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    元スレあかり「あかりにとって、初恋はあなたでした」

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    みんなの評価 : ★★
    タグ : - ちなあか + - ゆるゆり + - 天使 + - 安価 + - 百合 + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    1 :

    好きです、結衣先輩。

    そう伝えるのにどれほどの時間がかかっただろう。
    卒業式が終わって、みんな帰ってしまって。
    それでも結衣先輩は辛抱強く私を待ち続けてくれていたのを今でもよく覚えている。

    もしかしたら、結衣先輩も私のこと。

    そんなふうに思わなかったといえば嘘になる。
    けれど、その後の結衣先輩の返事に「やっぱり」と納得してしまったのは、
    私だってこの気持ちが他の人のものとは少し違うのを知っていたからだ。

    結衣「ごめんね、ちなつちゃん」

    ――私たち、女の子同士だから。

    3 = 1 :


    ちなつ「……」

    あかり「……」

    ちなつ「結衣先輩たち……」

    言いかけて、口を噤んだ。
    卒業式の日、結衣先輩に告白して見事に玉砕してから数ヶ月。
    私たちは無事に三年生へと進級していた。

    ちなつ「あー、だめだな私……なんかまだ先輩たちがいないの慣れないや」

    あかり「あかりもだよぉ、今にも京子ちゃんや結衣ちゃんが入ってきそう」

    4 :

    俺か

    5 :

    なに言ってんだ

    6 = 1 :

    「ほんとだね」と言って笑おうとして、私は危うく溜息を吐きそうになった。
    まだ少し、結衣先輩のことで笑うのは辛い。
    振られてすぐに諦められるような女ではないのだ、私は。

    実際、諦めてはいるのだと思う。
    ただ、もし私が男の子だったら、とか。結衣先輩が、女の子じゃなかったら、とか。
    そんなことを考えてしまうから本当の意味ではきっと、諦めきれてはいない。

    考えたって、仕方の無いことなのに。

    あかり「お茶、お替りいれようか?」

    ちなつ「あ、うん。ありがと」

    7 :

    最近この人よく投下してくれるね
    ありがてぇ

    8 = 1 :

    あかり「えへへ、どういたしまして」

    あかりちゃんはにこにこ笑いながら、まだ半分ほど残っている私のお茶に新しく
    熱いお茶を注ぎ足した。
    たぶん私は、あかりちゃんにまで気を遣わせてしまっているのだろう。

    自分では、落ち込んでるつもりなんてないんだけどなあ。
    春休みが明けたばかりのあかりちゃんの言葉を辿りながら、思う。

    なにかあった?
    心配そうなあかりちゃんに、私はううん、大丈夫だよと首を振った。
    けれど、きっとあかりちゃんにはその嘘がばれているはずだ。そのくらいもう、
    あかりちゃんとは長い付き合いで、そのくらいもう、仲のいい友達だから。

    9 :

    相変わらず見るに耐えないな

    10 :

    >>9
    お前の顔がな

    11 = 1 :

    ちなつ「なんかこの時期って、眠くなってくるよねえ」

    私はとすっとテーブルの上に顔を伏せると、言った。
    連休も終わって、中間テストも終わった頃だ。
    色々疲れてくるし、そろそろ高校受験がどうだってうるさく言われているし。

    あかり「だよねぇ」

    あかりちゃんも私の真似をして、冷たいテーブルに頬を乗せた。
    「きもちいー」と笑う。
    確かに、腕から伝わる木の冷たさはもうすぐやってくるはずの夏には最大の武器に
    なるだろう。

    あかり「あー、のんびりだぁ」

    12 = 1 :

    遠くのほうで、チャイムが鳴る。
    近所の高校で、授業が終わったことを知らせるチャイムの音。
    その音を聞きながら、高校生になった結衣先輩のことを少しだけ考えてみた。

    考えたけど、何も想像できない。
    結衣先輩の横にいる、私の想像なら昔はいくらでも出来たのに。
    隣に他の誰かがいる結衣先輩のことなんて、想像できるはずもなかった。

    私は軽く頭を振ると、顔を上げて「あかりちゃん」と名前を呼んだ。
    あかりちゃんは「うん?」と視線だけを私に向ける。

    ちなつ「なにかする?」

    あかり「なにかって?」

    13 = 1 :

    私が答えに詰まると、「ごらく部はなにかしなくたってごらく部なんだよぉ」なんて。
    あかりちゃんがそう言って、寂しそうに目を伏せた。

    ちなつ「……そうだったね」

    あかり「ごめんね、あかりとだけじゃつまんないよね」

    ちなつ「そんなことないよ!」

    慌てて首を振った。
    元々新入部員を募集しないと最初に決めたのは、私なのだ。
    第一正規の部活動でもないのに、新入部員を勧誘するのはいかがなものか。
    (生徒会長になった櫻子ちゃんなら喜んでごらく部設置を認めてくれそうだけど、
    同じく生徒会長になった向日葵ちゃんは渋い顔しそうだし)

    14 = 1 :

    あかり「やっぱり、新しい子……」

    ちなつ「ごらく部は私たちで最後、でしょ?」

    あかりちゃんの言葉を遮り、私は言った。
    「……うん」
    やがて、あかりちゃんはえへへと小さな笑いを漏らして頷いた。その笑いにはきっと、
    寂しさだったり悲しみだったり、そういうものも混じっているのだと思う。

    ごらく部を作ったのは、卒業した京子先輩だった。
    そんな京子先輩を中心に、この部活は出来上がっていた。どんなことだって
    始まりは京子先輩で、だからそんな京子先輩のいないごらく部は、ごらく部であって
    ごらく部じゃないようなもの。

    15 = 7 :

    16 = 1 :

    先輩たちがいた頃だって一人も新入部員はいなかったのだから、どちらにしても
    入ってくれるような子はいないのだろうけど、ごらく部は私たちの代で終わらせることは
    残った私たち二人で決めたことだった。

    あかり「……そろそろ帰ろっか」

    ちなつ「うん、そうだね」

    熱いお茶を飲み干して、私は頷いた。
    あかりちゃんが空になったコップを持って立ち上がる。そのまま、茶道部だった頃の
    面影が唯一残っている流しに持って行った。

    その後姿から視線を逸らすと、私は二人では広すぎる部室を見回してみた。

    18 = 1 :

    ここで結衣先輩に出会って、恋した。
    それが普通のことだと思っていたのは、その好きがあまりにも自然に溢れてきたもの
    だったから。

    でも、クラスの子や街で見かける女の子たちは皆、男の子のアイドルや、男の子に
    夢中だった。
    私だって、かっこいいなくらいは思うけれど、それでもどうしてあそこまで夢中に
    なれるのかわからなかった。けれどきっと、私が他の女の子とはどこか違うのだろうということは
    なんとなく、知ってしまった。

    ――私たち、女の子同士だから。

    女の子同士で恋愛なんて、出来ない。
    はっきりその現実を突きつけられたあの卒業式の日から。私の中の何かは、
    カチコチに固まったままだ。

    19 :

    切ないな

    20 = 1 :

    ―――――
     ―――――

    「吉川さんって、なんか変わったよね」
    「あー、わかる。ちなっちゃんて前はもっとこう、すっごい女の子女の子してたよねー」
    「今のちなっちゃんも落ち着いてる感じで可愛いけどね!」

    そうかなあ。
    私は苦笑交じりにクラスメイトたちの言葉に首を傾げた。
    内心、可愛いと言われてドキドキしたりしているのを隠すために。

    こういうとき、私はいつもあかりちゃんがいたらいいのにと思ってしまう。
    友達が欲しくないわけじゃ無い。友達がたくさん出来たのは嬉しいけれど。

    21 :

    どうか今回は完結しますように
    支援

    22 = 1 :

    あかりちゃんとクラスが離れてしまってから、何かと一人でいることが多くなった私に
    親切に話しかけてくれる子はたくさんいる。
    けれど私にとって、嬉しいようであまり話しかけないでほしいとも思ってしまうのは
    私のわがままかもしれないけれど、どうしても俯いてしまうことが多くなった。

    ちなつ「ごめん、ちょっとトイレ行って来るね」

    私は座っていた席から立ち上がると、言った。
    「ついていこっか?」と親切心丸出しで言ってくる子に首をふって、教室を出る。

    23 = 1 :

    私は女の子を恋愛対象として見てしまう。
    それを自覚したのはつい最近のことだけれど、だからこそ誰かと目を合わせることが
    怖かった。

    誰かと近付きすぎてしまうことが、怖かった。

    ちなつ「……」

    もうすぐ昼休みが終わるせいか、トイレには誰の姿もなかった。
    水道で思い切り水を流しながら、私はその冷たい流水の中に手を入れた。
    ここの水はあまり冷たくなくて私の頭を冷やすにはだいぶ時間がいりそうだった。

    24 = 1 :

    近付きすぎたら、好きになってしまう気がする。
    優しくされればされるだけ、私の中でその子に抱いていたはずの友達としての
    好きが恋情としての好きに変わって行ってしまう。

    好きになって結衣先輩のときと同じような気持ちを味わってしまうのなら。
    だったら、好きにならなければいい。

    それが私の考えたことだった。

    「なんか目合わせなくなったよね、ちなっちゃん」なんて昔からのクラスメイトに
    言われたって、あなたのことを好きになるよりはマシでしょ。そう思って、「そんなことないよ」と
    笑っておくのだ。

    26 = 1 :

    >>23
    >誰かと近付きすぎてしまうことが、怖かった。

    誰かに近付きすぎてしまうことが、怖かった。

    27 = 1 :

    近付きすぎず、遠ざけすぎず。
    それが私の編み出した世渡り術。

    チャイムが鳴った。
    冷たいと感じなかったはずなのに、水道を止めて頬に当てた自分の手はすっかり
    冷えてしまっていた。

    あかりちゃんにこの手で触れたら、あかりちゃんは「きもちいー」と言って
    笑ってくれるだろうか。
    早く部室に行きたいな。私はそう思いながら、我慢の塊になって教室へ戻った。

    28 = 1 :


    あかり「あ、ちなつちゃん」

    ちなつ「……あかりちゃん」

    掃除を終わらせて部室へ行くと、そこにはもうあかりちゃんの姿があった。
    勉強していたらしい手を止めて、あかりちゃんが顔を上げてにこにこ笑う。
    今日は廊下でもまったく擦れ違わなかったから、あかりちゃんと会うのは一日ぶりくらい。

    あかり「どうかした?」

    ちなつ「ううん……」

    立ち止まったままの私に首を傾げるあかりちゃんに、私はなんでもないよと言って
    あかりちゃんの正面に腰を下ろした。

    30 = 1 :

    ちなつ「たださ」

    あかり「お茶、いる?」

    うん、と頷きながら私は呟くように言った。
    たださ、あかりちゃん見るとなんか安心するんだよね。
    それは心からの言葉だった。

    教室から逃れてあかりちゃんと二人きりの空間。
    だけど、あかりちゃんはずっと私の友達で、女の子のあかりちゃんでも私が
    あかりちゃんを恋愛対象として意識したことは一度だってなかった。

    あかり「……そっかぁ」

    ちなつ「うん」

    31 :

    おち

    32 = 1 :

    あかり「……嬉しいな」

    あかりちゃんはそう言って笑いながら、熱すぎるお茶を私の前に置いた。
    いつのまにか先輩たちがいなくなってからお茶を淹れるのは私の役目ではなく
    あかりちゃんの役目になっていて。

    ちなつ「嬉しいの?」

    あかり「うん、嬉しいよ」

    ちなつ「そっか、なら私も良かった」

    33 = 1 :

    静かな空間。
    私たちはお互いの存在にじっと耳を澄ませたまま、どうでもいいようなことを考えたり
    まったくなんの関係もないことをしたりするのが、心地よかった。

    あかりちゃんとだったら、私はいつまでも一緒にいられる気がするくらい。

    34 :

    しえん

    36 :

    37 = 1 :

    一度だけ、あかりちゃんとキスしたことがある。
    あれは中学生になってはじめての夏休みだったと思う。

    今でもたまに、そのときのことを考えるのに。
    不思議と私は、それでもあかりちゃんのことを意識したりはしなかった。

    あのときから既に、私の中では「友達として」だったから。
    私にとってあかりちゃんは、唯一友達だと思える子だから。

    あかりちゃんの抵抗が、私の中の欲望が、上手く嵌りあってそれ以上へはシフトしない。
    女の子同士として、ではなく友達として一緒にいられるあかりちゃんの隣。
    無駄に神経をすり減らすこともなく過ごせる私の居場所。

    39 = 1 :


    結衣先輩から電話があった。
    夏休みが近付いてきたある日のことだった。

    あかり「ちなつちゃん」

    身体を揺すられて、目を覚ました。
    熱い部屋で眠っていたせいか、身体がいやに重かった。
    せっかくの冷たいテーブルまで体温のせいですっかり冷たさを失っている。
    私は身体を起こしながら、「寝ちゃってた……」と笑って見せて。

    それから、自分が泣いていることに気付いた。

    40 :

    >>2お前のせいでお茶吹いたwwwww

    41 = 1 :

    ちなつ「……」

    あかり「こわい夢、見てた?」

    ちなつ「……うん、そうなのかも」

    私はははっと笑って涙を拭ってみた。
    一粒だけ。
    もう、涙は出てこなかった。

    夢で泣くなんて、思いもしなかった。

    42 = 1 :

    あかり「ちなつちゃん、突然震えだしたからびっくりしちゃった」

    ちなつ「そっか、ごめんね……」

    強がりを言わないのはあかりちゃんの前だから。
    あかりちゃんの前だけは、私は素直に私でいることができた。

    結衣先輩からの電話。
    なんてことはない、近況報告の。
    だからよけいに、寂しくて悲しかった。

    結衣先輩の中で、私の好きはなかったことになっているのだ。

    44 :

    45 = 1 :

    あかり「どんな夢、見てたか聞いてもいいかな」

    ちなつ「ぜんぜん、面白くもなんともない話だよ」

    あかりちゃんに話したら、きっと楽になれる。
    あかりちゃんが私のために怒ってくれることはちゃんとわかっているから。
    だけど、あかりちゃんに夢の話はしたくなかった。

    あかりちゃんはそれがわかったのか、「じゃあまた今度、楽しい夢の話聞かせてね」と
    笑ってノートに視線を落としてくれた。

    47 = 1 :

    ほんとうに、ぜんぜん面白くもなんともない話。

    女の子同士だよ?
    無理に決まってるでしょ。
    付き合えるわけないじゃん。
    やめてよ、きもちわるい。

    浴びせられた言葉の数々は、ずっと心の底でひた隠していた自分自身に対しての嫌悪感。
    でもきっと、そんな反応が普通で。
    結衣先輩が、優しすぎた。そんな結衣先輩に恋したことを私は後悔していないけれど。

    48 = 1 :

    本当にあんな終わり方だったのなら、私はもう恋なんてしようにもできなかった
    かもしれないのになあ。
    それでも夢でよかった、と思っている自分を責められはしない。

    あかり「……」

    ちなつ「……あかりちゃんが起こしてくれて良かった」

    あかりちゃんが起こしてくれなかったら私は、永遠にあの中傷の渦から
    抜け出せなくなっていたかもしれない。

    49 = 1 :

    あかり「……」

    ちなつ「あかりちゃん?」

    あかりちゃんは、何も言わなかった。
    何も言わずに、ノートとにらめっこ。

    そんなにわからない問題があるのかな。
    ぼんやりとそう思ったときだった。

    あかり「ちなつちゃんは、友達を好きになっちゃうことってあると思う?」

    50 :


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