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    元スレ悪女「ハァ~? あたしに聖女の代わりなんて出来るわけねーだろ!」

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    1 :

    ― スラム街 ―

    「新入りィ……お前、スラムの外歩いてる商人から金品奪おうとしたらしいな」

    新入り「へい……」

    「いったよな? “外のモンから盗むな”って。あたしらは山賊じゃねえんだ」

    新入り「す、すんません……」

    「どれでもいい。指出しな」

    新入り「へ、へい」サッ

    ポキッ

    新入り「…………ッ!」

    「掟破ったら、指一本ヘシ折る。新入りも例外じゃねえ」

    3 = 1 :

    新入り「う、うう……」

    「だが、指折られても悲鳴上げねえとは、なかなかの根性じゃねえか」

    新入り「どうも……」

    「今回のことはしょうがねえ。その調子で頑張りな! 期待してるぜ、新入り」ニコッ

    新入り「あざっす!」ニカッ



    「ったく指折った相手を笑顔にするなんて、姐(あね)さんにしかできねえ芸当だ」

    眼帯「腕っぷしだけじゃねえ。あの人を惹きつける妙な力で、スラムをまとめあげやがったからな。
       姐さんは……」

    4 :

    よん

    5 = 1 :

    金髪「姐さん」

    「どうした?」

    金髪「妙な奴が、姐さんに会いたいっていってきてるんですが……」

    「妙な奴?」

    金髪「“教会の司祭”だとかほざいてる若い男です。どうしますか? 追い返しますか?」

    「教会ィ? おもしれえじゃねえか。会ってみたい。通してくれ」

    金髪「分かりました」

    6 = 1 :

    司祭「初めまして」

    「おう。神に仕える人間がこんなとこになんの用だ?」

    「あたしはむやみに外のモンに手ェ出すことは禁じてるが、
       そっちからスラムに入ってきた場合は容赦しねえ。
       くだらねえ話だったら、マジでこの場で神様んとこ行くことになるぞ」

    スラム住民すら息を飲む迫力。が、司祭はひるまない。

    司祭「ビジネスの話を持って参りました」

    「ビジネスぅ?」

    司祭「もし引き受けて下さるのであれば……前金としてこれだけお渡ししましょう」ドサッ

    札束が置かれる。

    オオッ…

    「よくこんな金用意できたな」

    司祭「聖職者というのは儲かるものなのですよ」

    7 :

    地の文はいらないよ

    9 = 1 :

    「す、すげえ!」

    眼帯「こんな大金見たことねえ!」

    ザワザワ…

    「あんまりがっつくんじゃねえ! みっともねえ!」

    眼帯「す、すんません……」

    「これだけあれば、駄菓子の『うまいスティック』何本買えるかなぁ……」

    「姐さんが一番みっともないっすよ!」

    「えへっ」

    司祭「…………」

    10 = 1 :

    「この金はもらっとく」

    司祭「ということは、引き受けて下さると?」

    「ああ、どんな汚れ仕事だろうがやってやるよ」

    金髪「待って下さい、姐さん。いくらなんでも怪しすぎる」

    「んなことは百も承知だ。あたしらが怪しい話に飛び込まなくてどうすんだよ」

    金髪「……そりゃそうですけど」

    「で、どんなビジネスだ? 久しぶりにワクワクしてきた」

    司祭「極秘のビジネスなので、是非人払いを」

    「いいだろ。ほら、みんな散った散った!」

    チンピラ達が立ち去っていく。

    司祭「流石ですね。荒くれ者たちが大人しく散っていくとは」

    「一応スラム仕切ってんだ。これぐらいできねえとな」

    「んじゃ、ビジネストークといこう。これだけの大金だ、相当ヤバイ仕事なんだろ?」

    司祭「はい、かなりヤバイです」

    「ゾクゾクしてきた。たまんねえな」

    11 :

    なんでそんな嫌うのか意味がわからん

    12 = 1 :

    司祭「実はですね……あなたに“聖女”になってもらいたいのです」

    「へ? 聖女?」

    司祭「正確にいうと、聖女の代わりをしてもらいたいのです」

    「ふーん……聖女ね……」

    司祭「よろしくお願いします」

    「いや、ちょっと待って!」

    司祭「なにか?」

    「聖女ってあれだろ? 教会に所属して、人々に救いを与えて……みたいなことやる女だろ?」

    司祭「その通りです。それをあなたにやってもらいます」

    「ハァ~? あたしに聖女の代わりなんて出来るわけねーだろ!」

    13 = 1 :

    「あたしは生まれも育ちも生粋のスラムっ子! 教会なんか入ったことすらねえ!
       聖女とまるっきり正反対の悪女なんだよ!」

    司祭「いえ、あなたなら出来ます」

    「いや無理だって!」

    司祭「以前あなたをたまたま見かけた瞬間、ビビビッと来たのです」

    「それきっと蜂かなんかに刺されたんだよ!」

    司祭「それに、あなたにしか頼めない理由もあるのです」

    「どんな理由があるのか知らねえが、聖女の代わりなんてムリムリムリ!
       んな話だったらお断りだ! 金も返す!」

    司祭「そうですか、残念だなぁ……」

    「あ?」

    14 = 1 :

    司祭「スラム統一を成し遂げた天下の悪女が、まさかこんなチキンだとは思いませんでした」

    「なんだと!?」

    司祭「だってそうでしょう。お金を受け取っておきながら、話を聞いたとたん降りるなんて。
       チキンを越えたチキン……超チキンですよ」

    「てめえ!」ガシッ

    司祭「殴りますか? 殺しますか? いいでしょう。私は死を恐れません。
       天国中にあなたのチキンっぷりを広めることにしましょう」

    「うぐぐ……」

    司祭「さあ、どうぞ」

    「分かった……やるよ」

    司祭「やる、とは? はっきりおっしゃって下さい」

    「“聖女”……やってやろうじゃねえか!」

    司祭「おおっ、さすが天下の悪女!」

    「うっせえ!」バキッ

    司祭「あ、結局殴るんですか」

    15 = 1 :

    スラム住民に見送られ、悪女と司祭が出発する。

    金髪「姐さん、お気をつけて」

    「おう、留守はお前に任せる。しっかり頼むぞ」

    眼帯「行ってらっしゃい!」

    「たっぷりお土産頼んますぜ!」

    ワイワイ… ワイワイ…

    イッテラッシャーイ… アネサーン… スグカエッテコイヨー…

    司祭「大人気ですね」

    「へっ、あんな荒くれ者どもに人気でも嬉しくねえよ」

    16 = 1 :

    二人は教会にたどり着く。

    「へえ~、結構でかい教会じゃねえか」

    司祭「ええ、この辺りで一番大きな教会ですから。領民からの信頼も絶大です」

    「ここであたしの聖女生活が始まるわけ……ん?」

    司祭はまた違う方向に歩いていく。

    「おいっ、どこ行くんだよ!」

    司祭「まずは“本物の聖女様”に会ってもらいます」

    「へ? 本物の聖女は教会にいるんじゃねえの?」

    司祭「違います。ついてきて下さい」

    「どうなってやがる……」

    17 = 1 :

    森の奥深く、目立たぬところに小屋が建っていた。

    「ったく、なんでこんなところにいるんだよ。森林浴が趣味か?」

    司祭「色々と事情がありまして。このことを知ってるのは、私を含めほんの数名のみです」

    「マジでトップシークレットじゃんか。聖女ってのがどんな女か楽しみだよ」

    司祭「おそらく、一目でなぜ私があなたを選んだか分かると思います」

    「分かるわけねえだろ」



    小屋に入る二人。悪女はその瞬間、司祭の言葉は正しいと思い知ることになる。

    18 = 1 :

    老執事「お帰りなさいませ」

    司祭「連れてきましたよ。聖女様の代わりを務めて下さる方を」

    「ちぃーっす」

    「あなたが……私の代わりを……」

    「…………ッ!」

    「おい、司祭!」

    司祭「なんでしょう」

    「こいつ……あたしに“そっくり”じゃねえか!」

    司祭「これで、私があなたを選んだ理由が分かったでしょう?」

    「分かりすぎるほど分かったよ……」

    (一瞬、なんであたしがベッドに寝てるんだって思っちまったぐらいだ!)

    19 :

    そういうことか

    20 = 1 :

    「あんたが聖女か。初めましてだな」

    「初めまして……。私もあなたを見て、驚いております……」ケホッ

    「聖女っていわれるからにゃ、そう呼ばれるだけのことはしてんだろ? なにしてんだ?
       発光したり、宙に浮いたりすんのか?」

    司祭「聖女様は教会を拠点に、村や町を巡り歩き、人々に励ましの言葉を届けています。
       この活動に多くの人間が救われ、いつしか“聖女”と呼ばれるようになったのです」

    「なるほどね。ご立派なこって。だが、あたしのスラムに来たことはねえよなぁ?
       所詮あたしらは励ます価値もねえってことか?」

    「申し訳ありません。もちろんスラム街も訪ねたかったのですが……」

    司祭「私が止めました。いくらなんでも危険すぎると」

    「アハハ、それで正解だよ。スラムにあんたみたいな清楚な娘が来たらろくなことにならねえさ。
       イジワルいって悪かったな」

    21 = 1 :

    「だけど、なんであたしが代役しなきゃならないんだ?」

    司祭「実は……聖女様はご病気なのです」

    「病気?」

    「はい……咳がよく出て、手足が痺れ、歩くこともままなりません」

    「マジかよ……。だがよ、それだったら素直に病気だって公表した方がいいんじゃねえか?」

    司祭「しかし、聖女様の励ましは今や大勢の村人、町民が待ち望むものとなっており、
       やめるわけにはいかないのです」

    「そういうもんなのか」

    「皆様を失望させたくはありません……。どうか……お願いできないでしょうか」

    老執事「私からもお願いいたします」ペコッ

    「…………」

    22 :

    毎回どんでん返しあるんで好き

    23 :

    顔知らないから悪女連合と悪男連合で喧嘩し始めるのは笑った

    24 = 1 :

    「ま、いいや。引き受けてやるよ。金もらっちったし」

    司祭「ありがとうございます」

    「ありがとう……ございます……」ゴホゴホ

    「あまり期待すんなよ」

    老執事「ではさっそく、こちらにお着替えを。聖女様のお召し物と同じものです」

    「うおっ、白くてヒラヒラしてる……」

    文句を言いつつ着替える。

    司祭「よくお似合いですよ。ますます聖女様そっくりになりました」

    「へへ……なんかスースーすんな」

    司祭「普段は教会に過ごしてもらうことになります。教会へ向かいましょう。
       くれぐれも自分が聖女であることを忘れずに」

    「あいよ」

    25 = 1 :

    ― 教会 ―

    「豪勢な教会だねえ。ホントに庶民を救いたいなら、この金を回してやれよ」

    司祭「ごもっともです。耳が痛い」

    歩いていると――

    「ん。なんだあのおっさん。たくさん僧侶を引き連れてやがる」

    司祭「大司教様です」

    「大司教?」

    司祭「平たくいうと、“この教会のボス”です」

    「平たすぎるだろ」

    大司教「おや、これは聖女君。今日もどこぞの村や町を回ってきたのかね?」

    「ええ、まあ……そうです」
      (どうやら、見た目では全くバレてねえようだな。本当にそっくりなんだな……)

    26 :

    荒地の魔女

    27 :

    悪女になるなら月夜はおよしよ素直になりすぎる

    28 = 1 :

    大司教「困るんだよねえ」

    「え……」

    大司教「村や町の連中に励ましの言葉とやらをかけて、チヤホヤされてるようだが……
        あまり庶民に施しを与えては、教会が安く見られてしまう」

    「あ……?」ピクッ

    司祭(悪女さん!)コツン

    「申し訳ございません、大司教様」

    大司教「先代大司教の娘だからといって、あまり調子に乗るんじゃないぞ。
        今、この教会のトップは私なのだ」

    「もちろんです……」

    大司教「ふん」スタスタ

    29 = 1 :

    「なんなんだあの野郎は。ムカつく奴だ」

    司祭「聖女様は今、大司教様以上に慕われる存在になってますから。
       自分の権威が脅かされるのではと不安を抱いてるのでしょう」

    「あたしにゃ分かる。ありゃあ悪党のニオイがプンプンするぞ。同類のニオイっつうか」

    司祭「うかつなことを言わないように」

    「へいへい」

    司祭「ああ、それとどこで誰が見てるのか分かりませんから、そういう口調も控えめに。
       聖女の入れ替わりを知ってるのは、私や老執事さんだけなのですから」

    「……分かりました」

    「…………」

    (だがよ、あたしはお前からも悪党のニオイがすんだよ、司祭)

    (本当に信じていいんだな……?)

    30 = 1 :

    ……

    司祭「今日から、本格的に聖女としての活動をして頂きます。
       ある小さな村で、励ましの言葉をかけてもらいます」

    「おう」

    司祭「口調!」

    「はい」

    司祭「頼みますよ。いくら外見がそっくりでも、悪女丸出しの態度をされたら、
       周囲から怪しまれてバレますから」

    司祭「そうなったら、このビジネスはここで終わりです。残金の支払いも無しです」

    「私、お金のために頑張りますわ!」

    司祭「…………」ジロッ

    「そう怒るなって! 仕事はマジでやるからさ!」

    司祭「不安になってきました……」

    31 = 1 :

    ― 村 ―

    村人達は聖女の登場を心待ちにしていた。

    「おおっ……!」 「聖女様だ!」 「来て下さったぞ!」

    ワイワイ… ガヤガヤ…

    司祭「まもなく始めますので、皆さま並んで下さい」

    (たかが小娘に励ましてもらうだけなのに、すげー盛り上がってんな。
       なるほど、代役立ててでも中止できないのも分かる……)

    32 = 1 :

    ワイワイ…

    「おい」ボソッ

    司祭「なんでしょう?」

    「なんでしょうじゃねえよ。励ましってどういうことを喋ればいいんだ?
       よく分かんねえけど“神はあなたをお救い下さいます”とかでいいのか?」

    司祭「聖女様はあまりそういった言葉は用いません。
       あくまで自分の言葉で、ひとりひとりに言葉を投げかけます。
       だからこそ皆から慕われ、“聖女”と呼ばれるほどになったのです」

    「あたしにもそうしろと?」

    司祭「はい」

    「実質アドバイス無しかよ。まあいい、やってみるか」

    33 = 1 :

    農民「ど、どうも……」

    「初めまして」ニッコリ

    聖女らしいスマイルを浮かべる。

    農民「聖女様にお会いできて光栄です」

    「私もです」

    農民「ぜひ握手をさせてもらってもいいですか」

    「ええ、いいですよ」

    ガシッ

    農民「す、すんません。こんなごつごつした手で……いつも農作業してるせいで……」

    「…………」

    34 = 1 :

    「いえ、逞しくて、とても温かい手ではありませんか」

    農民「え……」

    「あなたがこの手で頑張って農作業をしてくれているから、
       私たちはおいしい野菜を食べることができるのです」

    「本当にありがとうございます。私はこの手に触ることができたことを誇りに思います」

    農民「あ、は……はいっ! これからも一生懸命やります!」

    「無理なさらないで下さいね」ニコッ

    司祭(ほう……)

    35 = 1 :

    村娘「噂では聞いてましたけど、聖女様ってホントお綺麗ですね」

    「そうですか、ありがとうございます」ニコッ

    村娘「私なんかほら、こんな地味な顔で……」

    「そんなことはありませんよ。むしろ私の故郷では、貴女の方が人気が出るでしょうね」

    村娘「ホ、ホントですか。ちょっと自信がつきました!」

    「いい笑顔です。そうしていれば必ず幸せが舞い込みますよ」

    司祭(故郷ってのはスラムのことかな……たしかに素朴そうな彼女は新鮮で大人気になりそうだ)

    36 = 1 :

    励ましが終わり――

    司祭「お疲れ様でした」

    「う~、疲れた」コキッコキッ

    司祭「悪女というよりおっさんですね」

    「うるせえよ。こんなんでいいのか?」

    司祭「ええ、やるじゃないですか。違和感ありませんでしたよ。
       聖女様と会って、なんとなくあの人ならこういうだろうなってことをいったんですか?」

    「いいや? ただ思ったことを口にしただけだよ。もちろん口調はそれっぽくしたけど」

    司祭「…………」

    司祭「あなたには“聖女”の素質があるのかもしれませんね」

    「アホか! あるわけねえだろ! さ、帰ろ帰ろ! メシだメシ!」

    37 = 1 :

    ― 教会 ―

    司祭「食事です、どうぞ」

    「…………」チュルッ

    パンやスープ、サラダを食べる。

    「う~ん、薄い。教会のメシってのはこんなに薄いのか?」

    司祭「神に仕える者の食事というのはこういうものです。素材の味を大事にしますから」

    「味気ねえなぁ。スラムのメシのがよっぽど美味かったぜ」

    司祭「ま、どうしてもというなら、調味料ふりかけてもいいですが」サッ

    「持ってんのかよ! この悪党!」

    38 :

    すまん
    言ってること全く分からん

    39 :

    元の家庭環境からしてスレる余地ありありな所に戦争という異常な環境下に置かれればおかしくもなる
    なんだかんだクロノクルというとまり木は見つけたけどどうにもザンスカールで強化された臭いしクロノクルを殺ったウッソに対して殺しにかかるのも不思議ではない
    信念を貫き通す子供など気持ちが悪いってカテ公の言い分もわからなくもないしな

    40 = 1 :

    ― 小屋 ―

    「あ……来て下さったのですね」

    「具合はどうだ?」

    「今のところは……悪女さんも、今日はどうでしたか?」

    「まあ、なんとか上手くいったよ。とりあえずはな」

    「そうですか、よかった! あなたならきっと大丈夫だと信じていました!」

    「ホントかよ」

    「ええ、あなたはお優しい方ですから。
       私なんかよりよっぽどためになる励ましの言葉をかけられたと思います」

    「あたしが優しい? 冗談だろ。スラムのボスやってんだぜ」

    「いえ、私には分かります」

    「アハハ、お前と話してると調子狂うなぁ。優しいなんていわれるの初めてだ」

    41 = 1 :

    医者「失礼します」

    「あ、お医者様」

    医者「今日の分のお薬です。さ、どうぞ」

    「ありがとうございます」

    粉薬を飲み干す。

    医者「では失礼します。また伺いますので」

    「おつきの医者もいるのか」

    「ええ、司祭様が連れてきて下さった御方で、私のために特別な薬を調合して下さってます」

    「ふーん……」

    42 = 1 :

    ― 町 ―

    「今日は町か。結構でかいな」

    司祭「はい、ですから励ます人数も多いです。大変でしょうが、頑張って下さい」

    「ああ、あのお嬢ちゃんの期待にも応えてやらなきゃなんねえしな」

    司祭「お、少しやる気が出てきましたか」

    「まあな」

    ……

    中年「このところ息子が反抗期で……生意気な口をきくようになり……」

    「子供が怖い、可愛い、叱りたくない、という気持ちは分かります。
       しかし、時にはガツンといってあげることが必要なのです」

    「悪いことをする人間は心のどこかで止められること、叱られることを期待してますから。
       今ならまだ間に合うはずです」

    中年「なるほど……」

    司祭(悪のトップがいうと説得力が違う)

    43 = 1 :

    商人「聖女様、ぜひ相談させて下さい」

    「どうぞ」

    商人「つい最近のことなのですが、スラムの近くを通りがかったら、そこの住民に襲撃されましてねえ。
       危うく金や商品を奪われるところでした」

    「まあ……危ないところでしたね」

    商人「スラム内の抗争が収まり、少しは秩序が出来たと聞いてましたが、
       結局なにも変わってなかったのです」

    商人「奴らは国の恥さらしです。領主様ももはや放置しており、手に負えない」

    商人「なんとか聖女様のお力で、スラムのクズどもに天罰を与えて下さいませんか。
       このままでは気が収まらないのです」

    「…………」

    司祭(ま、まずいっ! 悪女さんっ……!)

    44 = 1 :

    「私もスラムの方々の蛮行にはひどく心を痛めております」

    司祭「え」

    「本当に申し訳ございません。聖女として深くお詫びいたします」

    商人「いや、あなたが謝らなくても」

    「しかしながら、彼らがああいう場所でしか生きられない境遇なのも事実なのです……。
       親兄弟を亡くし、行くあてのない者たちばかりですから。
       もちろん、そんな境遇が免罪符になることはありませんが」

    商人「そうだったのですか……それは知りませんで」

    「いつか必ず、この私があの方たちを更生させてみせます」

    「どうか、もう少しの間だけ、スラムの方々を見守って頂けないでしょうか」

    「お願い致します……」

    商人「…………!」ドキッ

    商人「は、はいっ! ――スラム最高!」

    「いえ、最高はおかしいです」

    45 :

    悪女になるなら月夜はおよしよ素直になりすぎる
    隠しておいた言葉がポロリこぼれてしまう

    46 = 1 :

    司祭「お疲れ様でした」

    「いやー、今日は人が多かったな。みんなどんだけ悩み苦しみ抱えてんだよ」

    司祭「ところで……さっきは怒りませんでしたね」

    「怒る?」

    司祭「スラム住民はクズだといわれて……」

    「そら多少はカチンときたよ。だが、ホントのことでもあるからな。
       ウチの連中は酒と喧嘩が大好きな荒くればかりだし、よそから嫌われてるって認識はある」

    「だが、そのままじゃスラムに未来はねえ。いつか潰されるか、自分で潰れる。
       だからあたしは悪女として成り上がって、スラムを統一したんだ」

    司祭「あなたなりにスラムの未来を想い、抗争をし、勝利したわけですね」

    「まぁな」

    司祭「やはりあなたは聖女様とよく似ている」

    「似てるどころかそっくりだろ。容姿だけは」

    司祭「いえ、そうではなく……中身も」

    「中身ィ? 冗談よせよ」

    47 = 1 :

    帰り道――

    司祭「帰って夕食にしましょう」

    「まーたあの味の薄いメシかぁ」

    司祭「料理人に味を濃くするよう指図しておきますよ」

    「おほっ、やったぁ!」

    ザザッ…

    「なんだ?」

    黒い装束の二人組が、悪女と司祭に襲いかかってきた。

    「あいつらは……!?」

    司祭「下がって下さい、こいつらは私が相手します!」

    司祭がメイスを構える。

    (へえ、こんな武装してやがったとは!)

    48 :

    元の家庭環境からしてスレる余地ありありな所に戦争という異常な環境下に置かれればおかしくもなる
    なんだかんだクロノクルというとまり木は見つけたけどどうにもザンスカールで強化された臭いしクロノクルを殺ったウッソに対して殺しにかかるのも不思議ではない
    信念を貫き通す子供など気持ちが悪いってカテ公の言い分もわからなくもないしな

    49 = 1 :

    二人組と攻防を繰り広げる司祭。

    司祭「はっ!」ブオンッ

    襲撃者A「くっ!」

    司祭「せやぁっ!」バキッ

    襲撃者B「ちっ……!」

    (やるじゃん。さすがスラムに一人で乗り込んできただけのことはある。
       腕っぷしもあったんだな)

    襲撃者A「退くぞ!」ダッ

    襲撃者B「おう!」ダッ

    司祭「ふう……」

    「大したもんだ。スラムでも十分通用するぞ」パチパチ…

    司祭「どうも」

    50 = 19 :

    強いな司祭


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