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ほむら(ひとりでも、やるしかない!)
いまのほむらは数秒間時間を止められるだけの、最弱の魔法少女だ。
しかも相手はおそらく近接戦闘タイプ。相性は最悪である。
盾から新たに拳銃を引きずり出す。
ほむら「………」
辺り一面が雨のけぶる荒野に変容していく。
魔獣の結界だ。
ところどころに剣が突き立っており、古戦場のような様相である。
すう、と雨に打たれながら魔獣が構えた。
ほむら(美樹さやかと同じ構え……!?)
動揺したほむらに魔獣が接近。
ほむらの放った銃弾を紙一重でかわした魔獣の刀が疾る。
次の瞬間にはほむらは魔獣の後ろに立っていた。
既に打ち出されていた銃弾を超高速で反応した魔獣が回避。
崩れた体勢を狙った追撃を刀で弾いて踏み込んだ魔獣の斬撃。
いまのほむらは数秒間時間を止められるだけの、最弱の魔法少女だ。
しかも相手はおそらく近接戦闘タイプ。相性は最悪である。
盾から新たに拳銃を引きずり出す。
ほむら「………」
辺り一面が雨のけぶる荒野に変容していく。
魔獣の結界だ。
ところどころに剣が突き立っており、古戦場のような様相である。
すう、と雨に打たれながら魔獣が構えた。
ほむら(美樹さやかと同じ構え……!?)
動揺したほむらに魔獣が接近。
ほむらの放った銃弾を紙一重でかわした魔獣の刀が疾る。
次の瞬間にはほむらは魔獣の後ろに立っていた。
既に打ち出されていた銃弾を超高速で反応した魔獣が回避。
崩れた体勢を狙った追撃を刀で弾いて踏み込んだ魔獣の斬撃。
ほむら「く……ッ!」
響いた金属音が雨に掻き消されていく。
下段から振り抜かれた刀をほむらは咄嗟に盾から引き抜いたライフルで受け止めていた。
ライフルの銃身に刀がめり込んでいる。
魔獣の仮面には八部音譜がさかしまに描かれている。目も口もない。
ほむらはぞくりとした。
その仮面にじっとりと見つめられている気がしたのである。
魔獣が動いた。
ほむら「あっ……」
足を払われ、尻から倒れるほむら。
手から離れたライフルと拳銃が刀によって遠くに弾き飛ばされる。
まったく無造作に、魔獣が刀をほむらの左腿に突き込んだ。
ほむら「ああああああああッ!」
地面に縫い止められたほむらが絶叫する。
響いた金属音が雨に掻き消されていく。
下段から振り抜かれた刀をほむらは咄嗟に盾から引き抜いたライフルで受け止めていた。
ライフルの銃身に刀がめり込んでいる。
魔獣の仮面には八部音譜がさかしまに描かれている。目も口もない。
ほむらはぞくりとした。
その仮面にじっとりと見つめられている気がしたのである。
魔獣が動いた。
ほむら「あっ……」
足を払われ、尻から倒れるほむら。
手から離れたライフルと拳銃が刀によって遠くに弾き飛ばされる。
まったく無造作に、魔獣が刀をほむらの左腿に突き込んだ。
ほむら「ああああああああッ!」
地面に縫い止められたほむらが絶叫する。
どぷりと溢れた血が雨に流されていく。
土を掻き毟るほむらの指が、最初に落とした拳銃に触れた。必死にそれを拾う。
ほむら「うううううぅぅぅぅっ!」
涙で視界を歪ませたまま撃った二発はどこにも当たらず、一発はどこからともなく魔獣が引き抜いた刀に防がれた。
四発目を撃つ前に拳銃が蹴飛ばされ、ほむらの胸に真っ黒な切っ先が突き込まれる――
杏子「おらァ!」
その刀を弾いたのは杏子。
杏子「ひとりで無理してんじゃねーよヘナチョコ!」
ほむら「き、杏子……!」
距離を取ろうとする魔獣を追って杏子が跳ぶ。
土を掻き毟るほむらの指が、最初に落とした拳銃に触れた。必死にそれを拾う。
ほむら「うううううぅぅぅぅっ!」
涙で視界を歪ませたまま撃った二発はどこにも当たらず、一発はどこからともなく魔獣が引き抜いた刀に防がれた。
四発目を撃つ前に拳銃が蹴飛ばされ、ほむらの胸に真っ黒な切っ先が突き込まれる――
杏子「おらァ!」
その刀を弾いたのは杏子。
杏子「ひとりで無理してんじゃねーよヘナチョコ!」
ほむら「き、杏子……!」
距離を取ろうとする魔獣を追って杏子が跳ぶ。
大上段から振り下ろされた槍を片手で捌いた魔獣がその上を走って杏子に肉薄。
ばらりと多節棍に姿を変えた槍を蹴って魔獣が刀を振り抜く――
マミ「こっちを見なさい」
その横からマミによる百に近い数のマスケット銃の一斉射撃。
痛いほどの銃声が鳴り響く。
杏子「こりゃ壮観だ」
着地した杏子がからから笑う。
マミ「可愛い仲間にひどいことしたんだもの。当然のおしおきよ」
ほむらはさやかによって治癒を受けた。
まどか「ほむらちゃん! ごめんね、遅くなって」
まどかがほむらに駆け寄る。
ばらりと多節棍に姿を変えた槍を蹴って魔獣が刀を振り抜く――
マミ「こっちを見なさい」
その横からマミによる百に近い数のマスケット銃の一斉射撃。
痛いほどの銃声が鳴り響く。
杏子「こりゃ壮観だ」
着地した杏子がからから笑う。
マミ「可愛い仲間にひどいことしたんだもの。当然のおしおきよ」
ほむらはさやかによって治癒を受けた。
まどか「ほむらちゃん! ごめんね、遅くなって」
まどかがほむらに駆け寄る。
杏子「まーマミのあれじゃ跡形もねー……」
煙の向こうからぼろぼろになった魔獣がそれでも歩いてくる。
杏子「うそ、だろ……!?」
マミ、杏子、さやかが身構える。
魔獣は煤けた仮面の奥からくぐもった声を出した。
???【悪……は、斬る……】
マミ「なんなの……この魔獣……!」
魔獣がすっとこちらを指さす。
???【背信者……裏切り者……嘘つき……偽善者……】
順番に杏子、ほむら、マミ、さやかを指し、
???【魔女……!】
そう言いながら握った刀の剣尖をまどかに向ける。
まどかは黙ったまま魔獣を睨んだ。
煙の向こうからぼろぼろになった魔獣がそれでも歩いてくる。
杏子「うそ、だろ……!?」
マミ、杏子、さやかが身構える。
魔獣は煤けた仮面の奥からくぐもった声を出した。
???【悪……は、斬る……】
マミ「なんなの……この魔獣……!」
魔獣がすっとこちらを指さす。
???【背信者……裏切り者……嘘つき……偽善者……】
順番に杏子、ほむら、マミ、さやかを指し、
???【魔女……!】
そう言いながら握った刀の剣尖をまどかに向ける。
まどかは黙ったまま魔獣を睨んだ。
ほむら(魔女……どうして今になってその言葉が出てくるの……)
ほむらは自宅でぺたりと座り込んでいた。
昨晩はマミと杏子が魔獣を片付けて解散した。
ほむら(あの感覚はたしかに魔女……ならばあの時間停止は魔女の仕業?)
今日の学校でもほむらはいつもよりさらに口数が少なかった。
まどかやさやかともまともに会話できなかった。
教科書とノートを机に広げたまま、手もつけられない。
ほむらは悩んでいた。
ほむら(でも、魔女はまどかの願いによって消滅したはず……あぁまどかが魔女ってどういうことなの……
いえ、魔獣のいうことなんて信用するものじゃないわね……)
仮面の魔獣のことを思い出してほむらはぞくりとした。
無意識に左腿を撫でる。
もう傷も痛みもない。なのにこの不気味な気持ちはなんだ。
ほむらは自宅でぺたりと座り込んでいた。
昨晩はマミと杏子が魔獣を片付けて解散した。
ほむら(あの感覚はたしかに魔女……ならばあの時間停止は魔女の仕業?)
今日の学校でもほむらはいつもよりさらに口数が少なかった。
まどかやさやかともまともに会話できなかった。
教科書とノートを机に広げたまま、手もつけられない。
ほむらは悩んでいた。
ほむら(でも、魔女はまどかの願いによって消滅したはず……あぁまどかが魔女ってどういうことなの……
いえ、魔獣のいうことなんて信用するものじゃないわね……)
仮面の魔獣のことを思い出してほむらはぞくりとした。
無意識に左腿を撫でる。
もう傷も痛みもない。なのにこの不気味な気持ちはなんだ。
私に見えないところからあの仮面に見つめられているような、気がする。
ほむら「……そんなわけ、ないわ」
思わず口に出してそう言うほむら。
まるで自分に言い聞かせているみたい。そう思った。だが真実その通りなのだ。
後ろに死んだはずのまどかが立っていて、ぼそぼそとなにか言っている。
――ほむらちゃんのせいだよ。
そうだ。
私はすべてを犠牲にしてきた。
目的であるはずのまどかをも見殺しにして、私はもうずっと出口のない迷宮を彷徨っていたの。
まどかに因果を背負わせたのは私。
すべては私のせいなのだ。
ゆっくりと、まどかの手が私の首にかかる。
まどか。
まどか。
貴女に殺されるなら、
本望よ。
ほむら「……そんなわけ、ないわ」
思わず口に出してそう言うほむら。
まるで自分に言い聞かせているみたい。そう思った。だが真実その通りなのだ。
後ろに死んだはずのまどかが立っていて、ぼそぼそとなにか言っている。
――ほむらちゃんのせいだよ。
そうだ。
私はすべてを犠牲にしてきた。
目的であるはずのまどかをも見殺しにして、私はもうずっと出口のない迷宮を彷徨っていたの。
まどかに因果を背負わせたのは私。
すべては私のせいなのだ。
ゆっくりと、まどかの手が私の首にかかる。
まどか。
まどか。
貴女に殺されるなら、
本望よ。
見上げると、仮面をつけたまどかが肩を震わせている。
あは。
あははは。
あははははははは!
狂気を孕んだまどかの笑い声が脳髄に沁みこむ。
私も笑って、涙を流した。
――ぴんぽーん。
気の抜けるような呼び鈴の音。
ほむらは目を開いた。
机に伏していた上体を起こす。
どうやら眠ってしまっていたらしい。
なにかまた悪い夢をみていたような気がする。
ほむらはぼんやりしたまま玄関の扉を開いた。
ほむら「あ……まどか」
まどか「えへへ。ほむらちゃん、ちょっといいかな?」
ほむら「え、ええ」
あは。
あははは。
あははははははは!
狂気を孕んだまどかの笑い声が脳髄に沁みこむ。
私も笑って、涙を流した。
――ぴんぽーん。
気の抜けるような呼び鈴の音。
ほむらは目を開いた。
机に伏していた上体を起こす。
どうやら眠ってしまっていたらしい。
なにかまた悪い夢をみていたような気がする。
ほむらはぼんやりしたまま玄関の扉を開いた。
ほむら「あ……まどか」
まどか「えへへ。ほむらちゃん、ちょっといいかな?」
ほむら「え、ええ」
まどかは畳に腰を下ろした。
顔を洗ったほむらがお茶を運んでくる。
まどか「ありがとう。ほむらちゃん」
ほむら「それで、どうしたのかしら。貴女がひとりでうちまで来るなんて珍しいわね」
まどか「やっぱりメール見てないんだね。返信ないから来ちゃったの」
ケータイを確認するほむら。
ほむら「ごめんなさい、眠ってしまっていて」
まどか「うっううん! いいんだよそんなの。それでね、」
言葉を切ってまどかがうつむく。
しかしすぐに決然と顔をあげた。
まどか「――わたしのなかの魔女について、話しておこうと思って」
顔を洗ったほむらがお茶を運んでくる。
まどか「ありがとう。ほむらちゃん」
ほむら「それで、どうしたのかしら。貴女がひとりでうちまで来るなんて珍しいわね」
まどか「やっぱりメール見てないんだね。返信ないから来ちゃったの」
ケータイを確認するほむら。
ほむら「ごめんなさい、眠ってしまっていて」
まどか「うっううん! いいんだよそんなの。それでね、」
言葉を切ってまどかがうつむく。
しかしすぐに決然と顔をあげた。
まどか「――わたしのなかの魔女について、話しておこうと思って」
ほむらはわずかに目を見張った。
ほむら「……どういう、意味かしら」
まどか「わたしの願いですべての魔女は消え去った。そう話したよね」
ほむらは頷く。
まどか「あれは、嘘なの」
ほむら「え」
まどか「本当は、魔女はみんな折り畳まれてわたしのなかに封印されているの」
絶句しているほむらを見つめながら、まどかはすべてを打ち明けた。
すべての魔女を消し去る願いは、すべての魔女を重ね合わせた最悪の魔女を生む。しかしまどかの願いはその最悪の魔女すら消し去る。
願いが叶えば呪いが撒き散らされ、魔女は再び生まれる。
この無限に循環する祈りと魔女を、まどかはその存在のなかに封じ込めているのだ。
ほぼすべての魔力を使って。
ほむら「……どういう、意味かしら」
まどか「わたしの願いですべての魔女は消え去った。そう話したよね」
ほむらは頷く。
まどか「あれは、嘘なの」
ほむら「え」
まどか「本当は、魔女はみんな折り畳まれてわたしのなかに封印されているの」
絶句しているほむらを見つめながら、まどかはすべてを打ち明けた。
すべての魔女を消し去る願いは、すべての魔女を重ね合わせた最悪の魔女を生む。しかしまどかの願いはその最悪の魔女すら消し去る。
願いが叶えば呪いが撒き散らされ、魔女は再び生まれる。
この無限に循環する祈りと魔女を、まどかはその存在のなかに封じ込めているのだ。
ほぼすべての魔力を使って。
まどか「わたし、魔力がなくなっちゃったんじゃないんだ。魔女を封じるので精一杯なんだよ」
ほむら「そんな……うそよ……」
ほむらの顔からは血の気がひいている。
まどか「ほむらちゃん。ごめんね」
まどかは哀しそうに笑った。
ほむらは震える手を伸ばした。
まどかがそれを優しく握る。
ほむら「やっとまどかを救えたって、そう思っていたのに……そんな……」
いやいやというふうにほむらはかぶりを振った。
涙がぱたぱたと零れる。
まどか「ほむらちゃん……」
ほむら「もう繰り返すこともできないのに……ッ!」
ほむらは顔をあげた。
瞳から溢れた涙が頬を伝う。
ほむら「そんな……うそよ……」
ほむらの顔からは血の気がひいている。
まどか「ほむらちゃん。ごめんね」
まどかは哀しそうに笑った。
ほむらは震える手を伸ばした。
まどかがそれを優しく握る。
ほむら「やっとまどかを救えたって、そう思っていたのに……そんな……」
いやいやというふうにほむらはかぶりを振った。
涙がぱたぱたと零れる。
まどか「ほむらちゃん……」
ほむら「もう繰り返すこともできないのに……ッ!」
ほむらは顔をあげた。
瞳から溢れた涙が頬を伝う。
ほむら「ごめんなさい、まどか……! 私、約束を守れなかった……ッ! 貴女を救うと約束したのに……」
まどか「ううん。それは違うよ、ほむらちゃん」
まどかはほむらの手を撫でる。
まどか「わたしね、願いが叶って嬉しかった。みんなの祈りを絶望で終わらせないようにできて本当によかったって、そう思うんだ」
ほむら「まどか……」
まどか「でもね、悔しいけど、魔女はまだいるんだ。わたしのなかに。そして魔法少女と引き合うの」
ほむら「引き合う……?」
まどか「そう。未だいないほむらちゃんの魔女は折り畳まれたままわたしのなかからほむらちゃんに手を伸ばしているの」
ほむら「じゃあ、やっぱり――」
あの時間停止は魔女の仕業なのだ。
そしてその魔女の正体はほむら自身。
まどか「ううん。それは違うよ、ほむらちゃん」
まどかはほむらの手を撫でる。
まどか「わたしね、願いが叶って嬉しかった。みんなの祈りを絶望で終わらせないようにできて本当によかったって、そう思うんだ」
ほむら「まどか……」
まどか「でもね、悔しいけど、魔女はまだいるんだ。わたしのなかに。そして魔法少女と引き合うの」
ほむら「引き合う……?」
まどか「そう。未だいないほむらちゃんの魔女は折り畳まれたままわたしのなかからほむらちゃんに手を伸ばしているの」
ほむら「じゃあ、やっぱり――」
あの時間停止は魔女の仕業なのだ。
そしてその魔女の正体はほむら自身。
まどか「うん。ソウルジェムが濁るとそれだけ魔女は近付いて、そうして一気に魔力を失う。
ほむらちゃんは最近、気分が沈んだりすることはない?」
ほむら「え、ええ。あまり優れないわね。悪夢ばかり見るし」
まどか「たぶんそれは、魔女のせいなんだと思うよ。だから負けないで。絶望しないで」
真剣な表情のまどかに、ほむらは強く頷いた。
まどか「それでね、もうひとつ黙ってたことがあるんだ」
ほむら「まだ、なにかあるの……?」
涙を両目にたたえてほむらは不安そうにした。
そんなほむらの頭をまどかが柔らかく撫でる。
まどか「今度はそんなに悪い知らせじゃないと思うな。ほむらちゃんの魔女を探し出して、やっつける方法があるんだよ」
ほむらちゃんは最近、気分が沈んだりすることはない?」
ほむら「え、ええ。あまり優れないわね。悪夢ばかり見るし」
まどか「たぶんそれは、魔女のせいなんだと思うよ。だから負けないで。絶望しないで」
真剣な表情のまどかに、ほむらは強く頷いた。
まどか「それでね、もうひとつ黙ってたことがあるんだ」
ほむら「まだ、なにかあるの……?」
涙を両目にたたえてほむらは不安そうにした。
そんなほむらの頭をまどかが柔らかく撫でる。
まどか「今度はそんなに悪い知らせじゃないと思うな。ほむらちゃんの魔女を探し出して、やっつける方法があるんだよ」
休日の早朝。
もう少しで夜が明ける時間に、ほむらは人気のない公園にいた。
マミ「おはよう。暁美さん」
夜露の乗った花を見ていたほむらは立ち上がって振り返る。
ほむら「おはよう、巴マミ。今日はよろしくお願いするわ」
マミはストールをかけなおしながら微笑んだ。
マミ「暁美さんのお願いだもの。はりきっちゃうわ!」
ほむらの魔女は時間を停止させる。
自分自身であるほむらに効果がないのは魔女になっても同様のようなので、同じくほむらに触れていれば停止を回避できるのではないか。
そうなれば戦力としては実に貧弱なほむらだけで魔女に挑むという無謀をせずに済む。
マミ「言われてみれば遠距離メインって私だけなのね」
そしてほむらに触れたまま、魔女と距離をとって戦えるという点でまどかが選んだのがマミだった。
さやかや杏子、そしてまどかは今回役に立たないどころか邪魔なので、ここにはいない。
もう少しで夜が明ける時間に、ほむらは人気のない公園にいた。
マミ「おはよう。暁美さん」
夜露の乗った花を見ていたほむらは立ち上がって振り返る。
ほむら「おはよう、巴マミ。今日はよろしくお願いするわ」
マミはストールをかけなおしながら微笑んだ。
マミ「暁美さんのお願いだもの。はりきっちゃうわ!」
ほむらの魔女は時間を停止させる。
自分自身であるほむらに効果がないのは魔女になっても同様のようなので、同じくほむらに触れていれば停止を回避できるのではないか。
そうなれば戦力としては実に貧弱なほむらだけで魔女に挑むという無謀をせずに済む。
マミ「言われてみれば遠距離メインって私だけなのね」
そしてほむらに触れたまま、魔女と距離をとって戦えるという点でまどかが選んだのがマミだった。
さやかや杏子、そしてまどかは今回役に立たないどころか邪魔なので、ここにはいない。
ほむら「そうね。私ももう銃火器を濫用できないし。でもできるかぎり足を引っ張らないようにするわ」
マミ「大丈夫よ、任せて! 暁美さんには先輩みたいな顔できないから、頼ってもらえてなんだか嬉しいわ」
ほむら「……巴さんはいつだって素敵な先輩でした」
マミ「えっ?」
ほむらはすとんとベンチに腰を下ろした。
マミも隣に腰掛ける。
ほむら「……巴マミ。この戦いが終わったら、謝らなければならないことがあるわ」
マミ「暁美さん……?」
ほむら「今は、まず、魔女を倒す」
マミ「ええ!」
ほむら「奴は私の精神に攻撃してくる。これを渡しておくわ」
必要があれば、それを私に見せて。
言いながらほむらは自分のケータイをマミに手渡す。
画面を確認して、マミはそれを仕舞った。
ほむら「それじゃあ、始めるわよ」
マミ「大丈夫よ、任せて! 暁美さんには先輩みたいな顔できないから、頼ってもらえてなんだか嬉しいわ」
ほむら「……巴さんはいつだって素敵な先輩でした」
マミ「えっ?」
ほむらはすとんとベンチに腰を下ろした。
マミも隣に腰掛ける。
ほむら「……巴マミ。この戦いが終わったら、謝らなければならないことがあるわ」
マミ「暁美さん……?」
ほむら「今は、まず、魔女を倒す」
マミ「ええ!」
ほむら「奴は私の精神に攻撃してくる。これを渡しておくわ」
必要があれば、それを私に見せて。
言いながらほむらは自分のケータイをマミに手渡す。
画面を確認して、マミはそれを仕舞った。
ほむら「それじゃあ、始めるわよ」
差し出されたほむらの手をマミが握る。
マミ「がんばりましょう、暁美さん!」
ほむらは目を閉じ、魔女のことを考える。
まどか曰く、魔女がほむらに接触できるように、ほむらからもそれが可能だろうということだった。
ほむらから手を伸ばせば、魔女は食いつくはず。
集中し、想いを飛ばす感覚でほむらは考えつづける。
ほむら(絶望し呪いを撒き散らす私自身)
ほむら(まどかに巣喰い、苦しめている災厄)
ほむら(ここで、必ず、倒す!)
マミ「暁美さん……!」
目を開く。
時間が止まっている。
マミは無事、停止を回避できていた。
マミ「がんばりましょう、暁美さん!」
ほむらは目を閉じ、魔女のことを考える。
まどか曰く、魔女がほむらに接触できるように、ほむらからもそれが可能だろうということだった。
ほむらから手を伸ばせば、魔女は食いつくはず。
集中し、想いを飛ばす感覚でほむらは考えつづける。
ほむら(絶望し呪いを撒き散らす私自身)
ほむら(まどかに巣喰い、苦しめている災厄)
ほむら(ここで、必ず、倒す!)
マミ「暁美さん……!」
目を開く。
時間が止まっている。
マミは無事、停止を回避できていた。
ほむら「――くる!」
空気が変わる。
あまりにも禍々しい雰囲気に吐き気を覚えるほむら。
心に暗雲が広がっていく。
精神攻撃だ。
わかっていても気持ちは落ち込み、涙がにじんでくる。
――ねぇ、ほむらちゃん。
耳元であの日死んだまどかが呟いた。
――こんな世界、めちゃくちゃにしちゃおうか。
――わたしが死ななくちゃいけない世界なんてさ。
ほむら「ぐううううう……!」
マミ「暁美さん!?」
空気が変わる。
あまりにも禍々しい雰囲気に吐き気を覚えるほむら。
心に暗雲が広がっていく。
精神攻撃だ。
わかっていても気持ちは落ち込み、涙がにじんでくる。
――ねぇ、ほむらちゃん。
耳元であの日死んだまどかが呟いた。
――こんな世界、めちゃくちゃにしちゃおうか。
――わたしが死ななくちゃいけない世界なんてさ。
ほむら「ぐううううう……!」
マミ「暁美さん!?」
へたりこむほむらに耳元から囁き続ける死人。
――わたしが死んで、ほむらちゃんが幸せになるなんて、ずるいよ。ひどいよ。
――わたしだって幸せになりたかった。
マミ「暁美さん! どうしたの!?」
マミの必死な呼びかけも聞こえないかのように呻き続けるほむら。
――わたしが死んで、ほむらちゃんが幸せになるなんて、ずるいよ。ひどいよ。
――わたしだって幸せになりたかった。
マミ「暁美さん! どうしたの!?」
マミの必死な呼びかけも聞こえないかのように呻き続けるほむら。
――ほむらちゃんはわたしを殺して幸せになってるんだよ?
ほむら「うあああああッ!」
頭を掻き毟るほむら。
マミは手を離さないように必死である。マミにはなにも聞こえないのだ。
がたがたと震えるほむらの目はもはや現実を見てはいない。
何度も何度も、まどかが苦しみ絶望して死んでいくところを見せられているのだ。
ほむらの後ろに魔女が現れていた。
頭のかわりに針のない時計盤を載せ襤褸をまとった少女。その手足はがんじがらめに縛られ、どろどろと黒く液化している。
階段の魔女。その性質は欲望。
己の決意を忘れ、からっぽのまま何かを求めてどこにもたどりつかない階段を上り続ける。
もう何も手に入れられない。求めているものが何かもわからない。
魔女《――絶望した私と、代わってよ!――》
後ろに立ったままぐりんと体をねじまげて魔女がほむらの顔を覗き込む。
マミ「暁美さんから、離れなさい……ッ!」
ほむらを引っ張りながらマミが発砲し、魔女の体に穴を空ける。
魔女はぐねぐねと反応したがダメージを与えられている様子はなかった。
ほむら「ぃ……いや……まどか、まどかぁ……」
ほむらはまだ幻覚を見ている。そのソウルジェムが急激に濁っていく。
マミ「暁美さん! しっかりして!」
頭のかわりに針のない時計盤を載せ襤褸をまとった少女。その手足はがんじがらめに縛られ、どろどろと黒く液化している。
階段の魔女。その性質は欲望。
己の決意を忘れ、からっぽのまま何かを求めてどこにもたどりつかない階段を上り続ける。
もう何も手に入れられない。求めているものが何かもわからない。
魔女《――絶望した私と、代わってよ!――》
後ろに立ったままぐりんと体をねじまげて魔女がほむらの顔を覗き込む。
マミ「暁美さんから、離れなさい……ッ!」
ほむらを引っ張りながらマミが発砲し、魔女の体に穴を空ける。
魔女はぐねぐねと反応したがダメージを与えられている様子はなかった。
ほむら「ぃ……いや……まどか、まどかぁ……」
ほむらはまだ幻覚を見ている。そのソウルジェムが急激に濁っていく。
マミ「暁美さん! しっかりして!」
マミは変身してさらに魔女を撃つ。
ばちゅ、びち、と音を立てて魔女の体が弾けるが一向に堪えないようだ。
ほむら「ごめんなさい、ごめんなさい……」
ほむらは力無くうずくまり、動けなくなってしまった。
ぱたぱたと涙が落ちる。
マミ「暁美さん! これを見て! 見なさい!」
マミがさきほど預かったケータイをほむらに押し付ける。
呆然としたままほむらが見たのはまどかからのメール。
fromまどか
『がんばって。』
たった一言の短いメール。
ほむら「まどか……」
だが、それを見てほむらの涙は止まり、瞳には光が戻った。
ばちゅ、びち、と音を立てて魔女の体が弾けるが一向に堪えないようだ。
ほむら「ごめんなさい、ごめんなさい……」
ほむらは力無くうずくまり、動けなくなってしまった。
ぱたぱたと涙が落ちる。
マミ「暁美さん! これを見て! 見なさい!」
マミがさきほど預かったケータイをほむらに押し付ける。
呆然としたままほむらが見たのはまどかからのメール。
fromまどか
『がんばって。』
たった一言の短いメール。
ほむら「まどか……」
だが、それを見てほむらの涙は止まり、瞳には光が戻った。
マミは安堵し、魔女に顔を戻す。
マミ「――!」
魔女の姿がない。
マミがしまった、と思うと同時に背中に衝撃。
マミ「きゃあ――」
吹き飛んだマミの悲鳴が途絶する。
ほむらから手を離してしまい、時間停止に飲み込まれたのだ。
立ち上がったほむらにも魔女の攻撃が襲い掛かる。
その攻撃は触手。
魔女の襤褸のしたから伸びた触手による打撃である。
ひらりと触手を躱して変身したほむらはケータイを仕舞う。
ほむら「……みじめなものね、未来の私。魔女化するなんて」
蠢く魔女を睨んで、ほむらはそう吐き捨てた。
マミ「――!」
魔女の姿がない。
マミがしまった、と思うと同時に背中に衝撃。
マミ「きゃあ――」
吹き飛んだマミの悲鳴が途絶する。
ほむらから手を離してしまい、時間停止に飲み込まれたのだ。
立ち上がったほむらにも魔女の攻撃が襲い掛かる。
その攻撃は触手。
魔女の襤褸のしたから伸びた触手による打撃である。
ひらりと触手を躱して変身したほむらはケータイを仕舞う。
ほむら「……みじめなものね、未来の私。魔女化するなんて」
蠢く魔女を睨んで、ほむらはそう吐き捨てた。
魔女《――私は、まどかの死んだすべての世界の私が集合した存在――時空を越えた呪いと祟りを――》
魔女の輪郭が膨張した。
次の瞬間、弾けるように無数の触手がほむらへと走る。
魔女《――喰らうがいい!――》
圧倒的な速度で迫った触手の群れを軽い身のこなしで回避したほむらは、いつのまにかその手に弓を携えている。
ほむら「お前がどれだけ私を絶望させようとしても、私は負けない」
その弓に紫色の光の矢をつがえる。
ほむら「まどかの幸せな世界を守るために、戦い続ける!」
放たれた光の矢が防御をかためる触手に突き立ち、爆発を起こす。
願いを叶えた祈りが、心に応えて形を変えた。それがほむらの新しい力。
押し迫る絶望に屈せずに希望を抱き続ける魔法少女は、その心のままに進化を遂げるのだ。
魔女の輪郭が膨張した。
次の瞬間、弾けるように無数の触手がほむらへと走る。
魔女《――喰らうがいい!――》
圧倒的な速度で迫った触手の群れを軽い身のこなしで回避したほむらは、いつのまにかその手に弓を携えている。
ほむら「お前がどれだけ私を絶望させようとしても、私は負けない」
その弓に紫色の光の矢をつがえる。
ほむら「まどかの幸せな世界を守るために、戦い続ける!」
放たれた光の矢が防御をかためる触手に突き立ち、爆発を起こす。
願いを叶えた祈りが、心に応えて形を変えた。それがほむらの新しい力。
押し迫る絶望に屈せずに希望を抱き続ける魔法少女は、その心のままに進化を遂げるのだ。
だが。
魔女《――幸せそうね――》
煙が晴れて姿を現した魔女はまったくの無傷だった。
ほむらは表情を変えない。
魔女《――私と、代わってよ――》
迫りくる触手を撃ち落としたほむらに、魔女が肉薄。
触手を囮にした魔女の両腕がぞぶりとほむらの胸に沈んだ。
ほむら「ぐッ!」
魔女の腕を中心にして、ほむらの姿がゆっくりと変容していく。
黒く、どろどろとしたなにか。
それは過去さやかが魔女化する直前、絶望に呑まれたときと同じだった。
ほむら「まさか……!」
魔女《――幸せそうね――》
煙が晴れて姿を現した魔女はまったくの無傷だった。
ほむらは表情を変えない。
魔女《――私と、代わってよ――》
迫りくる触手を撃ち落としたほむらに、魔女が肉薄。
触手を囮にした魔女の両腕がぞぶりとほむらの胸に沈んだ。
ほむら「ぐッ!」
魔女の腕を中心にして、ほむらの姿がゆっくりと変容していく。
黒く、どろどろとしたなにか。
それは過去さやかが魔女化する直前、絶望に呑まれたときと同じだった。
ほむら「まさか……!」
魔女《――貴女は私――私は貴女――それなら貴女の魔力を奪うことだって――》
がらん、と魔女の時計盤が落ちる。
表れたほむらと同じ顔がにたりと笑う。
ほむら「――できるのよ」
腕を抜き取った魔女の身体が光に包まれ、ほむらと同じ魔法少女へと変貌した。
それはもはやほむらそのものだった。
一方ほむらは不気味な姿へと変わり果てている。魔女としか見えない姿に。
魔女「ううう……あぁぁ」
弓も消え去り、ほむらに残っているのは盾だけである。
しかし時間停止はこの魔女には効かない。
たとえ停止できたとしても、マミの銃撃もほむらの弓も通用しないのだ。
まともな声も出せない体になって、ほむらはただその腐敗した手でその身を掻くしかできないようだった。
がらん、と魔女の時計盤が落ちる。
表れたほむらと同じ顔がにたりと笑う。
ほむら「――できるのよ」
腕を抜き取った魔女の身体が光に包まれ、ほむらと同じ魔法少女へと変貌した。
それはもはやほむらそのものだった。
一方ほむらは不気味な姿へと変わり果てている。魔女としか見えない姿に。
魔女「ううう……あぁぁ」
弓も消え去り、ほむらに残っているのは盾だけである。
しかし時間停止はこの魔女には効かない。
たとえ停止できたとしても、マミの銃撃もほむらの弓も通用しないのだ。
まともな声も出せない体になって、ほむらはただその腐敗した手でその身を掻くしかできないようだった。
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