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    元スレマミ「これよりクリスマス対策作戦会議を始めるわ」

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    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 : ★★
    タグ : - QB + - まど神 + - クリスマス + - 巴マミ + - 感動 + - 神スレ + - 魔法少女まどか☆マギカ + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    1 :

    僕もクリスマスにクソスレ立てて遊びたかったです

    2 = 1 :

    ほむら「え?」モグモグ

    杏子「んー?」モグモグ

    QB「きゅい?」モグモグ

    マミ「………」

    マミの部屋。三人と一匹が、こたつを囲んで鍋をつついている。

    杏子「やっぱちゃんこ鍋は肉団子だよなー」ヒョイ

    QB「そうかい? 僕はこの、溶けているようで少し芯のある白菜なんか、とても美味しいと思うんだけど」シャク

    ほむら「インキュベーターのくせに分かった口を利くじゃない……」モグモグ

    杏子「白菜なんて水増しみたいなもんじゃん、嫌いじゃーねーけどさ」モグモグ

    ほむら「あら、貴女はこの国に生れながら、白菜のないただの煮物を『鍋』と認めることが出来るのかしら?」

    杏子「モツ鍋なんかはキャベツだろ? 必須って訳じゃないよねぇ」

    ほむら「それでも葉物は必須じゃない」モグモグ

    杏子「言いたいことは分かるよ」モグモグ

    マミ「………ねぇ。聞いてる?」

    QB「マミは食べないのかい? よく煮えてるよ?」

    3 :

    続けて

    4 = 1 :

    マミ「そうじゃなくって!」ズダンッ!

    力強く、両拳でこたつの天板を叩き付ける。一瞬土鍋が浮いた。

    杏子「うおいっ!」ビクッ

    ほむら「ちょっと貴女、何を、っ」ゴホッゴホッ

    QB「ほら、ほむら、お茶を飲むといい」トポポ…

    マミ「話を聞きなさいよ! 三人とも!」

    杏子「いや聞いてるけどさー」モグモグ

    ほむら「クリスマスなんとかかんとか、ごほっ、でしょう? ちゃんと聞いてるわよ……」ゴクッ…

    QB「そういう発言があったことは記憶に残っているようだ」モグモグ

    マミ「うう……。なら無視しないでよぉ……」

    杏子「だって、なぁ」

    ほむら「今は素晴らしい仕上がりの鍋を食べるので精一杯なのよ。
        ああ、私がもう一人いれば存分にマミの演説に耳を傾けられるのに……」モグモグ

    マミ「余計にイラッと来るから適当なセリフを付け足さないで頂戴」

    杏子「ほら、よそってやるから食えって」カチャチャ… カタッ

    マミ「あ、ありがとう……」

    5 = 1 :

    マミ「んもう、鍋なんて後回しにするんだったわ……」モグモグ

    ぐつぐつと煮える鍋を睨みながら、諦めてぼやく。

    ほむら「何言ってるのよ。IH土鍋なんて買ってきて、寒いから鍋! って誘ったのは貴女じゃない」

    マミ「そうだけれど……。そもそもの目的は作戦会議で、ついでだから鍋もしたいなぁって話だったはずよ」

    ほむら「……でも、集まるなり鍋の材料を買い出しに引っ張り出したのも」

    杏子「帰ってくるなりコタツに入り込んで動かなくなったのも」

    QB「お腹すいたなーって言いながら、準備を期待して僕にチラチラ目線を送ってきたのも。全部マミだね」

    マミ「うぐ………」

    杏子「まあ、じっくりやりたい話は後で良いだろ。今は肉団子食べよう肉団子」モグモグ

    マミ「それもそうね……」

    ほむら「あ、雑炊用のご飯の準備はできてる?」

    マミ「それなら冷凍のご飯がまだあるはずだから、大丈夫よ」

    杏子「くそっ、うどんのほうがぜってー美味いのに……」

    ほむら「この世で最も公平な勝負で負けたんだから潔く諦めなさい」

    ほむら (あと何回使えるかしらね……。やけにチョキばっかり出す杏子の癖)

    6 :

    締めは雑炊で合ってる

    7 = 1 :

    ――半時間後――

    QB「っぷいぃ……」

    杏子「結構食ったなー……」

    ほむら「雑炊が効いたわね。まさか卵だけじゃなく具も新しく入れるとは……」ケフッ

    マミ「雑炊前にみんな食べちゃったからでしょうが……よいしょ」カラカラ…

    立ち上がり、湯気で曇ったベランダの窓を開ける。外はまっ暗だ。
    ぴゅうっと、一気に冷たい風が流れ込んできた。

    杏子「おい、何してんのさ、寒いだろっ!」ブルッ

    マミ「蒸気が籠って結露しちゃうもの。換気ぐらいしないと……」

    QB「あまり結露が酷いとカビが発生してしまうからね、仕方ないよ」

    ほむら「仕方ないとはいえ、結構来るわね……これは」ブルルッ

    マミ「………でも確かに寒いわね」ゴソゴソ モゾッ…

    一人、うつぶせでこたつの奥深く潜り込み、肩まで暖まるマミ。

    マミ「うふふ、あったか~い……」

    杏子「あ、対面がキュゥべえだからってこいつ……!」

    8 = 1 :

    QB「食べてる間こたつの上だったし、僕もそろそろ暖まらせて貰おうかな」モゾゾ…

    耳毛で器用に布団を捲り、マミの足の隣に潜り込む。

    杏子「キュゥべえもかよ」

    ほむら「二人して……。こっちは足がぶつからないように遠慮しているのに」ゲシッ

    中に向けて蹴りを入れるほむら。

    マミ「あっ、どこ蹴ってるのよ」

    ほむら「なんだか柔らかいわね……」フミフミ

    マミ「やん、ちょっと、やめなさいって……!」

    杏子「それでも出ようとはしないんだな……」

    マミ「家主権限だもの」

    杏子「……そうか。よしほむら、そっち側頼むわ」

    そう言って、マミに見えないこたつの上で両手をわきわきさせる。

    ほむら「……なるほど、了解。せーので行くわよ」ゴソソッ

    マミ「?」

    杏子「よし、準備オーケーだ」ゴソソッ

    9 :

    紫煙

    10 = 3 :

    マミマミ

    11 = 1 :

    二人してこたつに両手を突っ込み、

    ほむら「せーの!」

    合図と共に、マミを両側からくすぐり始めた。

    マミ「え!? あっ、何を……えひっ、やあっ!」モゾゾッ

    杏子「ほれほれーこしょこしょー」

    マミ「や、ちょっ、やだっ! あはははっ、そこダメっ……!」バタバタ

    遠慮無く与えられる刺激に、耐えきれずこたつの中で暴れ出す。

    ほむら「諦めて出ないと苦しいわよ」コチョコチョ

    そう言いながら、片手は体を押さえつけている。逃がすつもりはないようだ。

    マミ「やっ、ははっ、ちょ、出るから! 許して! あははっ」ドタタッ

    QB「きゅっ!?」プチッ

    杏子「ん? キュゥべえ?」コチョコチョ

    ほむら「マミの足に潰されたみたいね……。可哀想に」コショコショ

    マミ「は、離してってばー! っは、ははっ!」ジタバタ

    12 = 3 :

    幸せそうなマミさん

    13 = 1 :

    マミ「はぁっ、はぁっ……」

    しばらく弄ばれたあと、息も絶え絶えにこたつに突っ伏すマミ。
    換気も十分と窓ももう閉められているが、部屋が暖まるにはまだ少しかかりそうだ。

    ほむら「ふふふ、反省したようね」

    マミ「罪人扱いしないでよ……。とりあえず体は暖まったわ、おかげさまで……」

    QB「やれやれ、酷い目に遭ったよ」

    杏子「こたつという戦場に潜り込むには覚悟が必要っつーことだな」モグモグ

    カゴのみかんを、いつのまにか食べ始めている杏子。

    ほむら「甘い?」

    杏子「甘い甘い。結構良いみかんだぞこれ」モグモグ

    ほむら「そう……。私も貰おうかしら」

    杏子「あ、キュゥべえ、お茶を淹れてきてくれよ」

    QB「また僕が働くのかい?」

    ほむら「さっさと」ワコワコ

    QB「分かったよ。全く、インキュベーター使いが荒い魔法少女だなあ、君たちは……」テトテト…

    14 :

    べえさんいい奴だな

    15 = 1 :

    QB「おまたせ」カタッ

    湯気を噴く急須をテーブルに乗せる。と、

    マミ「………」スッ

    マミが伏せた姿勢から起き上がった。

    杏子「お、復活した」

    QB「やぁ、いいタイミングだね」トポポ…

    マミ「あら、ありがとう……」ゴクッ…

    入れて貰った湯飲みのお茶を一口流し込む。

    マミ「……ふぅ!」

    マミ「と、いうわけで……」

    ほむら「そんな名前のラブホテルあったわよね」

    マミ「知らないわよそんなの! 大事なことなんだからそろそろちゃんと聞きなさい!」

    ほむら「はいはい」

    マミ「これより! クリスマス対策作戦会議を始めるわ!」ビシッ

    愛らしい垂れ目を精一杯に険しくし、指先をそらに向けながら、
    マミは改めて会議の開始を厳かに宣言した。

    16 = 1 :

    ほむら「わー」パチパチ

    杏子「わ、わー?」パチパチ

    QB「僕の耳はそういう音がしないんだよね……」バフバフ

    マミ「コホン。まず始めに確認しておきます。キュゥべえはともかく、二人とも24日と25日は空けてあるかしら?」

    QB「僕もたまには勧誘に出かけたいんだけどなあ」

    杏子「あたしはいつも暇だし、まあ毎年のことだからな」ワコワコ

    ほむら「参ったわね、家でゴロゴロするのに大忙しの予定なのよ……」

    マミ「全員問題無さそうね」

    ほむら「それで? わざわざ改まって何の話よ。クリスマスパーティのプログラムでも組むの?」

    杏子「え?」

    マミ「いえ、打ち上げはやるつもりだけれど……。それは適当に騒ぐだけだからいいのよ」

    ほむら「……? 打ち上げ?」

    杏子「……あ、そっか。ほむら、もしかして魔法少女では初めてのクリスマスか?」モグッ

    ほむら「へ……?」

    QB「そうだね。戦闘経験はなかなかにあるようだが、クリスマスは経験していないようだ」

    17 = 1 :

    杏子「……なるほどな。わざわざ改まって作戦会議とか言い出したのはそのせいか」ゴロン

    蜜柑を食べ終えて横になる。

    マミ「そういうこと。人手が増えるから、去年よりは楽になると思うけれど」

    ほむら「………? 話が全然見えないわよ?」

    QB「魔法少女のクリスマスはね、忙しいんだよ」

    ほむら「忙しい?」

    マミ「それをこれから説明するわ。はい、こちらに注目!」パチンッ!

    マミ (あ、上手く鳴った!)

    小気味の良い音で指パッチンを披露すると、

    フッ… ガガーガガー…

    部屋のライトが急に消え、マミの指し示す先にプロジェクタ用スクリーンが降りてきた。
    ぼんやりと青い画面を映しながら、プロジェクタのランプが発光し始めている。

    ほむら「な、何これ……」

    杏子 (あー、背中に回した手でリモコン操作してるっぽいな……)

    QB (また何らかのフィクションに影響を受けたようだ……)

    18 = 1 :

    ガッコン!

    スクリーンが降りきると、まだ安定しない光でプレゼンテーションのタイトル画面が表示された。

    『みんなのハートにティロ・フィナーレ☆ 魔法少女のちょっとハードなクリスマス♥2011』

    ほむら「………もう一度言うわ。何これ?」

    マミ「読めば分かるじゃない」

    杏子 (無茶言うなよ)

    ほむら「無茶言わないで……。帰って良い?」

    マミ「ダメよ、真面目な話なの!」

    ほむら「ならパワポぐらいは真面目に作って欲しかったわね」

    マミ「内容は大まじめだから、ほら、始めるわよ。えーっと……」

    後ろに回していた手を戻し、ごちゃごちゃとボタンの付いたリモコンを弄る。
    マミの動きに合わせて、緑色の点がスクリーン上を踊っている。

    QB「緑色のレーザーポインターなんて、人類にしては珍しいじゃないか」

    マミ「高かったわ……。でも赤より見やすくていいのよ。自己紹介ページは飛ばしてっと」ピッ ピッ

    ボタンに合わせてページが切り替わる。
    何やら一瞬、マミの魔法少女姿が全身アップで映ったようだが、
    杏子もほむらも見なかったことにしたようだ。

    19 = 1 :

    マミ「まずは前提知識から確認しましょう」

    『魔獣とは何か?』

    内容のわりにはポップなフォントが踊っている。
    手書きで添えられた魔獣のイラストが可愛らしい。

    ほむら「………」

    マミ「ほら、暁美さん。魔獣とは?」

    ほむら「え?」

    杏子「答えないと多分、先に進まねーぞ」

    ほむら「……私たち人類の、魔法少女の敵であります、Ma'am」

    マミ「そうね。そして彼らは……」ピッ

    新たなテキストがスライドイン。

    マミ「人の感情を喰らい、グリーフシードに変えてしまう。そういう存在ね」

    ほむら「らしいわね……。この世界はあまり詳しくないけれど」

    マミ「大事なのは、彼らは特に負の感情を好んで食しているらしいところ。
       ……このあたりは、あなたの前の世界と似ているんじゃないかしら」

    ほむら「……そう……ね。絶望を溜め込んだ塊がグリーフシードと考えれば、似たような物ね」

    20 = 1 :

    マミ「はい、それでは次」ピッ

    『クリスマスとは?』

    相変わらず味のあるタッチの絵で、クリスマスツリーの横にサンタが立っている。

    ほむら「……また難しい質問ね。杏子のほうが詳しいんじゃないの」

    杏子「ん? 一応そうかな?」

    マミ「そんなに厳密な回答を求めてるわけではないわよ」

    ほむら「それなら……。イエス・キリストの降誕祭?」

    マミ「うん。正解」ピッ

    キリストらしき、笑ったオジサンの絵が追加される。

    杏子 (若干失礼な感じあるけど……まあいいや)

    マミ「まあキリスト教の祭典だから、イスラム教なんかでは祝わないし、ユダヤ教には別の行事があるし、
       いろいろ言い出したらきりがないけれど……」ピッ

    QB (何だかんだで意外と細かいなぁ)

    マミ「キリスト教が大多数を占める諸国や、ここ日本みたいに宗教に頓着のない国だと、
       宗教的な祝祭と共に『親しい人と過ごす』ことが定着しているようね」

    ほむら「クリスマスパーティ、というやつね……」

    21 :

    マジレスすると日本とキリスト教圏の人はクリスマスと正月の過ごし方が真逆

    22 :

    マミさんならなまはげを退治するサンタさんにもなれるよ!

    23 = 1 :

    マミ「さて、そうなると問題なのは」ピッ

    『ひとりぼっちとクリスマス』

    急に背景が真っ黒になった。フォントもホラーな血文字である。

    ほむら「あー……。ようやく話が見えてきたわね」

    マミ「クリスマスが皆で楽しくわいわいやる日であるという認識が大きいほど、
       『周りはみんな楽しそうにしているのに、どうして自分は一人なのだろう……』と思う。
       その考えが孤独感を加速させ、ひとりぼっちな人々は陰鬱な負の思念に捕らわれてしまうというわけね」

    QB「人間というのは不思議な生き物だね。僕なんて同僚と会うことはまず無いのに」

    杏子「あんたと同じじゃなくて良かったと心から思うよ」

    マミ「特に、この国では『家族と過ごす』他に『恋人と過ごす』習慣が何故か定着してしまっている。
       そうすると、たとえ家族が居たとしても、恋人が居ない独り身だというだけで絶望の種になり得る……」

    ほむら「……結果として、魔獣が活発になると、そう言いたいのね」

    マミ「その通り!」

    ほむら「本当かしら……」

    杏子「それがマジなんだよ、一回経験すれば分かる……」

    24 = 1 :

    マミ「まあ『クリスマスは自殺者が多い』とかいうのは都市伝説らしいけれど、
       少数でも自殺している例があるのは事実だし……」ピッ

    新たな画像が流れ込む。パソコンのキャプチャと思しき画像に、文字列が何行か表示されている。

    『マジで…本当に…クリスマスなんだな…』
    『クリスマスに一人でいない方法考えよう』
    『クリスマス前だし死のうか』
    『精神的苦痛を受けたのでクリスマスに慰謝料を請求する』
    『マミ「クリスマスどうしようかしら…」』

    杏子「……なんだコレ?」

    マミ「これはインターネット上にある、某巨大掲示板にあったスレッドのタイトルね。ほんの一部だけれど。
       見ての通り、多くの人たちがクリスマスの到来に悲鳴を上げていることが分かるわ」

    杏子「へぇ」

    ほむら「さすがにネタでしょう……?」

    マミ「まぁ、本当に死にたいと思っている人はインターネットなんかしていないかもしれないわね。
       けれど、少しでも心の奥底で『寂しい』と思う人が、クリスマスに合わせて同時期に多発する。これは事実よ」

    杏子「信者じゃなくても、教会来てくれりゃーそんなに寂しい思いもしなさそうなんだけどなー……」

    マミ「普段から感じている孤独感が増幅される、というのも多いでしょうし。どうしようもないわ……」

    ほむら「なるほどね……」

    25 = 22 :

    お前ら最後の行に気づけ

    26 = 1 :

    マミ「そして時代の情勢もあるわ」ピッ

    『ひとりぼっちは増えている』

    背景色とフォントがまともに戻り、Excelの匂いがするグラフが表示される。

    ほむら「『単身世帯数の増加』?」

    マミ「ええ。さらに国内情勢に的を絞って、白書からのデータよ。
       見ての通り、一人で暮らしている人は年々増え続けている」

    ほむら (意外と真面目にパワポ作ってたのね……)

    マミ「さらに」ピッ

    グラフが変わる。

    マミ「これは未婚率のグラフね。やっぱりこれも、世代を問わず年々増え続けている。
       この国では、独り身で居る人々もどんどん増えていって居るのよ」

    ほむら「ふうん。つまり、ひとりぼっちはどんどん増えているし、日本の風習も相まってみんな陰鬱な顔をしていると」

    マミ「そういうこと。海外でも、クリスマスが根付いた所ではやっぱり魔法少女って忙しいらしいけれど……」

    QB「キリスト教国では忙しいようだよ。僕自身が見たわけではないけどね」

    マミ「それにも増して、私たち日本の魔法少女にとっては戦いなのよ。分かってもらえたかしら?」

    ほむら「……そうね。この目で見るまでは何とも言えないけれど、理屈は分かったわ」

    27 = 3 :

    ふむふむ

    28 = 1 :

    マミ「ありがとう。そうしたら説明は終わりにして、早速作戦会議に入るわよ。
       といっても、問題があれば指摘してもらうという形だけれど……」ピッ

    『タイムテーブル』

    24日、25日、両日の予定が三人分、帯で示されている。

    マミ「こんなふうに、基本的には二人が行動するシフト制で行くわ」

    ほむら「……え?」

    マミ「6時間単位で2コマ行動して1コマ休憩する形ね。最初は私と暁美さんでパトロールに出かけて、
       6時間経ったら暁美さんと佐倉さんが交代、暁美さんは睡眠を取ってもらって――」

    ほむら「ちょ、ちょっと待って!」

    マミ「……? 何かしら?」

    ほむら「え、24日の朝から48時間、ずっと予定が入っているように見えるのだけれど……」

    マミ「そうよ?」

    ほむら「……本気?」

    杏子「これでも楽な方だぞ、去年はマミもあたしも一人でやってたしな」

    ほむら「嘘でしょ……」

    マミ「ここも風習が絡んでいる所ね。本来は日没を区切りに用いる教会暦が、24日の夜からクリスマスになるから
       『クリスマス・イブ』として祝うのだけれど、日本だと24日からともかくめでたい日扱いだから……」

    29 :

    いい着眼点

    30 = 1 :

    マミ「拠点に使うのは私の家でも良いのだけれど、マンションよりは暁美さんの家の方が便利だと思うの。
       使わせてもらえないかしら?」

    ほむら「……ええ、かまわないわ」

    ほむら (どうしようもなく本気ね、これは……)

    マミ「ありがとう。そしたら、23日の深夜に暁美さんの家に集合ということで」

    杏子「了解。あたしは最初寝てていいのな」

    マミ「ええ、でも居てくれないと困るから、時間には遅れないようにね」

    杏子「分かってるよ」

    マミ「前日はしっかり食べて、よく寝ておくこと。ぶっ続けじゃないから大丈夫だと思うけれど」

    ほむら「了解……」

    マミ「手ぶらな方が動きやすいから、荷物も特に必要ないわね」

    QB「ところでマミ。僕の休憩時間がタイムテーブルに入ってないように見えるよ」

    マミ「休憩なしで」

    QB「やっぱり?」

    杏子「どーせいつも付いて歩いてるだけだし、大丈夫だろ」

    QB「これでも役立つ助言をしているつもりなんだけどなぁ……」

    31 :

    きゅっぷいきゅっぷい

    32 = 1 :

    マミ「とりあえずは以上ね。何か疑問や、改善案はあるかしら?」ピッ

    特に隠すでもなくリモコンを押すと、部屋の明かりが元に戻った。

    ほむら「……正直疑問しか無いけれど。言うことは特に、無いわ………」

    マミ「……実際に見るまではしょうがないわね。佐倉さんは?」

    杏子「特にないよ」

    マミ「そう。それじゃ、最後に大事な魔法の講習会といきましょうか」ピッ

    ガガーッ…

    プレゼンもおしまいのようだ。プロジェクタスクリーンが格納されていく。

    ほむら「魔法?」

    マミ「ええ。これは見た方が早いから、佐倉さん。ちょっと実践して見せて」

    杏子「え、あ、あたし!? マミがやればいいじゃんか!」

    マミ「私は説明役よ? ほら早く」

    杏子「でも、なんかこー改めてやれって言われると。恥ずかしいんだけど……」

    マミ「どうせ当日はやるんだからいいじゃない」

    杏子「………ああもう、わかったよ!」

    33 = 21 :

    はがないを彷彿とさせるな

    34 = 1 :

    杏子「よっと……」ノソ

    寝っ転がっていた恰好から立ち上がる。

    杏子「そ、それじゃやるぞ……」

    マミ「どうぞ」

    ほむら「……?」

    杏子「………そりゃっ!」キラキラッ クルッ

    皆の注目を受ける中、掛け声を上げて魔法を使う。
    するとクリスマスカラーのエフェクトが輝き、中で杏子が一回転するとそこには…

    ほむら「………は?」

    愛らしい白のモコモコに縁取られ、真っ赤なサンタコスを着た魔法少女が立っていた。

    杏子「ほ、ほら……。やったぞ………///」

    服に髪だけでなく顔まで赤い。

    マミ「うん、上出来ね。暁美さんには、これからこの魔法を覚えて貰います」

    ほむら「……はい? え、ええっ……!?」

    どこに突っ込めばいいのか分からず、目を白黒させる。

    ほむら「何のために!?」

    35 = 1 :

    マミ「いつもは人目を忍んで魔獣狩りをしているけれど、クリスマスばかりはそうも言っていられないのよ。
       幸いなことにサンタクロースの恰好だと、変な所を見られても『ああ、クリスマスのイベントか』で済むから」

    ほむら「そ、それだけ……?」

    マミ「うーん、もっと大事な理由があるけれど……。まあ、それは当日分かるわ」

    ほむら (うう……。この顔は本気っぽい………)

    ほむら「というか、衣装って魔法で変えられたのね……」

    マミ「ある程度はね。佐倉さんのも、いつもの魔法少女姿のデザインが若干残ってるでしょう?」

    ほむら「……言われてみれば、そうね」ジロジロ

    杏子「あんまりまじまじと見ないでくれ……///」

    マミ「ま、そんなに難しい魔法じゃないわ。今から教えるから、頑張って覚えて」

    ほむら「ホントのホントに、やるのね……?」

    マミ「ホントのホントのホントよ」

    ほむら (逃げ道はなさそうね………)

    ほむら「……はあ。わかった。覚悟を決めるわ………」

    QB (それにしても毎年、この時期のマミは生き生きしているね……)

    37 = 1 :

    ――二時間後――

    マミ「それじゃ、卒業試験よ。一発で決めて見せなさい」

    杏子「頑張れー。失敗すると長引くぞー。キュゥべえ、みかんくうかい」モグモグ

    QB「いただこう」

    ほむら「ちょっと外野は黙ってなさい……!」

    ほむら (よし、行くわよ……) スゥ… ハァ…

    深呼吸をし…

    ほむら「………とりゃっ!」キラキラッ クルッ

    杏子とまったく同じエフェクトと動作で魔法を使う。すると…

    杏子「……おおー」

    マミ「やるじゃない!」

    やはりいつもの魔法少女姿をベースに、真っ赤に染まったサンタコスほむらが姿を現した。

    ほむら「ど、どうかしら……///」

    マミ「良くできたわ、免許皆伝よ! なかなか似合ってるし、言うこと無しね」

    ほむら (はぁ。まさかエフェクトの出し方まで強要されるとは思わなかった……)

    38 = 1 :

    ほむら「当日は……この恰好で行動、するのよね……?」

    マミ「そうよ?」

    ほむら (改めて心の準備が必要ね、これは……)

    杏子「ご苦労さん、ほむら」

    ほむら「……杏子もこれ、教えられたのよね?」

    杏子「まぁな。厳しい修行だったよ……」

    ほむら「お互い辛いわね……」

    杏子「ああ……」

    マミ「何よ。ホントに便利なんだから、サンタ服」

    ほむら「大丈夫、そこは疑ってないから……」シュン…

    とりあえず、変身を解いてもとの服装に戻る。

    マミ「あら、カワイイのに戻っちゃうの?」

    ほむら「もう遅いもの。帰らないと」

    マミ「そっか。泊まっていてもいいのよ?」

    ほむら「着替えもないしね。今日はやめておくわ」

    39 :

    かわいい

    40 = 1 :

    マミ「分かった。それじゃとりあえず、今日の作戦会議はこれにて終了ね。
       当日までに何かあったら、私に聞いて頂戴」

    ほむら「了解」

    杏子「ふぁー、長かったな。もうこたつで寝ちまおうかな……」ンッ…

    おおあくびをしながら体を伸ばす。

    マミ「佐倉さんはお風呂ぐらい入ってきなさい」

    杏子「へいへい」

    ほむら「キュゥべえ、帰りましょう?」

    QB「それじゃマミ、杏子、お邪魔したね」ピョコッ

    ほむらの肩に飛び乗るキュゥべえ。

    ほむら「おやすみなさい」

    杏子「おやすみ」

    マミ「おやすみなさい。24日、戦場で会いましょう」

    ほむら「はいはい……」

    ギィ… パタン

    41 = 31 :

    ほむほむ

    42 = 1 :

    ――23日 23時50分 ほむホーム――

    静かな深夜の部屋の中。布団やその他いろんなものが散らかっている。

    マミ「皆の者。準備は宜しいか」

    腰に手を当て、険しい顔で尋ねる。

    QB「契約の準備なら、僕はいつでもできているよ」

    杏子「あふふ……。あ、うん、いいぞー……」

    ほむら「特に準備という準備も無いじゃない……。あ、財布ぐらい持って行かないと……」

    マミ「うわあ、締まらない……」

    ほむら「……ていうか杏子、あなた眠そうだけど、まさかちゃんと寝てないの?」

    杏子「んー? ちょっと準備作業が長引いちまってさ」

    ほむら「準備?」

    マミ「ええ、これよ」ドサッ

    背中に抱えていた、大きな白い布包みを降ろす。

    ほむら「それはいわゆる、サンタのプレゼント袋よね……。四次元ポケット的な」

    マミ「四次元はあなたの盾でしょう? これは三次元よ」

    43 = 1 :

    ほむら「ただのコスプレアイテムじゃないわけ? コレ……」

    マミ「大事な中身入りよ。私もやっていたんだけれど、佐倉さんは先に眠れるから残りを頼んでおいたの」

    ほむら「まぁ、もうその……中身が何でも良いわ。とりあえずついて行くから」

    マミ「うん。じゃあ早速、出かけましょうか!」キラキラッ クルッ

    派手なキラキラを飛ばしてサンタに変身。
    降ろしたプレゼント袋を背負い直し、どこからどう見ても完璧なサンタである。

    ほむら (逆に目立つだけな気がするのだけれど……) キラキラッ クルッ

    ほむらも、すこし控えめな動きでサンタ服に着替えた。

    杏子「いってらっしゃーい」

    マミ「留守番よろしくね」

    ほむら「冷蔵庫とか漁ってもいいけど、あまり派手に食い散らかさないで頂戴ね」

    杏子「大丈夫だよ、今は眠くてそれどころじゃねーし……。ふああ」

    ほむら「……そう。行ってきます」

    杏子「おう」

    ギィー パタン…

    杏子「………zzz」

    44 = 1 :

    トコトコ…

    二人で歩く深夜の街。服はモコモコと暖かいが、
    それでも顔に吹き付ける氷点下の風が少し痛い。

    ほむら (今のところ、誰も……居ないみたいね) キョロキョロ

    周囲の視線を慎重に確認しながら歩く。

    QB「ほむら、どうしたんだい? そわそわしているように見えるよ」

    ほむら「っ、貴方は黙ってなさい……」

    マミ「ふふふ。そのうち慣れるわよ」

    ほむら (変な趣味に目覚めるみたいな言い方ね……)

    ほむら「……それで。どこに向かうつもりなの? 魔獣が出る様子も無いわよ?」

    マミ「うん、基本的には一人暮らしの人がターゲットだから。
       このあたりは戸建てが多いけれど、駅の方に近づくと、
       アパートが多く建っている場所があるでしょう。あの辺から始めるわ」

    QB「去年と同じルートだね」

    マミ「ええ、少し早足で行くわよ!」スタスタ…

    ほむら「あ、ちょっと置いてかないで……」トコトコ…

    45 = 1 :

    ――とある集合住宅の前――

    ほむら「嘘でしょ……」

    マミ「……ね?」

    一見、何の変哲もないアパート。廊下の蛍光灯が寿命になり、やかましく点滅している。

    QB「今年も酷いね……」

    しかし魔法少女の目には、そこがどす黒い瘴気に包まれていることが見て取れた。

    ほむら「……でも、魔獣が居る様子はなさそうね」

    手の甲のソウルジェムを見るが、特に反応は見られない。

    マミ「魔獣が出現する予兆、といった所ね。早速行動に移るわ」

    ほむら「え? 出現する前にどうやって……」

    QB「何事もね、起こった結果に対処するのも大切だけど、それを引き起こした原因を絶つのがもっと大事なんだ」

    ほむら「な、何? 偉そうに……」

    マミ「ふふふ。そう言うこと。えっと……うん、あそこね! 行くわよ!」タンッ

    言うが早いか、アパートの一室を見定めると、マミはそのベランダに向けて高くジャンプした。

    ほむら「あえっえ!? ちょっと!」タンッ

    46 = 1 :

    ほむら『何突然不法侵入して、って……うっ!』

    テレパシーで話しながら、先ほど眺めた瘴気のまっただ中にいることを自覚し、顔をしかめるほむら。

    マミ『どう? ここまで来ると、この部屋が瘴気の発生源だって良く分かるでしょう』

    ほむら『そうね……。ちょっと気持ち悪い……』

    マミ『これがクリスマスによって強化された『寂しさ』よ……。だんだんクリスマスの恐ろしさが分かってきたでしょう』

    ほむら『実際に見てしまうと、頷くしかないわね……。それで、どうするの?』

    マミ『簡単よ。見てなさい。……こんばんはー!」コンコン

    良く通るいい声で挨拶をしながら、窓ガラスをノックする。

    ほむら『はいぃ!?』

    マミ「開けてもらえませんかー?」コンコン

    ほむら『ちょ、ちょっと何やってるのよ!』

    マミ『大丈夫よ』

    そのまま20秒ほど待ったろうか。カーテンが開き、若い男性がぎょっとした目でこちらを見つめた。
    十代ぐらいだろうか。わりと度のきついめがねをかけている。

    マミ「こんばんはー」フリフリ

    それに穏やかな笑顔のまま、マミは手を振って応えた。

    47 :

    俺か

    48 :

    いや俺だろ

    49 = 1 :

    ガラガラッ

    「き……君たちは……? 一体……? ここで何を?」

    顔は驚いた表情のまま、男が窓を開けて声を上げた。

    やはりというか何というか、部屋には一人だけのようだ。
    まっ暗なワンルームに、パソコンの液晶画面だけが眩く浮かんでいた。

    マミ「うふふ。私たちは、通りすがりのサンタクロースです」

    「さ、サンタぁ? 何を言って……」

    ほむら (………??)

    男と同様か、あるいはそれ以上に混乱した表情で棒立ちのほむら。

    マミ「ちょっと早いんだけれどね。よっと……」ドサッ

    背中の袋を降ろし、

    マミ「何だか寂しそうな気配がしたから……」ゴソゴソ…

    中を漁って小さな包みを取り出した。

    マミ「はい! クリスマスプレゼント!」ヒョイ

    それを、男の手を取って、そっと握らせる。

    「………え?」

    50 = 1 :

    マミ『よし、オッケー。暁美さん、ずらかるわよ!』

    ほむら『………あえ!?』

    マミ『下の階のベランダに逃げ込むわ!』

    マミ「それじゃあね。メリー・クリスマス!」ピョン

    多くを語る前に、さっさとベランダから飛び降りるマミ。

    ほむら『あ、待って!?』ピョン

    ほむらも後を追ってベランダから飛び降りる。

    「えっ! ちょっと! ここ5階だぞ!!」ドタッ

    それを見て、蒼白な表情で窓から飛び出す男だったが、
    見下ろすベランダの下には誰一人姿が見えなかった。

    「消えた……? 何だったんだ………」

    一瞬にして現れては消えた、まるで夢のような少女のサンタ二人組。

    「………」ギュッ

    ただ、手に強く握っている小さな包みが、それが夢ではなかったことを確かに証明していた。


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