ページへ戻る

− Links

 印刷 

O先生の特別講義 2008年1月21日 :: のくす牧場

xpwiki:O先生の特別講義 2008年1月21日

これらのキーワードがハイライトされています:

2008年1月21日、某所で行われた、O先生による特別講義のメモです。

O先生は、某局ディレクター・プロデューサーとして、ドキュメンタリー・歴史・美術関係の番組を多数手がけられ、数多くの受賞歴がある、日本映像界の第一人者である。

ページ内コンテンツ
    • 注意
    • 写真と映像・映画とテレビ
      • 写真と映像の違い
      • 映画とテレビの違い
      • NHKのディレクターとして
    • 構成
      • 基本構成は3×3
      • 「ハ・ゲ・グ」の印象
      • 音を中心とした構成
    • 撮影において
      • テーマの決定を取材
      • ディレクターの役割
      • カメラマンの役割
      • 事実は小説よりも奇なり
    • 映像表現について
      • 大きな音に大きな映像
      • 音の重要性
      • 動きの重要性
      • 被写体の多面性をとらえる
    • 具体例
      • ガラスのコップ
      • 金魚売りのエピソード(先輩の短編作品?)
    • 学生作品を見ながら
      • シーン間のエフェクト
    • 講演のあとで
      • 話のおもしろい人は、おもしろい映像を作れる(かも)
      • N先生は、高校時代からこんな感じでした?
      • 新人を育てるに当たって、なにか気をつけていることがありますか?
      • 今までの作品の中で、時代を先取りしたものはありますか?
      • なにか素人でもすぐに実践できる秘訣はありますか?
      • NHKスペシャルはどのように企画・制作されているの?
      • クローズアップ現代は、毎日30分番組を作るので大変じゃないの?
      • 今まで担当した番組の中で、やり直したい物はありますか?
      • 親父は家でぼーっとしてたらダメ
      • 最近の大河ドラマはなぜ人間模様を描くのか
      • 最近の番組は、派手なテロップを入れるのはなぜ?
      • ハイビジョン化は現場ではどのようにとらえていますか?
      • 空港でちょっと時間があります。何か食べますか?

注意 anchor.png[1]

この内容は、O先生が公式に残された物ではなく、聴講生でもないとある学生によるメモです。 先生が言ったこととは違う事、言ってないことが含まれていたりするかもしれません。ご注意ください。

特に、私が感じた「行間」部分が補足されていたり、それが勘違いだったりするかもしれません。 また、(括弧内) は、私の心の声による補足です。

Page Top

写真と映像・映画とテレビ anchor.png[2]

芸術・文化とは、人間が織りなす有形・無形の精神活動。 ねぶたの山車そのものよりも、人々の活気そのものが文化である。 中国兵馬俑の圧倒的な人の数には圧倒される。 そして、イスラムやユダヤ教の祈り。祈りはもっとも強い精神活動であろう。

Page Top

写真と映像の違い anchor.png[3]

映画は時間軸があることで、順序立てて説明することができる。 そういう意味では、音楽・小説や論文に近い。 短歌や俳句もこの類かもしれない。

映像や絵画は1枚で全てを表現する必要があるため、よりテーマが明確でなければ、メッセージを伝えるのは難しい。

Page Top

映画とテレビの違い anchor.png[4]

  • 映画
    • 35ミリフィルムの撮影機は撮影時にものすごい音がするので、音声は全て後で入れる。
      • 一見雑音のような環境音も、全て台本通り計算の元入れている。
    • オンマイク(マイクに近い位置でしゃべる)の音声なので、耳元でしゃべっているような臨場感が出る。
    • 時間が長く、最初から最後まで見るので、序論から順に入っていける。
  • テレビ
    • 映像と音声を同時にとるため、リアルな環境音が入る。
      • わざと環境音を入れて生活感を出したりすることもある。
    • 先に結論を言って、あとから肉付けしていくことが多い。

という違いがある。 映画は空想の世界の物語で、テレビは生活の一部を切り取るという言い方もできる。

Page Top

NHKのディレクターとして anchor.png[5]

NHKのディレクターは、1週に1本のペースで15分程度の番組を担当するらしい。

15分番組の次は30分番組。放送時間は2倍だが、取材やロケは4倍ぐらいになるらしい。

企画段階で没になる物もあるので、2〜3本平行して作業する。

Page Top

構成 anchor.png[6]

なんと言っても、「何を伝えたいか」というテーマをはっきりさせることが重要。 これは、レポートや論文でも同じ。

映像作品は個人作品。チームで取り組むが、合議制では絶対に成り立たない。 あくまでディレクター個人の作品であることを意識すべし。

Page Top

基本構成は3×3 anchor.png[7]

「起承転結」と並んで「序破急」の構成に気をつけて組み立てる。 1分の番組も90分の番組も、基本的には「序」「破」「急」の3構成が軸となる。 長い作品では、「序」の中をさらに「(サブ)序破急」に分けることで、9部構成を軸に組み立てていくと良い。

post itのような物にシーケンスの部品を書き、これを9つの構成の中にはめていく。 各構成には複数の部品が入っても良いので、それぞれの接続が良くなるような順番を考える。

どうしても接続がうまくいかないときは、足りない部品があるということ。 部品を考え直して追加すべし。

Page Top

「ハ・ゲ・グ」の印象 anchor.png[8]

「序破急」の構成を確認する指標として「ハゲグ」の印象がある。

  • 「序」で「はっ」とする問題提起があるか?
  • 「破」で「げっ」と思う驚きの展開があるか?
  • 「急」で「ぐっ」とくる感動や納得が得られるか?

を指標とすると、「序破急」の流れを確認しやすい。

Page Top

音を中心とした構成 anchor.png[9]

音楽は、もっとも感情を伝えることのできる要素。 科学番組であっても、説明の中で制作者のメッセージ(感情)を伝える必要がある。 まずは音を選び、それに合うような映像をはめていくと、感情に訴える構成が作りやすい。

テレビの黎明期には、ラジオ界出身の人々が担当していた。 彼らは音を重視し、独特の間も大事にした。 古典落語などには、このような洗練された構成や間が受け継がれている。 (おもしろくない演出やエピソードは淘汰されている。)

一方で、新しい世代の映像は、映像を中心にしてしゃべりを入れていくスタイルもある。 作り手の色(主観的なテーマ)が前面に出ることが少なくなってきている。

Page Top

撮影において anchor.png[10]

Page Top

テーマの決定を取材 anchor.png[11]

番組作成は、

  • 取材
  • 構成考案
  • 再取材
  • 編集

の4部構成。

最初の取材でテーマをはっきりさせ、2度目の取材で素材をそろえていく。

最も重要なのは、自分が納得できるテーマをはっきりさせること。 主観的な感情を、客観的な論理で伝えていくのが映像作品である。

テーマに沿って肉付けしていく作業は、自分の中を探検するようなもの。これまでの取材経験や映像ストックの引き出しを引っ張り出して、テーマに沿ったエピソードを集め、構成していく。

それには、自分の中にたくさんの部品が必要。 ちょっとググっただけの知識では、人に訴えかける説得力は得られない。

Page Top

ディレクターの役割 anchor.png[12]

どのような場面を何のために撮影するのかを、カメラマンとしっかり打ち合わせしておく。 上で作った構成表を元に、どのような取材をし、どのような映像を撮るべきかの認識を共有しておく。 構成表は「ディレクターからカメラマンへの恋文」と表される。

また、撮影時にも、カメラマンがどのような映像を撮っているのか把握しておくこと。

Page Top

カメラマンの役割 anchor.png[13]

撮りっぱなしの映像はほとんど役に立たない。 撮るべき時に撮るべき絵を撮るべし。(難しいな。)

また、撮影の視点は映像のメッセージを決定づける。 人物を下から撮れば威圧的に映るし、子供を上から撮れば見下して映る。

また、争っている2者の片方の側から撮影すれば、相手が悪いように映る。

報道の中立性も大事だが、あえて制作者の伝えたい視点で撮っても良いだろう。

Page Top

事実は小説よりも奇なり anchor.png[14]

取材に赴くと、予定通りに進まないことの方が多い。 予期しない展開は、新たな発見である。予定通りに行かない部分が大事。 テーマがはっきりしていれば、素材が変わってもメッセージは変わらないはず。

所詮、構成表はディレクターが想像して描いた「机上の空論」である。 常に真実はそれを上回るドラマを持っている。これをとらえるのが取材の価値である。

Page Top

映像表現について anchor.png[15]

Page Top

大きな音に大きな映像 anchor.png[16]

大きな音と大きな映像は、それだけでインパクトがある。 上映環境を把握しておくのは作品作りにおいて重要である。

映像があまり大きくない場合は、音と動きの力強さで補うこともできる。 逆に画面が大きい場合は、雄大なゆっくりとした動きでも重厚感がある。

Page Top

音の重要性 anchor.png[17]

映像作品において、一番感情を表現できるのは、音楽。 音を中心に据えて全体を構成していくとまとまりやすい。

音声はできるだけ音源の近く(オンマイク)で録音すべし。音圧は強い方がインパクトがある。

Page Top

動きの重要性 anchor.png[18]

被写体が動かない物の場合は、カメラを動かすとともに、背景や空気を動かして、画面に動きをつける。 止まっているように見えた物が動きだしたりするなどの、思いこみを裏切るインパクトも重要。

Page Top

被写体の多面性をとらえる anchor.png[19]

子供を撮影するとき、見下ろすように撮るよりも子供の視線で撮ると、子供の世界が見えてくる。

一つの物でも、切り口によって様々な断面が見える。 固定観念にとらわれず、自由な発想で一つのテーマをいろんな角度から見てみよう。

Page Top

具体例 anchor.png[20]

講義中であげてくださった具体例を、うろ覚えながら紹介。

Page Top

ガラスのコップ anchor.png[21]

「このガラスのコップについて述べなさい」 (結構無茶振り)

  • 透明
  • 液体が入る
  • 冷たい(冷たいかどうかわからんと思うが)

というような学生の反応(主に機能的・性質的特徴)に対し、

  • 酸化珪素でできている、という学術的説明
  • 実はアインシュタインが使ったコップだった、という歴史的説明

というようなとらえ方もできることを紹介。 一見何の変哲もないテーマでも、視点を多く持つことでいくらでも切り口が見えてくる。

Page Top

金魚売りのエピソード(先輩の短編作品?) anchor.png[22]

とある農村に生きる金魚売りのお話

  • 起 「金魚〜、え〜金魚〜」今日もこの山間の村に金魚売りの声が響く
  • 承 この金魚売りは30年もこの村で金魚を売り、お得意さんを回っている
    • タダの金魚売りについて、これ以上何を言えばいいのだ? と思っていると「転」がくる。
  • 転 実はこの金魚売りは、戦時中外地で貧困に喘ぎながらも、金魚売りをすることでなんとか生き抜いてきた。
  • 結 いまこうして幸せに暮らしているのは、金魚売りのおかげ。その姿を(戦争を生き抜いた世代として)後世に伝えたい。

「転」で30年前の戦争中のエピソードが加わることで、この作品は時間軸を超えて立体的な作品となる。

Page Top

学生作品を見ながら anchor.png[23]

授業の後半は、学生が作った作品(1分で広大を宣伝する映像)を見ていただき、アドバイスをいただく時間でした。 私は潜りの学生なので、映像作品は持っていませんでしたが、他の学生さんの映像に対するアドバイスを聞かせてもらいました。

さすがはプロと言うべきか、学生がこだわった(であろう)点を瞬時に見つけ出し、まずはその構成を誉めてました。 映像作家としての技量だけでなく、若手を育成する手腕の一端を垣間見ることができました。

Page Top

シーン間のエフェクト anchor.png[24]

  • 時間的に隔たりのあるシーンは、一度白くとばすなどして切れ目を入れると良い。
  • 主人公に心情の変化があったときには、カメラワークや撮影角度を思い切って変えてみるのも良い。
  • みんな文字の使い方が上手だったとのお褒めの言葉。
Page Top

講演のあとで anchor.png[25]

Page Top

話のおもしろい人は、おもしろい映像を作れる(かも) anchor.png[26]

人に話すと言うことは、順序立てて説明するとともに、聞き手の興味を引き、飽きさせない構成を逐次考えながらしゃべる必要がある。 おしゃべりな人は、映像作家の素質有り?

Page Top

N先生は、高校時代からこんな感じでした? anchor.png[27]

俺たちはほんと変わってないよな。

(自分のスタイルを維持したまま、社会的に認められた仕事ができる人は、ホントに限られた優秀な人だと思います。尊敬します。)

Page Top

新人を育てるに当たって、なにか気をつけていることがありますか? anchor.png[28]

まずは自分で考えさせて3本ほど作らせてみる。 途中で何か助言をすれば、当然それらしい作品ができあがるが、次もまた同じ間違いを犯してしまう。

一方考えて作らせた物は、最初こそひどいできになるが、2回目には言ったことの5割ぐらいできるようになってくる。 そして3回目には8割方自分でできるようになる。 そうなれば、4回目は一人で任せても大丈夫。

Page Top

今までの作品の中で、時代を先取りしたものはありますか? anchor.png[29]

藤井寺球場のピンポイント天気予報がビジネスになるというテーマで数十年前に1本作った。 中日リードで迎えた終盤、雨により試合が中断した。 球場の水はけの悪さを知っている中日選手は、試合が中止になると見込んで帰り支度を始めた。

しかし巨人ベンチは、この雨が通り雨であることを知っていた。 当時はまだ一般には普及していなかったピンポイント天気予報を買っていたのだ。 試合再開に向けて身体を温めておいた巨人は、試合再開後一気に逆転したというお話。

もっとも、巨人がピンポイント天気予報を買っていたのは、3万人の巨人ファンに売るための弁当の仕入れ量を決めるためであったが、これ以降、「天気予報は気象庁からタダでもらえる物」という常識が覆り、ピンポイント天気予報ビジネスが本格化してくる。

Page Top

なにか素人でもすぐに実践できる秘訣はありますか? anchor.png[30]

まずは何を伝えたいかというテーマをはっきりさせること。 あとは、ぶっちゃけ、おもしろけりゃいいのよ。

Page Top

NHKスペシャルはどのように企画・制作されているの? anchor.png[31]

最近は昔ほど予算がつかないらしい。 制作費を削るには、ロケを削ることになりやすい。 民放なら、人件費も削るためにカメラマンなどの質を落とすこともある。

制作予算が大きくなれば、それに見合うだけの放送時間(数回シリーズ)を割り当てられる。

NHKスペシャルは、NHKとしてもチャレンジングな位置づけの番組

  • 新たな報道テーマへの挑戦
  • 新たな映像表現への挑戦
  • 新たな映像技術への挑戦

のいずれかがなければ、NHKスペシャルとしての企画にはなならない。

Page Top

クローズアップ現代は、毎日30分番組を作るので大変じゃないの? anchor.png[32]

クローズアップ現代はかなり大変。 1テーマ10人ぐらいのスタッフで、おおよそ1ヶ月ぐらいの間で、1本の取材と撮影・編集を行う。

Page Top

今まで担当した番組の中で、やり直したい物はありますか? anchor.png[33]

全部やり直したい。

15年前の作品を授業で上映したが、あれもまだテンポが緩い。 自分も日々進歩しているので、昔の作品は全部不満。

Page Top

親父は家でぼーっとしてたらダメ anchor.png[34]

たまの休みの日に家でぼーっとしてると、子供から尊敬されないぞ。

Page Top

最近の大河ドラマはなぜ人間模様を描くのか anchor.png[35]

壮大なスペクタクルを描く予算がなくなってきたので、人間模様を描かざるをえなくなってきたのではないか。 武田信玄は何度もドラマ化されているので、別の切り口として山本勘助を主人公にしているが、そういう切り方ではなく、 ディレクターの主観をもっと前面に出して、新しい切り口をみつけても良いのではないか。

Page Top

最近の番組は、派手なテロップを入れるのはなぜ? anchor.png[36]

スタジオ内の固定カメラで撮影する番組では、画面の動きが少なくなるため、テロップを入れてアクセントにする。 バンッと派手な文字が出たらびっくりするでしょ? 紙人形の平家物語で、ドライアイスの霧を流したように、動きのない画面には音や背景で動きを出さないと、単調な画面になってしまう。

副産物として、聴覚障害者の人にも会話の雰囲気が伝わる。

Page Top

ハイビジョン化は現場ではどのようにとらえていますか? anchor.png[37]

番組を作る側としてはあまり興味はない。自宅にもハイビジョンテレビないもん。

Page Top

空港でちょっと時間があります。何か食べますか? anchor.png[38]

N先生と並んであんみつパフェみたいなものをお召し上がりになりました。結構甘党!?


Last-modified: 2017-06-02 (金) 05:39:48 (JST) (410d) by 牧場長