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    元スレあぎり「ソーニャが、死んだ?」

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    1 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 19:56:37.76 ID:OrkIXc4r0 (+125,+30,-164)


    ――昼休み、学校の屋上。



    ソーニャ「………」


    私は備え付けのベンチに腰掛けて、少し古い型の携帯電話を耳にあてていた。
    相手は組織の仲間だ。 当然、会話の内容は仕事の話。


    ???『……って感じで、こっちは上手く行ってますー』

    ソーニャ「ああ……」

    ???『急な仕事だったけど、簡単だったから。 そのぶん、給料は安いんだろうけど……』

    ソーニャ「…………」

    ???『……聞いてる?』

    ソーニャ「ん? ああ、ごめん」


    ちゃんと聞かなければいけないのに、どうも気が抜けてしまう。
    最近はいつもこうだ。
    2 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 19:58:06.50 ID:OrkIXc4r0 (+95,+30,-175)

    ???『まったく、あなたがそんなんでどうするんです?』

    ソーニャ「……わかってるよ」

    ???『はあ……慣れないことしてるから、疲れてるんじゃないですかー』

    ソーニャ「……?」

    ???『折部やすな……でしたっけ? あの子の何が良いのか……』

    ソーニャ「……余計な詮索はするな」

    ???『はいはい』

    ソーニャ「…………」

    ???『……まあ、ごっこ遊びもいいですけど、早めに本業に戻ってねー』


    ???『これ、あなたが頼んだ依頼なんですからね? 給料払えないとか、勘弁ですよ』


    ソーニャ「……わかってるって、なんとか暇を作ってみるよ」
    3 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 19:59:13.64 ID:OrkIXc4r0 (+95,+30,-163)

    ???『ならいいけど……じゃあね』


    電話が切れた後も、私はしばらく携帯を耳にあてていた。
    単調な電子音を聞きながら、少し考え事をする。

    ……私だって、わかってる。
    慣れないことを、無理してやってることくらい。

    でも、簡単にやめるわけにはいかない。
    これは、私が始めたことだ。



    やすな「……ソーニャちゃーん! 買ってきたよー!」

    ソーニャ「……あ」


    気がつくと、入り口のあたりにやすなが立っていた。
    高く振り上げた手の先には、頼んでいた缶ジュースが握られている。


    やすな「いやっふー……って、あれ?」

    ソーニャ「おい、炭酸なんだからあんまり振り回すなよ!」
    4 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 19:59:41.24 ID:3J/VvUsc0 (-23,-13,+0)
    しえん
    5 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:02:24.42 ID:dYYdNcut0 (+19,+29,+0)
    やすな可愛い
    6 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:04:02.14 ID:OrkIXc4r0 (+95,+30,-103)

    やすな「うん……」

    ソーニャ「あーもう、見るからに膨らんでるじゃないか……」

    やすな「…………」

    ソーニャ「……? どした?」

    やすな「……そ、ソーニャちゃん、それ……」


    やすな「誰から、電話?」


    ソーニャ「あ……」

    ソーニャ「……ちょっと、仕事」

    やすな「えっ……」


    胸元へ寄せられた小さな手から、漫画みたいに缶ジュースが滑り落ちる。
    さっきまで騒いでいたのが嘘みたいに、やすなの顔は青ざめていた。
    7 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:04:37.68 ID:OrkIXc4r0 (+95,+30,-109)

    ソーニャ「……なんだよ、なんか文句あるのか?」

    やすな「だっ、だって! ついこの前……」

    ソーニャ「言っておくが、もう二度とあんなヘマはしないからな」


    足元に転がってきたジュースを、一度蹴りあげてから空中でキャッチする。
    ちょっとした曲芸だが、やすなは何も反応しなかった。

    ……こんなことでは、気を逸らせないみたいだ。


    やすな「そんなこと言っても……! 信用できないよ!」

    ソーニャ「……あ?」

    やすな「だって、いつもそうやってプロぶってたじゃん!」

    やすな「……でも、全部嘘だった!」
    8 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:05:18.12 ID:OrkIXc4r0 (+95,+30,-204)

    ソーニャ「お前、喧嘩売ってるのか?」

    やすな「本当のこと言ってるだけだもん! ……私にはそうやって威張ってるくせに」


    やすな「この前の……あんな、あんな大怪我して! あんなに、長く学校休んで……」


    ソーニャ「…………」

    やすな「ソーニャちゃんなんて……ザコじゃん! ザコ! ざーこ!」

    ソーニャ「……いい度胸だなお前」

    やすな「ふん、ザコソーニャちゃんなんてもう怖くないもん! バーカ!」

    ソーニャ「…………」

    やすな「そんな弱いんだったら、もう殺し屋なんてやめちゃえ! じゃないと……ぶはっ!?」


    さんざん振られた上にかどが凹んだ炭酸ジュースを、一息に開栓する。
    追加で降るまでもなく、勢い良く噴出した中身がやすなの顔面を直撃した。
    9 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:09:29.11 ID:OrkIXc4r0 (+95,+30,-102)

    やすな「いっ……ったー!! 目がああっ!!」

    ソーニャ「…………」

    やすな「あああああ……ってやめて!? 残りをまんべんなくふりかけないで!!」

    ソーニャ「捨てたら勿体ないだろ?」

    やすな「だったら飲んでよぉ!!」

    ソーニャ「飲めるかこんなもん!」

    やすな「うう……ひどい……びしゃびしゃだよ……」

    ソーニャ「……はっ、これくらいですんで良かったと思え」

    やすな「うええ……ソーニャちゃんのばかあ……」
    10 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:10:15.00 ID:OrkIXc4r0 (+91,+30,-127)

    ソーニャ「馬鹿はどっちだ……じゃあな、そろそろ休みも終わるし、先に戻ってる」

    やすな「待ってよぉ……行かないでよぉ……」

    ソーニャ「べたべたくっつくな! こっちまでベタベタするだろ!」

    やすな「うう……だって……」


    やすな「ソーニャちゃん……死んじゃうよぉ……」


    ソーニャ「……っ!」

    やすな「そしたらやだよ……寂しいよ……」

    ソーニャ「ばっ……馬鹿! そんな簡単に死ぬか!」

    やすな「死ぬよ!」

    ソーニャ「死なない!」

    やすな「死ぬもん!」

    ソーニャ「……死なないって言ってるだろ!」
    11 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:12:37.51 ID:BWGdW0zj0 (+15,+25,-1)
    ワサワサ!
    12 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:15:56.17 ID:OrkIXc4r0 (+95,+30,-60)

    やすな「ひっ……」

    ソーニャ「…………」

    やすな「…………」

    ソーニャ「……悪かったよ、ちょっとやりすぎた」

    やすな「……うう」

    ソーニャ「ほら、これで顔拭け」


    ハンカチを差し出すと、やすなは素直に受け取った。
    ひとしきり騒いで、流石に落ち着いたらしい。


    ソーニャ「……着替えあるか?」

    やすな「今日、ジャージ持ってきてない……」
    13 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:16:36.25 ID:OrkIXc4r0 (+95,+30,-112)

    ソーニャ「……仕方ないな、私の貸してやるよ」

    やすな「ほんと!?……なんか優しいね」

    ソーニャ「厳しくして欲しいのか?」

    やすな「してほしくないです!」

    ソーニャ「……じゃあ先に行ってろ、私は代わりのジュース買ってから行くから」

    やすな「私の分も買ってくれるの!? わーい!」

    ソーニャ「おい、誰がそんなこと……おい!」

    ソーニャ「……って、もう居ないし」


    まあ、元気が出たならよしとしようか。
    そんなことを考えながら、ジュースの缶を拾って屋上を後にする。
    14 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:17:28.13 ID:OrkIXc4r0 (+95,+30,-77)


    ソーニャ「…………」


    ……あんな顔をするなんて、思わなかった。
    たかだか仕事の電話一本で。


    あんなに……心配しているなんて。



    ???「まあ、それだけ愛されてるんですねー……ソーニャさんは」



    ソーニャ「?……なんだ、居たのか」

    ???「ええまあ。 ちょっと予行演習でもしようかな、と思って」

    ソーニャ「じゃあなんでわざわざ電話したんだよ?」

    ???「邪魔しちゃ悪いでしょ?」

    ソーニャ「…………」
    15 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:18:21.51 ID:OrkIXc4r0 (+95,+30,-98)

    いつの間にか背後に立っていた長髪の女子生徒は、
    まるで服装を自慢するように、その場でくるりと一回転した。


    ???「……どう? 似てます?」

    ソーニャ「……ああ、完璧だ」

    ???「お褒めに預かり光栄です……」

    ???「……まあ、あなたほどじゃないと思いますけどねー?」

    ソーニャ「やめろよ、聞かれてるかもしれないだろ」

    ???「大丈夫、もう教室に行ったみたいですよ」


    ソーニャ「……そうですか」

    16 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:19:32.69 ID:OrkIXc4r0 (+93,+30,-132)

    ???「……ちょっと、本物と見比べてもいいですか?」


    ソーニャ「はいはい……」


    同僚のしつこい誘いにはうんざりするが、物を頼んでいる身だ。 あまり大きな態度はとれない。
    それに、どうせもうすぐ取り替え時期だ。


    私はその場で、顔にかぶっていた薄いマスクを剥ぎとった。



    あぎり「……心配しなくても、ちゃんと私に見えてますよ」



    同僚の忍者は、人を小馬鹿にしたような顔で笑った。


    偽あぎり「……それは良かった♪」



    ……私って、こんなに腹の立つ顔だったんだなあ。

    18 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:22:33.94 ID:QA06lvbWO (+19,+29,-3)
    あそぼよワサワサwwwwwwwww
    19 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:25:52.85 ID:OrkIXc4r0 (+95,+30,-117)

    ………


    ―― 一ヶ月ほど前、自宅。



    あぎり「……え? ソーニャが死んだ?」



    組織から仕事の説明を受けている最中に、私は彼女が死んだことを聞いた。

    ほんの、世間話のような感覚で。



    上司「ああ、仕事中にドジったらしい」

    あぎり「ドジったって……あの子が、そんな」

    上司「確かにあいつは腕が良かったが……敵には事欠かない奴だったしな」
    20 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:26:39.33 ID:OrkIXc4r0 (+95,+30,-161)

    あぎり「はあ……それは、確実なんですか?」

    上司「死体は俺も確認したよ、あれは間違いなく本人だ」

    上司「元々、お前みたいに器用な真似が出来るやつでも無いし」

    あぎり「…………」



    彼女とは、ちょっとした知り合いだった。

    会えば軽く話したり、時々仕事を手伝ったり。 いくらでもいる知り合いの一人。
    もちろん、殺し屋の同僚にもそんな相手は居たし、仕事柄死んでいった者も少なくはなかった。

    そもそも、明日の生死もわからないような職業の人間は、あまり深い人間関係を作りたがらないものだ。
    それは私も、彼女も同じだった。


    同じはずだった。

    21 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:27:57.55 ID:OrkIXc4r0 (+95,+30,-93)

    ……その知らせを聞いてから一週間後くらいだったか。

    私は正直、ソーニャのことを少し忘れかけていた。
    あの時あれを見なければ、そのまま忘れてしまっていたかもしれない。
    それとも、いつかは見るはめになったのかな。

    私はソーニャを介して、彼女ともちょっとした知り合いだったから。


    ――放課後。 ソーニャの机がある教室の前。


    本当にたまたま通りかかって、たまたま教室のドアが開いていた。
    そしてたまたま、そっちの方を見ながら通りすぎようとした。


    そこで、彼女の背中を見た。
    22 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:30:20.00 ID:BWGdW0zj0 (+24,+29,-14)
    まさかあぎりさん…
    23 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:30:58.85 ID:OrkIXc4r0 (+95,+30,-98)

    彼女は自分の机に腰掛けて、隣の机をじっと見つめていた。
    もう一週間くらいになるだろうか。

    いきなり失踪して連絡がとれない友達が、座っているべき机。

    自宅の場所も知らない彼女が、唯一待っていることができる場所を。

    帰ってくるはずもないのに。


    彼女は、じっと見つめていた。



    その時、私が何を思っていたのかは……まだ考え中だ。
    不憫に思ったんだろうか。 それはらしくないし、単なる悪ふざけだろうか。
    流石に、そこまで外道になったつもりはないけど……

    じゃあ、やっぱり何か、思う所があったんだろうか。

    24 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:32:01.07 ID:OrkIXc4r0 (+95,+30,-212)

    とにかく、私はソーニャの姿を完璧に真似た。
    リアリティを出すために、体中に包帯まで巻いた。

    変装は大の得意分野だった。 バレるはずもなかった。
    実際、今の今まで、一度も怪しまれなかった。


    でも、私は2つ体があるわけではない。
    私がソーニャを演じるということは、呉織あぎりがいなくなったのと同じことだ。

    簡単な分身の術や、集団催眠の術や、出席簿書き換えの術を使えば、周りには怪しまれないですむ。
    しかし、私と彼女とソーニャが、一堂に会するような事態は話が別だ。

    だからそんな時は、同僚の忍者に私の代役を頼み込んできた。 もちろん有料で。

    あの同僚も、内心では私を嘲笑っているんだろうか。
    25 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:32:46.77 ID:OrkIXc4r0 (+93,+30,-93)

    もう、一ヶ月くらいになるのかな。
    私はいまだに、その馬鹿げた茶番劇を続けていた。

    というより、やめられなかった。

    誰かと深く付き合っていれば、当然昔のままでは居られない。
    私もきっと、彼女に何かの影響を受けてきたんだろう。

    だから、やめることはできない。



    ……彼女に初めてソーニャの姿で接したとき、どんな反応が帰ってきたか?


    それは、だれにも教えたくない。
    特に理由は無いけれど、自分の胸の内にしまっておきたい。


    そう答えたら、同僚ははっきりと、声に出して私を笑った。



    ………
    26 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:33:46.58 ID:vyRqLG1H0 (+0,+29,-43)
    出席簿書き換えの術って忍術じゃないでしょ!
    27 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:37:32.16 ID:OrkIXc4r0 (+95,+30,-108)


    ――――――――――


    形意拳、というのがあるんだ。



    中国の拳法で、それぞれ動物を模した十二形拳を……

    何? 動物のモノマネ?

    ……アホっぽい?


    ま、まあ、素人にはそう見えるかもしれないけどな。
    こう見えても結構強いんだよ。 本当だよ?。


    なんてったって、その使い手である私は、今まで任務を失敗したことが無い。
    あの……なんとかって金髪の殺し屋も、確実に殺ったはずだ。

    ……はずだったのに。
    28 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:38:25.01 ID:BWGdW0zj0 (+27,+29,-5)
    ソーニャちゃんが殺されるなんて馬鹿な……
    29 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:38:36.24 ID:NGW8juE70 (+24,+29,-2)
    没キャラちゃんが没じゃないだと…?
    30 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:39:15.36 ID:OrkIXc4r0 (+93,+30,-102)


    なのに、なんだあれ?


    すぐ目の前の道を。

    あの金髪ツインテールが。

    バカそうなお友達と一緒に、今日も元気に歩いてるじゃないか。


    失敗した? そんなはずは無い。 でも奴は生きてる。
    他人の空似? 影武者か? ……どちらにしても、簡単な解決方法は一つ。


    もう一度殺す。 単純なことだ。


    そうと決めたらさっさと行動に移ろう。 今すぐ追いかけて、息の根を止めよう。
    ……というわけで、私はその二人の後をつけることにした。


    え? 私の名前? ……うるさい、殺し屋が簡単に言うわけないだろ!


    ――――――――――


    31 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:40:11.41 ID:OrkIXc4r0 (+95,+30,-83)

    ………



    やすな「……ねえソーニャちゃん、聞いてる?」

    ソーニャ「……? ああ、なんだっけ?」

    やすな「なんだっけじゃないよ、ちくわぶの話だよ!」

    ソーニャ「ちくわ……」

    ソーニャ「この暑いのに、おでんの話か?」

    やすな「……ちくわぶは家の犬の名前だよ」


    ソーニャ「……えっ?」
    32 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:40:39.05 ID:OrkIXc4r0 (+95,+30,-61)

    やすな「ほら、ソーニャちゃんも一度会ってるじゃん……」

    ソーニャ「……そうだったっけ」

    やすな「もう、しっかりしてよー」

    ソーニャ「…………」


    ――べつの日。 通学路。


    私は彼女と一緒に、他愛もない話をしながら下校していた。
    彼女はいつものように、自分の身の回りのことを熱心に話している。
    33 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:41:30.16 ID:OrkIXc4r0 (+95,+30,-150)

    やすな「それがさ、この間半分になったすずめをくわえてきてさ……」

    ソーニャ「ふーん……」

    やすな「そういうのって猫だけかと思ってたけど、犬もやるんだねー」

    ソーニャ「そう……」


    ……だけど、どうにも集中できない。

    「本物」だけが知っている情報の存在に冷や汗をかきながらも、
    私の意識は、背後の電柱、もっと言えばその裏に潜んでいる何者かに向けられていた。


    ……はっきり言って、奴の尾行は絶望的に下手だった。

    存在を隠せていないのはもちろんのこと、視線や足音までもれなく伝わっている。
    隣の彼女に気付かれていないのが奇跡のようだ。


    しかしおそらく、この無能な殺し屋こそが……ソーニャの仇だろう。
    34 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:42:24.93 ID:OrkIXc4r0 (+95,+30,-134)

    ソーニャの死後、私はその相手についてできる限り調べていた。
    情報によれば、奴は非常に高い身体能力を持った拳法家で、格闘戦では右に並ぶものが居ない。
    つまり殺し屋としての技術は未熟だが、一旦補足してしまえば確実に仕事を成功させられるのだ。


    たぶんソーニャは、奴を返り討ちにしようと思ったのだろう。
    腕のいい殺し屋ほど、その選択肢をとるに違いない。

    その結果、自分が返り討ちにあってしまった、ということだ。


    それなら、私は違う方法をとれば良い。


    ソーニャ「……あっ」

    やすな「? どしたの?」

    ソーニャ「教室に、ちょっと忘れ物したみたいだ」
    35 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:43:14.75 ID:OrkIXc4r0 (+93,+30,-78)

    やすな「……そうなの?」

    ソーニャ「ああ、走って取ってくるから、悪いが先に帰っててくれ」

    やすな「えっ……」


    私はその場で振り返り、来た道を走って戻った。
    奴が隠れている真横を通りぬけながら、その姿を一瞥する。


    腰に上着を巻きつけた、バカそうな少女だ。


    ……なんだか嫌いになれない顔だな、と少し思った。

    37 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:46:52.01 ID:OrkIXc4r0 (+95,+30,-76)


    ―――――――



    あいつはすました顔でこっちを見ると、そのまま学校の方へ走り去っていった。


    あのままついていって、人気のないところまで来てからとどめを刺すつもりだったのに……
    おそらく奴も、それに気付いたんだろう。

    放課後と言っても、学校にはまだたくさん人が居る。
    その中に逃げ込まれれば終わりだ。

    いくら私が強くても、人目につく場所では暴れられないからな。


    ……まあ、そうなる前に追いつけば良いだけの話だ。

    追いかけっこには自信がある。



    それにしても、私の尾行を見破るとは……相当やるな。


    ―――――――

    38 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:47:40.33 ID:OrkIXc4r0 (+93,+30,-143)


    ――再び通学路。 そろそろ学校が見えてくる頃合いかな。


    もう5分くらいになるか、ずっと走り続けているけど、未だに後ろの気配は消えない。
    これでも全速力で、追いかけにくい場所を交えながら逃げてるつもりなのに……


    屋根をつたっていけば塀を壊し、人ごみを抜ければ一般人をなぎ倒し、水上を走れば川を飛び越える。

    馬鹿ではあるけど、能力の高さは本物だ。
    工夫と回り道をしなければすぐに追いつかれていただろう。


    でも、これで考えが決まった。
    これくらいで誤魔化せる敵なら放置しても良いと思ったけど、それは無理らしい。

    なら対応は一つ。



    返り討ちだ。


    39 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:48:31.59 ID:OrkIXc4r0 (+95,+30,-136)


    ―――――――


    走り始めてから……どれくらいたったっけ。
    色んな場所を走り続けて、自分が今どこを走っているのかもわからなくなってきた。


    それなのに、奴は一向に戦おうという意思を見せない。
    一度負けたから、私のことが怖いんだろうか?


    まあいい。 いつまでも逃げていられるわけがない。
    私と体力勝負しようなんて甘いんだよ。
    実際、あいつと私の距離はだんだん縮まっている。
    あと一回でも減速すれば、瞬時に詰められる距離だ。


    つまり……次の曲がり角。


    あれを曲がれば、全部終わり。
    今回も仕事達成だ。
    40 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:49:48.89 ID:OrkIXc4r0 (+95,+30,-134)

    あーあ、走り回ってたら、なんだか腹が減ってきた。
    これが終わったらカップ麺でも買って帰るか、っと。


    奴の姿が塀の向こう側に消える。

    カップ麺の前に、最後の仕上げだ。


    私は速度を落とさずに、むしろ足に力を込めて、一気に塀を飛び越えた。


    こういうのは気分がいい。 鳥になったみたいだ。
    いつまでも楽しんで居たいけど、そうもいかない。

    私は両足を揃え、アスファルトの地面に着地する。
    そして一息に振り返り、あのすかした顔に渾身の一撃を……



    あれ?



    奴が居ない。 影も形もない。
    41 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:49:57.88 ID:c1x23zC40 (+11,+16,-2)
    スムーズでいいな
    42 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:50:46.11 ID:OrkIXc4r0 (+95,+30,-75)

    飛びすぎたか?

    慌てて振り向くと、そこには長い黒髪の女子高生が居た。
    私に驚いたのか、ぽかんとした顔でこっちを見ている。


    が、奴の姿は見えなかった。


    前にも後ろにも居ない。 上にも下にも右にも左にも居ない。
    消えた……? まさか。

    私は近くにいた女子高生に声をかけてみることにした。


    「おい! さっきここを、金髪の女が走っていかなかったか?」
    44 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:51:25.04 ID:BWGdW0zj0 (+16,+26,+0)
    さすが忍者
    45 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:51:39.28 ID:OrkIXc4r0 (+95,+30,-82)

    「え? 金髪の……?」

    「ああ、ツインテールの、目付きの悪い……」

    「はあ……それなら確か、あっちの方に……」


    そいつは眠そうな目をぱちぱちさせて、奴が元々目指していた方角を指さした。
    どうやら、まだ学校に向かっているらしい。

    こんなに足が速いなんて……まんまとやられたな。
    47 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:52:42.20 ID:OrkIXc4r0 (+95,+30,-133)

    「そうか……助かった、じゃあな!」

    「いえいえ」


    私は女子高生に軽く礼をして、奴が走り去っていった方に足を向けた。

    そして全身の力を込め、地面を蹴って、



    何をしたのか、自分でもわからなかった。



    なぜか、頬に冷たい感触がある。 アスファルトに押し付けているみたいだ。

    じゃあ私は倒れているのか?

    それを確認しようにも、目の前は真っ暗だ。

    まぶたを開けても、閉じても真っ暗だ。

    耳も聞こえないし、それにつられたみたいに、三半規管も意味が無い。

    上も下もぐにゃぐにゃになって、自分の姿勢すらわからない。
    48 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:53:55.27 ID:OrkIXc4r0 (+95,+30,-62)

    何が起きた? あいつに殺られたのか?

    でもあいつは居なかったはずだ。 そもそもちゃんと殺したはずだ。

    じゃあなんで?


    まあいいか。 もう終わったことだ。

    私は結局、一回も仕事を失敗しなかった。 そういうことにしとこう。


    そう考えると、なんだか気分がいい。 鳥になったみたいだ。

    これからは、いつまでも楽しんで居られるのかな?



    ああ……でも。



    どうせなら、お腹いっぱいで死にたかったな。


    ―――――――

    49 : 以下、名無しにか - 2012/05/06(日) 20:54:45.77 ID:d86GlkW80 (+19,+29,+0)
    さるよけ
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