ああ、あれな……。お遊びみたいなもんやけど」ボソ
末原「それで私も、オフラインの雀友とかほしくて……!」
部長「…………」
末原「それにしても今日はお休みやったんですか? パソコンいっぱいあるのに全然人おらんみたいですけど」
部長「んー……まあ、開店休業というか、新入部員増えたら部室で打つ子も増えるかな」
末原「???」
部長「慣れてきた部員はわざわざ部室来んと、各々好きな場所からモバイルで打ちよるんよ」
末原「な、なるほど……!」
部長「それに、なにかを決めて活動しとるわけちゃうしな」
部長「一応、ネト麻部専用の学内サーバーはあるけど、普通の企業サイトで打つ子も多いんよ」
末原「そうやったんですか」
部長「もっかい確認するけど、末原さん、ほんまにネト麻部に入りたいんやね?」
末原「は、はい。そうしたいです」
部長「うん……わかった。どっちみち姫松は4月いっぱいどの部も仮入部期間やから」
部長「部活動時間中は私だいたいここおると思うから、遠慮無く来てな」
末原「はい、よろしくお願いします!」
※ネット麻雀部部長は清楚ロングの薄幸そうなお姉さんみたいなイメージ
末原「部長、牌譜のプリントアウトってこのアプリでええんですか?」
部長「うんうん。プリンタの紙はこの棚にあるから無くなったら補充してな」
部長「末原さん、今回は安上がりに徹して逃げる練習しよか」
末原「はい!」
部長「ネト麻は手軽にルール変更できるから、いろんなルールで打っていこうな」
末原「えーと……」
部長「うふふ……今度はなしなしの卓に行こか」
末原「!?」
部長「大好きなクイタンは封印やで」クスッ
末原「ずがーん!」
末原「部長! やっぱり麻雀って楽しいですよね!」
末原「どんなに強くても負ける時は負ける。逆にどんなに弱くても勝つ時は勝つ」
末原「四角い宇宙に無限の可能性が転がってるわけですよね!?」
部長「うん……そうやね……」
末原「うーーん、楽しいなーーー」ニコニコ
末原「私、ピンフも好きやけど、やっぱり一番はタンヤオなんです!」
末原「2~8で構成される牌姿の美しさ、汚れ(ヤオ九)のない乙女のごとく!」
末原「喰ってもよし、面前でもよし。こんな万能な役ってないですよー」
部長「あはは……末原さんのタンヤオ好きには恐れ入るわ」アセ
末原(今日も部活楽しみやなー。毎日がこんなに楽しいなんてはじめてや……)ポワーン
愛宕「お~ぅメガ原ちゃん、元気しとるー?」
末原「愛宕さん真瀬さん、おはよう」
真瀬「おはようなのよー」
愛宕「そういえば、ネト麻部に入ったんやっけ?」
愛宕「う、うん……」
真瀬「もったいないのねー。八っちゃんと一緒に打ちたかったのよー」
末原「あ、あはは……」
愛宕「そういえば主将が今度ネト麻部で調整どうのこうの言うてなかったっけ」
真瀬「来週なのよー」
愛宕「そんときもしかしたら一緒に打てるかもな!」
真瀬「楽しみなのよー」
末原(合同練習でもするんかな?)
末原「失礼しまーす……って、あれ?」
??「おお? どなたさん?」
末原「私、ネト麻部員の末原恭子です」
??「新人さん? えっらい早い都落ちやな。まだ二週間やでー」
末原「???」
??「はじめまして。ネト麻部副部長の茂武(モブ)です」
末原「あ、すいません失礼しました」
副部長「うーん、線細そうやしこの早さでもしゃあないか」
副部長「ま、ここは厳しい規律も競争もない、負け犬にとっては天国みたいなところや。まったり行こなー」
末原(?……負け……なに?)
副部長「えーと、LANカードは……あったあった。ほな部長によろしくー」タッタカター
末原「……行ってしもた」
部長「あ、末原さんもう来てたんや。遅なってごめんな」
末原「部長、おはようございます」
末原「あの……さっき副部長さんが来てました。なんかカードみたいなん持って帰って――」
部長「…………そう」
末原(さっきのは一体なんやったんやろう。都落ちとか負け犬とか……)
末原(なんか聞きづらいワードやしなぁ)
末原(そういえば部長以外の部員さんってはじめて見たかも。これぐらいやったら聞いてええかな)
末原「あの、部長……他の部員さんってみんなモバイルなんですか? 全然見ませんよね」
末原「さっきはじめて副部長さんに会うて、失礼な対応してしもうて……」
部長「……実際はほとんどみんな幽霊部員やねん。モバイルで連絡とってる人もちょっとしかおらへん」
末原「あぁ……やっぱり……」
部長「登録人数だけは無駄に多いねんけどな」
末原「じゃあ、新入部員の勧誘とかやってみませんか?私に出来ることやったら――」
部長「ああ、わざわざ勧誘せんでも、もうすぐしたら一杯くるから」
末原「え?」
部長「毎年恒例のことやから。5月すぎたら集まり出すねん。そやから気ぃ使わんでええんよ」
末原「……はあ、それならよかったです」
末原(部活動なんか初めてやから勝手がようわからんけど、そういうもんなんかな?)
部長「末原さん、これ売店で新発売のジュース」
末原「あ、いただきます! 嬉しいですっ!」
部長「うふふ……どういたしましてやで」ニッコリ
末原(ネト麻部の活動はずっと部長とふたりきりやけど……)
末原(全然問題ないなぁ。部長やさしいし、めっちゃええ人やし……)
末原(私も後輩できたらこんな風にしたげたい……)
末原(……ちょっと勇気出せばこんな素晴らしい日々が待ってくれとったんやなぁ)
末原(私も部長になにかお返しがしたいなぁ……)
ガララララッ
愛宕「ごめんやしておくれやしてごめんやっしゃー」
真瀬「お邪魔しますのよー」
部員A「あ、部長ちゃんおったー。久しぶりー」
部長「あっ……うん、久しぶり」
末原「愛宕さん? 真瀬さん?(と、麻雀部の人たち?)」
愛宕「おーぅ、メガ原ちゃん元気にやっとるみたいやなぁ」
主将「部長、ごめんやけど調整で使わせてもらう」
部長「うん…………わかった」
末原(そういえば先週愛宕さんが麻雀部と合同練習みたいなこと言うてたな)
部長「ほな末原さん、出るで」
末原「え? 出るって部室を……? 合同練習とちゃうんですか?」
部長「違うねん。後で説明するからとりあえず出よ――」
主将「合同練習か! それ名案や!」
主将「部長、どない? たまには一緒に打たへん?」
部長「な、なにを言うてるの。そんなん許されるわけないやん……」
末原(……部長!?)
主将「堅いこと言わんと、たまにはええやないのー」
部員A「そうやで部長ちゃん。いっしょに楽しもーよ」
部長「私らにそんな資格ないん、あんたらが一番わかってるやろ。末原さん、行くで……」
末原「え……? あ、えと……」
※麻雀部主将は全国個人戦決勝っぽい舞台で照ガイト憩と卓を囲むクールビューティなポニーテール子(1巻99ページ左の子)みたいなイメージ(この人この時間軸では2年っぽいけど)
主将「そういえばその子、はじめて見る顔やな」
末原「あ、私ネト麻部員の末原恭子言います。はじめまして、麻雀部主将さん……?」
末原(姫松麻雀部の主将って、ものすごいレベルの人なんよね?)
主将「私が知らん子がネト麻部におるとはなー」
末原「?? 私は麻雀部じゃなくてネト麻部やから、知らんでも当然かと――」
主将「いやいやいや。私はネト麻部員37人の顔と名前、ぜーんぶ覚えとるで」
末原「?? すごい記憶力なんですね……?」
主将「あんたぐらいやな、私の知らんネト麻部員」
主将「麻雀部には来たことないねんな?」
末原「はい、その通りです」
末原(さっきからなんやの、この人……?)ムカッ
部長「末原さん、ええからもう行くよ」
末原「あの、部長! なんでいきなり部室を占領されて私らは追い出されなあかんのですか?」
末原「ちょっと納得いかへんっていうか……」
部長「あとでちゃんと説明するから――」
主将「それはな、新人ちゃん。ネト麻部は麻雀部に絶対服従で逆らわれへんからや」
末原「は……!?」
主将「ネト麻部は麻雀部を立てることで部の存続が認められとる、いわば下部組織みたいなもんや」
主将「実際、ネト麻部員は全員が元麻雀部。誰も私らに逆らおうとはせえへんよ」
末原「な、なな……」
主将「まあ別に普段からこき使っとるわけやなくて、ネット麻雀で調整したい時とかに部室を明け渡してもろとるぐらいやけどな」
末原「そんな……わけわかんないんですけど!」
主将「不服ある?」
末原「と、当然です! なんでそんな奴隷みたいな扱いされなあかんのですか!?」
部員A「おおぉぉ、まさかうちの主将に噛み付く人がおるとは……」ヒソヒソ
部員B「これは貴重やでぇ」
部員C「普通じゃ考えられへんもんな」
部員D「愛宕と、この新人さんぐらいか。なんか初々しくてええわぁ」
真瀬「八っちゃん、怒ると怖いタイプなのねー」
部長「主将、ごめんなさい! この子には後でよう言うて聞かせとくから……」
末原「部長、なんでそんな卑屈なるんですか!」
末原「ここは部長が毎日一生懸命手入れしてる大切な場所ですよ……!」
末原「そんな簡単に明け渡しなんかできませんよ!!」
主将「ククク……そんな大事な場所なんやったら、余計、無茶苦茶にしたなるなぁ……」
部員一同(主将っ!?)
主将「愛宕なんかポテチ食べた手でそのままマウス握って、油ベトベトなるやろなぁ……」
末原「…………愛宕さん?」ギロッ
愛宕「ひぃぃぃぃ、もうしません!って、なんでバレとるんや!?」
真瀬「誰でも想像つく光景なのよー」
主将「さーて、どうする新人ちゃん。悪の麻雀部がかよわいネト麻部をめちゃくちゃにしてまうでぇ……」
末原「………………させへん」ゴゴゴ
主将「どうさせへんの? ひとりで通せんぼでもするんか?」
末原「……………………」
主将「世の中は弱肉強食。実力主義の社会なんや」
主将「文句なしの実績を積み上げとる麻雀部には学校側もたいていの無茶は通すで」
主将「その麻雀部様が部室を差し出せ言うとるんや」
主将「弱小ネト麻部ごときが逆らうんは身の程知らずってもんやで」フフン
部員一同(主将たのしそうやなぁ……)
末原「ネト麻部は弱小ちゃいます! オープン大会の優勝とか、ちゃんと実績あります!」
部長「やめて末原さん! あんなん、麻雀部に比べたら――」
主将「ほほーう。実力でも負けてへんって言うねんな?」
末原「そ、そそそ、そうです!(もうヤケっぱちや!)」
部長「末原さん……」
主将「ほなまあ、白黒つけるしかあらへんなぁ……実力で」
末原「の、望むところです!」
主将「愛宕! 真瀬! 相手したり」
真瀬「ちょっとかわいそうなのよー」
愛宕「それってネト麻で? 相手するんはええけど、あんな"柄合わせ"で勝負したって言えるんかいな……」
末原「愛宕さん!! ネト麻のことバカにしてんの!!??」
愛宕「いやいやっ、そういう意味やなくて――」
愛宕「いつもと勝手が違って本気になられへんっちゅうか、命を載せられへんっていうか……」
末原「(??)……ほなええよ。自動卓で勝負しよ」
主将「おぉ? こっちの土俵に上がってくれるんや?」
末原「の、望むところです!」
主将(ええなぁ、この子。ますます気に入ったわ……)
主将「そしたら、部長&新人ちゃんvs愛宕&真瀬のコンビ対決で行こか。ルールは――」
部長「ちょ、ちょっと待ってよ! 私は雀卓なんかつかれへんのよ!?」
主将「おいおい部長……こんなときぐらい野暮は言いっこ無しやで。久々にええやないか」
部長「ネト麻部員は雀牌に触れてはいけない――――これが私らの掟や!」
末原(!!!!????)プッチーン
主将「そんで一年坊ひとりにやらせるつもりかいな。重症やな、コレ……」
部長「そもそも勝負なんておかしいねん……! 末原さん、あんた麻雀牌に触れたことすらないのに……」
部員一同(マジで……!?)
末原「部長、私やります! 一対三でかまいません!」メラメラメラ
部員一同(この子、大物やな……)
愛宕「その意気やよし! 気に入ったでメガ原ちゃん。手加減は無しや!」
真瀬「すごい根性なのよー」
部長「末原さん……」
――麻雀部
末原(これが……本物の雀卓…………四角い宇宙……!)
主将「よっこらセック――」
愛宕「主将も入んの!?」
末原(……!!)
真瀬「大人げなさすぎるのよー」
主将「勘違いすな。ほんまに一対三でやるわけやない」
主将「あんたらふたりは狙い打ちの練習。トップが飛び終了を狙っとると想定して打つ」
主将「逆に私はラスを守る練習。3位がトップの飛び狙いを阻止する立場ってわけやな」
主将「もちろんターゲットは新人ちゃんやで」
主将「新人ちゃんは、飛ばんと半荘終了したら勝ちや」
末原「は……!? 私、ネト麻でも箱割れなんかしたことないんですけど……!」
末原「……………………」
末原「……まあでも、有利なんにこしたことはないんで、それでお願いします」
主将「おぉ、意外と冷静やな~(ほんまええわこの子)」
愛宕「有利、なぁ……」
真瀬「……ナメられたものなのよーーー!」
部員一同(有利どころか、愛宕にやらせる時点で卑怯っぽい気がするわ……)
部員一同(……入部たった3週間で名門姫松のレギュラーが確約された天才、愛宕洋榎に……!)
トン チャッ カチッ チャッ タン カチャ…………
末原(これが……ほんまの"麻雀"……)
末原(牌って結構重みあるねんな。確か15グラムぐらいやっけ)
末原(牌を自分の手で整理して、反時計回りにツモっていく……)
末原(順番間違えんようにせんと……)
主将「ポン」
末原(!? そ、そうや……鳴く時は自分で言わんとあかんのや……)
主将「新人ちゃん、ツモってな」
末原(!!?? 上家の主将さんがポンしたことですぐ私のツモ番に……!)
末原「す、すいません。すぐ切ります」
末原(お、落ち着け! 落ち着くんや! 呑まれたらあか――)タンッ
愛宕「メガ原ちゃん残念! それ当たりやでー」
末原「ひぅっ」
主将「ちゃんとロンって言わんかい。何回言うても治らんなぁ」
末原(あ、あかん……地に足が着いてへん私……!)
末原(慣れてなくても、なんでもええから自分のペースにするんや!)
末原(得意のタンヤオ……無理鳴きでもええからとにかく一回――)
末原「(出た!?)……ぽ、ポンっ。それポンです!」
末原(えーと、えーと……鳴いたわけやからまず切って、それで納めて……)
末原(そうや! ポンしたからツモ順が変わるんや。間が飛んで私からのリスタートになるから……)
主将「あー、あー……」
末原(??)
主将「うん、最初やからサービス。新人ちゃん、それツモったら多牌なってまうで」
末原「え……ええぇっ!?」
主将「鳴いた時の手順がおかしかったな。まず鳴いた牌をきっちり晒して、それから捨てたらええ」
主将「ポンした牌は鳴いた相手に合わせて横に倒してな」
末原「す、すすすすすす、すいません!!」
主将「焦らんと落ち着いてやったらええよ。ちゃんと私ら待っとくから」
真瀬「心配せんでも大丈夫よー」
末原「はい……」
愛宕「……再開してOK? ほな悪いなメガ原ちゃん、どっちみちそれロンやねん」タハー
末原「ぐ…………」プルプル
――結局そのままパニック状態から脱せず、南2局愛宕洋榎の親マン直撃で飛び終了――
末原(ううぅ……結局私なんにもできんまま飛ばされてしもた……)
愛宕「どないメガ原ちゃん! うち強いやろー? さすがやろー?」
末原(こんなあっさりと負けてしもて……)グス
主将「さてさて、肩慣らしはこんなとこかな。ほな次いこかー」
末原「(次っ!?) は、はい……!」
――二回戦――
末原(落ち着くんや末原恭子! とにかく落ち着かなあかん!)
部長「末原さん……」
末原(部長……!? そ、そうや。ネト麻部での日々を思い出せ!!)
末原(私のホームはネット麻雀。今ここで私はネト麻をやっとると仮定するんや!)
末原(俯瞰で自分を見ろ。卓の流れはさっきで掴めた。後は手が勝手に動いてくれるはず)
末原(ここは画面の中。私は今ネト麻をしとるんや。注視するは手牌と河と王牌のみ!)
末原(すぅ……………………)
主将(……お? 落ち着いてきたな。もう半荘ぐらいかかるか思たけど)
末原(…………よし、もう大丈夫。ちゃんと牌が見えてきた。自分の麻雀ができる)
末原(とにかく一回和了ろう。ノミ手でええから和了るんや)
真瀬「それロンよー。3900ね、八っちゃん」
末原「は、はい……」
愛宕「ロン…………メガ原ちゃん、あんた背中が煤けと――」
主将「ええからさっさと点数言わんかい」
末原(ぐっ……もう落ち着きは取り戻したのに、やっぱり歯が立たへん)
末原(それにしても、こんなにリーチが出えへん麻雀なんか初めてや)
末原(私を狙い打つからには当然なんやろうけど、それにしても……)
末原(ネト麻はほとんど即リーやし、リーチしてへん人相手に降りるとか今までやったことない……)
末原(相手をよく見たらなんか情報が――?)
三人「……………………」
末原(!? み、見られてる……? 私の挙動を読み込んどる……?)
末原(普段きゃんきゃんな真瀬さんまでこんな迫力が)
末原(もしかして、私の打ち筋そのものを読もうとしてんの……!?)
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