元スレ登山家「さ、登山の始まりだ!」ハーピー「あら?」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ☆
52 = 1 :
登山家「でも同時に、むやみやたらに山を登ってはならないという気持ちもある」
登山家「山には元々住んでいる生き物がいるワケだし」
登山家「登山によって、山の環境が損なわれるようなことがあっては
本末転倒だからね」
ハーピー「だからさっき、自分は登山家失格だなんていったのね」
登山家「うん……」
ハーピー「安心してよ、あなたほど山を楽しそうに登る人は見たことないわ。
きっと山も嬉しいハズよ」
登山家「あ、ありがとう!」
53 :
産卵シーンになったら呼んでくれ
54 = 1 :
登山家「──ってあれ?」
ハーピー「なに?」
登山家「もしかしてハーピーさん、俺が登山してるところを見てたの?」
ハーピー「あ」
ハーピー「え、いや、あの……」
登山家「やっぱり! 木の実の近くに落ちてた羽根はあなたのだったんだ!」
登山家「もしかして落石を吹き飛ばしてくれたり、
羽ばたき音で森の抜け方を教えてくれたのもハーピーさん!?」
ハーピー「あ、あの、えぇと……」
55 = 26 :
羽隠せば人間ってことは、別に腕があるのか
56 = 1 :
ハーピー「そうよ!」
ハーピー「なにか文句ある!?」
登山家「文句なんかないよ」
登山家「ハーピーさんがいなきゃ、俺は遭難──それどころか死んでたかもしれない。
本当にありがとう」
登山家「あなたは命の恩人だ」
ハーピー「もう照れ臭いな。礼なんていらないって」
登山家「あ」
登山家「これまでこの山の登山者で死者が出てないのも……
もしかして──」
ハーピー「そうよ、私が力尽きた人間を麓まで運んであげてたのよ。
この山で死なれても迷惑だしね!」
57 = 1 :
登山家「ハーピーさん」
ハーピー「なによ……」
登山家「あなたは本当に美しくて……本当に優しい方だ」
ハーピー「え……っ」
ハーピー「お、お、おだててもなにも出ないわよ、ふんっ!」
登山家「す、すみません」
(しまった、お世辞だと思われたか)
58 = 24 :
いいよー
59 = 1 :
登山家「えぇと、夢の話に戻るけど、ハーピーさんはなにか夢とかあるの?」
ハーピー「わ、私は……」
ハーピー(私の夢──)
ハーピー「…………」
ハーピー「あるワケないでしょ、夢なんて!
人間なんかと一緒にしないでちょうだい!」
ハーピー「魔物はね、日々生きていくのが大変なんだから!
夢を持つヒマなんかないのよ!」
登山家「す、すみません」
60 = 1 :
登山家「だいぶ夜も更けてきたね」
登山家「そろそろ就寝にしようか」
ハーピー「そうね」
登山家「夜は冷えるから寝袋で……」ガサゴソ
ハーピー「あら、そんなのよりもっといい布団があるわよ」
登山家「えっ、どこに?」
ハーピー「私の羽根よ。これに包まれて眠ると、すっごくあったかいわよ」ファサ…
登山家「羽根!? それってつまり、俺とあなたが添い寝するってこと……!?」
ハーピー「そりゃそうよ、まさか羽根をちぎるわけにもいかないし」
登山家「いや、さすがにそれはマズイんじゃ──」
ハーピー「え、なんで?
体くっつけてあっため合うなんて、この山ではみんなやってるわよ」
61 = 1 :
大きな翼に登山家とハーピーの体が包まれる。
ハーピー「じゃ、おやすみ」ファサッ
登山家「おやすみなさい……」
(これってハーピーさんに抱き締められてるようなもんだよな)
ハーピー「すぅ……」
登山家(ホントにあったかい……)
登山家(それに顔が近い……)
登山家(しゃべってる時はあまり意識してなかったけど、
ホント美人だなこの人)
登山家(興奮しちゃって……ね、眠れない……)
62 :
うむ
63 = 1 :
翌朝──
ハーピー「おはよう、よく眠れた?」
登山家(ほとんど眠れてない……)クラッ
「バ、バッチリ」
ハーピー「よかった。寝袋で寝てた方が具合がよかったなんてことになったら
あなたに悪いからね」
ハーピー「ところであなたはどのくらいここにいられるの?」
登山家「そうだなぁ、いつまでもいたいところだけど……
今回はあくまで仕事だし、明日には出発させてもらうよ」
ハーピー「もっとゆっくりしてけばいいのに」
登山家「あんまり遅くなって、失踪者扱いにされてもマズイしね」
64 = 1 :
ハーピー「じゃあせっかくだし、今日はあなたを連れて飛びまわってあげましょうか」
登山家「え?」
ガシッ
ハーピーは男の両肩を足で掴んだ。
登山家「ちょ、ちょっと待って」
ハーピー「さぁ行くわよ」
登山家「え、どこへ?」
ビュオッ!
登山家「うおおあああああっ!!?」
65 = 1 :
ビュオオオオオッ!
ハーピー「人間は飛べないから、こういうのは初体験でしょ」
ビュオオオオオッ!
ハーピー「どう?」
ビュオオオオオッ!
ハーピー(返事がない……?)
登山家「えへ、えへへ……」ピクピク
ハーピー(失神!?)
66 = 24 :
マッハか
67 = 1 :
頂上に戻り──
登山家「おえぇぇっ……!」ビチャビチャ
ハーピー「ごめんなさい、ごめんなさい」ナデナデ
登山家「ご、ごめん……貧弱な体で……。
やっぱり俺は地に足がついてた方がいいようだ」
ハーピー「私が悪かったのよ。ちょっとスピード出し過ぎたみたい。
あれでもまだ最高速度の半分程度だけど」
登山家(あ、あれで半分なのか……)ゲッソリ
68 = 1 :
登山家「ハーピーさん」
登山家「あなたは飛べるのに、この山を出ようと思ったことはないのかい?」
ハーピー「そうねぇ……」
ハーピー「ないこともないけど──」
ハーピー「なにかきっかけがあったら、って感じかな。
でもよほどのことがないと出ないでしょうね」
登山家(まあたしかに……あれだけのスピードで飛べるんなら
わざわざ住処を変える必要もないしな)
69 = 1 :
そして──
ハーピー「じゃ、おやすみ」ファサッ
ハーピー「気分が悪くなったらいってね」
登山家「お、おやすみなさいっ!」
ハーピー「すぅ……」
登山家(二日連続で眠れそうもないなこりゃ……)
70 :
翌朝──
登山家「じゃあそろそろ下山するよ、ハーピーさん」
ハーピー「気をつけてね」
登山家「あ」
(おっと忘れるところだった。この石を置いてこなきゃな)
ハーピー「なに、その石?」
登山家「今回の仕事の内容なんだ。
この石を山頂に置いてきてくれって……変な依頼だろ?」
登山家「特に環境を汚すシロモノでもないし、置いてってもいいかい?」
ハーピー「ふうん……かまわないけど」
登山家「ありがとう」コトッ
71 = 70 :
登山家「じゃあ今度来る時は、ハーピーさんの力なしで登り切ってみせるよ!」
ハーピー「……できるかしらね、あなたに」
登山家「もしできたら──」
ハーピー「できたら?」
登山家「いや……なんでもないよ。できたら話す」
ハーピー「ふうん、まあいいけど」
ハーピー「じゃあまた来てね、絶対よ」
登山家「うんっ、また来るよ!」
72 :
ヒーハーに見えた
73 :
ハーピィって聞くとハーピィレディしか思い浮かばない
74 = 70 :
見送った後──
ハーピー(私の夢は──)
ハーピー(最初にこの山を頂上まで登った男性と、ずっと一緒に暮らすこと)
ハーピー(私の夢を叶えようとすれば、おそらく力ずくでできる)
ハーピー(でもそれは、あなたの夢が叶わなくなることも意味する……)
ハーピー(だから私の夢は諦めるわ。
あなたは頑張って、自分の夢を叶えてね……)
75 = 70 :
こうして登山家は下山を果たし、依頼人のもとに向かった。
魔法使い「おおっ、ご苦労様。よくぞ戻ってきてくれたね。
例の石は山頂に置いてきてくれたかい?」
登山家「えぇ、ちゃんと置いてきました」
魔法使い「山がなによりも好きだと豪語するだけのことはある。さすがだ」
魔法使い「今までも30人ほどに依頼をしたが、ようやく達成してもらうことができた」
魔法使い「これは約束の報酬だ。受け取ってくれたまえ」ジャラッ
登山家「ありがとうございます」
77 = 70 :
魔法使い「ところで、頂上にウワサ通りハーピーはいたかい?」
登山家「はい、とても美しく優しい女性でした」
魔法使い「そうか、いてくれたか……。
しかもウワサの通り美しい女性、ときた。
これで君に払った報酬も無駄ではなくなる……クックック」
登山家「あの……」
魔法使い「なんだい?」
登山家「あの石はいったい……?」
魔法使い「…………」
魔法使い「君に話す必要はないが──」
魔法使い「……まあいいだろう。
あの山を踏破した君にも、私の目的を知る権利くらいはあるだろう」
78 :
転移魔法のマーカーか何かか
79 :
知らん山に暗くなるまで歩いたりたった2日程度の食料も用意してなかったり
とても登山家とは思えんけどなあ
80 :
>>79
食糧は落石んときにおっことしたんだろ?
81 = 70 :
魔法使い「あれは……移動呪文の受信装置の役割を担うものだ」
登山家「呪文の……受信ですか?」
魔法使い「分かりやすくいうとだね」
魔法使い「あの石が置かれている場所に、
私は一瞬でワープすることができるというわけだ」
魔法使い「君のおかげで、私は労せずしてあの山の頂上へ向かうことができる」
登山家「!」
登山家「ちょ、ちょっと待って下さい、魔法使いさん!
頂上に行ってあなたは何をする気です!?」
魔法使い「美しく、魔力を秘め、さまざまな能力を持つといわれるハーピー。
……ぜひとも私だけのペットにしたい」
登山家「なっ……!」
82 = 79 :
すいませんでした
ちなみに登山できる時間帯は3時から14時くらいまでな
それ以外は危険が危ないぞ
83 = 70 :
登山家「待って下さい! そんなことをしてなんになるんです!?」
魔法使い「ん?」
魔法使い「なぜ人間である君がハーピーをかばう?」
登山家「俺は山頂で、彼女と色々話しました」
登山家「彼女は悪い魔物ではなく、山で静かに暮らしているだけです。
そっとしておいてあげて下さい! お願いしますっ!」
登山家「この報酬はお返ししますから!」
魔法使い「今さらなにをいっている。
君との関係は、金を渡した時点で切れている。
さっさと帰りたまえ」
登山家「ううっ……」
84 = 70 :
魔法使い「私は明日、数名の兵を雇ってあの山の頂上に乗り込むつもりだ」
魔法使い「抵抗しなければ良し。
もし抵抗するようなら──剥製にするというのも悪くない」ニィッ
登山家「…………!」
登山家(ハ、ハーピーさん……)
登山家「さ、させるかぁっ!」ダッ
魔法使い「ふん」
ドンッ!
魔法使いの右手から放たれた衝撃波に、吹き飛ばされる登山家。
登山家「が……は……っ!」ドサッ
魔法使い「なにを血迷っているんだ……とっとと金を持って失せろ。
今度私に向かってくるようなら、命をもらうぞ」
魔法使い「ま、その方が依頼料が丸々浮いてありがたいがね」
登山家「う、うぐぅ……っ!」ヨロッ
85 = 70 :
結局、登山家に魔法使いを止めることはできなかった。
登山家「が、かはっ……!」
(まだ痛い……あんなに非力そうなのに、すごい攻撃力だ……)
登山家(ちくしょう……まさかこんなことになるなんて……!)
登山家(このままじゃハーピーさんが……!)
登山家(かといって、俺じゃあの魔法使いを倒すってのはとても無理だ……。
無駄死にするだけだ……)
登山家(俺にハーピーさんを守る方法があるとしたら──)
登山家(魔法使いたちが山頂にワープするよりも早く、
俺が山頂にたどり着いてあの石をどうにかするしかない!)
登山家(急がなければ──!)
86 = 70 :
登山家は再び山に向かった。
登山家(もう時刻は夕方になる……。夜の登山が危険なのは、いうまでもない)
登山家(でも……登らなければ!)
登山家(なんとしても一日で登りきらなければ!)
登山家「うおおおおっ!」ダダダッ
87 = 70 :
しかし──
タイガー「ガルル……」ズンッ
登山家(虎の魔物!?)
タイガー「ここは俺のナワバリだぜぇ、人間如きが足を踏み入れ──」
登山家「頼むっ、どいてくれっ!」
タイガー「あ?」
登山家「この山の主が……ハーピーさんが危ないんだっ!」
タイガー「なんだと!?」
89 = 70 :
話が通じる相手と分かると、登山家はタイガーに全てを話した。
タイガー「話は分かった」
タイガー「──が、俺は崖は登れねぇから、そこまでしか連れていけねぇ」
登山家「それで十分だ! ありがとう!」
タイガー「飛ばすぜぇっ! 振り落とされんなよ!」ダダダッ
タイガーの背に乗せてもらい、登山家はあっという間に崖までたどり着いた。
タイガー「絶対ハーピーの姉さんを助けてやってくれよ!」
登山家「任せてくれっ!」
90 = 70 :
登山家「はっ」ガッ
登山家「よっ」ガッ
登山家「ほっ」ガッ
───
──
─
登山家は一回目とは比べ物にならないスピードで、崖を登り切った。
登山家(もう朝になってしまった……でも、まだ間に合う!
おそらく魔法使いたちが山頂にワープするのは昼頃のハズ!)
登山家(今度は森か……!)
登山家(前みたいにハーピーさんの道案内はないが、前進あるのみ!)
91 = 70 :
登山家「ハァッ……ハァッ……」ガクッ
登山家(ダ、ダメだ……やっぱり迷う……)
登山家(こうしている間にも、ハーピーさんの命が……!)ハァハァ
すると──
鳥A「ピーピー」バサバサ
鳥B「ピーピー」バサバサ
登山家(これは……木の実をついばんでた鳥たちだ!)
「もしかして道案内をしてくれるのか!?」
鳥A&B「ピーピーピーピー」バサバサ
登山家「(多分してくれるんだろう)……ありがとう!」
92 :
走れメロス
93 = 70 :
登山家(よし、鳥たちのおかげで森を抜けられた!)
登山家(といっても時間はない……! もう昼になっている……!)
登山家(あとはもう頂上に向かうだけだ!)
登山家「うおおおおっ!」ダダダッ
鳥A『…………』
鳥A『おい、なんでお前あの人間を助けた?』ピーピー
鳥B『お前こそなんでだよ』ピー
鳥A『そりゃあ姐さんが目をかけてた人間が、
必死こいて山登ってたら助けないワケにもいかないだろ』ピーピーピー
鳥B『まぁな』ピー
94 :
熱すぎるな
95 = 70 :
頂上へ通じる最後の山道──
登山家(あと少し……だが、もう魔法使いたちが飛んできてもおかしくない時間だ)
登山家(俺のせいだ……!)ハァハァ
登山家(俺があんな依頼を受けたから……!)ハァハァ
登山家(頼むハーピーさん)ハァハァ
登山家(無事でいてくれっ……!)ハァハァ
登山家「ハーピーさんっ!!!」
97 :
きたい
98 = 70 :
ハーピー「うわっ!?」ビクッ
登山家「あ……」
登山家「よかった……無事だったんだね……!」グスッ
ハーピー「ちょっとどうしたの!?
この間下山したばかりなのに、そんなボロボロになって!」
ハーピー「ほら、羽根で涙を拭きなさいって」スッ
ハーピー「なにか忘れ物でもしたの?」
登山家「ち、ちがうんだ……早く逃げてくれ。
もうすぐあなたを狙う人間たちがやってくるんだ!」
ハーピー「人間……?」
99 :
しえん
100 :
山男がんばれ
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