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元スレほむら「ダークウィッチリターンズ」
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ほむら「……生憎としぶといのが取り柄なのよ」
マミ「暁美さん……」
杏子「おせーぞ、ほむら。あんたがいなきゃ、あたしはなにもしねーつもりだったんだからな」
ほむら「QBはちゃんと仕事をしたようね」
マミ「あの子は敵でも味方でもないわ。損得で動くだけ」
ほむら「この国…この星はあいつの牧場。私たち羊が思うとおり動くように監視してる。アクシデントで台無しにしたくないのよ」
杏子「QBの都合は知ったこっちゃないけどさ、国の連中が慌てふためいてるって考えると気分がいいな」
マミ「この非常事態にQBを使って、全ての魔法少女へ独立行動を教唆……政府への宣戦布告と取られても仕方がないわね」
ほむら「実際のところ彼女たちがどうするかはわからない。沈静化に努力してくれるのが理想だけど、逆もありえる」
杏子「肩身の狭い思いをしてたもんな」
ほむら「あなたたちはどうするの? 同郷のよしみで召集をかけはしたけど、強制はしない。邪魔をしても構わないわ」
マミ「……私は協力するわ。魔法少女は、こういうときのためにいるんだと信じてるから」
杏子「マミはあいかわらずだよな」
ほむら「あなたは?」
杏子「もちろん参加するぜ。クズのチンピラ集団が人助けなんて、笑えるだろ?」
ギャング1「へっ!? まさか、あの大群を相手にするんですか!?」
ギャング2「警察に任せましょうよ! 魔獣もうようよいるんでしょ!?」
杏子「その警察が役に立たねえんだろうが。殺すんじゃねえぞ。あくまで鎮圧だからな」
マミ「魔獣は私たちがなんとかするわ」
ギャングたち「いやでも、命あっての物種で…」
ほむら「人生に意味なんてない」
ほむら「でも、意味を見出そうとした者にだけ、世界は意味を持つ」
ほむら「私がみせてあげる」
街中
たつや(どこからか熱い風が吹いてくる。火事かな)
ウワァァァ ヒャハー
たつや(さっきは若い男が年寄りを殴り倒すのが見えた。口論から察するに、食料の奪い合いが起きてるみたいだ)
たつや(なにが魔法だよ。人類の革新だなんて大騒ぎした挙句がこの様だ)
ダレカタスケテー
たつや(向こうじゃ交通事故。怪我人が出てる)
たつや(でも今は構ってられない。父さんや母さんが心配だ。早く家に戻らないと)
キキーッドゴン
たつや(ちくしょう、また事故だ。瘴気だかなんだか知らないけど、腑抜け過ぎじゃないのか)
魔獣「オオオオオオオ」
たつや(いや……どうも魔獣の仕業らしい。陰気で景気の悪そうな禿げ頭が暴れてる)
ヒィィィ!
たつや(学校で昔ならった知識によると、禿げ頭の知能はネズミにも劣るんだそうだ。
ただただ目の前の獲物を追いかけるだけ)
ウワァァァァンママー
たつや(標的はあの女の子だ。こっちにはまだ気付いてない。やり過ごせる)
『みんな大事で、絶対に守らなきゃいけないから。そのためにも私、いますぐ行かなきゃならないところがあるの』
たつや(それが一番冴えたやり方……)
『ママはパパやたつやの傍にいて。二人を安心させてあげて』
ウワァァァァン!
たつや「……ちくしょう!」ダッ
女の子「え!?」ガシッ
たつや「逃げるぞ! しっかりつかまってろ!」ダダッ
魔獣「オオオオオオ」
たつや(ちくしょう、なにバカなことやってんだ、このバカ。子供抱えて逃げ切れるわけないじゃないか)
ビジィィィ
たつや「うわっ!」ドテッ
たつや(レーザーが足にかすって…ダメだ走れない)
たつや「…走れ。今なら逃げられる」
女の子「でも、おにいちゃんが…」
たつや「行けよ!」
女の子「ッ!」タタタッ
魔獣「オオオオオオ」
たつや(ちくしょう、ドジこいた。こんなとこで……)
たつや(煙が目にしみる。やっぱ火事か。泣けてしょうがないのはきっと煙のせいだ)
たつや(母さん怒るだろうな。いや、案外父さんのほうが怖いかも)
たつや(でももう会えなくなるのか)
たつや「ちくしょう……」
バシュッ
ほむら「あなたはどこまで愚かなの」
たつや「…まさか…」
ほむら「女の子が助けを呼びに来なかったら死んでいたわよ」
ほむら「回復魔法は得意ではないけど、応急処置はできるわ。これで少しは走れる」
たつや「あ、ああ…」
ほむら「この辺りの魔獣は全て狩ったから、早く家に帰りなさい。あなたの両親の無事は確認してある」
ギャング1「よし消火栓見つけたぞ! とりあえずぶっ壊せ! バケツ持ってこい!」
ギャング2「バケツより応援呼べよ! 三、四人連れて来い!」
ほむら「さあ、あなたは早く家に…」
たつや「声が聞こえたんです」
ほむら「声?」
たつや「最初は放っとこうと思って…でも見捨てちゃいけない気がして…
あなたの声じゃなかったけど、どこかで聞き覚えがあって…」
たつや「あなたは誰ですか? なにを知ってるんですか?」
ほむら「…私の名前は…」フラッ
たつや「! 大丈夫ですか!?」
ほむら「……あなたにとって、私の名前なんて重要じゃないわね……」
ほむら「私は魔女。あなたたちの夜に潜む闇の魔女よ」バサァ
たつや「あ、待って!」
ほむら「……もう二度と会うことはなくても、私はそこにいる」ヒュンッ
たつや「………」
ギャング1「ほら、じゃんじゃん水運べ! ここで消し止めるんだ!」
たつや「……僕も手伝います! かしてください!」
たつや(初めて会ったときは真っ白だった翼も、そのときはドス黒く染まっていた)
たつや(凛としたその人は、僕にはなんだかひどく儚げに見えた)
テレビ「…全国でいまだ混沌とした状況が続いています。死傷者はわかっているだけでも五〇〇〇人を突破しており…」
テレビ「…その一方で奇妙な事件があいついでいます…」
テレビ「…多発する暴動や魔獣の被害に魔法少女の介入が見受けられ…」
テレビ「…この事態に政府からの回答はありません。住人の声を拾ってみましょう…」
テレビ「…何十人も私のスーパーに押し寄せてきてね。殺気立ってるどころじゃないよ。本当に殺されるかと思った…」
テレビ「…そしたら、例の魔法少女がギャングどもを引き連れてきたんだ。で、集まった連中を蹴散らして…」
テレビ「…まったくあいつらはならず者だよ。緊急事態に食料を求めるのが悪いことか?見てくれこの傷。魔法少女とやらにやられたんだ…」
テレビ「…最初に魔獣が襲いかかったのは動きの鈍い老人たちだった。私は怖くて隠れてた。
次は自分の番だと漠然と思ったとき、彼女が来た…」
テレビ「…瘴気にやられてた? そうかも知れないし、そうじゃないかも知れない。
ひとつだけ確かなのは、俺たちが独りよがりのクソッタレだったってことだよ…」
テレビ「…誰からかはわからないが、消火を手伝い始めた。一人、二人、三人、四人、
なかにはさっきまで殴り合ってたやつもいた。不思議な光景だったな…」
テレビ「…彼らの行為に論評を下すのは止めておきましょう。それが出来るのは、渦中にあった人だけです…」
テレビ「…炎は瞬く間に街を包み、多くの命を奪いました。しかし、人々の勇気はそれにも負けないほど広がったのです…」
テレビ「…見滝原では魔獣の駆除がほぼ完了し、火災も小康状態を保っています…」
テレビ「…彼女たちがどれほど貢献したのかは明確ではありません。法的にも逸脱した行為です…」
テレビ「…しかしながら、その姿が迷える人々に人間性と希望を与えたことは間違いないのです…」
マミ「……好き勝手なことを言ってくれるわね……」
杏子「人間はいつだって好き勝手なもんさ」
マミ「これで私たちはお尋ね者よ。考えただけで気が重いわ」
杏子「あんたの場合、公務員から犯罪者だもんな。今までの苦労が水の泡じゃねーか」
マミ「後悔はないわ。自分が正しいと思えることに力を使う。あなたこそどうなの?」
杏子「あたしは大して変化なしだからな。別になんとも」
ほむら「……混乱は去りつつあるようね」
マミ「少なくともこの街だけは。あなたの決意があったからよ」
ほむら「誰のおかげとかはどうでもいいわ。大事なのは今現在の状況だけ」
杏子「素直じゃないね。あんたの考えたパーティは大成功だよ」
QB「僕もそう思うよ」
杏子「お、来たのかQB。あんたも伝令として働いたもんな」
マミ「QB、政府の様子はどう? 私たちをどうするつもりかしら?」
QB「しばらくは大丈夫だろう。潜伏していれば見つかる心配もないよ。
というより君たちにかかずらっている場合じゃないからね」
杏子「どういうことだ?」
QB「半島の残党軍が最後の抵抗にミサイルを撃ちまくってるのさ。もちろん呪いをばら撒くタイプだよ」
マミ「まさか…!」
QB「しかも撃ち落とし損ねたそのうちの一発が…」ガシッ
ほむら「弾道を計算しなさい。お前ならすぐにできるでしょう」
QB「その必要はないよ。この街の真上だから、君たちなら逃げられる」
ほむら「……すぐに飛ぶ」
QB「相手はミサイルだよ? どうにも出来ないさ」
ほむら「進行方向を逸らして海に落とすわ。そのくらいならやってみせる」
マミ「暁美さん」
ほむら「あなたたちは避難していて」
マミ「あなたにありったけのグリーフシードを託すわ」
杏子「飛べるのはあんただけだしな。ひとつ派手にやってきてくれよ」
杏子「あたしらと、この街の運命は任せたぜ」
ほむら(てっきり止めようとすると思っていたのに、
巴マミの顔に不安の色はない。それどころか吹っ切れたように見える)
マミ「あなたとはもっと話したいことがあるから、なんとかしてきてね」
ほむら(佐倉杏子はいつものように軽い笑みを浮かべてさえいる)
杏子「ゲームは盛り上がりが大事だからな」
ほむら(どんな心境の変化かしら。もしもこれから先があるのなら聞いてみよう)
ほむら「行ってくるわ」バサァ
杏子「……行ったな」
マミ「……ええ」
QB「わけがわからないよ。どう考えても不可能じゃないか」
杏子「かもな。でもあいつはまだやれると思ってる」
マミ「私たちは全力を尽す。たとえこじつけでも、世界に意味を持たせるのよ」
QB「やっぱりわけがわからない。せめて自分だけでも助かった方がいいじゃないか」
杏子「普通ならそうだろうな。けど魔法少女ってのはとびっきり夢見がちで、
呆れるくらい往生際が悪いのさ」
>>179
音より速く飛んでくる奴に狙撃はちょっと……
音より速く飛んでくる奴に狙撃はちょっと……
…………………
………………
……………
ほむら(ここは?)
ほむら(そう、たしかミサイルに追い付いて……)
ほむら(全力で向きを変えたところまでは覚えてる)
ほむら(そこでソウルジェムが限界を迎えたはずで)
ほむら(海に着弾して爆発を……)
ほむら(……しなかった。その前になにか大きな魔力に包まれ…)
『ほむらちゃん』
ほむら「!?」
『がんばったよね』
ほむら(見覚えがある……ここは最後にまどかと別れた場所)
『やっと会えたね』
ほむら「まどか、なの?」
『そうだよ、ほむらちゃん』
『ここは全ての魔法少女が最後にたどり着く場所。ほむらちゃんも私が迎えにいったんだ』
ほむら「…そうね。あなたは魔法少女を導いていたのね」
『私、すごく寂しかったんだよ。ずっとひとりぼっちで』
ほむら「ごめんなさい……」
『でもこれからはずっと一緒だね』
ほむら「ごめんなさい、まどか。本当のあなたはこんなのじゃないわよね」
『ほむらちゃん?』
ほむら「お前はまどかじゃない」
『なに言ってるの? 私のこと忘れちゃったの?』
ほむら「まどかは言ったもの。一人じゃない、見えなくてもずっと傍にいるって」
『じゃあ、私は誰なのかな?』
ほむら「お前は私。私に染みついた絶望の塊。切り捨てられない無念、未練、後悔」
ほむら「こういうことね。これがソウルジェムが絶望に染まるということだったのね」
『すごーい。大抵はすぐ堕ちるのに、気付いて抵抗するなんてさすがほむらちゃんだね』
ほむら「失せなさい。あなたに用はない」
『ダメだよ。ほむらちゃんはもう終わりなんだから』
『私と一緒になろう。そうしたらずっと幸せだよ』
ほむら(意識が飛びそうになる……暖かいベッドの中にいるような甘美な感覚)
『ほぉーら、だんだん眠くなって』ティヒヒヒ
ほむら(なにを言っても耳は貸さない。まだベッドに入る時間じゃない。私にはやることがある)ブンッ
バキィッ
『え? あれええええ?』
ほむら(ニヤケ面に握りしめた拳を一発。最高の友達を貶めた報いよ)
『なになに? こんなことしても無駄だよ? 誰も自分には勝てないでしょ?』
ほむら(痛いところをついてくれるわ。私たちは奇跡なんて綺麗ごとで気に入らない現状を否定しただけ。一番弱い人間)
『ティヒヒヒ。さあ、最後だよほむらちゃん。ティヒヒ、ティヒヒ』
ほむら(まだ…!)ブンッ バキッ
ほむら(終わりじゃない!)ブンッ バキッ
ほむら(絶望なんて…!)ブンッ パシッ
『もう、おてんばだなぁ、ほむらちゃんは』ギリギリボキッ
ほみら「~~~~ッ!」
『よっと』グシャッ
ほむら「かはッ!」 ハラリ
『さっさとあきらめてよ』
ほむら(右手首が…折れた……肋骨も…冗談みたいに踊ってる……)
ほむら(あいつはまだ…余裕綽綽ね………あいつが絶望そのものなら、限界なんてものがあるのかしら?) ガシッ
『ほむらちゃんらしくないよ。リボンもほどけて髪はバラバラ。もっとクールにさぁ』
ほむら(まだ左腕がある…! 足も動く…! それにまだッ)ブンッ
『しつこいな…』 ズンッ!
『く、ふ……あ………れ?』
ほむら「………」
『リボン? さっきほどけた? なんでわざわざ拳に巻いてるのかな?』
ほむら(約束が、ある! 誰にでもない…ただ誓った約束が……!)
ほむら(まどかが守った世界を守り抜く!)
『そのリボンはダメッ! それは…』
ほむら「まどかが、たったひとつ残した証。この世でたったひとつの奇跡…」
『どうしてあきらめないの!? つらいことばっかりなのに!!』
ほむら「………」バキッ
『ぐっ! ……私を受け入れてよ! 否定しないで! 私だって結果なんだよ!』
『どうにもならないことだってある! それであきらめられずに、ずっとつらい思いをしていくの!?』
ほむら「否定しない。いくらでも背負ってあげる。たとえ絶望しか残らない人生だとしても…」
ほむら「かまわない! 絶望で約束は殺せない。希望は死なない!」バキィッ!
『あ…が、あああぁぁぁぁ……』シュゥゥゥゥ
ほむら(…さて、これからなにが起こるのかしら。やっぱり私は死ぬのかし…)
『遅れてごめんね!』
ほむら「…この声……まさか……」
『ちょっと無理をしたんだけど、海に落ちた呪いをそのままにしておけなくて
……そのせいでほむらちゃんを危ない目に遭わせちゃったね』
ほむら「本物の……」
『うん、私だよ。姿は見えなくても、ここにいる』
ほむら「あなたは、もう一度奇跡を起こしてくれたのね」
『奇跡を起こしたのはほむらちゃんだよ。私が魔女を消す前に自力で消しちゃったんだから』
『ほむらちゃんの時間は終わってないみたい。みんなのところへ戻ってあげて』
ほむら「お願い…ほんの少しでいい。私のわがままを聞いて」
『なに?』
ほむら「 」
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