元スレマミ「これよりクリスマス対策作戦会議を始めるわ」

みんなの評価 : ★★
51 = 1 :
ほむら「びっくりしたわよもう……。説明しなさいよね……」テクテク
マミ「ふふふ。でも、一目で何をするか分かったでしょう?」トコトコ
ほむら「そうだけれど……」
QB「要はほむらを驚かしてみたかったんだろう、マミ?」
マミ「えへへ、バレバレよね」
ほむら「まったく……。はぁ、サンタ服の『大事な理由』って、こういうことだったのね。
まさか本当にサンタクロースやるために着せられてるとは思わなかったわ」
マミ「でも、効果あったでしょう?」
ほむら「……信じられないほどにね」
事実、プレゼントを受け取った男の部屋からは、嘘のように瘴気が消え去っていた。
QB「初めてマミがこれを始めたときは、僕も驚いたんだ。
人の感情がこんなことで大きく揺れ動くなんて、全く想定していなかったからね」
ほむら「え? キュゥべえの入れ知恵じゃないの?」
QB「違うよ。こんなことをやっている魔法少女は、僕の知る限りかなり珍しい」
マミ「入れ知恵とは失礼ね。私のオリジナルよ、題して、サンタ少女大作戦!」
ほむら「題するほどの名前でもないわね……」
52 = 1 :
マミ「初めはね、街中にあふれかえる瘴気に驚きながら、次から次へと沸いてくる魔獣を
ともかく倒せるだけ倒していったんだけれど……」
ほむら「……あんな瘴気がそこかしこにあるとしたら、限界は早そうね」
マミ「ええ。魔法少女としても未熟だったこともあって、逃げて隠れてで
悲惨な目に遭うのがオチだったわ。……生き残るだけで精一杯だった」
ほむら「………」
マミ「それで、どうしたらいいかなって、考えに考えて。
試しにやってみたらうまくいったのよね。サンタ少女大作戦」
QB「一応、僕も一緒に考えたんだよ?」
ほむら「はいはい、偉いわね」
マミ「初めは正直、ビクビクしながら配って回ってたけれど……。
今じゃ慣れた物よ、むしろ驚く向こうの顔が楽しくてしょうがないぐらい」
ほむら (たしかに、クリスマスの話になってからずっとハイよね、マミ……)
マミ「おかげで魔獣の発生数も圧倒的に減ったし、良いコトばかりよ。
なかなか素敵な作戦でしょう?」
ほむら「……ええ、認めるわ。でもやっぱり、それなら先に話して欲しかったわ。
魔獣が急激に増えるみたいな事を言われたから、グリーフシードの残りが万全かとか、
多数に囲まれたらどうするべきかとか、結構今日まで悩んでたんだから……」
マミ「ふふふ。ごめんなさい」
53 = 1 :
ほむら「そういえば、あのプレゼントの中身は何なの?」
マミ「ああ、これ?」ユサッ
背中の袋を揺らして応える。
ほむら「そうそれ」
マミ「大した物じゃないわ。私の手作りクッキーを、何枚か小袋に入れてあるだけよ」
ほむら「え……。それ、全部手作りクッキー?」
マミ「ええ。そんなにお金があるわけでもないし、たくさんプレゼントにできて、
好き嫌いの少なそうな物って言ったら、これくらいしか思いつかなかったの」
ほむら「いえ、何というか……。よくやるわね。かなり時間かかったでしょう」
マミ「時間はかかったけれど、お菓子作りは楽しいから良いのよ。
ちょっとずつ、それぞれ味やデザインも変えてあるから」
QB「昔は僕も味見で参加できたんだけどね……。今は杏子に役割を奪われてしまったようだ」
ほむら「人間の味覚の方が信頼性高いもの。比べるまでもないわね」
マミ「そういうわけではないけれど……。余ったのあげるから、我慢して、ね?」
QB「いや、僕は別に我慢が出来ない訳じゃないんだ。だがくれるというのなら有り難く頂こう」
ほむら「何ちょっと恥ずかしい受け答えしてるのよ……」
54 = 39 :
何故俺の部屋にはマミサンタが来てくれないんだ…
55 = 1 :
マミ「あっと……丁度いいわね」
ほむら「え?」
マミ「あそこ」スッ…
指さした先、また別のアパートが瘴気に包まれている。
ほむら「あら、本当……。またプレゼントを配るのね?」
マミ「ええ。分かってるじゃない」
ほむら「いや、さすがにそのくらい覚えるわよ……」
マミ「じゃ、次はできるわよね、暁美さん?」ヒョイ
プレゼント袋を渡される。
ほむら「………え?」
マミ「次はあなたの番よ、ほら。やってごらんなさい」
ほむら「あ、え、ちょっと……その、急に……?」
マミ「大丈夫よ、優しくプレゼント渡すだけだから。はい、袋を持って」グイッ
マミ「行くわよ!」タンッ
ほむら「わわ、ま、待って……!」タンッ
56 = 1 :
ほむら「………」
カーテンの閉じた窓を見据えたまま、ベランダで固まっている。
マミ『ほーら、ちゃっちゃとやっちゃいなさい。まだこの後見回る場所はたくさんあるのよ?』
ほむら『わ、分かってるけれど……。やっぱり恥ずかしいというか、怖いというか………』
マミ『……ノックしちゃうわよ』スッ
ガラスに腕を伸して見せる。
ほむら『ああっ、ダメ! 心の準備が!』グイッ
マミ『……別に気負うこと無いのよ。どうせ知らない相手だし、通報されても逃げ切れるし、襲われても負けないし。
今までそんなことは無かったけれどね』
ほむら『分かってる、分かってるのよ……』
ほむら「すぅ……はぁ………」
深く、息を吸って吐く。白く消えていく息が、自分を落ち着かせてくれる。
ほむら『………よしっ。行かせてもらうわ』
笑顔を浮かべるべきであると分かっていないのか、かなり硬い表情で決意を固め…
ほむら「………こんばん、わ!」ゴンゴンッ
ついにほむらはサンタ少女として、初めてのノックを力強く鳴らした。
57 = 1 :
ほむら (……? 出てこない?)
ほむら「………こんばんわー!」コンコン
二回目のノック。
ほむら (………あれ? 居ない……ってことは、無いわよね?) ジロジロ
情報を求めて閉じたカーテンの隅々を見る。
そういえば合わせ目に隙間があるな、とそこに目線を送ったとき、
ほむら「………うっわぁ!?」ズザザッ
同時にそこにぎょろりと目玉が顔を出し、驚いてひっくり返そうになった。
ズダン ガタンバタン ガラガラン…
窓の向こうでも同じ反応をもっと派手にやらかしているらしく、豪快な音が聞こえてくる。
マミ『な、何やってるのよ………』
ほむら『め、めめ、目玉がっ! 急に!』
マミ『見れば大体分かるけれど……。驚きすぎよ………』
そのまま待っていると、確認とばかりに再びそうっとカーテンの隙間から目が覗く。それに向けて、
ほむら「こ、こんばんは……」ペコリ
ほむらは深々とお辞儀を返した。
58 :
一人でこんなの書いてて悲しくならないの?
59 = 1 :
ガラガラ…
中にいた男が、おしりをさすりながら窓を開けた。
20代半ばといったところか、先ほどの男よりは年上だ。
男「っつつ……。な、何だ……? あんたら……」
ほむら「え、えっと! 私たちは……その、通りすがりの、サンタクロースです!」
ややテンパり気味だが、なんとか受け答えするほむら。
男「まぁ、たしかにサンタの恰好してるな………」
男 (子供……だよな? 何かの遊びか……?)
男「ええと、何でオレん家に?」
ほむら「な、何となく貴方の事が気になったから、ちょっと寄っただけ」ファサッ
男「………はい!?」
マミ (また微妙な発言を……)
男 (知り合い……? なわけないよな……。何だ、オレの頭がイカレたか?)
ほむら「んと……」ゴソゴソ
困惑する男をよそに、袋の中からクッキーの包みを一つ取りだして…
ほむら「はい。クリスマスプレゼントよ。う、受け取りなさい……!」
60 :
まみクッキー食べたい
61 = 1 :
男 (……よくわかんねーが、夢は最後まで見ておこう………)
男「あー、その、ありがとう……」
素直に受け取る。
ほむら「あ、いえ、こちらこそ……」ペコリ
男「……?」
ほむら「それじゃ、ええと。メリー・クリスマス! いい週末にしなさいよ!」ピョン
マミ (なんとか成功、かしらね……) ピョン
二人でさっさと飛び降りる。
男「………は? 何だおい、ちょ……!」ガタタッ
窓枠に足を引っかけながら、やっぱりこの男もベランダの下を覗く。
3階の高さから見る暗い路地には、ネコが一匹歩いているだけだった。
男「さっぱりわけがわからねぇ………」
男「………あー。寝よう。寝た方が良いな、うん………」
ガララ… ピシャッ
呟きながら男は部屋に戻る。自分で散らかした部屋の様子を眺め、
うんざりとした顔で片付けを始めたようだ。
62 = 1 :
ほむら「っはぁ、はぁ……。緊張したぁ………」
マミ「ご苦労様。何てこと無かったでしょう?」
ほむら「……ええ、まぁ。一度やってしまえば、吹っ切れる物はあるわね………」
マミ「でしょう。にしても、暁美さんがあそこまで萎縮するとは思わなかったわ。
……男性恐怖症、とかそういうわけじゃないわよね?」
ほむら「いや、初対面の他人の大柄な男性って、さすがの私も無理よ……」
マミ「………それもそっか。ふふ」
ほむら「この調子で配りまくればいいのよね。これなら何とかなりそう」
マミ「そうね、でも――」ピタッ
シュイン…
会話の途中で、急に足を止めて銃を束で召還するマミ。
ほむら「えっ?」
ジャキジャキッ ズダダン!
それを無言で構え、睨んだ建物の屋上に向けて打ち込むと、
遠くで出現したばかりの魔獣が粉々にはじけ飛んだ。
QB「……さすがだね。僕が警告するまでもなかったようだ」
63 = 1 :
マミ「ふぅ。こんな風に、予防が間に合わなければ魔獣は湧くわ」
ほむら「え……? ええ……」
鮮やかな撃退をぽかんと見つめる。
QB「例年、後半になるほど既に魔獣が湧いている割合が高くなるね」
マミ「そうね。だから、気を抜かないこと。いいわね」
ほむら「りょ、了解……」
マミ「一応、あそこの部屋にもプレゼントを配ってきましょう。行くわよ!」
ほむら「はい!」
こうしてほむらは初めての、マミは例年のサンタ活動を始めた。
時々顔を出す魔獣をめんどくさそうに薙ぎ払いながら、ひとりぼっちな人たちにせめてもの愛を届けて回る。
影で戦う普段とは違い、街の人たちと直接話してプレゼントを配る愉しさ。
それがいつもの、誰にも知られない戦いとは違う愉しさなんだなと、ようやくほむらもマミのテンションに合点がいく。
最初のシフトが終わる頃には、担いだ袋の中身は半分近く減ってしまっていた。
64 = 1 :
――六時間後――
ギィ… バタン
マミ「ただいまー……」
ほむら「ただいま」
QB「ただいま杏子。起きてるかい?」
空がうっすらと白み始めた頃、交代のためにほむホームへと戻ってきた。
ほむら「まぁ間違いなく……」
杏子「んが……。ぐご………」
マミ「寝てるわよね……」
布団を蹴り飛ばし、大の字になっていびきを立てている。
エアコンの温度が高めだったからかも知れない。
ほむら「……1、踏む。2、口と鼻をふさぐ。3、くすぐる」
マミ「酷い選択肢ばかりじゃない……。あなたも後で起こされるってこと、忘れてない?」
ほむら「私はちゃんと時間に起きられるもの」
マミ「そうかしら? ……ほら、佐倉さん、朝よー」ペチペチ
とりあえず、頬を叩いて起こすことにしたようだ。
65 = 1 :
杏子「んっ……うう……?」モゾッ…
マミ「ほーら、朝御飯なくなっちゃうわよー」ペチペチ
杏子「ん……」パチッ
ようやく目を開ける。
杏子「朝……?」ゴシゴシ
目を擦りながら、体を起こすが、
杏子「……もうちょっと寝させてよ、マミさぁん………」ドサッ
まだ眠いらしくマミの膝元に顔を埋める。
マミ「あら、まだ眠いの?」ナデナデ
杏子「眠いー……」
マミ「そうね。ならこのままそうしてても良いけれど……」ナデナデ
マミ「ここ暁美さんのおうちよ。こっち見てるし」
杏子「……………はっ!?」ガバッ
ほむら「………」
ようやく正気を取り戻した杏子と目が合う。
66 = 1 :
ほむら「ええと……。おはよう、杏子。いい目覚めを堪能したようね」
杏子「う……あ……あ……」
QB「そうか、ほむらは初めて見るかも知れないね。マミが起こすと、杏子はたまにこうなるんだ」
ほむら「そう、いらない解説をありがとう」
杏子「うわあああぁあぁぁぁぁあぁあ!!」ガバッ ズダダダッ ダダン
寝起きとは思えない素早さで、掛け布団をひったくり部屋の隅に逃げていく。
杏子「夢だ……夢だ……」モゾモゾ
そのまま布団を頭から被り、精神安定のためのひきこもり体制に入った。
ほむら「そこまでショックを受けなくても……。何だか気の毒ね……」
QB「君も朝の寝ぼけを披露するというのはどうだい? ほら、たまに朝起きるt」ガシッ
ほむら「磨り潰すぞ」ギチチッ
QB「きゅいっ、そこは痛いから、痛いから握らないで……!」
マミ「まあいいわ。時間もそんなに無いし、朝御飯にしましょう。サンドイッチ作ってきたから」
ほむら「じゃあお湯を沸かした方がいいわね。紅茶でいいでしょう?」
マミ「もちろんよ」
67 = 1 :
十分後、黙ってテーブルに戻ってきた杏子と朝御飯。
「「「「いただきまーす」」」」
ほむら「ん……。いいわね、チキンに若干のクリスマス感がある」モグモグ
マミ「そういう意味を込めてはいないけれど。ありもので作っただけよ」モグモグ
ほむら「なんだか悪い気がする……。朝御飯の用意なんて何も考えてなかったから」
マミ「用意は別にしなくていいと言ったのは私だし。気にすること無いわ」
杏子「………」モグモグ
QB「杏子も復活したようだね」
杏子「……ん? 復活? 何の話だ?」
QB「だからさっきn」グニッ
杏子「な・ん・の・は・な・し・だ?」ギリリッ
QB「い゙っ……し、しっぽは……尻尾は引っ張らないでよう………!」
マミ「無かったことにしたらしいわね……」
ほむら「いつまでもあのままじゃ困るし、賢明な判断ね……」
68 = 1 :
マミ「さてっと、ごちそうさま。あんまりだらだら休憩もしてられないし、出ましょうか、佐倉さん」ガタッ
杏子「あ? ああ、そうだな。袋の中身は……詰め直してあるな」ガタッ
半分にへこんでいたはずの白い袋が、またもとのサイズに戻っている。
ほむら (どれだけクッキー焼いたのよ……)
杏子「よっと」キラキラン クルッ
戦闘服に身を包み、一瞬で準備は完了だ。
マミ「暁美さん、悪いけれど、食器の片付けだけお願いして良いかしら」
ほむら「ええ、もちろん」
マミ「そしたらゆっくり寝てて頂戴、まだまだ先は長いから」
ほむら「分かってるわ。最初の6時間で、結構疲弊したもの……」
マミ「ふふふ。それじゃあね、いってきまーす」
杏子「行ってくるよ」
ほむら「行ってらっしゃい。気をつけてね」
ギィ… バタン
ほむら (………寝る前にシャワーぐらい、浴びようかな……?)
69 = 1 :
杏子「さってと、どこ行くんだ?」トコトコ
マミ「次は風見野まで行くわ。あそこも担当範囲だから」テクテク
杏子「そっか。ちょいと出遅れたから、湧いてそうだなぁ、魔獣」
マミ「寝てる人ばかりでしょうしね。でも佐倉さんは、そっちのほうが好きでしょう?」
杏子「んー……。どっちもどっちかな。どうせ大量にグリーフシード手に入るし、好みなんて無いよ」
マミ「ふふふ。そっか」
杏子「そんじゃ、ちょっと離れてるし……飛ばすよっ!」ピョンッ
力強く地面を蹴り、民家の屋根を跳ねていく。
マミ「あ、待ってよ! キュゥべえ、肩に乗って」
QB「頼むよ」ピョコン
シュルル…
マミの方は、リボンを使って体を引っ張るように追いかけていく。
杏子「はは、鬼ごっこしたらあたしは無敵かもなー」スタッ ピョン
マミ「調子に乗ってコケたこともあるじゃないの、慎重に行きなさい」スタッ シュルル…
杏子「う……。分かってるよ」
70 = 1 :
朝日の眩しい町並みを、忍者のように駆けていく二人のサンタ。
さすがにクリスマスと言えど、異様な光景としか言えないだろう。
マミ「ふぅ、初っぱなから飛ばしまくりね、佐倉さん……」スタッ
杏子「……あれだな」ピョン
マミ「うん?」シュルル…
杏子「いや。この二人組で、クリスマスってのは久々だろ」
マミ「そうね。何年ぶりかしらね……」
杏子「一人でやってる時も、クリスマスはサンタ作戦を借りてやってたけど……。
なんかあのときは、自分が一番ひとりぼっちじゃねえかと、哀しくなっちまう時があったからなー」
マミ「それは……。うん、私にも言える、かな」
杏子「………だからさ。今日は、その。改めて、笑顔でプレゼントが配って回れる気がしてさ。
多分、それでちょっと浮かれてんだよ、あたし……」
マミ「………」
杏子「………な、何か言ってくれよ……///」
マミ「うふふ、私もよ。あなたとまた二人でこうしてクリスマスを迎えられて、すごく嬉しい。
今年は暁美さんという仲間も増えて、気分は向かうところ敵無しだからね。浮かれちゃうわよね」
杏子「………へへっ、だよなっ!」
71 = 1 :
そんな会話をしながら跳ね回り、既に場所は風見野郊外。
魔法少女にとっては、車で10分の距離も徒歩10分とかからない。
マミ「そろそろ風見野に入ってるわよね?」
杏子「そーだな。んっと、例年だと、この辺……?」キョロキョロ
見回すと早速、朝の平穏を破る迷惑な獣の姿があった。
QB「近くに反応はあるようだね」
杏子「ああ、居た居た。ほら、あそこ」
マミ「やっぱり居たわね」
杏子「よっしそんじゃ……」ダッ
手に槍を召還しながら、踏み込んで魔獣の元へと飛んでいく。
その勢いのまま振りかぶると、
杏子「いただくぜっ!」ズバッ
多節棍をしならせて叩き付ける。
一撃で霧散し、魔獣は姿を消してしまった。
72 :
これはいいものだ
73 = 1 :
杏子「うし一丁上がり! 調子良いぜ今日は!」
と、調子に乗ってるところを、
マミ「佐倉さん!」シュルル… グイッ
マミのリボンで絡め取られ、急に引っ張られる。
杏子「ぐえっ! 何を――」
文句を言おうとしたその間際、
ジュジュッ!
と音を立てて、一瞬前に杏子がいた場所をレーザーが焦がした。
杏子「――って何だ、もう一匹居たのか!?」
マミ「油断しないの!」ズダダンッ
建物の影に居た魔獣を銃で撃ち払った。
QB「危ないところだったね。杏子にしては珍しい油断だったよ」
杏子「わ、わり……。テンション上がりすぎだった」ポリポリ
マミ「気をつけてね。みんなで居られるクリスマスを確かめた直後に、一人失うなんてイヤよ」
杏子「いや、うん。その通りだな……」
74 = 1 :
その後は、魔獣を蹴散らしながらの、いろんなひとりぼっちとの出逢いだった。
寒い中で元気に動き回り、三者三様に疲弊しながらも、笑顔で愛を届けていく。
時には、危機に陥ったりもしながら――
杏子「よっと……ここだな』ヌッ
ベランダに捕まって、体を持ち上げる。なかなかどす黒い瘴気。
ほむら『心臓に悪いから、足を踏み外したりしないで頂戴……』
杏子『悪い悪い。次はあたしでいいか?』
ほむら『よろしく』
杏子「それじゃ。こんばんはー! いるかい?」コンコンッ
すぐには出てこない。毎回、この瞬間はちょっとドキドキ感がある。
杏子「いねーか?」コンコン
二度目のノック。すると、
「はぁ~い? なんでしゅか~?」
中から呂律の回らない声が聞こえてくる。
75 = 1 :
杏子「開けて貰えねーかな?」
「ちょっと待ってねーん……」
シャッ ガラガラ…
全く警戒感を見せずに、カーテンも窓も開け放つ。そこに立っていたのは…
ほむら「うげっ!!」
めがねの奥で、定まらない目線を泳がせる女性。
どう見てもほむらの担任である、早乙女和子先生その人だった。
片手に発泡酒の缶をぶら下げている。
ほむら『ちょ、ちょっと、これはマズいわよ……』クルッ
背中を向けてベランダの隅っこに逃げるほむら。
杏子『ほむら? どうかしたか?』
ほむら『担任! うちの、クラスの、担任!!』
杏子『え、マジかよ。へぇ、この行き遅れ感漂うオバサンがほむらの担任かぁ……』
ほむら『合ってるけど言わないであげて!』
和子「ん~? サンタさんだ~?」
杏子「ああ。何だその、すげー酔ってるっぽいけど……。飲み過ぎるなよ?」
76 = 1 :
和子「………これが! 飲まずに! 居られますかっ!!」ドスッ
床を踏みならす。
杏子「お、おい……?」
和子「何よ、私ばっかり置いていかれて! 去年まで一緒に飲んでた幸子も聡美も、
二人して今年は男を作って! 来年も一緒だって約束したくせに!!
これじゃ私は一人でやけ酒するしかないじゃないのよ!!!!!」
杏子「わ、悪かった、とりあえず落ち着け!」
和子「ぬぬぬぬぅ……」
ほむら (飲むと余計酷いのね、先生……)
杏子「あんたが飲むのは勝手だけどさ、ほら、体こわしちまうと悲しむ人が居るだろ?
あたしも、あんたが倒れるところか、見たくないしさ」
和子「………そう。そうね……。
……分かったわ。サンタさんの言うことなら、私ちゃんと守ります!」
杏子「あ、おう……。そうしてくれると助かる……」
和子「んふふふ、そうよ。サンタさんが来てくれるなんて、私もまだまだ純粋で若いって事よね。
まだまだ私はいけるっ! 間違いない!」ニマニマ
杏子 (うわあ、ツッコミてーなぁ……)
77 = 1 :
和子「………あれ~? そっちでうずくまってるのも、サンタさん?」
ほむら「!!」ビクッ
急に声をかけられて震える。
杏子「あー、一応。サンタ仲間? というか」
和子「んー? そっちの子、なぁ~んか見覚えがあるな~?」ジロジロ
杏子「そそ、そんなことねーと思うけどなー……」
和子「お話ししてくれないのかな~?」
杏子『おい、何か言えって!』
別にほむらはこのまま逃げてもいいのだが、状況に狼狽して身体が動かない。
あれやこれや解決策を考えた据えにほむらが出した結論は、
ほむら「に、にゃんだい? あたしは、とーりすがりの、サンタクロースだ、ぜ?」
鼻声で妙な口調の返事をすることだった。
和子「………」
ほむら「………」
和子「………気のせい、かな?」
ほむら (セーフ! ナイス酔っぱらい!!)
78 = 1 :
杏子「ま、まぁそのなんだ、それじゃ……これ、プレゼントな」ゴソゴソ ヒョイ
クッキーの包みを渡す。
和子「えへへー、ありがとう! 何年ぶりかしら、サンタさんにプレゼント貰うなんて」
杏子「それじゃ、まだ配りに行く場所があるから、またな!」ノシ
和子「うん、まったね~」ノシ
杏子『行くぞほむら!』ピョン
ほむら『危なかったッ!』ピョン
QB『お酒、興味深いね。思春期の少女には一般的に提供されていないから、あんまり研究していないけど……』
ほむら『貴方の役には立たないと思うわ……』
和子「………はれ。飛んでいっちゃった」
誰も居なくなったベランダをぼーっと見送る。
和子「……最近のサンタさんは、トナカイを使わないんでしょーか?」
回らない頭でちょっと考える。
和子「………ま、いいや、寒い寒い」ガラガラ ピシャッ
回る頭で考えても多分分からないだろう。
早乙女先生はまた、一人で発泡酒を消費する作業に戻っていった。
79 :
おい、誰か早く参考資料を持ってこい
いや、後生ですからおながいします
80 = 1 :
時には、現実にうんざりしながら――
ほむら「ここは……」
マミ「………ええ。その、分かる……わよね?」
ほむら「一応……」
日も暮れた、本格的なイブの夜。
看板やネオンの眩しい建物が並ぶそこは、いわゆるラブホテルの立ち並ぶ一角である。
ほむら「その、ここって、一人で寂しい人が来る場所じゃないわよね……?」
マミ「そうね。ただ、もしもということがあるから。見回らないわけにはいかないわ」
ほむら「ううん。でもね……」キョロキョロ
当然のように、悦びで満ちて居るであろうこの一角に瘴気は感じられない。
代わりに目に映るのは、「FULL」のランプが明るく灯る看板ぐらいだ。
どこのホテルも皆さんお楽しみ中らしい。
ほむら (性なる夜とはよく言った物ね……)
マミ「ふぅ。大丈夫そうね」
ほむら「さっさと行きましょう。ラブホテル街を守るために戦ってると考えるのは、ちょっと辛い物があるから……」
マミ「同感ね……」
81 = 1 :
時には、本当に危ない人にも会って――
杏子「あ、おい、あそこ」
駅前の建物。中でも背の高いデパートの屋上から。
双眼鏡を覗く杏子が、何かを発見して指さした。
マミ「……? ベンチ?」
深夜3時、電車も来ない駅のホームで、スーツ姿の男が一人ベンチに座っていた。
濃い瘴気を漂わせながら。
QB「あれは相当に暗い感情を持っているようだよ」
杏子「………ちょーっと、重そうだけど。どうする」
マミ「……行くしかないでしょう? 出来る限りは、試してみるべきだわ」
杏子「うん。だよな、行くぞっ」ピョン
ためらいなく飛び降りる。
マミ「ちょっと、ちゃんと入場券買いなさいよ?」ピョン
杏子「わーってるよ!」
直接ホームに飛び降りるつもりはないらしい。
82 = 1 :
男「………はぁ」
顔を覆い、ため息ばかりを繰り返す。
日も沈んでから既に長く、相当冷える外気に震えながらも、動こうとする気力すら見られない。
杏子「………」スッ
マミ「………」スッ
そんな男の左右に、ふたりのサンタクロースが腰を下ろす。
マミ「……おじさん? どうか、なさいました?」
男「………え?」
誰も居ないはずのホームで突然かけられた声に、幻聴かと顔を上げる男。
男「君たちは……一体……」
驚きを表現する気力もないのか、だるそうに左右に首を回しながら唸る。
杏子「あたしらはサンタさ。見ての通りな」
男「サンタ……? はは……ははは。そうか。僕にもサンタなんかがやってくるのか」
笑いでもしなければこらえきれない、そんな表情で。
杏子「………サンタは、別にめでたいめでたいってはやし立てるために居る訳じゃないよ」
マミ「通りかかったら、こんな時間に一人で寒そうにしていたから。風邪をひきますよ?」
83 = 1 :
男「………」
男 (こんな子供が……? 夜中に? 何なんだろうな、一体……)
冷静に考えて、明らかにただならぬ存在なのは確かだ。
かといって、今の自分の状況を打開してくれる神様ではないことも分かっていた。
男「……サンタってのは、下らない話の相手になってくれたりもするのかい?」
マミ「! ええ、もちろん」
それでも、抱えているモノを抱えたままにしていることに耐えきれず、
男はぽつぽつと事のあらましを話し始めた。
男「僕は……3年前から、名古屋まで単身赴任になってるんだ」
杏子「単身赴任ってーと、会社の都合で遠いとこ行かされる、ってやつだっけな」
マミ「じゃあ、ご家族は……」
男「……うん。子供は居ないんだけど、家、買っちゃってたからね。妻だけ一人こっちにいた」
マミ「………」
男「出来れば、いっしょにいたかったんだけどね。そうワガママもいってられない状況っていうのかな……」
杏子「大変、だな……」
男「……そうだね。我ながら、結構大変だった」
84 = 1 :
男「週末には、少ないお金をやりくりして、結構頻繁に帰ってきてたんだ。
たまに花を買って帰ったり、あいつの好きなチーズケーキを買って帰ったり……」
マミ「……うらやましいくらい、いい、旦那さんじゃないですか」
男「………」
表情は、寂しいまま変わらない。
二人とも、結末を予感しながらも、じっと男の話を待っていた。
男「……仕事も、ね。忙しかったんだ。サービス残業は当たり前だったし、
土日にも出勤しなければ終わらないようなことも多かった。
それで、帰るって伝えてあったのに、帰ってこれないこととかも多くて……」
杏子「………」
男「それが、悪かったのかな。今日もホントなら、帰ってこれるはずはなかったんだ。
せっかくのクリスマスだって言うのに、仕事仕事で。
でも、何となく……あいつに、会いたくって。ものすごい勢いで仕事を終わらせた」
男「ちょっとしたサプライズのつもりだった。急いで駅に行き、惜しい時間の中でプレゼントを選んで、
新幹線に飛び乗って……」
杏子「それで……家には………」
男「………うん。うかれていた僕がバカみたいだったよ。
妻が、知らない男と寝ていたんだ。浮気って、いうやつだね………」
マミ「………」
85 = 1 :
男「………はは。ごめんね。こんなおじさんが、子供にする話じゃないよね」
マミ「……いえ、そんなことは。今は、私たち、サンタクロースですから」
男「………」
杏子「………でもまぁ、そうだな。あたしらになんとかできるような話じゃない」
マミ『え、あっ、ちょっと佐倉さん、何を……!』
杏子『大丈夫だよ、ほら……』
男「………はは。分かってる。これは僕の問題だからね、僕が何かしなければ話にならない」
杏子「……ああ。そういうことさ。まぁ、ほら。これ……」ゴソゴソ…
肩の袋から、また一つプレゼントを取り出して渡す。
杏子「あんたに、ちょっとしたクリスマスプレゼントだよ。少しは、元気だしなよ」ヒョイ
男「………ありが、とう……?」
訝しげに受け取る男。
杏子「………生きてれば、いいこと有るよ。多分な。メリー・クリスマス」ピョンッ
マミ「メリー・クリスマス」ピョン
それだけ言って、二人のサンタは大きく飛んで駅の外へと消えていった。
86 :
俺のとこには来なかったんだけど・・・
87 = 60 :
>>86
美滝原と風見野限定なんじゃないの
88 :
お前がサンタなんだよ
89 = 1 :
また元の、背の高いデパートの屋上から。
杏子「……ひひ、ぼーっと空を見上げてるぜ。最後の最後で驚いたろう、あれ」
QB「あまり派手なことは控えた方がいいと思うんだけどね」
悪趣味に双眼鏡を覗いて男を観察している。
マミ「まったく。急に偉そうに話し始めるから、何かと思ったわよ……」
杏子「ん? やっぱ気づいてなかったか。もうあの人が話し始めてた時には、瘴気もかなり薄くなってたんだよ」
マミ「え、そうだったかしら……」
杏子「時間的にも、クリスマスという時期的にも、まぁ……なんだ。吐き出す相手が欲しかった、んじゃねーかな」
マミ「………」
杏子「あとは、あの瘴気の濃さから言って、結構深刻だったろ。
それは……。衝動的な、そういう……感情だったんじゃないかって。
電車が走ってる時間じゃなくて良かったと思うよ」
マミ「そうかも、ね……」
杏子「……大丈夫だって。それに心配してても、あたしらじゃどうしようもないのは事実だしさ。
あとはおじさんがなんとかするだろうよ」
マミ「うん……。そうね………。次、いきましょうか」
杏子「ああ」
90 = 1 :
時には、力不足を嘆きながら――
杏子「んっ。ここだな?」
ごくごく普通の建て売りの一軒家。
ただ、二階の辺りが、なぜか瘴気に包まれている。
ほむら「……そのようね。あれ、でも、見たところ……普通の家庭よね?」
杏子「……そうとも限らないよ」ピンポーン
ごく普通に呼び鈴を鳴らす。
ほむら「え!? え、何このパターンは?」
杏子「まあ見てろって。毎年、一人か二人はこういうの見るから……」
ほむら「………?」
急に普通の家庭訪問になって困惑するが、そのまま応答を待つ。
しばらくしたら、
「ブツッ…… 誰?」
インターフォンから、子供と思しき声が聞こえてきた。
杏子「メリー・クリスマス。あたしたち、サンタなんだけどさ。開けてもらえないかな?」
91 = 1 :
「………待ってて」ブツッ
インターフォンが切れる。そのまま待っていると、
ギィ…
玄関のドアが開き、小学生の低学年にも満たないような男の子が顔を出した。
男の子「………? おねーちゃんたち、誰?」
杏子「うん? 見て分かるだろう、サンタクロースさ。こんにちは」
男の子「こんにちは……?」
杏子「こっち、来てもらえないかな」
男の子「うん……」トテトテ
不思議そうな目で見つめながら、玄関を出て門の所まで歩いてきた。
男の子「……サンタさん?」
杏子「そうさ。良い子の味方のサンタクロースだよ」スッ
しゃがんで目線を合わせる杏子。
男の子「サンタさんって……昨日の夜、来るんじゃなかった?」
杏子「……はは。ごめんな、あたしたちまだ見習いなんだ。ちょっと来るのが遅れちまってさ」
92 :
素晴らしいとしかいいようがない
93 = 1 :
男の子「………サンタさんにも、おちこぼれって、居るんだ?」
杏子「うっ……キビシーな。うん、そうなんだ。ごめんよ」
ばつの悪そうな、それでも笑った顔をする杏子。
杏子「だからまぁ、プレゼントもさ、ちゃんと……欲しいモノを用意はできなかったんだけど……」ゴソゴソ
袋からクッキーを取り出して渡す。
杏子「ほら、あたしたちが、頑張って作ったクッキーなんだ。食べてくれないかい?」
男の子「………うん。食べる」
杏子「そっか。ありがとな! 君が食べてくれると、あたしたちもサンタとして頑張れるからさ。
君も、頑張ってくれよな」グリグリッ
少し乱雑に、男の子の頭を撫でてやる。
男の子「………うんっ」
杏子『……よし、それじゃ、後ろの家の屋根を飛び越えて消えるぞ』
ほむら『了解』
杏子「じゃーな。また来年、もしかしたら会うかもな。バイバイ!」ピョンッ
男の子「ば、バイバイ!」ノシ
ほむら「来年も、いい子でね」ピョン
94 = 1 :
トコトコ…
先ほどの家とは一本違う道を並んで歩く。
ほむら「……それで、どういう事? 日曜日の朝に一人って、結構小さい子に見えたけれど……」
杏子「………親がさ、そういう連中なんだよ。多分あれ、クリスマスプレゼントも貰ってないし、
両親とも昨日から出かけてるとか、そういう状況だと思うぞ」
ほむら「そんな……。どうして」
杏子「子供を、まぁあんまり大事に見てないんだろ。そういうのが、たまに居る」
ほむら「………」
理解できない。でも、杏子の言うとおり、確かに居るらしい。
ほむら「……その、こういうのって、なんとか……できないの?」
杏子「なんとか?」
ほむら「児童相談所とか……」
杏子「おいおい。別に、あの子は虐待受けてたふうではなかったろ。健康だったじゃん」
ほむら「そうだけれど……」
95 = 1 :
杏子「……あんまり深入りしてもしょうがないよ。あたしらはこうしてサンタの真似事してるけど、
単に自分達が無駄に戦わなくて済むように、楽な方法を選んでるに過ぎない」
ほむら「それは……」
杏子「所詮、魔法少女でしかないんだから、魔法少女が出来る範囲のことを頑張るしかない。
人として出来るコト、って意味も含めてね」
ほむら「………」
杏子「何よりあれは、あの子の家庭の問題だよ。全ての家庭が100%幸福で100%円満なんてありえない。
だったらあとは、あの子が頑張って、自分の境遇を受け入れて。強く生きるしかない」
ほむら (それを……貴女に言われたら………)
ほむら「何も言えないわ……。たしかに、私たちの出る幕では無いわね」
杏子「……うん」
QB「………ほむら、杏子。右の方角に魔獣の反応が無いかい?」
ほむら「え? ……あ、ほんとだ。行きましょう!」
杏子「おっと、了解!」
96 = 1 :
そして時には、この作戦の暗部を目にして――
最終シフトも近づき、クリスマスもほとんど終わり。
この時間帯になると、瘴気も魔獣も目立っては見あたらない。そんな中…
ほむら「……あ、マミ。あそこの部屋!」ピッ
指を差す。久々に見つけた瘴気に、むしろちょっと機嫌が良い。
マミ「あら、本当ね。……って、あ、あれは………」
なぜか顔を曇らせる。
ほむら「……? どうしたの、知り合いの家?」
マミ「……いいえ、知り合いではないわ。でも……ある意味、知り合いかも」
ほむら「何それ……」
QB「ああ、僕も記憶にあるよ。例のあの部屋だね」
マミ「ええ……。暁美さんは、今からこの作戦の底知れぬ闇を目撃することになるわ……」
ほむら「……? 良く分からないのだけれど……。行くの?」
マミ「行くわよ、もちろん」タンッ
ほむら「了解」タンッ
97 = 1 :
マミ『まぁ、これは……私がやるべきよね』
QB『そうだね』
ほむら (何なのよ一体……)
一人置いてけぼりのほむらを残して、マミが窓にノックをする。
マミ「こんばんはー。居ますかー?」コンコンッ
ドタンッ
その途端、部屋の中で大きな音がしたかと思うと、
シュウゥゥゥ…
辺りに漂っていた瘴気が急速に引いていった。
ほむら (………え? どういうこと!?)
カタッ ガララッ!
そしてすぐに窓が乱雑に開けられたかと思うと、
男「来てくれた! 今年も来てくれたんだねサンタさーん!!」ガバッ
少し太めの男が現れ、マミに抱きつこうと突進してきた。
ほむら (今年も……ですって……?)
98 = 79 :
おまえら自重しろwww
99 = 1 :
マミ「はーい、ストップストップ」ゴスッ
その巨体のど真ん中に向けて、慣れた感じで強化した拳をたたき込むマミ。
男「うげふっ……。い、いい、パン、チ……」ガクッ
その場にくずおれる。
マミ「まったくもう。そんな悪い子には、サンタクロース来なくなるわよ?」
ほむら (『子』って年齢には見えないのだけれど……)
男「ごめんなさいっ! 見捨てないでっ!!」
そのまま土下座に姿勢を変える。
マミ「……うん、よろしい。それじゃ……」ゴソゴソ
同じようにクッキーを取り出して、
マミ「はい、プレゼント。大切に食べなさい」
男「有り難き幸せっ!」
渡すと、まるで表彰状の受け取りのように手に取る男。
ほむら (……大体分かった。大体分かったけど、何なのよ。これ………)
みんなの評価 : ★★
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