私的良スレ書庫
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元スレ妖精「男さん! 今日の天気予報です!」
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妖精「それで、男さんはまだ好意を伝えて無いんですか?」
男「できるかよ……だって『妖精殺し』だぜ?」
妖精「じゃあ、お手伝いしましょうか?」
男「何を?」
妖精「恋愛成就を、です」
男「いや、いいよ」
妖精「え?」
男「先輩、今度――」
男「いや、何でも無い」
妖精「そう……ですか」
妖精「へ、ヘクチっ!」
男「やっぱり寒いんじゃねーですか」
妖精「これくらいへいクチッ!」
男「おいおい。ほら、こっち来いよ」
妖精「胸ポケットですか?」
男「マフラーもつけて進ぜよう」
妖精「ありがとうございます!」
男「やっぱり寒いんじゃねーですか」
妖精「これくらいへいクチッ!」
男「おいおい。ほら、こっち来いよ」
妖精「胸ポケットですか?」
男「マフラーもつけて進ぜよう」
妖精「ありがとうございます!」
数分後。
スイーツ(笑)「うわ何あの警備員キンモー☆www」
DQN「ホントだwwwマジウケルwwwオタクでロリコンかよwwww」
スイーツ(笑)「やびゃあwwwww」
DQN「フィギュアとかマジ勘弁wwwww」
妖精「男さん……」
男「気にすんな」
男「大人になるって、こういうもんだろ」
妖精「男さん……」(マフラーをギュっ……)
男「成人式、ったっけ」
妖精「あ、はい」
男「俺も行ったけど、あん時は酷かったよ」
男「地元から離れた大学行っててさ。全然思い入れ無い場所で記念写真撮って、講演聞いて」
男「大学の友達はいたけど、地元の奴だったから、そいつは地元の友達んとこ行っちゃうし」
男「酒飲んだヤンキーが暴れ始めてさ」
男「それ見てみんな笑ってるし」
男「イライラしてたし、つい、カッとなっちゃってさ」
男「注意したら。タコ殴りにされちゃった」
妖精「そんな……!」
男「だから俺はその時……善行、積めなかったんだろーなー。って、今思ってる」
男「積んだらさ。人の願い事一つぐらい、叶えられたのかな……」
妖精「男さん……?」
男「先輩、さ」
妖精「はい」
男「あの人、この前婚約したんだって」
妖精「そうなんですか!?」
男「不況だからさ……政略結婚。なんて言ってた」
妖精「もしかしてそれは、相手方が……」
男「そうだよ。一目惚れ。そして弱みに付け込んだ」
男「正直、ズリ―と思う。でも俺が逆の立場だったら利用しない手なんてないさ」
妖精「でもあの方の本心は……!?」
男「嫌だって。『でも仕方ないよねぇ。たははー』。なんて笑ってたけど」
妖精「どっちも、本心なんでしょうね……」
妖精「嫌なのも、仕方ないと思うのも」
男「ああ」
男「その時にさ『男君。是非ともどっか連れ出してくれ』って言われてさ」
男「頷け――なかった」
男「その後に『冗談だよ』なんて言われて、それっきり」
妖精「……男さん!」
男「ん?」
妖精「……それは、その……随分な意気地無しですね」
男「……ああ。自分でもそう思うよ」
男「先輩の事は……とっくに諦めはついてる。傍から見れば俺の先輩に対する態度はごますりにしか見えないだろうし」
妖精「男さん! そんなこと言っちゃ、ダメですよ……」
男「ごめん」
妖精「…………」
男「どうして頷けなかったんだろ」
男「任せてください、って言ったら、変わったか?」
男「そんなわけ、ねーじゃん」
妖精「でも、ですよ……諦めてしまったら!」
男「だよなァ……」
午前一時三十分。
男「妖精さんはさ、その、妖精界に行ったら。大人になったことになるんだろう?」
妖精「はい」
男「そしたら。何すんの?」
妖精「私は女なので……結婚させられます」
男「……ままならねーなァ」
男「相手がさ、もし俺みたいなキモい奴だったらどうするの? 離婚とかできるの?」
妖精「男さんはキモくなんてないです。とっても優しい人です」
男「意気地無しでも?」
妖精「はい。それに――」
妖精「妖精の外見にあまり変わりは見られません。種族が違えば変わりますが」
妖精「みんな同じような顔、身長……性格ぐらいですかね違うのは」
男「そっか」
妖精「私みたいなのは嫌われます」
男「なんでさ」
妖精「可愛くないですから、私」
妖精「両親も居なくて、利己的で、ちょっとひねくれてて、妖精失格ギリギリです。なんて」
男「んなこと、ないと思うよ」
妖精「え?」
男「さっきみたいに、俺には叱ってくれるしさ」
妖精「……」
男「……」
妖精「男さん……私達、傷の舐めあいをしてるみたいです」
男「…………そっか……やっぱ、そう思うのか」
男「俺は妖精さんのことを見てさ、『昔の俺みたいだ』って思ったけど」
男「あんまり変わって無かったんだな、俺」
妖精「昔の男さん……ですか?」
男「そう。昔っからこれまでずっと、逃げてきた。諦めて、理由をつけて、責任転嫁して、自己弁護までして」
男「妖精さんさ、『一つの事が出来ないんだから自分には他の事が出来ない』って思った事ない?」
妖精「あります」
男「だろうね」
男「たぶん君の場合は……『一人前の妖精』つまり、『誰かの願い事を一つ叶える力』に失望して」
男「やけっぱちになった」
午前二時十五分。
妖精「ええ……」
妖精「たしかにそうです」
妖精「何があってももう戻ってこないなら……もう良いかな、って」
妖精「私は甘えてばっかりです」
妖精「『両親が居ないから』『女の子だから』『かわいそうだから』」
妖精「そんな風に甘やかされて、それを利用して」
妖精「どうせ、どうせって……願い事なんて、私の願い事なんて叶わないって……」
妖精「でもそんなの、何の理由にもならないんです」
妖精「諦めて良い理由にもならないはずなんです」
男「そうか……妖精さんはもう立派な大人だね」
妖精「大人になるその為にも、今度は私が誰かに善い事をしなければなりません」
妖精「男さん……そうさせてくれますね」
男「……そうしてくれると、助かるかも」
妖精「では」
妖精「話してください」
妖精「男さんに何があったのか」
妖精「諦め続けてきた、そのきっかけを」
午前二時四十分。
男「振り返れば振り返るほどに、諦めてきたよ。昔から」
男「境遇的には、妖精さんとほとんど一緒」
男「父親は蒸発。母親は病死。ばあちゃん家に預けられて育った」
男「ばあちゃん家は……悪くなかった。むしろ居心地は良かった」
男「甘い人でさ、両親がいないことでイジメられると『男は悪くない。悪くないよ』っていってくれる人だった」
男「でも俺はダメだった」
男「打たれ弱くて、怒られたら条件反射で涙が出るような、それぐらい意気地無しだった」
男「俺……」
男「だから段々、臆病になって怒られない様に生きてさ。ズルイことだってやったよ」
男「で、ちょっと難しい問題が出てきたら、すぐに諦めて、それがそのまま癖になっちゃった」
男「そんなんじゃダメだよなって、勇気出したのが成人式で――」
男「そいつが再起不能になって、何も変われないまま、今まで生きてる」
男「だから今回も……無様な様を先輩には見せたくないんだ」
男「振られるのは怖いし、それをネタにしてからかわれるのも怖い」
男「仮に上手くいったとしてそれからどうなる?」
男「一時期上手くいってその後壊れたら?」
男「じゃあやっぱり諦めよう。なるようにしかならないんだ……!」
男「諦めればそれで済む。今までだってそうしてきた。だから」
男「だからさ、今回も諦めようと思って……!」
男「妖精さん……」
男「人間の世界は、都合良くどんな小さな望みでも……確実に叶うかどうかなんてわからないんだよ」
妖精「男さん」
男「何?」
妖精「あなたの願い事は何ですか?」
男「俺の……願い事……」
妖精「大したことは出来ませんが」
妖精「でも、お手伝い程度ならできます」
男「それは……」
妖精「私の願い事は叶いませんし、こんな力持っていたって宝の持ち腐れです」
男「後悔すると思うな」
妖精「構いません。これは私の為です」
男「妖精さんの……?」
妖精「はい。何か、辛いことがあった時、決して自分が逃げないようにする為です」
妖精「私はもう力を言い訳にしません。そして――」
妖精「それを教えてくれたのは男さん……あなたですよ」
男「俺……?」
妖精「はい」
男「それは違うと思うよ。うん。君が気づいて君は大人になったんだ」
男「だから、その力は君自身が使ってくれよ。俺なんかのために使ったら勿体ないって!」
妖精「男さん!」
男「……」
妖精「逃げないで下さい。諦めないでください。忘れないでください。あなたの為に力を使った妖精が居ることを」
妖精「そうすればあなただってもう逃げ――」
男「一つだけなんでしょ? だったら本当にやめてくれ!」
妖精「男さんのそれは……本当に優しさや心配からきた言葉ですか?」
妖精「それとも……」
男「……そうだよ……そんなことあるわけがない………………!」
男「俺は怖い」
男「これが終わったら帰っちゃうような、そんな、他人みたいな妖精さんにまで後になって」
男「『あんな奴の為に力を使うんじゃなかった』って言われることすら怖い……!」
妖精「男さん……」
男「自分がどれだけ卑怯になろうと、いいやなればなるほどいつも誰かに嫌われるのが怖いんだ!」
妖精「……そうですか。でも、約束します! それだけは絶対言いません!」
妖精「あなたは確かに臆病です……自分を信用していません」
妖精「そして同等かそれ以上に他人を信用していません」
妖精「だったら言い換えます。これは『契約』です」
妖精「あなたが少しの勇気を出して変わる事を対価に」
妖精「大したことの無い『願い事を一つ叶える』力をあげます」
妖精「どうしますか? あなたが紙幣を信用できるなら、契約できますよね」
男「妖精さん……」
妖精「おまじないを、買いませんか?」
男「どうして、そこまで……?」
妖精「んふふ。放っとけないんです」
妖精「何だか、昔の私を見ている様で!」
午前三時五十三分。
男「わかった」
男「俺……怖いけど、頑張るよ」
男「俺なんかの為に力まで使ってくれるんだ。こんなに嬉しいことは無いさ」
妖精「男さん……それじゃあ!」
男「契約するよ。妖精さん」
妖精「良かったです……本当に!」
男「それで……善行玉はどうやって貯めるの? それがないと願い事は叶えられないんだろう?」
妖精「鋭いですね。ザッツライトです」
妖精「でも簡単ですよ」
妖精「心のこもった『ありがとう』っていう言葉、それだけで良いんです」
男「……そっか。それで、いいのか」
妖精「はい。その時ちょっとだけ私は人間界に留まれますので、そのうちに力を使います」
妖精「では早速――」
男「待って」
男「もう少しだけさ、妖精さんと一緒に居させてくれないか?」
妖精「うひゃあ! え、えええええ……!?」
男「ダメ?」
妖精「でででで、でも男さんはあの方が好きなんですよね……!?」(わたわた)
男「あはは。いや、そうだけどさ。もう少し、このまんまで」
妖精「はははハイ!」
乾いた夜、モノクロな冬の街並みを無言で過ごす。
きっとこのまま朝が来る。
そうしたらきっともう戻れないんだろう。
元のままには戻れない。
変わり続けなければならない。
その為の、モノクロのモラトリアム。
景色がセピアになるように、
俺は変わるための一歩目を歩き出すんだ。
失うように、俺は勇気を得る。
午前五時五十七分。
妖精「景色……明るくなってきましたね」
男「ああ……」
妖精「男さんなら絶対大丈夫です。私だって出来たんです」
男「そうだと良いな……」
妖精「もう! 弱気はダメですよ!」
男「ごめん」
妖精「……男さん。良い事教えてあげましょうか?」
男「何?」
妖精「あの方は『妖精殺し』じゃないですか」
男「うん」
妖精「男さんは『妖精落とし』です……」(コソコソ)
男「え? 何て言った?」
妖精「おーしーえーませーん」
男「気になるなぁ」(ジトー)
妖精「そ、そんな目で見たってダメですよ! かか、かなり勇気が必要だったんですから!」
男「そんなに!? うわー凄い気になるじゃんそれ!」
妖精「えへへ。秘密です」(ニッコリ)
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