元スレ貴音「……おはよう、ございます」

みんなの評価 : ★
1 :
とある病院
看護婦「四条さん、おはようございます」
看護婦がカーテンを開けると、個室の病室に朝の光が降り注がれました。
貴音「……」
病室のベッドで寝ている銀髪の女性は、眩しい光に動じることもなく眠り続けています。
看護婦「今日も天気がいいですね」
貴音「……」
看護婦「……今日も、よく眠ってますね」
貴音「……」
看護婦は銀髪の女性に話しかけますが、女性は変わらず眠り続けています。
2 :
きたい
3 :
おい
4 = 1 :
看護婦「一体、どんな夢を見ているんでしょうね」
貴音「……」
看護婦「今日の昼食はラーメンにしようかな……?」
看護婦のその一言で、銀髪の女性は一度軽く身震いした後……
貴音「!!」パチリ
看護婦「!」
銀髪の女性はゆっくりと目を開けました。
貴音「……ここは……」
女性は、自分が目覚めた場所を確認するように、ゆっくりとあたりを見渡します。
対して看護婦は、目をまん丸に見開いたまま固まったかと思うと
看護婦「せ、先生!患者が!四条さんが目を覚ましました!」
慌てたように病室を飛び出して行きました。
銀髪の女性、四条貴音は、およそ50年もの長い長い昏睡から目を覚ましたのです。
5 :
『停滞』してたのか…?
新番組「おねがい☆プロデューサー」…?
6 :
ぱんつ脱いだ
7 :
えっ
えっ
8 = 3 :
もちろん見た目はかわってないよな!
10 = 1 :
医者「よく、目を覚ますことが出来ましたね」
医者は、貴音を診察した後、そう告げました。
貴音「……」
貴音は、首元をゆっくりとさすりながら、しかしなにも答えることはしませんでした。
いえ、そうではありません。彼女は混乱して上手く返答できなかったのです。
医者「無理もありません。これほどの長い昏睡から目が覚めた例など、ほどんどないのですから」
看護婦「……」
貴音「私は、どうしてしまったのでしょうか」
医者「どうやら、そこらへんの記憶が曖昧になっているようですね」
看護婦「……」
医者の横には、先ほど貴音が目を覚ました時にそばにいた看護婦もいました。
貴音「……はぁ……」
医者は、難しそうな学術用語が詰まった言葉で説明しますが、詳しい内容は読み取ることができません。
貴音「つまり、こういうことですか……」
貴音は、言葉の意味をかみ砕くために、必死に自分に言い聞かせます。
要約すると、50年前に交通事故に遭い、それ以来昏睡状態が続いていたということらしいのです。
11 :
しえん
12 :
目覚めるためのキーワードがひどい
14 = 1 :
医者との会話を終えた後、看護婦の押す車いすに座った貴音が一言いいました。
貴音「……ものすごく、疲れました」
看護婦「無理もありません。私も何年も前からあなたを見てきましたけど、今も驚いているんです」
看護婦は、どこかうれしいような、悲しいような、複雑な表情をしていました。
貴音「長い間、どうもありがとうございました。なんとお礼を申したらよいか……」
看護婦「構いませんよ。それが私たちの仕事なんですから」
貴音「そうですか……」
貴音は、そう答えながら、やはりあたりを見渡しています。
50年。それほどの長い年月のなかで、病院という建物自体も、彼女が知るものとは少し違うものになっていたからです。
貴音「あの……看護婦殿。あそこにあるのは一体……?」
看護婦「ああ、あれは、診察用のロボットですよ」
貴音と看護婦の視線の先には、丸みを帯びた、どこかやさしさを感じさせるデザインの機械が病室を回っていました。
看護婦「ここ数年のことなんですけどね。こういった機械が病院に導入されるようになったのは」
貴音「……面妖な」
貴音は、それ以外言葉に出来ない様子でした。
15 :
雰囲気を出した
真面目系ギャグ話か
17 = 1 :
貴音と看護婦はそれから無言のまま、病室へと到着しました。
貴音「ありがとうございます」
看護婦「お気になさらずに」
貴音は、静かにあたりを見渡しました。
目覚めたときに気付かなかったことですが、やはり病室内も彼女の言うところの「現在」とは違うものとなっていたのです。
貴音は、それから一つ溜息をつくと、看護婦に話しかけました。
貴音「あの、看護婦殿。一つお聞きしたいことがあります」
看護婦「はい、なんですか?」
貴音「私は、50年ほど前、765プロという事務所でアイドルをしておりました」
看護婦「!!」
貴音「年齢でいえば、今はもう68歳のアイドルということになりますね」
看護婦「そう、ですね」
看護婦は、また困ったような表情を見せながら答えます。
これから来るであろう彼女の質問を想うと、そうならざるを得なかったのです。
18 = 1 :
貴音「今、765プロは、他の仲間たちはどうしているのでしょう」
看護婦「……」
看護婦は、一度視線を足元に落とした後、貴音に目線を合わせます。
看護婦「765プロは、もう何年も前に倒産しましたよ」
貴音「……そうですか。残念です」
看護婦「他の、当時のアイドルの方の消息も分かりません」
貴音「……」
看護婦「ですけど、心配はありませんよ。きっと、他のアイドルの方も元気にしていると思います」
貴音「……それを聞いて、少し安心いたしました」
看護婦「……」
貴音「そう気を落とさないでください。あなたには関係のないことですよ」
看護婦「そう……ですね。ええ」
看護婦はそう一言言うと、話題を無理やり変えようとします。
看護婦「その!リハビリはそう遠くないうちに始まると思いますので、そのつもりでお願いしますね」
貴音「はい……」
20 :
え
22 = 1 :
貴音「最後に一つ、質問をしても」
看護婦「はい」
貴音「なぜ、私の姿は50年前と変わらないのでしょう」
看護婦「それは……分かりません」
看護婦「ですけど、そのおかげで今までの治療費も賄えたんですよ」
貴音「どういうことですか……」
看護婦「四条さんは50年もの昏睡の間、全く老化しなかったんです」
貴音「……つまり?」
看護婦「あなたの体は、徹底的に調べつくされました。その不老のメカニズムを調べるために」
看護婦「その……検査のおかげで、あなたの莫大な治療費が賄われたんです」
貴音「……!」
貴音は思わず吐き気を催しました。しかし、何も食べ物が入っていない胃は胃液を吐きだそうとするばかりです。
看護婦「四条さん!?」
看護婦が、突然身を折った貴音に寄り添います。
貴音は、自分が寝ている間にされた凌辱ともいえる行為を想うと、悲しさよりも悔しさがこみあげていたのです。
23 :
看護士空気嫁
24 = 16 :
なん…だと……
26 = 1 :
貴音をなんとか寝かしつけ、看護婦は医者のもとへ戻りました。
看護婦「……軽率でした」
医者「全く、患者が混乱しているのは分かっていただろうに」
看護婦「はい、すみません」
看護婦は少しうなだれますが、医者もそれほどきつく責めているようではありませんでした。
医者「まぁ、君の気持ちは分からんでもないけどね」
看護婦「……ありがとう、ございます」
医者「今度からは気をつけてくれよ。この双海病院も、あまり経営はよくないんだ」
看護婦「……はい」
医者「あの患者のおかげで、この病院は持っているんだからね」
看護婦「……」
看護婦は、きゅっと唇をかみしめました。
医者の言葉はもっともなのですが、それを言い返せない自分が悲しくなったのです。
看護婦「すみません、四条さん」
医者が去った後、看護婦は一言、そうつぶやきました。
27 :
なんで765プロすぐ倒産してしまうん?
28 = 16 :
そりゃ50年もしたらなくなるだろ
29 = 12 :
>>27
だって社長がアレだから…
30 :
この看護師があみまみのどっちかってことではなさそうだな
32 :
亜美真美ですら定年してるという
33 = 13 :
765プロって社長の眼力で持ってるようなところあるから
退陣したら倒産してもおかしくないと思う
34 = 1 :
数日後
看護婦「おはようございます、四条さん」
貴音「おはようございます」
貴音の病室のもとへ、いつものように看護婦がやってきます。
看護婦「様子はどうですか?体調に何か変化は」
貴音「いえ、特には」
貴音は喉元をさすりながら、静かにそう答えました。
看護婦「気になりますか?」
貴音「はい?」
看護婦「その、首元の傷跡ですよ」
貴音の喉には、丸い傷跡が残っていました。
それは、かつての流動食を流し込むチューブを通す穴の傷跡でした。
看護婦「何年か前に、新しい栄養剤が出来てからは、もう必要がないってことでふさがれたんです。いろいろ危険ですし」
貴音「……」
貴音は、まだ喉元をさすっているようでした。ただ無心に。
35 = 2 :
キツイな
36 = 1 :
貴音「今日は、どのような御用で。看護婦殿」
看護婦「ええ、今日から四条さんのリハビリが始まります」
貴音「リハビリ……?」
看護婦「はい、幸い、筋肉の硬直もないようなので、軽い歩行訓練などをやりますね」
貴音「私、歩けるのですが」
看護婦「えっ」
貴音は、さも当たり前のようにベッドから立ち上がって見せました。
貴音「ほら、私は自らの足で、立って歩けるので……」
看護婦「あっ」
そう言っているそばから、貴音は力なく崩れていきました。
それを看護婦が慌てて支えます。
看護婦「無理をしないでください!」
貴音「……申し訳ありません」
貴音は、驚いたように目を見開きながら、看護婦に謝ります。
外見はそのままでも、長い昏睡のおかげで運動もままならないのです。
37 = 5 :
太陽に導かれ
月明かりに守られ
私は生まれ変わる
超支援
38 = 1 :
リハビリ場
医者「それでは、この機械を装着してください」
貴音「はい」
医者が指示するままに、貴音は従いました。
目の前にあるのは、人の体を外側から支える骨組みのような機械です。
貴音「なんと、面妖な……」
貴音が驚く間もなく、他の看護婦や医者になすがままにされ、機械を装着しました。
医者「これは歩行訓練用のロボットです。基本的には自立をしていただきますが……」
医者「万が一転倒しそうな場合は、機械がそれを支えますので安心してください」
貴音「……はい」
貴音は、いまいち釈然としませんでした。自分が知っている世界とは、かけ離れていたからです。
仲間もなく、ただなすがままにされるしか方法はありませんでした。
貴音「……」
貴音が一歩踏み出すと、骨組みのようなロボットが作動音を響かせました。
どうやら、ほどんど自分の足では歩けていないようです。
貴音「なんと……なんと……」
39 :
大変興味深い
40 = 2 :
しえん
41 = 1 :
それでも貴音は、一歩一歩歩き出します。
ただ機械に支えられ、なすがままにされるのは彼女にとって侮辱といってもいいものです。
貴音「……くっ」
医者「あまり無理はしないように。かえって逆効果になりかねません」
貴音「私は……無理などしておりません」
医者「……」
貴音は、ただ無心に足を踏み出し続けます。
その様子を、あの看護婦が遠くから見詰めていました。
看護婦「……」
患者「あの……看護婦さん?」
看護婦「あ、はい。何でしょう」
他の患者に声をかけられ、看護婦は目線を映しました。
貴音「ふっ……ふぅ……」
看護婦は患者の対応をしながら、耳だけは貴音の方へと注意を向けていました。
彼女の吐息、そして機械の動作音が少しずつ少なくなるのを、聞いていました。
42 = 12 :
P捕まえたのは誰か、ちょー気になる
43 :
双海の病院なら亜美真美の消息くらい分かりそうなものだが
44 = 1 :
その日の夜
またいつものように、看護婦は貴音の病室を訪れます。
看護婦「四条さん、夕飯の時間で……す?」
貴音「……」
真っ暗な病室の中、貴音はベッドの上で毛布にくるまっていました。
看護婦「疲れて、寝ちゃったのかな……?」
看護婦が部屋を出ようとしたとき、静かな部屋の中でひと際大きな腹の虫が鳴きました。
貴音「看護婦殿」
看護婦「!!」
貴音が突然声をあげます。看護婦は思わず驚いてしまいましたが、同時にほっと胸をなでおろします。
看護婦「四条さん……起きてたんですか」
貴音「今日の晩御飯は、何でしょうか」
看護婦「残念ながら、ラーメンではないですね」
貴音「そうですか……」
貴音は、毛布にくるまったまま、残念そうにそう答えました。
45 :
自分の50年後とかあまり想像したくないな
46 :
カップ麺なら売店にありそうだが
47 = 13 :
ところで殿って女性にも付けていい敬称なの?
48 = 2 :
賞状とかであるからいいんだろ
49 :
様と一緒だしいいんじゃないの、知らんけど
50 = 43 :
>>47
主に役職の後に付けて使うもので男女の区別は無い……筈
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