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    元スレ京太郎「夏だ!海だ!ハーレムだ!」

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    102 :

    3をやってみよう

    京太郎「……」

    京太郎「……うん、分かった」

    京太郎「俺だって部員の一人なんだ、と思っていたけれど。
    どうやら皆はそう思っていないらしい」

    京太郎「まあ、麻雀が弱いからな。仕方ないか」

    京太郎「……本当にそうか?」

    京太郎「皆の俺に対する態度は、もっと根本的な部分にあるんじゃないだろうか」

    京太郎「……」

    京太郎「ああ、そうか。俺が男だからか」
     

    103 = 102 :

     
    京太郎「……しょうがない」

    京太郎「取るしかないか」

    京太郎「えーと、確かリンゴを剥くときとかのナイフがあったはずだよな」

    京太郎「……お、あったあった」

    京太郎「よし、やるか。せーの」

    一太(……どうもさっきのが気になる。ちょっと様子を見てこよう)

    一太「あの、須賀君いるか、い…………!?」

    京太郎「あ、副会長」

    京太郎「すいません、今取り込み中なんで」

    一太「い、いや。待て、待ってくれ! 何をやってるんだ君は!」

    京太郎「邪魔しないでください! 麻雀部になるために必要なんです!」

    一太「いいからそのナイフを離せ! きゅ、救急車!」

    ピーポーパーポー

    104 = 102 :

    京太郎「……」

    一太「や、気がついたかい?」

    京太郎「あれ? ここ、病院……?」

    一太「覚えてないのかい?」

    京太郎「ええと、確か、確か俺は――――ああ」

    京太郎「思い出しました」

    京太郎「……バカみたいだ、俺」

    一太「親御さんとは連絡がついた。もうすぐ来ると思う」

    一太「それで。まあ、傷は浅かった。ちょっと痕が残るかもしれない
    けど、ほら、付け根の部分だしね」

    京太郎「……」

    一太「それで。どうしてあんなことを?」
     

    105 = 102 :

    京太郎「……自分でもよく分かりません」

    京太郎「ただ、部員として扱われていない気がして」

    京太郎「それは、俺が男だからって思って。それで……」

    京太郎「女になれば、仲間になれると思ったんです」

    一太「――須賀くん、いいかい?」

    京太郎「……」

    一太「ムゴいことを言うようだけど、君は彼女たちの仲間になれない」

    一太「たとえ君が女になったとしても、それは変わらない。むしろ、
    部の雰囲気は変わり果てるだろう」

    一太「それは多分、君が望むことじゃない。君が気を遣われて、
    ひたすら怯えられる毎日なんて、想像したくもないだろう」

    京太郎「……じゃあ! 俺にどうしろって言うんですか!」

    一太「そんなの簡単だろう、須賀くん。いいかい?」

     ――部を、辞めてしまえばいいのさ――
     

    106 = 98 :

    やめよやめよ

    107 = 102 :

     
    京太郎「……」

    京太郎「……ああ」

    京太郎「……そうですか。もう、それしかないんですか」
     
    一太「ない。君がこのまま、精神を削られる毎日に耐えるなら
    別だけどね。心を鉄にして、機械みたいに」

    京太郎「無理です。……もう、耐えられない」

    一太「退部届。書いておく?」

    京太郎「……一晩考えさせて下さい」

    一太「うん。どこかの部に入部するなら、問題ないよ。中途入部は
    珍しくもないからね」

    一太「それから……会長たちには連絡していないから」

    京太郎「ありがとうございます」

    その後、親がやってきて泣かれて怒られた。

    申し訳ないな、と俺も泣いて謝った。

    108 = 102 :

     
    京太郎「……」

    京太郎「退部か」

    京太郎「……いや、でも……」

    ???「なあにが「デモデモダッテ」さ。バカか、てめぇは」

    京太郎「……」

    京太郎・裏「分かっているだろう? お前にもう、麻雀をする理由は
    ない」

    京太郎「そんなことは、ない」

    京太郎・裏「和目当て? そんなの夏が来る前に終わった、恋ですら
    ない憧れだろう」

    京太郎・裏「雑用係としてコキ使われることに幸せを感じる?
    そこまでドMって訳でもないだろ」

    京太郎・裏「とうの昔に、麻雀は飽きていた。いや、諦めていただろう」

    京太郎・裏「お前が麻雀部にしがみついていた理由は、ただ一つしかないじゃないか」

    109 :

    副会長ルートはよ

    110 :

    副会長イケメンやなぁ…

    111 :

    ハギヨシさん早く来てくれーーーーっ!!!!!

    112 = 102 :

    京太郎・裏「……咲のためだ。あいつが自分の足で立って、前に
    進むためだろ」

    京太郎「……」

    京太郎・裏「中学のとき、あいつと知り合って俺たちは誓った。
    宮永咲が、きちんと前を向いて歩いて行くために全てを捨てると」

    京太郎・裏「なのに、お前はそれを中途で歪ませた。何故だか分かるか?」

    京太郎「……やめろ」

    京太郎・裏「やめない」

    京太郎・裏「簡単な理屈さ。お前はあいつが、自分の足で立ったことを
    認めたくなかっただけじゃないか――」

    京太郎「やめろって言ってるだろ!」

    ――初めて出会ったときのことを覚えています。

    ――今にも消えてしまいそうに、儚いあの娘の姿を覚えています。

    ――手を引っ張っても動かなくて。

    ――だから、彼女を担いで歩き出しました。
     

    113 = 102 :

    京太郎・裏「よくあることさ。父親が、娘の結婚を認めないのと同じ
    理屈でしかない。お前は単に、嫉妬しているだけだ」

    京太郎「うるせえ! お前に何が分かる!」

    京太郎「咲は、アイツは、俺がついていてやらないと――」

    京太郎・裏「諦めろ。もう俺たちの役割は終わったのさ。
    ……でも、いいじゃないか。俺たちの、俺の望みは、そうだったろう」

    京太郎・裏「アイツが、俺のいないところでも立って歩けるように。
    胸を張って、生きていけるように」

    京太郎・裏「――そう、願っていたからじゃないのか」
     

    114 :

    この久なら京太郎辞めたから県大会負けたとすら言いそう

    115 = 102 :

    京太郎「違う! 違う、違う、違う! 俺は、俺は、俺は――」

    京太郎・裏「まだ分かってないのか、お前は。
    咲はここで終わらない。そしてお前も、ここで終わらない。別に
    死んだ訳じゃない、一つを失っただけだ」

    ――失ってはならない、大切な陽だまりのような彼女を。

    ――失うことを、ただ恐れたからじゃないのか。

    京太郎「……」

    京太郎「……ああ」

    京太郎「……そうか。俺は、咲を失っていたのか」

    京太郎・裏「とっくの昔にな。お前が麻雀に誘って、彼女が自分の
    意志で麻雀を始めた頃に」

    京太郎「振られた……いや、何か違うな。いや、振られたで
    正しいのか」

    京太郎・裏「それも、自分から振らせておいてだ。……だってそうだろ?
    お前は、麻雀なんかやらせなければ良かった。アイツは一生、
    お前だけを見て生きていただろうさ」
     

    116 :

    裏ってことは要するにこんなもんは自己問答で、京太郎は全部裏が言ってることを自覚してるってことだよな・・・

    117 = 102 :

     
    京太郎「……そっか。これで終わりなのか」

    京太郎「彼女を守り続ける日々も。彼女の傍にいる日々も」

    京太郎・裏「さてな。守り続ける日々は終わったが、傍にいる日々が
    終わるかは分からないぜ」

    京太郎「……そんなものか?」

    京太郎・裏「スゴい、我ながらこの鈍さは相当だ」

    京太郎「……まあいいや。で、俺はこの後何をすればいい?」

    京太郎・裏「さあな。お前が死のうが生きようが、男になろうが女に
    なろうが世界は続き、世界は回り、世界は動く」

    京太郎・裏「だから、走るしかないんだよ。須賀京太郎」

    京太郎・裏「大体お前、走ることしか能が無いんだから」

    京太郎「……そうだな。明日からは何の為に進もうか」

    京太郎・裏「決まってるだろ。自分の為に進め」

    京太郎・裏「じゃあな、俺。もういちいち呼び出すな」
     

    118 = 73 :

    (この空気で麻雀ほとんどしないガッチャルート書いてきたとか言えない)

    119 :

    てか、荷物だけもってきてもらって連れてかないとかイジメだろ

    120 :

    地下デュエルエンドでいいだろ

    121 :

    部長はロッカーで雑用の分の対価払ってどうぞ

    122 = 102 :

     
    京太郎「……」

    京太郎「うん。麻雀部、辞めよう」

    そう決めた。

    ――数日後

    京太郎「お。みんな、お帰り」

    「ただいま……ね、ねえ京ちゃん」

    京太郎「おう、咲。楽しかったか?」

    「え? あ、うん……」

    京太郎「ならいいんだ」

    「……?」

    (須賀くん。何か普段と違うような……)

    優希「お、おーす! 元気してたか、京太郎ー!」

    京太郎「おう、色々あったが何とかな!」
     

    123 :

    京太郎が置いていかれた辺りで不憫すぎて思わず泣きそうになった

    124 = 102 :

    優希「そっかー! ……あ、あのな。咲ちゃんとも話したんだけど、
    今度一年生だけで、また海に……」

    「た、ただいま~」コソコソ

    まこ「お主……今更何をやっとる。大人しく沙汰を受けい」

    京太郎「部長、お疲れ様です!」

    「あ、あうあう……お、お疲れ様です」

    京太郎「……?」

    京太郎「まあいいや。ええと、部長。こちらを受け取ってくれます?」

    「あ、うん。ええと…………た、退部、届?」

    全員「!?」

    京太郎「ウッス。色々と考えて、こういう結論に達しました。
    あ、勘違いしないでください。今回の一件は関係ないです。
    ただ、別の何かをやりたくなったんです」

    「きょ、京ちゃん!」

    優希「きょ、きょうたろお……」

    京太郎「ああ、いいからいいから」

    125 :

    置いていく辺りで普通に退部するな

    126 :

    久袋叩きで糸冬

    127 = 102 :

     
    「……」

    「……そう」

    「……そう、よね。はい、分かりました」

    部長はがっくりと項垂れて、退部届に必要なサインをくれた。

    京太郎「掃除は済ませておいたし、ええと……和。これいいか?」

    「あ、あの須賀くん! 辞めるって……」

    京太郎「多分、この中じゃ和が一番しっかりしてるから。受け取ってくれ。
    雑務関係の引き継ぎ書類」

    「……はい。ありがとう、ございます」

    優希「京太郎! ほ、ほ、本気なのか!? ねえ……やだ、やだよ」

    京太郎「心配するな。タコスなら、時々作ってやるから」

    優希「違う! そうじゃ、そうじゃなくて……」

    京太郎「……ごめんな、優希。でも、もう俺はいいんだ」

    優希「……」

    優希「……わたしのこと、嫌いになった?」

    128 = 111 :

    やだこの優希可愛い

    129 = 109 :

    京太郎怒りのロッカールートはよ

    130 = 54 :

    部長の畜生度が

    131 = 102 :

     
    京太郎「まさか。お前の騒がしいところも含めて、嫌いな点なんか
    一つもないぞ」

    優希「……」

    優希「……そっか」

    京太郎「まこ先輩、色々お世話になりました」

    まこ「……ん。その、部を辞めてからどうするつもりじゃ?
    帰宅部か?」

    京太郎「うーん、まだ決めてませんけど。何か別のことをやりたいな、
    と思ってます」

    まこ「そうかあ。……おんしがそう思っちょるなら、これが一番ええん
    じゃろうな」

    京太郎「うっす。まこ先輩も、ありがとうございました!」

    「……」

    「……京、ちゃん」

    京太郎「……頑張れよ、咲。お前は頑張れるんだから。
    心配するな。俺が保証する」

     

    132 = 102 :

    京太郎「それじゃ、すいませんが。失礼します」

    ガラガラガラ。

    「……」

    「……ごめんなさい。私のせいだわ」

    「頼って、縋って、背負わせて。……見返り一つ、与えなかった」

    まこ「……そうかのお」

    まこ「……いや、実際そうなんじゃが。どうも、京太郎はそういうもの
    とは違う何かが理由な気がする」

    「……」

    「ゆーき……」

    優希「あ、あいつっ。あいつっ、わ、わたしのこと嫌いって言ってないよな?」

    「ええ、大丈夫ですよ。須賀くんは、多分誰も嫌いになってないと
    思います」

    「……」

    「……やだ」

    「やっぱり、やだ!」
     

    133 = 102 :

    ――咲。お前は走るとコケるんだから、迂闊に走るなよ。

    そんな言葉を思い出す。

    中学のときだったか、高校に入ってからだったか。

    人生のどん底にいた私は、京ちゃんに手を引っ張られてここまで来た。

    他の女子生徒にやっかまれたこともある。

    金魚のフンみたいに言われたこともある。

    ……それでも良かった。京ちゃんと一緒にいられるなら、

    どんな扱いだって、我慢できた。

    京ちゃんの傍にいることだけが、私にとっての自慢で誇りで報酬だった。

    ――ああ、そうか。

    でも、京ちゃんの報酬は何だったのだろう。

    私に構わないでいれば、彼女なんて幾らでも作れたはずだ。

    趣味の合う友達と遊ぶことも、できたはずだ。

    ――私はいつだって、須賀京太郎に「縋る」だけしかなくて。

    ――あの人の報酬を、一度でも考えたことがなかった――。

    134 :

    ロッカールート見たいなぁ…チラッ

    135 = 102 :

    「京ちゃん!」

    ごめんなさい。

    「京ちゃん!」

    ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。

    「京ちゃあん!」

    ごめんなさい――――――!

    京太郎「……はあ。どうした、咲」

    「わわっ!?」ツルリ

    京太郎「お、危ねえ!」

    ダイブ&キャッチ。

    136 = 102 :

     
    滑って転びかけたわたしを、いつものように京ちゃんはあっさりと

    助けてくれた。

    京太郎「……はあ、本当咲は先が思いやられる」

    「……ダ、ダジャレ?」

    京太郎「我ながら上手いだろ」

    全然上手くない……。

    ――屋上。

    橙色の光が、運動場を染め上げていた。

    野球部の声と、バットの甲高い音が、遥か遠くから聞こえてくる。

    青春小説の世界だな、と私は思う。

    京太郎「……で、どうしたんだ?」

    「……京、ちゃん」

    辞めないで、と言いたかった。

    でも、言える権利があるはずもなかった。

    137 = 102 :

     
    今までもずっとずっと、私たちは京ちゃんを酷く扱っていた。

    私はそれを、どうしてかずっと見過ごしていた。

    だって、京ちゃんはいつだって――いつだって、傍にいてくれると。

    そんなことを、思っていた。

    京太郎「……なあ、咲。どうもお前は勘違いしているみたいだから、
    言ってやるぞ」

    「何……?」

    京太郎「もう、お前は俺がいなくても大丈夫なんだ」

    「え――――?」

    そんなはずはない。

    そんな訳がない。

    京ちゃんがいないと、私は何もできない。
     

    138 = 102 :

     
    京太郎「……すまん。俺はそこまで、お前を追い込んでいたのか。
    違う。そうじゃない。お前はもう、大丈夫なんだ」

    ――俺がいなくても、蹲って助けを待ったりしない。

    ――たとえ、何かに転ばされたとしても。

    ――お前はきっと、立ち上がる。

    京ちゃんは、そう誇らしげに言ってくれた。

    「無理だよ……無理、無理、絶対無理!」

    「私は一人じゃなんにもできない! 一人じゃ立てない、
    一人じゃ歩けない! 一人じゃ、前に進めない!」

    京太郎「それは嘘だ。咲、俺が手を引っ張る時期は終わった。
    お前の幼年期は、もう終わったんだ」

    「違う! 違う、違う、違う……!」

    京太郎「咲、哀しいことを言わないでくれ。俺に誇らせてくれ。
    お前はもう、立って歩けるようになったと」

    「――わた、しは」
     

    139 = 54 :

    しえん

    140 = 102 :

     
    京太郎「報酬のことなら心配するな。
    俺は、お前が幸せであるならそれが報酬だ。有り余るほどの報酬だ」

    「……わたしは、前に進めるの? こんなに鈍臭くて、麻雀以外
    何にもできない、こんなわたしが?」

    京太郎「俺はそう、信じている」

    ――誇らしげに。私の傍にいてくれた少年は、笑った。

    「……でも、不安だよ。また転ぶかもしれない、また蹲るかもしれない。
    また……」

    京太郎「助け起こすことくらい、俺じゃなくてもできるさ。
    重要なのは、立ってから前に進めるかどうかだ」

    「……そう。京ちゃんは、私を信じてくれるんだね」

    京太郎「――ああ。俺のことは心配するな、大丈夫だよ。
    お互いに頑張ろう、咲」

    ――ああ。そうか。

    はらはらと、眼から涙がこぼれ落ちる。

    なのに、その涙はどこか温かで。

    私はようやく、宮永咲を認めることができたのだ。
      

    141 = 102 :

    ――それで、ようやく私も理解できた。

    ――別れることで、再会できる喜びもあるのだと。

    「……ねえ、京ちゃん。お別れの儀式をやろう」

    京太郎「儀式?」

    「ほら。背中向けて」

    京太郎「お、おう」

    戸惑う京ちゃんの背中に、私はぴったりと背中をくっつける。

    「振り向かずに、前に進もう」

    京太郎「フェンスに到着するんだけど」

    「儀式だからいいの。京ちゃん、私、まだ自分が信じられない。
    私が前に歩けるかどうか、分からない」

    京太郎「……」

     

    142 = 102 :

     
    「……でも。進もうと、思えたよ。京ちゃんが保証してくれるなら、
    私は前に進める」

    京太郎「……おう」

    「お互いに振り返らないで、行こう」

    京太郎「そうだな」

    「じゃあ、いっせーのー…………で!」

    決して振り返らない。ただ前だけを見る。

    振り返りたくなるのを堪える。きっと、京ちゃんも堪えているはずだから。

    居るはずだった人が隣にいない寂しさを。

    その人が保証してくれた喜びで埋め尽くす。

    お互いに前に進むのだ。時に道が曲がりくねることだってあるだろう。

    ――だったら。いつか、道が交わることだってあるだろう。

    誓いは心臓に。想いは胸に。

    私には、立って進むための足がある。
     

    143 = 102 :

    「……」

    ――私は思うのです。

    ――せめて、二人が女同士であれば良かったのだろうと。

    ――終生変わることのない親友でいられたのだろうと。

    ――でも、咲さんと須賀くんは異性同士で。

    ――恋心がヘンに絡むから、きっとこれほどややこしくなったのでしょう。

    ――何より、互いに自覚はないのが最悪です。

    ――だから、これで良かったのです。

    ――須賀くんが咲さんを導いたように。

    ――須賀くんも、きっと何かに導かれる。

    ――だから、多分大丈夫。

    ――前に進んでも、道を間違ったとしても。

    ――咲さんの恋心は、きっと、変わることなく――
     

    144 = 102 :

    ――二年後。卒業式

    髪を伸ばした。

    少しだけ、化粧もするようになった。

    残念なことに、胸は残念なままだったけれど。

    いや、それでも、まあ、少しくらいは。

    いけないいけない。

    私はようやく慣れてきたスマートフォンのメールを見直し、

    場所が合っているかどうかを確認する。

    うん、合ってる。

    ……結局、前に進む速度はのろかった。

    少しだけ転ばなくなった。

    少しだけ道に迷わなくなった。

    少しだけ――自分に、自信がついた。

    それでようやく、自覚できた。

    成長することで、初めて認められることがあったのだ。
     

    146 = 102 :

    ――彼は私の初恋だった。

    ――ずっと、ずっと、そうだったのだ。

    ――依存することでそれを隠した。

    ――自分は、彼におんぶにだっこすることでしか生きられないと。

    ――そう、誤魔化し続けた。

    ――それに別れを告げて、一人で前に進んだ。

    ――友達から助けて貰って。道筋を教えて貰いながら、

    ――前に進むことだけは、自分の力でできた。

    京太郎「咲ー!」

    「……ああ」

    手を振る少年の姿は、二年前より精悍になっている。

    私は、須賀京太郎が好きです。


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