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元スレ女「また混浴に来たんですか!!」
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男「友達は、拙いながらも泳ぐことができた。はじめは集団でボールを投げ合ったりしていた」
男「お昼ごはんも食べ、午後になった。皆まとまってやる遊びに飽きて、各々泳ぎだした」
男「俺も泳ぐ真似をした。一人だけ突っ立ってるのは恥ずかしかったからな」
男「明るい日差しの差す天候とは裏腹に、波の勢いは強い気がしていた」
男「顔に水をつけてるうちに、友達とはぐれてしまった。トイレに行ったり、飲み物を取りに行ったり、泳げるもの同士でみんな自由に行動していたんだろう」
男「俺はなんだか惨めな気がした。自分だけ泳げないし、自分だけ自動車に乗ると体調を崩す」
男「自分の親だけが、友達の親が迎えに来た時も挨拶にすら出てこない」
男「惨めさが怒りに変わり、俺はどうにでもなってしまえばいいと思って沖へ向かって進んでいった」
男「背は高かったから、足はついた。それでも次第に身体のコントロールが効かなくなっていった」
男「引き返そうと思ったがもう遅かった。パニックになって、慌てた俺は泳ごうとして、水の中に潜り込んでしまった」
男「次に目覚めたのは、夕方になった時だった」
男「悲しいことにな、自分で起きたんだ」
男「目が覚めると夕陽が差していた。俺は溺れかけ、失神したあと、なんとか浜辺まで押し戻されたらしかった」
男「周囲には何人も人がいた。友達もまさか俺が溺れかけていたとは思わず、泳げないから寝ていると思ったらしい」
男「もしも水が気道に詰まっていたら、俺は本当に死んでしまっていただろう」
男「生きてても死んでても見分けの付かない人間だと思った。ひどく孤独に感じたよ。帰り道一緒に帰っている時も、友情なんてものは存在しないんだと怒りに満ちてずっと無言になっていた」
男「その日の夜に風邪を引いた。親はふたりとも、別々の場所に外出をしていた」
男「布団に入っても身体は震えていた。そのくせ身体は熱かった。じっと寝ていることに耐えられなくなって布団から抜け出した。涼しさが心地よかった」
男「そのせいで風邪は悪化した。いっときの涼しさを求めて身体から熱が奪われているなんて気にもかけなかった。こういうのは、湯冷めと似ているな」
男「これでおしまいだ。お前の人生が実りあるものになるようなエピソードだったことを願うばかりだ」
男「お昼ごはんも食べ、午後になった。皆まとまってやる遊びに飽きて、各々泳ぎだした」
男「俺も泳ぐ真似をした。一人だけ突っ立ってるのは恥ずかしかったからな」
男「明るい日差しの差す天候とは裏腹に、波の勢いは強い気がしていた」
男「顔に水をつけてるうちに、友達とはぐれてしまった。トイレに行ったり、飲み物を取りに行ったり、泳げるもの同士でみんな自由に行動していたんだろう」
男「俺はなんだか惨めな気がした。自分だけ泳げないし、自分だけ自動車に乗ると体調を崩す」
男「自分の親だけが、友達の親が迎えに来た時も挨拶にすら出てこない」
男「惨めさが怒りに変わり、俺はどうにでもなってしまえばいいと思って沖へ向かって進んでいった」
男「背は高かったから、足はついた。それでも次第に身体のコントロールが効かなくなっていった」
男「引き返そうと思ったがもう遅かった。パニックになって、慌てた俺は泳ごうとして、水の中に潜り込んでしまった」
男「次に目覚めたのは、夕方になった時だった」
男「悲しいことにな、自分で起きたんだ」
男「目が覚めると夕陽が差していた。俺は溺れかけ、失神したあと、なんとか浜辺まで押し戻されたらしかった」
男「周囲には何人も人がいた。友達もまさか俺が溺れかけていたとは思わず、泳げないから寝ていると思ったらしい」
男「もしも水が気道に詰まっていたら、俺は本当に死んでしまっていただろう」
男「生きてても死んでても見分けの付かない人間だと思った。ひどく孤独に感じたよ。帰り道一緒に帰っている時も、友情なんてものは存在しないんだと怒りに満ちてずっと無言になっていた」
男「その日の夜に風邪を引いた。親はふたりとも、別々の場所に外出をしていた」
男「布団に入っても身体は震えていた。そのくせ身体は熱かった。じっと寝ていることに耐えられなくなって布団から抜け出した。涼しさが心地よかった」
男「そのせいで風邪は悪化した。いっときの涼しさを求めて身体から熱が奪われているなんて気にもかけなかった。こういうのは、湯冷めと似ているな」
男「これでおしまいだ。お前の人生が実りあるものになるようなエピソードだったことを願うばかりだ」
女「それは、悲しい出来事でしたね」
男「不謹慎は被害者の特権だろ。お前なら笑ってもいいんだよ」
女「人の痛みがわかるのも被害者の特権です。肉体が死に近づいた時に覚える感情は孤独感であるということもわかってるつもりです」
女「友達はあなたが呼吸しているのを確かめた上で、放って置いたのだと思いますよ」
男「どうだかな。何時間も寝ていても問題ないような友達なら、そもそも誘う必要はなかっただろう。俺はあの頃から少し浮いていたからな。海に行く話題が出た時にたまたま俺もその場にいたから、一緒に行くことになっただけだったんだろう」
女「あなたも私と同じかもしれませんね。毎日こうやって、水への恐怖を乗り越えようとしているのかも」
男「温泉で海への克服か。そりゃあいいリハビリかもな」
女「今でも海は怖いですか?」
男「もっと怖いものといっぱい出会った。海への苦手意識も消えないが、海の方がマシだと思えるものの方が多いこともわかった」
女「例えばなんですか?」
男「嫌な人間とかだな」
女「それは、嫌な海より嫌かもしれないですね」
男「不謹慎は被害者の特権だろ。お前なら笑ってもいいんだよ」
女「人の痛みがわかるのも被害者の特権です。肉体が死に近づいた時に覚える感情は孤独感であるということもわかってるつもりです」
女「友達はあなたが呼吸しているのを確かめた上で、放って置いたのだと思いますよ」
男「どうだかな。何時間も寝ていても問題ないような友達なら、そもそも誘う必要はなかっただろう。俺はあの頃から少し浮いていたからな。海に行く話題が出た時にたまたま俺もその場にいたから、一緒に行くことになっただけだったんだろう」
女「あなたも私と同じかもしれませんね。毎日こうやって、水への恐怖を乗り越えようとしているのかも」
男「温泉で海への克服か。そりゃあいいリハビリかもな」
女「今でも海は怖いですか?」
男「もっと怖いものといっぱい出会った。海への苦手意識も消えないが、海の方がマシだと思えるものの方が多いこともわかった」
女「例えばなんですか?」
男「嫌な人間とかだな」
女「それは、嫌な海より嫌かもしれないですね」
男「話はおしまいだ」ザバァ
女「もうあがるんですか」
男「定位置につくだけだ。奥側は俺の席だ。どけ」
女「気を遣わなくてもいいですって」
男「さっきからずっと俯いてるだろう。俺以上に根暗に見えるぞ」
女「そういうことは口に出さずに遠回しに言うものだと思います」ザバァ
男「だから俺の定位置に座ると言ってるだろう」
女「座る場所にはこだわらないって言ってたくせに」
男「じゃあどういえば良いんだ」
女「そうですね……」
女「こうしましょう。私の身体の魅力に理性を失ったあなたがいつ襲い掛かってきても逃げられるように、入口付近に私はこれからも座り続けます」
女「これならみんな納得しますね」
男「…………」
女「もしもーし」
男「…………」
女「溺れていませんか?」
男「起きてる」
女「ならよかったです」
男「ふて寝するがな」
女「ちょっと!すみませんってば!」
女「もうあがるんですか」
男「定位置につくだけだ。奥側は俺の席だ。どけ」
女「気を遣わなくてもいいですって」
男「さっきからずっと俯いてるだろう。俺以上に根暗に見えるぞ」
女「そういうことは口に出さずに遠回しに言うものだと思います」ザバァ
男「だから俺の定位置に座ると言ってるだろう」
女「座る場所にはこだわらないって言ってたくせに」
男「じゃあどういえば良いんだ」
女「そうですね……」
女「こうしましょう。私の身体の魅力に理性を失ったあなたがいつ襲い掛かってきても逃げられるように、入口付近に私はこれからも座り続けます」
女「これならみんな納得しますね」
男「…………」
女「もしもーし」
男「…………」
女「溺れていませんか?」
男「起きてる」
女「ならよかったです」
男「ふて寝するがな」
女「ちょっと!すみませんってば!」
男「おはよう」
女「おはようございます」
男「…………」
女「…………」
男「触れてもいいか?」
女「駄目です」
男「どうして私服で風呂に来てる?」
女「美しい景観は損ねていません」
男「そうだが……」
女「何か昔話でもしてください。他の話題を求めます」
男「…………」
男「小学生の時に、女子がプールを見学していたが、あれは」
女「他の話題だって言ったじゃないですか!」
男「ここは学校じゃないんだ。わざわざ来ることもなかっただろうに」
女「無言で来なかったらあなたが悲しむじゃないですか」
男「風呂なしアパートだとこういう時に困るんだな」
女「家で髪の毛だけでも洗面所で洗って、身体はタオルで拭くことにします。幸い大学も夏休みに入りましたし」
男「本当にか?お前が本当にそんな面倒なことをしてまで清潔を保つのか?」
女「……保ちますよ」
男「目が泳いでるぞ」
女「金槌の人に言われたくないです」
男「泳げて羨ましい限りだ」
女「おはようございます」
男「…………」
女「…………」
男「触れてもいいか?」
女「駄目です」
男「どうして私服で風呂に来てる?」
女「美しい景観は損ねていません」
男「そうだが……」
女「何か昔話でもしてください。他の話題を求めます」
男「…………」
男「小学生の時に、女子がプールを見学していたが、あれは」
女「他の話題だって言ったじゃないですか!」
男「ここは学校じゃないんだ。わざわざ来ることもなかっただろうに」
女「無言で来なかったらあなたが悲しむじゃないですか」
男「風呂なしアパートだとこういう時に困るんだな」
女「家で髪の毛だけでも洗面所で洗って、身体はタオルで拭くことにします。幸い大学も夏休みに入りましたし」
男「本当にか?お前が本当にそんな面倒なことをしてまで清潔を保つのか?」
女「……保ちますよ」
男「目が泳いでるぞ」
女「金槌の人に言われたくないです」
男「泳げて羨ましい限りだ」
女「おはようございます」
男「おはよう。今日も早いな」
女「そういえば、私がのぼせて気絶した日の話なんですけど」
男「どうした」
女「私の裸見てませんよね」
男「見てない。おぶったが」
女「おんぶしたんですか!?」
男「他にどう持てと」
女「お姫様抱っこでいいじゃないですか!!」
男「それは……そっちの方がハードルが高い。見られているようで困る」
女「気絶してたんなら見えないでしょう」
男「気絶した方が悪い。ごちゃごちゃ言うな」
女「開き直った!?」
男「おはよう。今日も早いな」
女「そういえば、私がのぼせて気絶した日の話なんですけど」
男「どうした」
女「私の裸見てませんよね」
男「見てない。おぶったが」
女「おんぶしたんですか!?」
男「他にどう持てと」
女「お姫様抱っこでいいじゃないですか!!」
男「それは……そっちの方がハードルが高い。見られているようで困る」
女「気絶してたんなら見えないでしょう」
男「気絶した方が悪い。ごちゃごちゃ言うな」
女「開き直った!?」
男「おはよう。今日も早いな」
女「おはようございます。さぁ、私を襲わないうちにはやく奥へ」
男「はいはい」
女「大学生で夏休みにこんなに律儀に早起きしてるの私くらいですよ」
男「家で何してるんだ?」
女「就職活動も私は終わってますし、卒業論文の準備と、あとは不登校の時にしてたようなことです。本を呼んだり、映画を観たり」
男「文化的だな」
女「私も来年から働くんですね。ああ、日曜日の夜が憂鬱になってしまうのかぁ」
男「それは今までだって一緒だったんじゃないか」
女「これからはもっと大変でしょう」
女「月曜日の朝を楽しみに感じるような人を勝ち組というんでしょうね」
女「不登校の私は、むしろ誰とも会わない平日が安心できて、休日に外出するのを控えていましたからね」
女「平日も休日も、どちらも楽しく過ごせたらいいのになぁ」
男「そんなお前が朝風呂に入っているのは凄いことだな」
女「おはようございます。さぁ、私を襲わないうちにはやく奥へ」
男「はいはい」
女「大学生で夏休みにこんなに律儀に早起きしてるの私くらいですよ」
男「家で何してるんだ?」
女「就職活動も私は終わってますし、卒業論文の準備と、あとは不登校の時にしてたようなことです。本を呼んだり、映画を観たり」
男「文化的だな」
女「私も来年から働くんですね。ああ、日曜日の夜が憂鬱になってしまうのかぁ」
男「それは今までだって一緒だったんじゃないか」
女「これからはもっと大変でしょう」
女「月曜日の朝を楽しみに感じるような人を勝ち組というんでしょうね」
女「不登校の私は、むしろ誰とも会わない平日が安心できて、休日に外出するのを控えていましたからね」
女「平日も休日も、どちらも楽しく過ごせたらいいのになぁ」
男「そんなお前が朝風呂に入っているのは凄いことだな」
女「……ふっふっふ」
女「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ、ですよ」
女「お風呂嫌いの私が少しでもお風呂を好きになれるように、お母さんが私にプレゼントしてくれたものがあるんです」
女「誕生日でもクリスマスイブでもないのに、プレゼントをしてくれたことは珍しかったんです。あれは不登校の1月ごろのことだったでしょうか」
女「荒んでいてろくに口も聞かなかった私に、メッセージとともに包みを部屋に置いていてくれたんです」
女「風呂上がりの冬の脱衣場さえ、ちょっと楽しみになる魔法」
女「包みをあけるとバスタオルが2枚入っていました。何の変哲もない、キャラクターも何も描かれていないタオルです」
女「おちょくられている気がして一瞬腹が立ちました。ただ、手に持った瞬間に、心地の良い違和感があったんです。手触りが、なんだかやわらかい」
女「本物っていうのは絶妙なんですね。100%弾くとか、100%吸収するというのは二流の中の最高級品で。一流の物は、100%も100点も決して取らないように気をつけているんですね。少し、しっとりとしていました」
女「今身体に巻いているタオルは普通のバスタオルですが、身体を拭くタオルは別物なんです」
女「今治タオル、というものをご存知でしょうか。愛媛県今治市は伝統的なタオルの産地です。品質テストに合格したものが、今治タオルブランドとして販売されいます」
女「ティファニーやブルガリはブランドであるということくらいしか知らなかった私ですが、今治タオルというものが追加されて妙な気分でした」
女「その日は寝る前にお風呂に入るのが楽しみになりました。冬場の脱衣場の寒さが大嫌いだったのに、お風呂からあがるのを待ち遠しく思いました」
女「お風呂からあがり、身体を拭いてみたところ、なんとなくよかったんですよ。なんとなくいいな、と思った繊維が頭から包み込んでくれて。髪の毛もいつもほどにはワシャワシャしなくてもいい感じで」
女「癖になりました。お気に入りの枕が見つかったようなものです。タオルなんかにお金をかけるのは馬鹿馬鹿しいと、裕福な家庭の娘ながら思っていましたが。やはり高級なものは高級な理由があるんですね」
女「熟睡するには安心できる目覚まし時計を持てばいいんです。ゆっくりお風呂につかりたいなら最高のバスタオルを。デザートが梅干しだって聞かされてたら、フレンチのフルコースもしょっぱく感じてしまうでしょう?」
女「終わりよければ全て良しといいますが、終わりがよければ過程もよくなってしまうんですね。過程が良いから終わりがよくなるわけでもなく」
女「お風呂に入る前から、良いタオルが私を待っていると知っている。お風呂に入る前から、楽しい話題を共有してくれる人が待っていると知っている」
女「それが私が朝混浴を継続できている秘訣かもしれませんね」
女「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ、ですよ」
女「お風呂嫌いの私が少しでもお風呂を好きになれるように、お母さんが私にプレゼントしてくれたものがあるんです」
女「誕生日でもクリスマスイブでもないのに、プレゼントをしてくれたことは珍しかったんです。あれは不登校の1月ごろのことだったでしょうか」
女「荒んでいてろくに口も聞かなかった私に、メッセージとともに包みを部屋に置いていてくれたんです」
女「風呂上がりの冬の脱衣場さえ、ちょっと楽しみになる魔法」
女「包みをあけるとバスタオルが2枚入っていました。何の変哲もない、キャラクターも何も描かれていないタオルです」
女「おちょくられている気がして一瞬腹が立ちました。ただ、手に持った瞬間に、心地の良い違和感があったんです。手触りが、なんだかやわらかい」
女「本物っていうのは絶妙なんですね。100%弾くとか、100%吸収するというのは二流の中の最高級品で。一流の物は、100%も100点も決して取らないように気をつけているんですね。少し、しっとりとしていました」
女「今身体に巻いているタオルは普通のバスタオルですが、身体を拭くタオルは別物なんです」
女「今治タオル、というものをご存知でしょうか。愛媛県今治市は伝統的なタオルの産地です。品質テストに合格したものが、今治タオルブランドとして販売されいます」
女「ティファニーやブルガリはブランドであるということくらいしか知らなかった私ですが、今治タオルというものが追加されて妙な気分でした」
女「その日は寝る前にお風呂に入るのが楽しみになりました。冬場の脱衣場の寒さが大嫌いだったのに、お風呂からあがるのを待ち遠しく思いました」
女「お風呂からあがり、身体を拭いてみたところ、なんとなくよかったんですよ。なんとなくいいな、と思った繊維が頭から包み込んでくれて。髪の毛もいつもほどにはワシャワシャしなくてもいい感じで」
女「癖になりました。お気に入りの枕が見つかったようなものです。タオルなんかにお金をかけるのは馬鹿馬鹿しいと、裕福な家庭の娘ながら思っていましたが。やはり高級なものは高級な理由があるんですね」
女「熟睡するには安心できる目覚まし時計を持てばいいんです。ゆっくりお風呂につかりたいなら最高のバスタオルを。デザートが梅干しだって聞かされてたら、フレンチのフルコースもしょっぱく感じてしまうでしょう?」
女「終わりよければ全て良しといいますが、終わりがよければ過程もよくなってしまうんですね。過程が良いから終わりがよくなるわけでもなく」
女「お風呂に入る前から、良いタオルが私を待っていると知っている。お風呂に入る前から、楽しい話題を共有してくれる人が待っていると知っている」
女「それが私が朝混浴を継続できている秘訣かもしれませんね」
女「以上、宣伝でした」
男「今治市のまわしものか?」
女「根っからの東京育ちですね」
男「見た目は普通のタオルと違うのか」
女「すこしモコモコしている感じはしますかね」
男「耐久力はあるのか」
女「高級なものが脆いなんてのは偏見ですよ。雑に扱わなければ長く使えるのは靴と一緒です」
男「ほう、そうか。」
女「興味がおありですか」
男「けっこうな。安いタオルしか使ったことがないから、どういう違いがあるのか知りたい」
女「女の子の下着以外で初めて興味を持った布ですか」
男「今治タオル製の下着があったら凄い興味がわいてしまうかもな」
女「あくまでタオルですから……」
男「わるい、少しのぼせた」ザバァ
女「知ってます。それではまた早朝」
男「ああ、また早朝」
男「今治市のまわしものか?」
女「根っからの東京育ちですね」
男「見た目は普通のタオルと違うのか」
女「すこしモコモコしている感じはしますかね」
男「耐久力はあるのか」
女「高級なものが脆いなんてのは偏見ですよ。雑に扱わなければ長く使えるのは靴と一緒です」
男「ほう、そうか。」
女「興味がおありですか」
男「けっこうな。安いタオルしか使ったことがないから、どういう違いがあるのか知りたい」
女「女の子の下着以外で初めて興味を持った布ですか」
男「今治タオル製の下着があったら凄い興味がわいてしまうかもな」
女「あくまでタオルですから……」
男「わるい、少しのぼせた」ザバァ
女「知ってます。それではまた早朝」
男「ああ、また早朝」
おぶらない。
かけない。※水
しせんをむけない。
もまない。
混浴では、マナーを守りましょう。
社会でも、マナーを守りましょう。
さもなくば、この空間に、浸かる資格が与えられません。
次回「勃起してるってことですか?」
浸かっては出るのを繰り返すように。
話しては離されることの繰り返しで。
あなたといるのにも、あなたといないのにも、少し、疲れてきちゃいました。
かけない。※水
しせんをむけない。
もまない。
混浴では、マナーを守りましょう。
社会でも、マナーを守りましょう。
さもなくば、この空間に、浸かる資格が与えられません。
次回「勃起してるってことですか?」
浸かっては出るのを繰り返すように。
話しては離されることの繰り返しで。
あなたといるのにも、あなたといないのにも、少し、疲れてきちゃいました。
愛媛県民の俺なんとなく歓喜
二人ともいい方向に向かっててよかった
二人ともいい方向に向かっててよかった
今日はここでおしまいです。
様々な都道府県にいる人が読んでくださっているので驚いています。
それでは、おやすみなさい。
様々な都道府県にいる人が読んでくださっているので驚いています。
それでは、おやすみなさい。
男「おはよう」
女「おはようございます」
女「知ってますか?」
男「知ってる」
女「そうですか」
男「…………」
女「…………」
男「何がだ」
女「もうすぐ花火大会があるそうです。市内の掲示板にポスターが貼られていました」
男「そうだな」
女「その後に夏祭りも。私の地元では夏祭りと花火は同日だったので、ちょっと珍しく感じます」
男「そうか」
女「楽しみですね」
男「そうだな」
女「それにしても、最初のくだらないボケはなんだったんですか」
男「今日は既にちょっとのぼせているんだ」
女「おはようございます」
女「知ってますか?」
男「知ってる」
女「そうですか」
男「…………」
女「…………」
男「何がだ」
女「もうすぐ花火大会があるそうです。市内の掲示板にポスターが貼られていました」
男「そうだな」
女「その後に夏祭りも。私の地元では夏祭りと花火は同日だったので、ちょっと珍しく感じます」
男「そうか」
女「楽しみですね」
男「そうだな」
女「それにしても、最初のくだらないボケはなんだったんですか」
男「今日は既にちょっとのぼせているんだ」
女「おはようございます」
男「おはよう」
女「さぁ、私を襲わないうちに奥へ」
男「このくだり毎回やるのか」
女「アルバイトとか仕事だと、早く終わった人がお先ですっていうらしいじゃないですか。目上の人と温泉に来た時に早くあがるときも言うべきですかね」
男「知らん。俺は相手が出るまで耐えるからな」
女「お風呂の場合だと、先に入ってしまったときに言うべきかもしれませんね。お先です、一番風呂頂いちゃってます、ってな感じで」
男「一番風呂は好きか?」
女「嫌いではないですが。家でも気にしませんね。お父さんが入った湯を全部入れ替える、という残虐非道なことはしたことがありません。むしろ、怖い映画を観た後にお風呂に入った時に、お父さんの股間の毛らしきものが浮かんでいるのを見ると、こんな場所にお化けは出てこないだろうなと少し安堵さえします」
男「…………」
女「あ、男さんの浮いてる」
男「えっ」バシャ…
女「嘘です」
男「エイプリルフールじゃないぞ今日は」
男「おはよう」
女「さぁ、私を襲わないうちに奥へ」
男「このくだり毎回やるのか」
女「アルバイトとか仕事だと、早く終わった人がお先ですっていうらしいじゃないですか。目上の人と温泉に来た時に早くあがるときも言うべきですかね」
男「知らん。俺は相手が出るまで耐えるからな」
女「お風呂の場合だと、先に入ってしまったときに言うべきかもしれませんね。お先です、一番風呂頂いちゃってます、ってな感じで」
男「一番風呂は好きか?」
女「嫌いではないですが。家でも気にしませんね。お父さんが入った湯を全部入れ替える、という残虐非道なことはしたことがありません。むしろ、怖い映画を観た後にお風呂に入った時に、お父さんの股間の毛らしきものが浮かんでいるのを見ると、こんな場所にお化けは出てこないだろうなと少し安堵さえします」
男「…………」
女「あ、男さんの浮いてる」
男「えっ」バシャ…
女「嘘です」
男「エイプリルフールじゃないぞ今日は」
女「おはようございます。お先です」
男「おはよう」
女「夏はいいですね。脱衣場が寒くないです」
女「脱衣場が寒いせいで、国民の生産性は減少していますからね」
男「またよくわからない持論を」
女「おふろ入らなくちゃいけないなと思いながら、それでも入りたく無くて迷ってるうちに、電気つけたまま寝ちゃったことが20回くらいあるんです」
女「浅い睡眠で早朝に目覚めた時の損した気持ちなんか筆舌に尽くしがたいです。いや、ペンがあったら紙いっぱいに損という文字で埋め尽くしたいくらいです」
女「こんなことならさっさと寝るのを決め込んで朝入っておけばよかったなって」
男「それで今に至るのか」
女「あまりに早い段階で敗北を認めると新たな道がひらけるんですよ。」
男「もしも朝寝坊したらどうするんだ」
女「周囲にばれやしないかと一日ドキドキしながら過ごしたことも5回くらいあります」
男「うまくいかないものだな」
男「おはよう」
女「夏はいいですね。脱衣場が寒くないです」
女「脱衣場が寒いせいで、国民の生産性は減少していますからね」
男「またよくわからない持論を」
女「おふろ入らなくちゃいけないなと思いながら、それでも入りたく無くて迷ってるうちに、電気つけたまま寝ちゃったことが20回くらいあるんです」
女「浅い睡眠で早朝に目覚めた時の損した気持ちなんか筆舌に尽くしがたいです。いや、ペンがあったら紙いっぱいに損という文字で埋め尽くしたいくらいです」
女「こんなことならさっさと寝るのを決め込んで朝入っておけばよかったなって」
男「それで今に至るのか」
女「あまりに早い段階で敗北を認めると新たな道がひらけるんですよ。」
男「もしも朝寝坊したらどうするんだ」
女「周囲にばれやしないかと一日ドキドキしながら過ごしたことも5回くらいあります」
男「うまくいかないものだな」
男「おはよう」
女「…………」
男「おはよう」
女「…………」
男「おはようございます。お先です」
女「うむ。おはよう」
男「ちょっと考えてみたんだ。お前が昨日話した寝る前の風呂の話について」
女「私がお風呂で裸姿になることについて妄想してどうしたんですか?」
男「そこまではっきり間違えるなら、お前の耳が遠くなったんじゃなくて、きっと俺の滑舌が物凄く悪かったんだろう」
女「それでそれで?」
女「…………」
男「おはよう」
女「…………」
男「おはようございます。お先です」
女「うむ。おはよう」
男「ちょっと考えてみたんだ。お前が昨日話した寝る前の風呂の話について」
女「私がお風呂で裸姿になることについて妄想してどうしたんですか?」
男「そこまではっきり間違えるなら、お前の耳が遠くなったんじゃなくて、きっと俺の滑舌が物凄く悪かったんだろう」
女「それでそれで?」
男「お風呂が嫌いなお前からすると、入浴は義務で睡眠は欲求なんだろう」
女「そうですね。私の場合三大欲求ではなく、三大義務に含まれますね」
女「入浴の義務、教育の義務、勤労の義務、納税の義務。お母さんのお仕事と一緒ですね。泣きじゃくる子供を説得の末お風呂に入れさせて、布団からでない子供を叱りながら学校に行かせて、励ましながら社会に巣立たせて、税金を収めさせる。その最初の関門でした」
女「お風呂に入らなければ、学校でも爪弾きにされ、社会でも居場所を与えられませんからね。いやはや、恐ろしい話です」
男「俺もとりわけ疲れた日は、寝てしまいたくなるな。どんなに眠くても入浴と歯磨きはしてるが」
女「人間の鏡です。二宮尊徳の像の代わりに、湯船に浸かって歯を磨くあなたの像を学校に飾らせましょう」
男「いたづらされること間違いなしだな」
女「運動なんてした日は、眠いのに汗をかいていますからね。その時は入るしか無いと諦めて屈服できますが。嫌な目に遭ったりしたときは、帰ってベッドに飛び込んでから、今日の出来事やこれからの未来に悩むことに時間を使えばいいのか、お風呂に入ればいいのか、寝ればいいのかで迷って、結局電気をつけたまま寝てしまい何も解決できないんですよね」
女「頭のなかにフランクなお兄さんを召喚して、とりあえずごちゃごちゃかんがえてねーで風呂入ろうや、な?と言って貰ってとりあえず寝ることにしています」
女「考え事をするか、お風呂に入るか眠るかで迷っているうちはどれも解決しませんね。風呂に入れば、悩みも解決しやすい。寝れば、悩みも解決しやすい。要するに、悩むという選択肢以外なら正解なんですね」
女「迷ったら、お風呂に入る。迷ったら、寝る。人生の優先事項を決めつける」
女「私の場合は、1早寝、2早起き、3お風呂、4その他」
女「その他には恋愛や仕事など大事なことも含まれているけど気にしなくても大丈夫。先の3つさえうまくやれば、他のものもうまくまわりはじめるんですから」
女「昼夜逆転している不登校の時に一生懸命考えた人生哲学なんですが、人生の先輩としていかがですか?」
男「……その他とお風呂の優先事項が逆だ」
女「えっ?」
男「……その他には身の安全も含まれる」ザバァ
女「のぼせてたんなら早く言って下さい!」
女「そうですね。私の場合三大欲求ではなく、三大義務に含まれますね」
女「入浴の義務、教育の義務、勤労の義務、納税の義務。お母さんのお仕事と一緒ですね。泣きじゃくる子供を説得の末お風呂に入れさせて、布団からでない子供を叱りながら学校に行かせて、励ましながら社会に巣立たせて、税金を収めさせる。その最初の関門でした」
女「お風呂に入らなければ、学校でも爪弾きにされ、社会でも居場所を与えられませんからね。いやはや、恐ろしい話です」
男「俺もとりわけ疲れた日は、寝てしまいたくなるな。どんなに眠くても入浴と歯磨きはしてるが」
女「人間の鏡です。二宮尊徳の像の代わりに、湯船に浸かって歯を磨くあなたの像を学校に飾らせましょう」
男「いたづらされること間違いなしだな」
女「運動なんてした日は、眠いのに汗をかいていますからね。その時は入るしか無いと諦めて屈服できますが。嫌な目に遭ったりしたときは、帰ってベッドに飛び込んでから、今日の出来事やこれからの未来に悩むことに時間を使えばいいのか、お風呂に入ればいいのか、寝ればいいのかで迷って、結局電気をつけたまま寝てしまい何も解決できないんですよね」
女「頭のなかにフランクなお兄さんを召喚して、とりあえずごちゃごちゃかんがえてねーで風呂入ろうや、な?と言って貰ってとりあえず寝ることにしています」
女「考え事をするか、お風呂に入るか眠るかで迷っているうちはどれも解決しませんね。風呂に入れば、悩みも解決しやすい。寝れば、悩みも解決しやすい。要するに、悩むという選択肢以外なら正解なんですね」
女「迷ったら、お風呂に入る。迷ったら、寝る。人生の優先事項を決めつける」
女「私の場合は、1早寝、2早起き、3お風呂、4その他」
女「その他には恋愛や仕事など大事なことも含まれているけど気にしなくても大丈夫。先の3つさえうまくやれば、他のものもうまくまわりはじめるんですから」
女「昼夜逆転している不登校の時に一生懸命考えた人生哲学なんですが、人生の先輩としていかがですか?」
男「……その他とお風呂の優先事項が逆だ」
女「えっ?」
男「……その他には身の安全も含まれる」ザバァ
女「のぼせてたんなら早く言って下さい!」
女「おはようございます」
男「おはよう」
女「屈斜路湖露天風呂、私も行ってみたいなぁ」
男「お先ですブームは去ったのか」ボソ…
女「行ったら感動するんだろうなぁ」
男「お前にはまだ早いだろう」
女「なんですか。あなたも行ったことないくせに」
男「寝不足な日の睡眠や、腹が減った時の食事と同じだ。本当に疲れたことのある人しか温泉の良さはわからない」
女「どうして禁欲した後のアダルトビデオ鑑賞を除いたんでしょうか」
男「美しい景観を損ねる声の無き様」
女「男さんも苦労人そうですもんね。毎朝美しい女子大生を拝むことで心を癒やしている孤独なワニですもんね」
男「馬鹿言うな。どちらかというと俺はワニではなく白鳥だ。苦労は表に出さず、水面下では足をばたばた動かして必死だ」
女「勃起してるってことですか?」
男「美しい景観を損ねる声の無き様」ピュー
女「うわっ!その手で水鉄砲つくるやつ懐かしい!私できないんです!」
男「教えてやらん」ピュー
女「うわ、ギブアップ!すみませんでした!清楚になります!」
男「おはよう」
女「屈斜路湖露天風呂、私も行ってみたいなぁ」
男「お先ですブームは去ったのか」ボソ…
女「行ったら感動するんだろうなぁ」
男「お前にはまだ早いだろう」
女「なんですか。あなたも行ったことないくせに」
男「寝不足な日の睡眠や、腹が減った時の食事と同じだ。本当に疲れたことのある人しか温泉の良さはわからない」
女「どうして禁欲した後のアダルトビデオ鑑賞を除いたんでしょうか」
男「美しい景観を損ねる声の無き様」
女「男さんも苦労人そうですもんね。毎朝美しい女子大生を拝むことで心を癒やしている孤独なワニですもんね」
男「馬鹿言うな。どちらかというと俺はワニではなく白鳥だ。苦労は表に出さず、水面下では足をばたばた動かして必死だ」
女「勃起してるってことですか?」
男「美しい景観を損ねる声の無き様」ピュー
女「うわっ!その手で水鉄砲つくるやつ懐かしい!私できないんです!」
男「教えてやらん」ピュー
女「うわ、ギブアップ!すみませんでした!清楚になります!」
この2人のなんとも言えない距離感がぬるま湯に入っているようで心地良いです
乙ー
基本テンポいいからさくさく読めるしシリアスも考えさせられる話で読みごたえあるからついついのぞいちまう
基本テンポいいからさくさく読めるしシリアスも考えさせられる話で読みごたえあるからついついのぞいちまう
女「もうすぐ何の日か知ってますよね」
男「お前の誕生日か」
女「私は冬生まれです」
男「何かあったっけか」
女「まぶたを閉じると観えてきませんか?」
男「花火大会か」
女「即答ですか。そうですよ。楽しみですよね」
男「ああ」
女「言わないんですか?」
男「何を」
女「一緒に、夜空に浮かぶ花を見に行こう」
男「そういうセリフを吐くことを黒歴史というんじゃなかったか」
女「いいじゃないですか。善良なる市民で知られずに終えるより、歴史に汚名を刻む方が」
男「わざわざ街中まで観にいかん」
女「はぁー!?はぁー!?」
女「はぁーーーー!?」
男「ここから観えるからな」
女「えっ、そうなんですか!?」
男「お前の誕生日か」
女「私は冬生まれです」
男「何かあったっけか」
女「まぶたを閉じると観えてきませんか?」
男「花火大会か」
女「即答ですか。そうですよ。楽しみですよね」
男「ああ」
女「言わないんですか?」
男「何を」
女「一緒に、夜空に浮かぶ花を見に行こう」
男「そういうセリフを吐くことを黒歴史というんじゃなかったか」
女「いいじゃないですか。善良なる市民で知られずに終えるより、歴史に汚名を刻む方が」
男「わざわざ街中まで観にいかん」
女「はぁー!?はぁー!?」
女「はぁーーーー!?」
男「ここから観えるからな」
女「えっ、そうなんですか!?」
男「それにしても、意外だな」
女「憎き夜の思い出詰まった花火を見たがる心理がですか?」
男「それ」
女「過去を乗り越えたいという思いとはまた別の気持ちですね。単に時が経つにつれて、花火を観たがる自分になったんですよ」
女「でも、そう思えるようになったのは、やはりあの事件が原因なのでしょう。すくすくと何事もなく育ったままだったら、美しい景色や手触りの違うバスタオルに、ここまで興味をひかれることもなかったままだったと思います」
女「だから、なおさら嫌なんですけどね。つらい出来事があったおかげで良い出来事と巡り会えただなんて言ったら、つらい出来事を肯定しているみたいじゃないですか。ただひたすら、なければよかったって思いますよ」
男「…………」
女「あっ、傷ついてる。俺と出会えた今を否定するのかって、泣きそうになってる」
男「ああいえばこういうし黙ればそういう奴だな」
女「ということで、その日は夜にお風呂に入りましょうか」
男「早朝ルールを破るのか」
女「いいじゃないですか。減るもんじゃあるまいし」
男「ワニが来て心がすり減るかもしれないぞ」
女「私の裸なんかより、花火の方がよっぽど見応えありますよ。ボン、キュッ、ボンです」
女「憎き夜の思い出詰まった花火を見たがる心理がですか?」
男「それ」
女「過去を乗り越えたいという思いとはまた別の気持ちですね。単に時が経つにつれて、花火を観たがる自分になったんですよ」
女「でも、そう思えるようになったのは、やはりあの事件が原因なのでしょう。すくすくと何事もなく育ったままだったら、美しい景色や手触りの違うバスタオルに、ここまで興味をひかれることもなかったままだったと思います」
女「だから、なおさら嫌なんですけどね。つらい出来事があったおかげで良い出来事と巡り会えただなんて言ったら、つらい出来事を肯定しているみたいじゃないですか。ただひたすら、なければよかったって思いますよ」
男「…………」
女「あっ、傷ついてる。俺と出会えた今を否定するのかって、泣きそうになってる」
男「ああいえばこういうし黙ればそういう奴だな」
女「ということで、その日は夜にお風呂に入りましょうか」
男「早朝ルールを破るのか」
女「いいじゃないですか。減るもんじゃあるまいし」
男「ワニが来て心がすり減るかもしれないぞ」
女「私の裸なんかより、花火の方がよっぽど見応えありますよ。ボン、キュッ、ボンです」
男「まぁ、いいが」
女「やったー!!!!」
男「だが」
女「いぇーい!!」
女「せんせーい!バナナはお弁当箱に入りますか??」
女「大きいお弁当箱になら入りまーす!!!」
男「落ち着け。行ける約束はできん」
女「…………」
女「…………」
女「…………」
男「いきなり落ち込むな」
女「も、もしかして……」
女「ほ、ほかに、ボン、キュッ、ボンがいたんですか?」クィ
男「小指を立てながら質問してこなかったらその難解な表現を理解できなったぞ」
男「女関係じゃない。ちょっと調べごとがあって、数日かかる」
女「なんですかその探偵みたいな仕事は」
男「俺は探偵に捕まる方だがな」
女「はい、過去の重い話題禁止。深淵禁止。表面上の付き合いで楽しみましょうや」
男「気楽なやつだ」
女「目指すは極楽なやつです」
女「やったー!!!!」
男「だが」
女「いぇーい!!」
女「せんせーい!バナナはお弁当箱に入りますか??」
女「大きいお弁当箱になら入りまーす!!!」
男「落ち着け。行ける約束はできん」
女「…………」
女「…………」
女「…………」
男「いきなり落ち込むな」
女「も、もしかして……」
女「ほ、ほかに、ボン、キュッ、ボンがいたんですか?」クィ
男「小指を立てながら質問してこなかったらその難解な表現を理解できなったぞ」
男「女関係じゃない。ちょっと調べごとがあって、数日かかる」
女「なんですかその探偵みたいな仕事は」
男「俺は探偵に捕まる方だがな」
女「はい、過去の重い話題禁止。深淵禁止。表面上の付き合いで楽しみましょうや」
男「気楽なやつだ」
女「目指すは極楽なやつです」
女「調べごとなんてネットで調べればいいじゃないですか」
男「こう見えても図書館にあるのを時々使う」
女「パソコンに座ってる姿あんまり想像できないです」
男「タイピングというやつが苦手だ。手書きで入力している」
女「不器用!!でもちょっと不器用なほうがいいかも!!」
男「どっちだ」
女「どんなこと調べてるんですか?」
男「うるさい 女性 心理」
女「完璧に使いこなしてますね」
男「冗談だ。ネットには載ってないこともあるから困る」
女「どんなことですか」
男「ネットに載せてはいけないこと」
女「とんちですか」
男「お前はネットは好きか」
女「私の記事が探せば出てくることを除けば大好きです」
男「大嫌いというわけか」
女「SNSは大好きですけどね」
男「パンケーキがどうのこうのやつか」
女「ああ、今さっきあなたの言ったことがわかる気がしました。ネットには、ネットに載せたくないことは誰も書き込みませんものね」
女「お風呂に入る前に見た朝日も、お風呂上がりの出来事も載せたことはありますが、みんな私が早朝に温泉に行ってることは知りません。あなたと出会う前から言ってませんでした」
女「悲しいですね。ネットに載せたくないほどよき出来事は、ネットには載ってないなんて」
男「携帯電話も持ってない俺はその悲しさとは無縁だな」
女「現実の人には伝えたくないほどよき言葉もネットにはありますからね」
男「どんなだ」
女「現実の人には教えられません~」
男「のぼせた。もうあがる」ザバァ…
女「すねないでください~」
男「こう見えても図書館にあるのを時々使う」
女「パソコンに座ってる姿あんまり想像できないです」
男「タイピングというやつが苦手だ。手書きで入力している」
女「不器用!!でもちょっと不器用なほうがいいかも!!」
男「どっちだ」
女「どんなこと調べてるんですか?」
男「うるさい 女性 心理」
女「完璧に使いこなしてますね」
男「冗談だ。ネットには載ってないこともあるから困る」
女「どんなことですか」
男「ネットに載せてはいけないこと」
女「とんちですか」
男「お前はネットは好きか」
女「私の記事が探せば出てくることを除けば大好きです」
男「大嫌いというわけか」
女「SNSは大好きですけどね」
男「パンケーキがどうのこうのやつか」
女「ああ、今さっきあなたの言ったことがわかる気がしました。ネットには、ネットに載せたくないことは誰も書き込みませんものね」
女「お風呂に入る前に見た朝日も、お風呂上がりの出来事も載せたことはありますが、みんな私が早朝に温泉に行ってることは知りません。あなたと出会う前から言ってませんでした」
女「悲しいですね。ネットに載せたくないほどよき出来事は、ネットには載ってないなんて」
男「携帯電話も持ってない俺はその悲しさとは無縁だな」
女「現実の人には伝えたくないほどよき言葉もネットにはありますからね」
男「どんなだ」
女「現実の人には教えられません~」
男「のぼせた。もうあがる」ザバァ…
女「すねないでください~」
女「あっ!おはようございます」
「…………」
女「(やば、普通のお婆ちゃんだった。珍しいな)」
女「(まだかな…男さん来ないなぁ)」
女「(なんか調べごとがどうのこうの言ってたような)」
女「(今日は忙しいのかな)」
「…………」
女「(やば、普通のお婆ちゃんだった。珍しいな)」
女「(まだかな…男さん来ないなぁ)」
女「(なんか調べごとがどうのこうの言ってたような)」
女「(今日は忙しいのかな)」
それから数日間、男さんは温泉に来ませんでした。
朝が駄目なら夜にと思って来てみても、男さんは現れません。
私と会う気がなくなったのかな、と気弱な考えが浮かぶこともありますが、そうではないでしょう。
私に会う気がないなら、はっきりないと言ってから去る人でしょう。冗談みたいな会話をした日を最後に、果たす気のない約束をする人には思えません。
あの人はあの人で、耐えるだけの自分を乗り越えて、突き放すことを覚えたのだと思います。熱い湯船からすぐあがるのは意識の表れの1つでしょう。
だとするのなら。
何か、よくないできごとがあったんでしょうか。
あるいは。
あの人自ら、よくない出来事に近づいているのでしょうか。
朝が駄目なら夜にと思って来てみても、男さんは現れません。
私と会う気がなくなったのかな、と気弱な考えが浮かぶこともありますが、そうではないでしょう。
私に会う気がないなら、はっきりないと言ってから去る人でしょう。冗談みたいな会話をした日を最後に、果たす気のない約束をする人には思えません。
あの人はあの人で、耐えるだけの自分を乗り越えて、突き放すことを覚えたのだと思います。熱い湯船からすぐあがるのは意識の表れの1つでしょう。
だとするのなら。
何か、よくないできごとがあったんでしょうか。
あるいは。
あの人自ら、よくない出来事に近づいているのでしょうか。
女「いよいよ明日が花火ですね」
女「朝も夜もお風呂に入ってますよ。お風呂嫌いだった少女が1日に2回もお風呂。湯当たりしちゃいますよ」
女「あなたがこないままのぼせて気絶でもしたら大変なので、また一日中張り付くようなことはできませんからね」
女「置き手紙でも何でもいいからしてくれたらいいのに」
女「はぁー。それでは早朝。あ、次は夜か」ザバァ
女「朝も夜もお風呂に入ってますよ。お風呂嫌いだった少女が1日に2回もお風呂。湯当たりしちゃいますよ」
女「あなたがこないままのぼせて気絶でもしたら大変なので、また一日中張り付くようなことはできませんからね」
女「置き手紙でも何でもいいからしてくれたらいいのに」
女「はぁー。それでは早朝。あ、次は夜か」ザバァ
女「一応朝に行ってみたけどやっぱり来なかったな」
女「本当に、夜来るのかなぁ」
女「何を調べているんだろう。それは、私と会話するよりは大事なことなんだな」
女「はぁー。はぁー。ため息とともに幸せがどんどん減っていく」
女「女子大生の最後がこれでいいのかー」
女「みんなと遊園地行ったり、ボーリングしにいったり、若者の集う場所で遊ぶのが正しいんだろうな」
女「田舎にうちあがる花火と温泉だなんて、老後の楽しみに近いような」
女「そうだね。私は理想の老後を大学生のうちに経験しておけばいいんだった」
女「あわよくば、縁側に、寄り添える人がいるような」
女「本当に、夜来るのかなぁ」
女「何を調べているんだろう。それは、私と会話するよりは大事なことなんだな」
女「はぁー。はぁー。ため息とともに幸せがどんどん減っていく」
女「女子大生の最後がこれでいいのかー」
女「みんなと遊園地行ったり、ボーリングしにいったり、若者の集う場所で遊ぶのが正しいんだろうな」
女「田舎にうちあがる花火と温泉だなんて、老後の楽しみに近いような」
女「そうだね。私は理想の老後を大学生のうちに経験しておけばいいんだった」
女「あわよくば、縁側に、寄り添える人がいるような」
女「もういい時間だな。小さな星も見えてきた。温泉から見る夜空は素敵だな」
女「今日はお客さん誰も来ないな。あの向こう側の川沿いから打ち上げるなら、ここからだと綺麗に見えるだろうな。確かにいい穴場スポットだ。こんな特等席、見つけても友人にシェアはできないな」
女「舞台は揃っているのに、役者が足りないっていうのはこのことだな」
女「お星様と、お姫様と……」
私がさみしく独り言をつぶやいていると、王子様、ではなく花火様が夜空に現れました。
左目の視力が良かったと、ほとほと感じます。
右目の分の負荷がかかり疲れやすくはありましたが、視力は友達より高いままです。世を捨て夜中にテレビを観ていた時期の影響も少なかったようで何よりです。
女「はやく来てくれませんか」
女「感想や感動なんて一瞬で、花火よりも早く言葉は消えてしまうんですよ」
女「ささいなことでいいから話したいですよ」
女「花火と夏と温泉の組み合わせって、素直でいいってこととか。こたつに入りながら雪をみることや、真夏にプール入ることなんかと違って、暑い中、熱いところに入って、火を見ることに幸福を感じる」
女「磁石の同じ極同士がくっつきあうような、奇跡とでも呼ぶべきことなんですよ」
女「でもこういうとあなたはまた無言になりますかね。そして私はおちょくるんですよ」
女「本来正反対の私達が出会ったことは、S極とN極がくっつくように自然なことだったと思いますかと」
女「花火と磁石なんて関係ないのにな。こんな綺麗な光景を前に小難しい話をしたくなるのはあなたの影響かもしれませんね」
女「もういいですよ。後日あったら散々自慢してあげますから。綺麗な女子大生がうじゃうじゃ来たって言ってやりますから。それで喜ばれたら沈めますけどね」
女「はやくこないと、のぼせてあがっちゃいますよ」
女「今日はお客さん誰も来ないな。あの向こう側の川沿いから打ち上げるなら、ここからだと綺麗に見えるだろうな。確かにいい穴場スポットだ。こんな特等席、見つけても友人にシェアはできないな」
女「舞台は揃っているのに、役者が足りないっていうのはこのことだな」
女「お星様と、お姫様と……」
私がさみしく独り言をつぶやいていると、王子様、ではなく花火様が夜空に現れました。
左目の視力が良かったと、ほとほと感じます。
右目の分の負荷がかかり疲れやすくはありましたが、視力は友達より高いままです。世を捨て夜中にテレビを観ていた時期の影響も少なかったようで何よりです。
女「はやく来てくれませんか」
女「感想や感動なんて一瞬で、花火よりも早く言葉は消えてしまうんですよ」
女「ささいなことでいいから話したいですよ」
女「花火と夏と温泉の組み合わせって、素直でいいってこととか。こたつに入りながら雪をみることや、真夏にプール入ることなんかと違って、暑い中、熱いところに入って、火を見ることに幸福を感じる」
女「磁石の同じ極同士がくっつきあうような、奇跡とでも呼ぶべきことなんですよ」
女「でもこういうとあなたはまた無言になりますかね。そして私はおちょくるんですよ」
女「本来正反対の私達が出会ったことは、S極とN極がくっつくように自然なことだったと思いますかと」
女「花火と磁石なんて関係ないのにな。こんな綺麗な光景を前に小難しい話をしたくなるのはあなたの影響かもしれませんね」
女「もういいですよ。後日あったら散々自慢してあげますから。綺麗な女子大生がうじゃうじゃ来たって言ってやりますから。それで喜ばれたら沈めますけどね」
女「はやくこないと、のぼせてあがっちゃいますよ」
オレンジ色、茜色、緑色、ピンク色。
目を閉じて見るまぶたのうらのはなびより。
目を閉じて思い出す過去に観た花火より。
今、目を開けてみているこの美しき花火を。
過去の何物でも、誰とでもなく。
あなたと過去を共有するのでも、あなた以外の人と今を共有するのでもなく。
今、ここで、あなたと……
「……ひさしぶり」
もしも心に押し隠している目いっぱいの期待さえなかったら、今立った鳥肌の意味をちゃんと理解できていたかもしれない。
女「だれ?」
「…………」
男性の声だった。
聞き覚えのある声だった。
「ずっと探していた」
毎日思い続けていた人だった。
「ずっと探していたんだ」
忘れられない人だった。
悲しき人だった。
「今だから告げよう」
出会ってはいけない人だった。
私の人生を変えた人だった。
「君のお母さんを、愛していた」
手には、わりばしが握られていた。
男性は、8年前のあの夏の夜よりも、いきいきと輝いているように見えた。
目を閉じて見るまぶたのうらのはなびより。
目を閉じて思い出す過去に観た花火より。
今、目を開けてみているこの美しき花火を。
過去の何物でも、誰とでもなく。
あなたと過去を共有するのでも、あなた以外の人と今を共有するのでもなく。
今、ここで、あなたと……
「……ひさしぶり」
もしも心に押し隠している目いっぱいの期待さえなかったら、今立った鳥肌の意味をちゃんと理解できていたかもしれない。
女「だれ?」
「…………」
男性の声だった。
聞き覚えのある声だった。
「ずっと探していた」
毎日思い続けていた人だった。
「ずっと探していたんだ」
忘れられない人だった。
悲しき人だった。
「今だから告げよう」
出会ってはいけない人だった。
私の人生を変えた人だった。
「君のお母さんを、愛していた」
手には、わりばしが握られていた。
男性は、8年前のあの夏の夜よりも、いきいきと輝いているように見えた。
ドーン。
パチパチパチ。
ドーン。
花火が浴衣をすり抜けて、いきなり心臓に触れてきても私は不快に思わない。
あなたが無遠慮な会話をして、土足で私の心に踏み込んできても、やっぱり嫌いにはならないでしょう。
そんなあなたと出会えた今を祝って。
そんなあなたと出会うきっかけとなった過去を呪って。
ただひたすら、この時間が続けばいいのにと願うはずだった今日が。
ただひたすら、なければよかったのにと願った過去に、塗り潰されてしまいそうです。
次回「18,000÷365×50=」
あなたも、泣かないで。
私の目を、見て。
パチパチパチ。
ドーン。
花火が浴衣をすり抜けて、いきなり心臓に触れてきても私は不快に思わない。
あなたが無遠慮な会話をして、土足で私の心に踏み込んできても、やっぱり嫌いにはならないでしょう。
そんなあなたと出会えた今を祝って。
そんなあなたと出会うきっかけとなった過去を呪って。
ただひたすら、この時間が続けばいいのにと願うはずだった今日が。
ただひたすら、なければよかったのにと願った過去に、塗り潰されてしまいそうです。
次回「18,000÷365×50=」
あなたも、泣かないで。
私の目を、見て。
温泉の中でありながら、真っ黒いジャージを着たまま男は立っていた。
女「……ぁ……」
言葉が出ない。
思考がまとまらない。
一体、何をしにきたんだろうか。
謝罪をしにきたわけではないのだろう。
その手にもつわりばしの意味は何なのだろう。
「大きくなったね」
身動き1つまともにとれないのに、普段は決してできないこと―相手の目を見ること―ができた。
目は、合わなかった。
相手も私を見ているにも関わらずだ。
(人の目は、同時に相手の両目を見れない)
いつかの男さんの言葉を思い出す。
男性は、私の義眼をみていた。
裁判の過程で同じことをされたことがある。当時は眼帯をつけていたが、自分が奪ったものを確かめるかのようにじっと見つめてきたのだった。
男性は、今度は私の左目を見つめて、こう言った。
「君から花火を、うばいにきた」
女「……ぁ……」
言葉が出ない。
思考がまとまらない。
一体、何をしにきたんだろうか。
謝罪をしにきたわけではないのだろう。
その手にもつわりばしの意味は何なのだろう。
「大きくなったね」
身動き1つまともにとれないのに、普段は決してできないこと―相手の目を見ること―ができた。
目は、合わなかった。
相手も私を見ているにも関わらずだ。
(人の目は、同時に相手の両目を見れない)
いつかの男さんの言葉を思い出す。
男性は、私の義眼をみていた。
裁判の過程で同じことをされたことがある。当時は眼帯をつけていたが、自分が奪ったものを確かめるかのようにじっと見つめてきたのだった。
男性は、今度は私の左目を見つめて、こう言った。
「君から花火を、うばいにきた」
「私もそうだった!!!!」
いきなり大声をあげ、湯の中に踏み込んできた。
水しぶきがあがって身体にかかった。
私はいつもの定位置から離れ、男さんが普段座っているところまで足を震わせながら進んだ。
「"あの時ああしていれば!!!"」
「このくだらない!!このくだらないセリフを!!何度吐いたことか!!!!」
男性は激昂していた。
「だったらせめてその一部くらい、君にも味あわせてやりたかったんだ!!!」
宙を見て叫んだ。
私のことなんか見ていないようだった。
「僕は臆病だ……」
昂ぶっていた男性は一転、突然萎縮しながらぼそぼそとつぶやきはじめた。
「人が怖い……人を見るのが怖い……人から見られるのが怖い」
「君に僕を見られるのが1番怖い……」
「君が現れるといつも僕は物陰に隠れ……君が視界からいなくなると君の姿を探した」
「太陽と月のような関係だった」
「君は僕には決して気づかなかった。それは仕方のないことだった。しかし罪深いことだった」
「君は僕を見るべきだった。そのことで、死ぬまで後悔してほしい。そうすれば、僕の過去が報われる」
宙を見るのをやめ、私を見てこう言った。
「お母さんにそう告げてくれ。そのために、その目を奪う必要があったということも」
これから行うことを告げられた。
目の前に迫った恐怖に絶望し、早く死なせてほしい、と願った。
いきなり大声をあげ、湯の中に踏み込んできた。
水しぶきがあがって身体にかかった。
私はいつもの定位置から離れ、男さんが普段座っているところまで足を震わせながら進んだ。
「"あの時ああしていれば!!!"」
「このくだらない!!このくだらないセリフを!!何度吐いたことか!!!!」
男性は激昂していた。
「だったらせめてその一部くらい、君にも味あわせてやりたかったんだ!!!」
宙を見て叫んだ。
私のことなんか見ていないようだった。
「僕は臆病だ……」
昂ぶっていた男性は一転、突然萎縮しながらぼそぼそとつぶやきはじめた。
「人が怖い……人を見るのが怖い……人から見られるのが怖い」
「君に僕を見られるのが1番怖い……」
「君が現れるといつも僕は物陰に隠れ……君が視界からいなくなると君の姿を探した」
「太陽と月のような関係だった」
「君は僕には決して気づかなかった。それは仕方のないことだった。しかし罪深いことだった」
「君は僕を見るべきだった。そのことで、死ぬまで後悔してほしい。そうすれば、僕の過去が報われる」
宙を見るのをやめ、私を見てこう言った。
「お母さんにそう告げてくれ。そのために、その目を奪う必要があったということも」
これから行うことを告げられた。
目の前に迫った恐怖に絶望し、早く死なせてほしい、と願った。
ぎりぎりまで逃げなければ。
そう思って立とうとした途端、めまいがした。
のぼせてしまっていたんだろうか。
こんな大事な時にのぼせるなんて馬鹿みたいだなと思った。
頭のおかしい犯罪者と、タオルを巻いた女子大生が、混浴で対峙しているこの状況も傍目からしたら滑稽に観えるんだろうか。
右目を奪われて生きるのと、溺れて死ぬならどちらの方がマシだろう。
すくなくとも、数年前に遭ったあの激痛にはもう耐えられない。
もう一度叫ぼうとしたが、声が震えて消えてしまった。
足がもつれて転んでしまった。
足首を掴まれた。
私は串で神経を抜かれる魚のようにぶるぶると痙攣した。
こんなに温泉を、冷たく感じたことはなかった。
そう思って立とうとした途端、めまいがした。
のぼせてしまっていたんだろうか。
こんな大事な時にのぼせるなんて馬鹿みたいだなと思った。
頭のおかしい犯罪者と、タオルを巻いた女子大生が、混浴で対峙しているこの状況も傍目からしたら滑稽に観えるんだろうか。
右目を奪われて生きるのと、溺れて死ぬならどちらの方がマシだろう。
すくなくとも、数年前に遭ったあの激痛にはもう耐えられない。
もう一度叫ぼうとしたが、声が震えて消えてしまった。
足がもつれて転んでしまった。
足首を掴まれた。
私は串で神経を抜かれる魚のようにぶるぶると痙攣した。
こんなに温泉を、冷たく感じたことはなかった。
水が見える。
あぶくが見える。
私の手が見える。
この景色も、1秒後には奪われてしまうのだろうか。
一人の男の理不尽な暴力によって、私は尊厳を奪われてしまうのだろうか。
奇跡が起きてほしかった。
あの頃から何も変わらず、目を背けてばかりの私。
8年前と今の私、違うものは、一体。
恐怖でもがき続けている私は、疲労を感じはじめていた。
一人でばしゃばしゃと何十秒も暴れているだけで、足首をもう掴まれていないことにも気づいた。
何かがおかしい気がした。
あぶくが見える。
私の手が見える。
この景色も、1秒後には奪われてしまうのだろうか。
一人の男の理不尽な暴力によって、私は尊厳を奪われてしまうのだろうか。
奇跡が起きてほしかった。
あの頃から何も変わらず、目を背けてばかりの私。
8年前と今の私、違うものは、一体。
恐怖でもがき続けている私は、疲労を感じはじめていた。
一人でばしゃばしゃと何十秒も暴れているだけで、足首をもう掴まれていないことにも気づいた。
何かがおかしい気がした。
女「……ぶはぁ!!」
女「はぁ…!はぁ…!何が…」
女「う、うわぁ!!」
危険は去っていなかった。
しかし、それは無力だった。
身体がぐにゃぐにゃになった男性が、男さんの腕から身を乗り出し、折れた割り箸を口に咥えて必死で私に近づこうとしていた。
男さんは左腕に包帯を巻いていた。右腕だけで男性を制し、身体の破壊を続けていた。
ぐ、ぐががが。君の悪い声が男性から漏れていた。
自分が破壊されながらも、それ以上に私の破壊を試みる姿は、知能を失った悲しきロボットのようだった。
男「下手に動くな。100まで数えて浸かってろ」
口調は普段と同じだったが、表情は酷く疲れているようだった。
男さんの肩からは血がポタポタと流れていた。
男性の口からは血がポタポタと流れ落ちていた。
男性はもぞもぞと動いていた。必死でジャージのポケットに手を伸ばそうとしていた。
女「男さん!そいつ、何かポケットにいれてる!!」
私の気づきは、少しだけ遅かった。
男さんはふとももを深々と刺された。
男性は身を乗り出して、私に近づいてきた。
口元に咥えていたわりばしを手に持ち、構えた。
男さんは男性の頭を掴み、物凄い勢いで水中に沈めた。
水上にも聞こえてくるくらいの音で、何度も地面に叩きつけた。
湯はみるみるうちに赤く染まっていった。
私のバスタオルも赤く染まった。
そして、静かになった。
女「はぁ…!はぁ…!何が…」
女「う、うわぁ!!」
危険は去っていなかった。
しかし、それは無力だった。
身体がぐにゃぐにゃになった男性が、男さんの腕から身を乗り出し、折れた割り箸を口に咥えて必死で私に近づこうとしていた。
男さんは左腕に包帯を巻いていた。右腕だけで男性を制し、身体の破壊を続けていた。
ぐ、ぐががが。君の悪い声が男性から漏れていた。
自分が破壊されながらも、それ以上に私の破壊を試みる姿は、知能を失った悲しきロボットのようだった。
男「下手に動くな。100まで数えて浸かってろ」
口調は普段と同じだったが、表情は酷く疲れているようだった。
男さんの肩からは血がポタポタと流れていた。
男性の口からは血がポタポタと流れ落ちていた。
男性はもぞもぞと動いていた。必死でジャージのポケットに手を伸ばそうとしていた。
女「男さん!そいつ、何かポケットにいれてる!!」
私の気づきは、少しだけ遅かった。
男さんはふとももを深々と刺された。
男性は身を乗り出して、私に近づいてきた。
口元に咥えていたわりばしを手に持ち、構えた。
男さんは男性の頭を掴み、物凄い勢いで水中に沈めた。
水上にも聞こえてくるくらいの音で、何度も地面に叩きつけた。
湯はみるみるうちに赤く染まっていった。
私のバスタオルも赤く染まった。
そして、静かになった。
女「…………」
女「し、しんだんですか」
男「死んだんじゃない。俺が殺したんだ」
女「せ、せいとうぼうえいです」
男「あんなに何度も頭をうちつける必要はなかった」
女「だったらどうして」
男「死なない限り、また10年後にでもお前のところに現れると思った。その執念を感じた」
女「そのせいで、あなたともまた10年も会えなくなってしまいます」
男「10年なんて贅沢な時間は残されていない」
女「し、しけいになりませんよ。私が庇いますよ」
男「殺されるんだよ俺は。それも、皮肉なことに、刑期を終える予定の奴にな」
男「医者のあんたの父親にできないようなことといったら、俺には暴力しか残されてないんだ。冥土の置き土産に、暴力を残してやった」
女「怒りますよ」
男「怒ればいい。俺は、幸せになってはいけない人間だしな」
女「男さん」
男「どうした」
女「泣いてるじゃないですか」
男「見えるのか」
女「見えますよ。あなたのおかげで」
男「俺は、涙で何も見えないけどな」
女「し、しんだんですか」
男「死んだんじゃない。俺が殺したんだ」
女「せ、せいとうぼうえいです」
男「あんなに何度も頭をうちつける必要はなかった」
女「だったらどうして」
男「死なない限り、また10年後にでもお前のところに現れると思った。その執念を感じた」
女「そのせいで、あなたともまた10年も会えなくなってしまいます」
男「10年なんて贅沢な時間は残されていない」
女「し、しけいになりませんよ。私が庇いますよ」
男「殺されるんだよ俺は。それも、皮肉なことに、刑期を終える予定の奴にな」
男「医者のあんたの父親にできないようなことといったら、俺には暴力しか残されてないんだ。冥土の置き土産に、暴力を残してやった」
女「怒りますよ」
男「怒ればいい。俺は、幸せになってはいけない人間だしな」
女「男さん」
男「どうした」
女「泣いてるじゃないですか」
男「見えるのか」
女「見えますよ。あなたのおかげで」
男「俺は、涙で何も見えないけどな」
女「男さん」
男「なんだ」
女「夏と花火と温泉っていい組み合わせだと思いません?」
男「そうだな」
女「私と男さんっていい組み合わせだと思いません?」
男「どうだかな」
女「今度、違う場所の混浴にも行ってみません?」
男「どうしたんだ」
女「このまま、また、日常に戻れませんかね」
男「戻ればいいだろ」
女「一緒にですよ」
男「お前は一人だ」
女「男さんは」
男「俺はこの死体と一緒だ」
女「どうするんですか」
男「今からいつものように後処理の仕事をする。客が俺になっただけだ」
女「殺し屋だったんですか」
男「殺したのは過去に一度だけだ。それでずっと刑務所にいた」
女「誰を殺したんですか」
男「命の恩人だ」
女「私の知ってる人ですか」
男「親父さんだ」
女「えっ」
男「親父さんを、殺したんだ」
男「なんだ」
女「夏と花火と温泉っていい組み合わせだと思いません?」
男「そうだな」
女「私と男さんっていい組み合わせだと思いません?」
男「どうだかな」
女「今度、違う場所の混浴にも行ってみません?」
男「どうしたんだ」
女「このまま、また、日常に戻れませんかね」
男「戻ればいいだろ」
女「一緒にですよ」
男「お前は一人だ」
女「男さんは」
男「俺はこの死体と一緒だ」
女「どうするんですか」
男「今からいつものように後処理の仕事をする。客が俺になっただけだ」
女「殺し屋だったんですか」
男「殺したのは過去に一度だけだ。それでずっと刑務所にいた」
女「誰を殺したんですか」
男「命の恩人だ」
女「私の知ってる人ですか」
男「親父さんだ」
女「えっ」
男「親父さんを、殺したんだ」
今日はここまでです。
読んでくれてありがとうございます。
お仕事の都合で、来週に続きを書くことになります。申し訳ない。
お風呂は嫌いなので明日の朝に入ります。おやすみなさい。
読んでくれてありがとうございます。
お仕事の都合で、来週に続きを書くことになります。申し訳ない。
お風呂は嫌いなので明日の朝に入ります。おやすみなさい。
仕事はこれ以上にないくらいに順調だった。
飲食店、パチンコ店、裏カジノ、風俗店等へのみかじめ料(守料)の設定、取立。
借金の持ちかけ・取立。
揉め事が起きた時の仲裁・肩入れ。
企業に対する総会屋紛いの脅し・総会屋対策の用心棒の請負。
暴力が関わるあらゆる仕事で、俺は他人の半分の努力で、他人の倍以上の成果をあげることができた。
親父さんのもとでずっと働いてきた年上の男を追い抜き、俺は親父さんの右腕になった。
親父「かわいい息子だ。本当の息子のようだ。お前が俺のもとへ来てくれてよかった」
親父さんは寿司を食べながら満足気に笑った。
親父「ほら、飲め飲め」
男「酒は大丈夫っす」
親父「そうか」
親父さんは左手に持ったビールを、1時間前から親父さんの足元で土下座している男の頭に流した。
床ににおいがうつるのでやめてほしいと思った。
飲食店、パチンコ店、裏カジノ、風俗店等へのみかじめ料(守料)の設定、取立。
借金の持ちかけ・取立。
揉め事が起きた時の仲裁・肩入れ。
企業に対する総会屋紛いの脅し・総会屋対策の用心棒の請負。
暴力が関わるあらゆる仕事で、俺は他人の半分の努力で、他人の倍以上の成果をあげることができた。
親父さんのもとでずっと働いてきた年上の男を追い抜き、俺は親父さんの右腕になった。
親父「かわいい息子だ。本当の息子のようだ。お前が俺のもとへ来てくれてよかった」
親父さんは寿司を食べながら満足気に笑った。
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