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    元スレ新ジャンル「青春18切符」

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    1 :

    「すいません、青春18切符と…ながら二名分、空いてますかね?」

    駅員「少々お待ちください…12月29日、本日付けですね」

    「……」

    駅員「……丁度、空いてますね」

    「えっ!本当ですか!」

    駅員「ええ、キャンセルが発生して丁度あいたみたいですね」

    「なら、それでお願いいたしますっ!」

    駅員「そうしますと……青春18切符と快速指定席券が二枚で12520円になります」

    「細かいの細かいの…あったあった では、丁度で」

    駅員「はいっ、丁度いただきます それでは、東京から豊橋までで、席が八号車の3Cと3D席ですね」

    「どうもっ!」

    駅員「はい、ありがとうございました」

    2 = 1 :

    「いや~当日だから100%空いていないと思っていたのにあったとはな」

    「実に運がついているぜ しかも、二名分取れたから多少は横になれるな」

    「まぁ、八号車ということは名古屋で切り離されるのだが…それはいいとするか」

    「とりあえず、小田原までいくとするか」

    「何せ、JRがダイヤを変えてくれたおかげで東急で横浜までいけばいいのが」

    「小田原までとられるようになっちまったからな……」

    「ここは小田急で小田原までいってと……」

    「パスモは……まだ三千円分入っているな」

    「新宿から小田原まで850円…安いのか高いのかよくわからんな」

    「とはいっても、新宿~小田原だと千円以上とられるからな まぁ、安いんだろうな」

    「はぁ……」

    3 = 1 :

    (どうも男一人が長く続くと独り言が増えるなぁ……)

    (この切符を使うのも気付けば10年近くたつしな……)

    (まぁ、男独りきまま旅ってな……)

    (と、どうでもいいことを考えていたら…もう新松田か~)

    (気づけば、この車両にいるのは俺一人……)

    (……悪くはねえな)

    「ねえ、おにいちゃんっ」

    「……」

    「ねえねぇっ!おにいちゃんったらっ!」

    「……もしかして、俺のこと?」

    「そうだよっ!おにいちゃんっ!」

    「……俺はお兄ちゃんなんて呼んでくれるような、妹弟の類はいないはずなのだが…」

    5 = 1 :

    「えへっ、なら僕がおにいちゃんの事をおにいちゃんっ!って呼んであげるね」

    「……おい、お前」

    「なぁにっ!おにいちゃんっ!」

    「何者だ?」

    「おにいちゃんのお財布の中にいるものだよ~」

    「財布?おれの財布には札と免許証と社会保険証の類とパスモ定期券、それと銀行のカード位しか入ってねえぞ」

    「あともうひとつあるでしょっ!」

    「後は快速指定席券と青春切符しか…」

    「そうそれっ!」

    「はあ?」

    切符「僕はねっ、青春切符の精霊さんなんだよ~」

    「……」

    切符「あ~信じていないねっ!その顔は全く信じていない顔だねっ」

    6 = 1 :

    「ええと風邪薬、風邪薬……確か、鞄の中に入れたはず」

    切符「おにいちゃん!僕は幻覚でもないし、幻聴でもないよっ!」

    「いいや幻覚だ、自分の隣に切符の精霊なんてほざく少年なのか、少女なのかわからん奴がいるわけねえだろ」

    「あったあった、ルルゴールド 三錠出してと…」

    切符「……ていっ!」

    男 ビィベッ!

    「つぅぅっ……こらっ!くそがきっ!何しやがるんだっ!」

    切符「如何に、目の前に起きた超常現象とは言えども…現実から目をそむいちゃいけないよっ おにいちゃんっ!」

    「といって、飲もうとした薬を飛ばすのはどうかと思うんだけどな~」

    切符「ふぁいっ、ふぉひぇんひゃひゃいっ」

    (う~ん、人間としての温もりはあるな……何者なんだこいつは……)

    「……はぁ」

    8 = 1 :

     ご乗車ありがとうございました まもなく終点 小田原でございます

    「さてと、降りねえとな」

    「んっ、さっきのガキは…いねえな」

    「はぁ、旅のはじめから幻覚を見るなんて碌な事ねえな」

    「降りてと……」

    「ええと、小田原発が0時31分か ということは、一時間近くあるな」

    「なら、今のうちに飯と買出しを済ませるとするか」

    切符「おにいちゃんっ」

    「…また幻覚か」

    切符「だ~か~らっ、幻覚じゃなくてっ!僕は精霊なのっ!」

    「お前、俺にどこまで付いてくる気だ?」

    切符「てへへっ、おにいちゃんが僕とお別れするまでだよ~」

    「ということは?」

    切符「えへっ、一緒に旅行しようねっ!」

    (うわ~めんどくせ……)

    9 = 1 :

    「とりあえず、お前の素姓をあかしてもらいましょうかね」

    切符「もぐもぐ」

    「おいっ、俺のポテト勝手に喰っているんじゃねえっ!」

    切符「ごくっ、いいじゃんっ!おにいちゃんはLサイズ頼んだんだからいいでしょ!」

    「そういうことじゃ……まぁ、いいよ怒る気も失せたから」

    切符「えへへっ、じゃあ遠慮なく」

    (う~む、食べている姿は完全に少女だな……)

    「それで、お前は何者だ」

    切符「僕?僕はおにいちゃんが持っている青春18きっぷの精霊さんだよ~」

    「それで?」

    切符「物ってね~二十年以上、人の思念にあてられていると~僕みたいに形を作って心と肉体みたいのが宿るんだよっ」

    「で、何でおれの前に現れたんだ」

    切符「う~ん、なんでだろうね~」

    11 = 1 :

    「なんでだろうね…じゃねえよっ!」

    切符「なんとなくだね~気分みたいなものだよ~」

    「それよりも、お前…切符だろ?そういうの喰って平気なのか?」

    切符「うんっ、僕は精霊だから 全然、平気というかばっちこいっな感じだよっ」

    「変にオヤジ臭いな…」

    切符「だって、僕が産まれたのは1982年だもんっ おにいちゃんより年上なんだからうやま……いった~いっ!」

    「だったら、何でその姿なんだよっ!」

    切符「いっつつ……精霊としてはまだ未熟者だからね~、だからこの姿なんだよ~」

    「どうでもいいが、性別は」

    切符「ぼっ、僕……男の子だけど…それでもいい?」

    「……斜め45度からチョップいれていいかい?」

    切符「じょ、冗談だっておにい つぅ……」

    「何の断りなく、俺のダブルチーズバーガーを半分以上喰っているんじゃねぇ!」

    切符「ごっ、ごめんなさ~い…」

    「……はあ」

    12 :

    >>10
    いますぐ「俺よりIDに小文字が~」スレを立ててくるんだ!

    13 = 1 :

    「先に断わっておくが…お前の分は切られねえぞ」

    切符「大丈夫、大丈夫だよ おにいちゃんっ!」

    切符「だって、ほらっ!」

    「そっ、それは!」

    切符「そうっ!これは……赤券!」

    「ということは、俺の切符ではないのだな」

    切符「うん、そうだね~おにいちゃんのマルス発券の熱感紙じゃないね~」

    「それならいいんだが……まてよ」

    切符「そうだね~指定席券が一枚余っているよね~」

    「……そういう魂胆か…貴様」

    切符「そういうことだよ~」

    「……はあ」

    14 = 1 :

    「コンビニで缶ビールとつまみ……お前はどうするんだ?」

    切符「えっ、どっどうするって…おっおにいちゃんのがほし……いたたたっ……」

    「2Lのお茶を買っておけばいいな、これなら回し飲みもできるからな」

    切符「えへへっ、おにいちゃんと間接キスだね~」

    「……お前、わざと言っているだろ」

    切符「ううんっ、わざとじゃないよ~」

    「むしろ、わざといってくれていないとこの先のビジネスホテルとかが怖くて仕方がないのだが」

    切符「おにいちゃんと一緒のベット…にゃふふっ」

    「……お前、その情報どこから仕入れてきた」

    切符「コミケ列車のお姉さんたちから~」

    「わかった、もういい 黙れ」

    切符「う~ん、どこか間違っているかな?」

    「全部間違っているから、黙ってろ」

    15 = 1 :

    「30日付で」

    駅員「はい、どうぞ」

    切符「同じく~」

    駅員「おっ、赤券ですね どうぞっ」

    「駅員が反応を示したな」

    切符「だって、常備券だもんっ 少しでも知っている人なら反応を示すよっ」

     まもなく ムーンライトながら号 大垣行きがまいります

    「タイミングよく来たな、ええと八号車八号車と」

    「おっ、ここだここだ」

    「3D席は、っと…よし、荷物を足において…」

    「鞄から、アイマスクとエア枕を取り出して 靴下脱いでと……よしっ、酒盛りだ」

    「おっと、財布をジーパンの中に入れないとな 防犯上、スリが結構いるみたいだしな」

    切符「…おにいちゃん、慣れているね」

    「まあな、二桁使っていりゃあなれるさ」

    16 = 1 :

    「それじゃあ、乾杯っと……」

    切符「じゃがりこ~おいしいね~」

    「ったく、また勝手に開けおって……とりあえず、静かにな」

    切符「うんっ!わっ……いったぁい……」

    「貴様は……まあいい、これ以上なにもいわねえよ」

    切符「じゃがりこじゃがりこ……それにしても、おにいちゃんはどこまでいくの?」

    「特に、決めていない」

    切符「えっ!?無目的なのっ!?」

    「ああ、目的がないことが目的といってもいいかもな」

    切符「なら、おにいちゃん 豊橋で降りて飯田線にでものろっか」

    「それは、高三の夏にとっくのとうにやった」

    切符「なら、名古屋で降りて紀伊本線をぐるっとは?」

    「大二の春にやった」

    切符「なら~」

    「とりあえず、時刻表さえ持っていればどこにでもいける 制限はあるがな」

    17 :

    頑張れ

    18 = 1 :

    切符「え~プランがないの?」

    「プラン?そんなものは、後で作ればいいだけだろ」

    「鉄道では九州も四国も北海道も札沼線以外はほとんど乗ったしな」

    切符「へ~結構、乗っているね~」

    「まあな、それに目的がある旅は飽きた」

    「そんなものは大学生までに済ますもんなんだよ、それよりも…」

    「目的を作る旅、社会人になったらそういう旅をしないとだめだと俺は思うね」

    切符「ふ~ん、僕より生きていないのに達観しているね~」

    「うんにゃ、達観はしてないさ ただ、18切符を楽しみたいだけだよ」

    切符「へ~おにいちゃん……カッコいいね…僕…ほむんぐっ!」

    「それ以上言うな、俺の気分が萎える」

    切符「むむむっ……!」

    19 = 1 :

    車掌「失礼します、切符の方を…はい失礼します」

     かちっ かちっ

    車掌「はい、ありがとうございました」

    「はい、どうも」

    「さて、もう熱海だな……早いもんだ」

    切符「で、おにいちゃんはどうするの?」

    「まあ、京都につくまでに考えておくさ」

    切符「あっ、おにいちゃん…寝るの?」

    「当然、寝るさ ながらは富士をすぎるまでに寝なきゃ徹夜コースになるからな」

    切符「それはどういうこと?」
    「静岡で20分停車で浜松が24分停車、豊橋で53分停車するだろ?」
    切符「うん、そうだね」
    「で、俺は喫煙者だ 分かるな」
    切符「煙草を吸う時間があるということは~自動的に意識し始めちゃって寝れなくなるってこと?」
    「そういうことだ じゃあ、お休み もし、起きてたら鞄の中にPSPがあるから勝手にやってていいぞ」
    切符「うんっ!そうする~」

    20 = 1 :

     ぴぴぴっぴぴっ!

    「う~ん……もう熱田か」

    切符「おっはよ~うっ!」

    「……あさっぱらから、耳元で大声だすな」

    切符「うぅぅ…いい角度のチョップが……」

    「さてと、前6に乗り換えないと…用意してと」

    切符「で、おにいちゃんはよく眠れたの?」

    「ああ、なんとかな 今回は眠れたから、二勝十四敗ってところだな」

    切符「…その二勝十四敗って何?」

    「寝れた回数と寝れんかった回数のことだ」

    切符「へ~そうなんだ~」

    「さてと、そろそろ名古屋だな ゴミをまとめて、鞄を持ってと」

    21 = 1 :

    「名古屋だな 切り離し作業を撮る連中が邪魔なのは内緒だ」

    切符「おにいちゃんは撮らないの?」

    「俺は撮り鉄じゃねえ それに、場所を確保できなきゃ大垣ダッシュでへたこいたら面倒だからな」

    切符「へたこくって?」

    「この車両は大垣では左側が開くんだ」

    切符「ふ~ん、そうすると左側のドア付近に陣取れば」

    「比較的スムーズに加古川行きの普通列車に乗り換えられるということだ」

    切符「おにいちゃんって、詳しいんだねっ!」

    「多少はな、ちなみにこの電車は近江八幡で新快速に連絡するんだが面倒だから普通でのんびり行くことにするよ」

    切符「え~、僕 少しでも早い方がいいな~」

    「そしたら、米原で降りた方が座席の数があるな まあ、気分次第だな」

    切符「気分次第なんだ……」

    22 = 1 :

    「おい、切符」
    切符「なぁにっ、おにいちゃんっ!」
    「もう、穂積なのだが お前、姿を消せたよな」
    切符「そっ、それってどういうこと?」
    「大垣ダッシュは女子供、年寄りには危険すぎるからな」
    切符「危険すぎるって?」

    「もし本気で走るやつらに蹴飛ばされたりしたら危ないからな だから、消せるなら消してくれた方が助かる」
    切符「よっ、よかったぁ~」
    「何がよかったんだ?」
    切符「だって、僕のことが気に食わなかったり いらないんだと思って……」
    「まあ、邪魔なことには変わらないが…」
    切符「ひっ、ひどいっ!」
    「しかしだな、旅は道連れっていうからな これはこれでありだろう」
    切符「ほっ、本当!」
    「ああ、あとどうでもいいが朝っぱらから鬱陶しい笑顔を俺に向けるな」

    切符 ニコニコニコ

    「……ていっ!」
    切符「ぐううっ……こっ、これで…二回目だよぉ……」

    23 = 1 :

     がしゃぷしゅぅぅっ…

    「それっ!」

     ………

    「おらよっ!」

     どんっ!

    「よしっ、座席は確保した おいっ出てきて……」

    切符「じゃがりこじゃがりこ~」

    「……おいっ!喰いきったんじゃねえのか!?」

    切符「うんっ?えへへっ、おにいちゃんのお財布から150円ほど失礼して~」
    「……拳骨で殴っていいか?」
    切符「ごめんなさい……おにいちゃん…それだけは…許して……」
    「……」

    切符 ウルウルウルル…

    「……まあ…その…なんだ 欲しいなら、俺に言えばいいからな」
    切符「うっ、うんっ!」
    (くそっ!一瞬、可愛いと思った自分が憎いっ!)

    25 = 1 :

    切符「ぼりぼりの~しゃっくしゃく~」
    「……」
    切符「ねえねえ、おにいちゃん」
    「……」
    切符「おにいちゃんったらっ!」
    「…あっ…ああ、なんだ?」
    切符「この僕を使って旅行をしているってことは、あまりお金を持ってはいないってことだよね?」
    「……と思うだろ」
    切符「うんっ」
    「ところがどっこい、こう見えても金は持っているんだよ」
    切符「う~ん、それはどういうこと?」
    「俺は移動経費や宿泊場所には金をかけないが、食い物や観光に金をかける人なんだよ」
    切符「ふ~ん、で実際どれだけ持っているの?」
    「一応だな、ここに諭吉さんが七人と銀行のカードには30ちょいあるな」
    切符「えっ!ええぇぇえぇっっ!!!」
    「まあ、旅行中は金を持っていないふりをするのが一番安全だからな これも旅行のコツなんだよ」
    切符「へ~!そうなんだ~!」

    26 = 1 :

    「それに、旅の途中に病気をしたら金がかかるだろ?」

    切符「そうだね~」

    「旅行の時はどんなことが起きても対処できるように持っていくのが一番いいんだよ」

    切符「おにいちゃん、慣れているね」

    「慣れている訳ではないよ、想定外なできごとなんぞ腐るほどあるのが旅行だからな」

    「だから、持っていかないよりは持って行った方がいい 単にそれだけだ」

    切符「さすがだね~」

    「さてと、醒ヶ井をすぎたな 米原で新快速に乗り換えるとするか」

    切符「やったぁっ!早い電車に乗り換えるんだっ!」

    「こらっ!騒ぐな」

    切符「ぎゃふっ……うぅ~三回目~」

    27 = 1 :

    「やはり、米原は寒いんだな…ドアがボタン式だ」

    切符「ねえねえ、おにいちゃん」

    「何だ?」

    切符「京都行くまでに、どこに行くか決めるっていっていたけど どこにいくの?」

    「そうだな…天橋立にでも、行くとするかな」

    切符「あまのはしだて?」

    「ああ、海の真ん中を松林がはえているという不思議な場所だ」

    切符「う~んっ?それってどういうこと?」

    「行けば分かる、まあ現地にいくまでに想像を膨らますんだな」

    切符「海の真ん中に……松林?」

    「まあ、勝手に想像してればいい 実物を見れば驚くだろうからな」

    28 = 1 :

    「無事、乗り換えられたな このまま京都だ」
    切符「海に……松林……?」
    「少しそのまま考えてろ、俺は時刻表を引いて何時頃につくか計算するからな」
    切符「う~ん……」
    「え~と、この電車が京都に8時42分」
    「山陰本線が8時43分亀岡…これは無理だな、次が9時02分園部行き…これだな」
    「なら、京都で立ち食いして…園部9時53分」
    「園部10時01分発…タバコが吸えるな、福知山11時17分」
    「う~ん ポケット時刻表じゃあ、北近畿タンゴ鉄道の普通電車が書いてねえな」

    「なら、そこから先は適当に…だな」
    切符「わかったっ!」
    「何がわかったんだ?」
    切符「おにいちゃん!それは松林じゃなくて、マングローブじゃないのっ!」
    「……」
    切符「あれっ?」
    「……少し寝てろ」
    切符「うっ、うん…そうする」

    29 = 1 :

    「おいっ、おきろっ!」

    切符「あひっ、ううん……ここどこ~」

    「大津だ、大津、山科で京都だ」

    切符「まだ…二駅もあるじゃん…」

    「寝起きだと、頭もボーっとするし、体も動かないだろ だから、二駅前に起こすのが定石だ」

    切符「う~ん…そうなんだ…」

    「さてと、ゴミをまとめてと お茶は…まだ1Lはあるな」

    「……こらっ!」

    切符「ふぇっ!?」

    「起こしてやったのに寝ようとしているんじゃねえ!」

    切符「うぎっ! ……よん…かいめ」

    30 = 1 :

    「あ~久々の京都だな」

    切符「相変わらずヘンテコな建物だね」

    「おいおい…それは禁句だろ」

    切符「それでおにいちゃん~次の電車は?」

    「9時02分の園部行きだ」

    切符「ふ~ん、20分近く時間があるね~」

    「ああ、だから朝食を済ます」

    切符「わ~い、ごはんだごはんだ~」

    「こういうときは一番便利な立ち食いで済ますのが一番」

    「金なし旅行なら、コンビニでおにぎりを買って済ますのが定石だが」

    「三食外食しても問題ないほどの金はあるからな、だから立ち食いだ」

    31 = 1 :

    店員「いらっしゃいませ~」

    「俺は肉うどん、お前はどうするんだ?」

    切符「う~んそうだな~、きつねうどんかな」

    「なら、食券を買ってと……あと、お稲荷さんもつけるか」

     ……

    店員「はい、肉うどんとキツネ それにいなりね」

    「どもっ さてと、さっさと掻っ込むか」

    切符「う~ん、う~ん……届かないよ~」

    「なら、俺の鞄の上に座って食えばいいだろ」

    切符「えっ!いいの?」

    「ただし…こぼすなよ……」

    切符「うっ…ん」

    「で、これ箸な さてと、いただきます」

    切符「いっただきま~すっ!」

    32 :

    頑張れ。今度天橋立行くから興味ある

    33 = 1 :

    「ごっちそうさんっ!さて……まだ喰い終っていないのか」

    切符「ふぉひぇんっ、ずるずるずる~」

     ……

    「う~ん、発車3分前だぞ……」

    切符「ふひぇ!ふぉふぃひょひゅひゃまっ!」

    「よしっ!走るぞ!」

    切符「ふぇっ!」

    「おいっ、俺の背中に乗れっ!どうせお前の足じゃだめだっ!早くっ!」

    切符「うんっ」

    「よっしゃっ!いくぞっ!」

    切符「わぁああぁぁぁっっ!はやあぁいっ!」

    34 = 1 :

    「はぁはぁ……ふぅぅっ……何とか…間に合ったな」

    切符「いっ、いきなり 背中に乗れなんていわれてびっくりしたよっ!」

    「俺だって…鞄と子供を背負って、ホームを全力で走るなんて想定外だよ!」

    切符「……」

    「……」

    「……どなって悪かった…とりあえず、お茶飲め」

    切符「……コクッ」

    「まあ…乗り換えがキツイときは、お前を背負っていくからな…いいな」

    切符「うん…」

    「なあ、これ食べるか?」

    切符「それって……お稲荷さん?」

    「ああ、お前のために残しておいた 喰え」

    切符「……うんっ!おにいちゃん!ありがとうっ!」

    (……どうやら、機嫌が戻ったようだな よかった)

    35 = 1 :

    切符「ねえねえ、おにいちゃんっ!」
    「ああ、今度は何だ」
    切符「なんか、すごいところだね~」
    「あ~、保津峡のことか」
    切符「ほえっ?ほづきょうって?」
    「大きな渓谷のことだ、さっき止まった嵯峨嵐山駅の左側に小さなホームがあったろ」
    切符「うんっ、あったね~」

    「あれは山陰本線の旧線を走る、トロッコ列車のホームで」
    「その列車に乗ると保津峡を沿って走るんだな まあ、俺には関係のない観光路線だ」
    切符「それって、景色がいいの?」
    「それ相応にな」
    切符「ふ~ん、僕!それに乗ってみたいなっ!」
    「まあ、気分次第だな」
    切符「きっ、気分次第なんだ…」

    「そうがっかりするな これから行くところはもっといいところだからな」
    切符「ほっ、本当っ!だったら、僕はそっちの方がいいなっ!」
    (……現金なやつだ)

    36 :

    何このスレ


    つづけなさい

    37 = 1 :

    切符「すっご~いっ、ものすごい霧だね~」

    「丹波盆地だからな、この寒暖の差がうまい枝豆や松茸を育むにはよい土地なんだろうな」

    切符「ねえねえ、20m先が全然見えないよ~」

    「それでも、電車は走る…すごいものだ」

    切符「そうだね~こんな濃い霧が出たら、下手に車を運転できないね」

    「そうだな どんな辺鄙な場所であろうと、時間どおりにくる列車は偉大なものだ」

    切符「そっ、そんなに褒めなくても」

    「褒めちゃいないさ、本当のことだ まあ、俺が言ったことは冬の北海道の無人駅で野宿すれば死ぬほどよくわかる」

    切符「ええっ!おっ、おにいちゃん!そんなことしたことがあるのっ!?」

    「ああ、あれは死ぬかと思ったぜ 外は氷点下二桁の世界、あの絶望感は凄まじかったなぁ」

    「しかしだ、どんなに外がそんな状態であっても しっかり定時にくる列車…列車は偉大なものだ」

    「本当に…あの時は…列車のライトが神の光に見えたな……」

    切符「……」

    38 = 1 :

    「どりゃあぁぁせいっ!」

    「よし、座席確保っと…さて、煙草を吸うかぁぁ~」

     ぼっしゅっ!

    「すぅぅぅっ……ふぅぅぅっ……う~んっ、せいっ!ごきっ!とぉ~」

    「ふああぁぁっ~さすがに園部までくると、空気が澄んでいるな」

    切符「なぁに、吸っているの~?」

    「ああこれか、キャスターの7だ」

    切符「何それ?」

    「キャスターはバニラビーンズのいい香りがするから好んで吸っているんだが」

    「まあ、バニラビーンズの香りとタバコとしてのバランスは5mmが一番」

    「でも、タバコとしては物足りないくて7mmを吸っているんだ」

    切符「う~ん、何言っているのか全然わかんないや」

    「わからなくていい、わかるようになったらダメな世界だからな」

    切符「へ~そうなんだ~」

    39 = 1 :

    「日吉で人が増えたな……」

    切符「うん、そうだね~」

    「……ヒョイッ」

    切符「あわわわっ!おっ、おにいちゃん!」

    「お婆さん、どうぞ」

    「すいまへんな~おおきに~」

    「いえいえ、当然のことですから」

    「あら~そちらの小さい子は?」

    「ええ、自分の甥です 兄貴が旅をさせたいといって預かったんです」

    切符「ふぇっ!?それは……むぐっ!」

    男 ボソボソ [話をあわせろ、いいなっ]

    切符「うっ…うんっ!お父さんがおにいちゃんに頼み込んで一緒に旅をしに行きなさいっていわれたんだっ」

    「へえ、それは殊勝なことではりますな~」

    「それにしても、お婆さんは…どちらまで?」

    40 = 1 :

    「綾部の市民病院まで…ですか」
    「流石にねぇ、この年になりはりますと…いろんなところにがたがきましてな~」

     ………

    「へ~そうなんですか~、それはいい話ですね」
    「ええ、これで孫が8人ですわ~」
    「そうですよね、孫がいっぱいいることは幸せですからね」
    「と、思うでしょ~で……」

     まもなく、綾部っ綾部です 舞鶴線はお乗り換えです 次の東舞鶴行きは……

    「あら~あっというまね~じゃあ、お兄さん 良い旅を」
    「ええ、また…いつかどこかで会いましょう」

     ……

    「……出会いとは…いいものだ」
    切符「……」
    「おい、切符 何、なめている」
    切符「あのおばあちゃんからもらった、べっこうあめ」
    「……そうか」

    41 = 1 :

    切符「それにしても、おにいちゃん」

    「なんだ」

    切符「なんで、僕を膝の上に乗せたの?」

    「邪魔だったからだ」

    切符「ふ~ん、本当に?」

    「ボックスシートは二人掛けだから、子供だったら膝の上に乗せればその分開くからな」

    切符「じゃあなんで、僕のことをギュッと抱きしめていたの?」

    「それは当然、あぶないからだろ それに、甥として印象付けるためにだな」

    切符「そうなんだ~」

    「ああ、そうだ」

    切符「それにしては、おにいちゃんのが心なしか硬くなっていたような~」

    「……で、なんだ……拳骨がいいか…それとも梅干しのほうが……いいか?」

    切符「ごっ、ごめんなさいっ!冗談だよぉっ!」

    「それでいい」

    42 = 1 :

    「さて、福知山だ」

    切符「なんか無駄に綺麗な高架の駅だね~」

    「乗り換える前に、ひとっぷろ浴びたいな」

    切符「えっ、真っ直ぐあまの…橋立だっけ…には向かわないの?」

    「ああ、なんか体が変に汗っぽいしな…いいだろ」

    切符「うっ、うんっ!」

    「それに車窓から、大きなゆの文字が見えたから まあ、思いつきなんだがな」

    「そういえば、お前はお風呂の類は平気なのか?」

    切符「全然、平気だよ!」

    「そうか、中々便利だな お前」

    切符「そうでもないよっ、でもお金は……」

    「お前の旅費は、俺が全部持つ だから、お前は気にするな」

    切符「ほんとっ!?」

    「これも何かのえにしだろ、銭金は何とかすることができるが…えにしだけはどうしようもない」

    「ただ…単にそれだけの話だ」

    44 = 1 :

    「あ~そういえば、切符」

    切符「ほえっ?」

    「お前の着るものはどうすればいいんだ?」

    切符「平気平気、こう見えたって……」

    「精霊の類らしいから、何とかなると…か」

    切符「あうぅっ…いわれちゃった…」

    「なら、そこらへんは気にしない だが、お前のタオルは買わねえとだめだな」

    切符「うん、そうだね~」

    「なら、入浴料と貸しタオルだけで十分だな」

    切符「……」

    「どうした、切符 そんな面して?」

    45 :

    切符「ええとねっ…僕、こんなことしてくれたのが初めてなんだ」

    「ああ、結構 薄情なアホがおおいんだな…」

    切符「だって、僕のことを買ってくれる人って……」

    切符「予算キツキツのサラリーマンや鉄道での旅が好きというだけの人ばかりで」

    切符「おにいちゃんみたいに、旅に目的がなく、むしろ目的は後につくるなんて」

    切符「僕…初めて聞いたよ…」

    「まあ、俺も若いころは無茶な旅行が好きだったがな…」

    切符「しかも、見ず知らずの僕にここまでしてくれるなんて……」

    「おいおい、そうしみったれるなよ お前のその体にそんな面は似合わねえぞ」

    切符「……う…うんっ!そうだねっ!」

    「ただ…あえて言うならば 精霊なら…きれいな若い姉ちゃんの方がよかったな~」

    切符「それはこの先…なんとかするねっ!」

    「あ~でも、そうすると宿泊代が無駄にかかるな~だったら今のままのほうがいいかっ」

    切符「…ったく、おにいちゃんったら……」

    46 = 45 :

    切符 ヌギヌギ

    「……」
    切符「う~んっ?おにいちゃん、こっちみてどったの?」
    「あ…ああ、やっぱりお前は男なんだな」
    切符「そうだよっ、僕は男だよ~」
    「お前が男か女のどっちなんだろうか、半分迷いがあったが…ここで完全にふっきれたな」
    切符「……それって~、僕がそれだけかわいいってこと?」
    「女ならな だが、男で可愛いという言葉は屈辱的なものだ」
    切符「そうなの?」
    「ああ、腐っていなければな」
    切符「ふ~ん、ねえねえ」

    「今度はなんだ?」
    切符「腐っていなければな…って、どういうこと~?」
    「……世の中、知らん方がいいことは腐るほどあるってことだ」
    切符「う~ん、なんかよくわからないけど…いいやっ!ねえねえ、早くはいろっ!」
    「ああ、はいるべ」

    47 = 45 :

    「あ゛~~っ」

    切符「ふぁあぁ~~~っ」

    「いい湯だなぁぁ~~」

    切符「そうだねぇぇ~~~」

    「なんとなく、大きなゆの字にひかれてきたが~せえかいだな~」

    切符「う~ん~っ そうだねぇぇ~~~」

    「時計が付いているのが~助かるな~」

    切符「それでぇ~次の列車は何時なのぉ~」

    「知らんっ!」

    切符 ポチャッ! 「えぇっ~!知らないのっ!?」

    「いいじゃん~適当旅行~さいこぉぉっ~!」

    切符「……なんか、僕…少し心配になってきた…」

    48 = 45 :

    「いい湯だったな」

    切符「うんっ!芯まで温まった気がするっ!」

    「そうか、それはよかったな」

    「さて、次の列車は……」

    駅員「列車が発車いたしま~すっ!」

    切符「おっ、おにいちゃん!列車が発車しちゃうよっ!」

    「ああ、駅員さんっ!次でいいですっ!!!」

    駅員「そうですか~!じゃあ、お~らいっ!」

    切符「えええぇぇっ!!!いっ、いっちゃったよぉっ!」

    「ああ、いいだろ 何せ、福知山まで来たんだ 次でいいだろ」

    「下手に急いでも、天橋立は逃げない それまでのんびりできる時間が増えたんだ、それでいいだろ?」

    切符「まっ、まぁ…おにいちゃんがそういうのなら…」

    49 = 45 :

    「で、駅員さん 次は何時?」

    駅員「え~と、次の宮津行きが…13時20分ですね」

    「一時間先ですね なら、今のうちに切符を買っておきたいのですが……」

    駅員「もしかして、18切符使っています?」

    「ええ、そうですが」

    駅員「なら、これがお得ですよ」

    「へえ、500円で普通と快速が一日乗り放題なんですか」

    駅員「そうなんですよ~、どうです?」

    「じゃあ、これを二枚 おいっ、お前こいっ!」

    切符「うん、呼んだ?」

    「赤券を出せ」

    切符「うんっ、いいよ~」

    駅員「二枚で千円ですね…はい、丁度」

    「ええ、どうも」

    50 = 45 :

    「ということで、一時間ほど時間が空いたんで福知山城でも見に行きますか~」
    切符「福知山城?」
    「明智光秀の居城だった城だ、といってもそれ以上は何も知らないのだがな」
    切符「……」
    「どうした?突然、俺の面をまじまじと見てよ」
    切符「おにいちゃんって、若いのにいろんな事知っているんだね~」
    「違う違う、単なる無駄知識!それに今のおまえは俺より若い状態なんだから、爺臭い事を抜かすなっ!」

    切符「あわわわっ!ちょ、チョップはやめてっ!」
    「……わかった、やめてやる」
    切符「ほっ……それでおにいちゃん」
    「なんだ」
    切符「そのお城まで、どれくらい歩くの?」
    「15分から20分だってさ」

    切符「うわぁ…結構、歩くね…」
    「そうか?思ったより近いと思うがな」
    切符(おにいちゃん…今、時間の感覚が壊れているような気が…)


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